いつの日か…   作:かなで☆

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第六十九章【抗えぬ運命の轢音】

 歯車は、一つが動き出すとすべてが一気に回りだす。

 

 その一つ一つの大きさや種類がいかに違っていても、ガチリと合わさった歯噛みは決して外れることがなく、ガタリガタリ…規則的な動きで回転してゆく。

 

 運命という名のそれは、止めようと一つを狂わせてみたとしても、その狂いさえも組み込まれているもので、結局はすべてがプログラムされたとおりに動いて行くのかもしれない。

 

 

 

 抗うことはできない。

 

 

 緻密に計算された組み立ては、人知を超えた力によって支配され、ガタリ…ガタリと動いてゆく。

 

 

 止めることはできない。

 

 

 ガタリガタリ…

 

 

 空のかなたか、それとも大地深くか…

 

 

 それは確かな響き

 

 

 さだめを呼ぶ、確かな轢音(れきおん)

 

 

 ガタリガタリ…

 

 

 

 

 「水蓮」

 夢の中にきしむ音を聞いていた水蓮は、名を呼ぶその声にゆっくりと目を開く。

 「鬼鮫…?」

 その姿を目に留めてゆっくりと起き上がる。

 アジトの入り口の向こうでは、すっかり登りきった太陽の気配。

 昨夜は深夜の見張りであったため朝方眠ったのだが、

 「寝すぎちゃった?」 

 軽く目をこする。

 「いえ、そうではなくて」

 そう言う鬼鮫の後方では、イタチがじっと空を見つめている。

 その背からいつもと違う空気を感じ、水蓮の鼓動が音を立てた。

 「どうしたの?」

 何かあったのかと、一気に脳が目を覚ます。

 「結界を頼めますか。できうる限り広範囲で」

 「結界…」

 やはり何かあったのかと立ち上がる。

 「3日ほど警戒を頼みたいんですが」

 「何?どこかの残党?」

 しかし鬼鮫は首を横に振った。

 静かにイタチが中に歩み戻り、低い声で事を告げた。

 「今日から3日ほどかけて尾獣を封印する」

 

 ドクンッ!

 

 鬼鮫にも聞こえてしまうのではないかと思うほどの脈打ち。

 

 しかしそれが表情に出ぬよう、水蓮は必死に繕った。

 「尾獣を見つけたの?」

 「ああ」

 無表情にうなづくイタチに、鬼鮫が言葉を続けた。

 「一尾です」

 

 

 我愛羅の顔がパッと浮かぶ。

 

 

 そして次にナルトの存在。

 

 

 修行が終わり、木の葉に戻っていた…

 

 そして、事態は動き出したのだと、水蓮の心臓はその波打ちを止められずにいた。

 

 「封印を施す場所にチャクラを飛ばす」

 「私もイタチさんもその間はほぼ動けません。終わるまでの間頼みますよ」

 二人の言葉があまりはっきり頭に入ってこない。

 黙ったまま返事を返さない水蓮の顔を鬼鮫が覗き込む。

 「まだ寝ぼけてるんですか?」

 「え?あ…ご、ごめん。うん。わかった」

 なぜかイタチと目を合わせられずうなづくふりをして顔をそらし、外套を羽織りながら二人に背を向ける。

 「もう、すぐに?」

 「ああ」

 「そろそろ。あぁ、きましたね」

 振り返ると、ピクリと二人の体が揺れその連絡が入ったのだと察する。

 「外でやります。その方が飛ばしやすい」

 外へと向かうその背を見送り、イタチが水蓮に向き直る。

 「私たちも行こ」

 イタチが言葉を発する前に、まるでそれを遮るかのように水蓮がそう言って外へと向かう。

 「水蓮…」

 横をすり抜けていく水蓮の手をつかもうと思わず出た手を、イタチはなぜか伸ばしきれなかった。

 ちらりと見えた何かを悟ったような、それでいて悲しげな水蓮の瞳。

 今触れてはいけないような、そんな気がしたのだ。

 水蓮も、イタチのその手から逃れるように少し歩を速めた。

 

 今触れられたら、きっと泣いてしまう。

 

 鬼鮫のいるこの状況でそれは避けねばならなかった。

 「行こ」

 振り向かぬまま立ち止まり、水蓮は短くそう言った。

 「ああ」

 短く返されたその声が、改めて事の始まりを告げた。

 

 

 

 

 我愛羅は尾獣を抜かれて一度は死ぬ。

 だけど、砂のチヨバァの術で生き返る。

 

 

 水蓮は結界を張りおえ、背の高い岩の上で微動だにせず集中しているイタチと鬼鮫のその裾もとで、感知に意識を張り巡らせつつ記憶をたどっていた。

 もう過去にNARUTOを観ていた頃からは随分時間がたってしまっている。

 記憶の薄れはある。それでも、流れが少しずつ脳裏によみがえる。

 その中に浮かんだのはサソリの死。

 イタチや鬼鮫ほど深くは関わっていないものの、やはり知った者の死には恐怖を感じる。

 だがサソリは暁の一員で、多くの罪を犯してきた事に違いはない。

 

 それでもその死に悲しみがないかと言えば嘘になる。

 

 その感情をどう受け止めればよいのかが分からず、水蓮は目を閉じた。

 

 今は集中しよう

 

 全ての感情を感じないように、水蓮は集中を高め感知の範囲を大きく広げた。

 

 時折イタチにチャクラを注ぎ、自身もチャクラを回復させるために影分身に見張りをさせて食事も睡眠もとる。

 そうして過ごし、幸い何者の接近もなく一日目が終わった。

 そして二日目の午後。

 不意に鬼鮫が目を開いた。

 「やっと」

 つぶやかれた声に鬼鮫を見上げる。

 「あの時の蹴りの借りが返せそうですね」

 にやりとゆがめられた口元に水蓮の記憶が手繰り寄せられる。

 

 術で鬼鮫と同一の人物を作り出してのガイ班との戦闘…

 

 「水蓮」

 思いがけず鬼鮫に声をかけられ、びくりと体が揺れる。

 「なに?」

 それでも平静を装い地を蹴って隣に身を下ろす。

 「少し回復してもらえますか。ちょっとチャクラを消費する術を使うのでね」

 鬼鮫がそんな事を言うのは珍しい。

 それほど『あの術』は消費が激しいのだろう。

 水蓮はうなづき鬼鮫の肩に手を置きチャクラを注ぐ。

 少しの回復で鬼鮫は水蓮のその手を止め、再び意識を集中しだした。

 その少し後、今度はイタチが目を開いた。

 水蓮はすでにイタチの背中に手を当てていた。

 

 イタチはカカシ班との戦闘…

 

 その光景を浮かべ、水蓮はわかっていながらも「イタチも?」と尋ねる。

 「ああ。頼む」

 そう言ってほんの少し笑みを浮かべたイタチにうなづきを返し、水蓮はチャクラを注ぐ。

 ほどなくして、イタチは目を閉じ術に意識を向けた。

 水蓮はそんなイタチに絶えずチャクラを送り続けた。

 

 一度回復したイタチのチャクラが術に消費されて一気に失われてゆく。 

 

 それを水蓮が即座に埋めてゆく。

 

 尾獣の封印にはかなりのチャクラが必要であろうということは容易に想像できる。

 その上特別な術の使用。

 今のイタチにはかなりの負荷がかかる。

 

 少しでも和らげば…

 

 水蓮はイタチのそばに寄り添い続けた。

 

 

 30分足らずの時間だっただろうか。

 イタチの口端が少し笑みに持ち上げられた。

 それを合図にしたかのように、鬼鮫が目を開いた。

 「そちらも終わったようですね」

 イタチは口元の笑みをスッと消し去り、ゆっくりと目を開く。

 「ああ…。チャクラ切れだ。だが、足止めももう十分だろう」

 背中合わせに位置している鬼鮫にほんの少し振り返り、イタチは自分の背にもたれて動かない水蓮を目に留めた。

 「寝ているのか…」

 静かな寝息が聞こえる。

 術に入ってからずっと水蓮のチャクラを感じていたイタチは、スッと目を細めた。

 「無理をさせたな…」

 「まぁ、いつもの事ですよ。事あなたに関してはね」

 鬼鮫が背を向けたまま笑う。

 「しかし、それでは見張りの意味がないですね」

 ため息を交えたその声に、今度はイタチが小さく笑む。

 「いや、そうでもないさ」

 向けられた視線の先。やや離れた岩の上には水蓮の影分身が立っていた。

 鬼鮫もそれを目に留め「クク」と面白そうに笑った。

 「ずいぶんと器用になった物だ」

 眠りながら影分身を維持するにはコツがいる。

 知らぬ間にそれを身に着けていた水蓮に、鬼鮫は素直に感心した。

 「そうだな…」

 逆にイタチはどんどん新たな力を身に着ける水蓮に複雑な心境だった。

 そうするたびに、水蓮は深みに入って行く。

 引き返せなくなってゆくのだ。

 

 いや…今更か…

 

 そんなことを思うイタチに、鬼鮫が背を向けたままで問いかけた。

 「あなたは、彼女をどこまで(・・・・)連れてゆくつもりですか」

 何かを含ませたその物言いに、イタチは無言を返して目を閉じた。

 その様子に、何も返ってこぬと悟った鬼鮫もまた、無言で目を閉じる。

 

 背中に水蓮のぬくもりを感じながらイタチは思う。

 

 たとえ水蓮が引き返そうとしても、自分はもうそれを許さないだろう…

 

 何かが水蓮を引き離そうとしたならば、無理やりさらってでも連れてゆくだろう…

 

 最期のあの場所まで…

 

 それに、水蓮は決して引き返そうとはしない。自分のこの手を決して離さない。

 

 それはイタチの中にある確信。

 

 絶えず強く感じる水蓮の想いの確かさ。

 

 

 力を身につければ引き返せなくなるなど…

 

 

 「今更だな」

 

 つぶやかれたその言葉に、鬼鮫の体がピクリと揺れた。

 

 「そうですね」

 

 冷たい風の中に二人のつぶやきが溶けてゆく。

 

 それを最後に、二人は口を閉ざした。




いつもありがとうございます☆

あぁ…。いよいよ重なったしまいました…原作二部と…(^_^;)
書きながらドキドキします。いろんな意味で。
基本的には原作の流れをくみながら進めていきたいと思っていますが、そんな中でも原作に描かれていない場面を想像しながら書きたいなと思っているので、原作のすべてのイベントは深く出てこないかもしれません(>_<)
心配なのは時系列(というのでしょうか)
原作ではstoryからstoryの間が何日間隔なのかが厳密に描かれていないので、多少見解のずれが生じるかと思いますが、何卒ご了承ください(T_T)
今後もオリジナルストーリーを中心に進んでいきそうな感じがしますが、いい具合に原作イベントを何とかクロスさせていきたいと思います!(できるのか…)

いつも本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします(^○^)
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