ただ君に片想いをしていよう。   作:三三一体

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あの授業が本日最後の授業だった事と僕が帰宅部だった事も相まって古典教師の有難い御説教を長時間受け続け疲弊した僕に校門を出た途端、冷たく乾いた風が襲って来る。

何時もはよく一緒に居る二人と三人で帰ることが多く枯葉の積もった歩道が妙に寂しく感じる。

 

『お前が授業中に居眠りをするなんて珍しい事だ、段々慣れて来れている感じはするし無理はするなよ』

 

御説教の最後に言われた言葉が胸に残る。

SAO生還者、巷ではそんな風に呼ばれているらしい僕達は当時学生だった者は殆どが政府の勧める学校に入学したが例外は居る、まあ、僕もその例外の一人なんだが。

顔が現実と同じ侭デスゲームに興じてきたあの時間は出会いも有れば別れも有り、良い事も在れば悪い事も多く在った知った顔を見ると逝った仲間達の顔が浮かんできて辛い、都合が悪い、誰々に会いたく無い、理由は様々だがその例外達は政府に勧められた学校に入学する事は無く元々居た学校に編入したり入学し直したりする、僕みたいに。

 

遅れを取り戻す為に勉強に励む日々は辛くもあったが戻って来れたんだと実感出来る日々だった。

 

結局僕はあの日PoHをゲームオーバーにする事が出来なかった、奴の左腕を斬り飛ばし首を刈る直前情報を受けた攻略組達が僕達が殺し合っていた場所に乱入して来た為、あいつを…PoH取り逃した。

ポータルで牢獄に送られた僕にはPoHがその後どうなったか知る事は出来なかったが潔くゲームオーバーになっている事を切に願う、あのゲームからも現実からも永遠に退場していてくれると嬉しい。

 

そう思いながら今日の夕飯の為ゲームセンターの隣にあるスーパーに向かうと同じ学校の制服を着た女子が路地に引っ張り込まれるのが視界の端に映る。

 

引っ張られた方の女子に見覚えを感じ、もしそうなら彼女にとって嫌な事になりそうだと商店街からは見通せない路地の奥の方まで付いて行くと案の定と言うべきか、お決まりに近い場面に遭遇した。

 

「わり、朝田。あたしらカラオケで歌いまくってたらさぁ、電車代無くなっちゃったぁ。明日返すからさ、こんだけ貸して」

 

セルフレームの眼鏡に白いマフラー、落ち着いた顔立ちから路地に引っ張られて行った女子は矢張り朝田さんだったらしい、説教が長引いてしまった事が悔やまれる。

朝田さんを路地に連れ込んだ三人、その一人のある種の捕食昆虫めいた印象を与える女子が一本の指を立てる。

一万円寄越せと言う意味らしい、ふざけた話だ。

 

「そんなに持ってるわけない」

 

「じゃあ、下ろしてきて」

 

様子を伺っていたが割り込んだ方が良いだろうと動こうとした僕の肩を後ろから伸びた手が掴む。

突然の事に声が出そうになったが今は目立つべきではないと咄嗟に抑える。

 

「こっちです!お巡りさん、早く!!」

 

若い男の声、だが聞き慣れた声に肩を掴んだのが誰なのか察し安堵の息を漏らす。

素晴らしいスピードでアーケードの人波に紛れてたちまち消え去った三人組を見送りながら声を上げた痩せた小柄な少年 新川恭二と一緒に朝田さんの方に向かう。

 

「大丈夫だった、朝田さん?」

 

「大丈夫、有難う。新川君、あれ?一宮君も居たの?先生に説教を受けに連れて行かれたって聞いたけど。ーー警察の人は?」

 

「出任せだよ。よくドラマや漫画であるじゃない。一宮とは其処であってさ、一度やってみたかったんだ、上手く行ってよかった」

「………」

 

キャップ越しに頭を掻きながら笑う信川に少々呆れながら短く首を振った朝田さん、毎度の事ながらよく見る光景だ。中々に似合う二人を見守りながらホッコリすると同時にチクッとくる胸の痛みを軽く無視して僕も話に加わる。

 

近くで見せられるその様に友人としては嬉しく思いながら自分自身難儀な片想いだと気付かれないように小さく溜息を吐いた。

 

 

「聞いたよ、一昨日の話。大活躍だったんだって?」

 

いい香りのするミルクティーのカップを両手で包む朝田さんに何処か暖かい気持ちになりながら、自分もコーヒー香りを楽しむ。

 

「ミニガン使いの《ベヒモス》の話ですよね。確かにあれは驚きました。」

 

一昨日で朝田さん関連で言うとその話だろうと加わってみると正解だったらしい、謙遜する朝田さんだが凄い事に変わりは無い。

 

「凄いことだよ。《ベヒモス》は、今まで集団戦で死んだ事が無いって言われてたんだからさ、一宮もこの前蜂の巣にされて居たらしいしね」

 

そう言って此方に微笑んでくる信川に少しばかりムッとする。

 

「仕方ないだろあいつと僕じゃ相性が悪かったんだ、流石にあの弾幕じゃ防ぎきれない。」

「流石のリアルチート一宮もあの密度の弾幕は斬り落としきれないか、《バレット・オブ・バレッツ》のランキングで見たことないから知らなかったけど有名だったんだあの人。」

「リアルチートって、あんまり言われたくないんだけど。最近変な異名も付けられたしそれに、それを言うなら朝田さんのヘカートⅡだって反則級だよ」

「使う方にしてみれば、其れなりに色々苦労はあるのよ」

「ちぇ、全く二人してゼイタクな悩みだなあ。…で、次のBoBはどうするの?」

「出るよ、勿論。前回二十位までに入ったプレイヤーのデータは殆どそろったらね。今度はヘカートを持っていくつもり。次こそは、全員…じゃない、上位入賞を狙ってみるよ」

 

朝田さんの何処か決意の籠った雰囲気に少しばかり場が固まるがそんな朝田さんに信川はどこか眩しそうに眼を細める。まるでそんな昏い雰囲気の彼女に憧れるように。

そんな信川と朝田さんを僕はただ見ていた、信川が声を発するその時まで。

 




信川君、オリ主登場により少しばかり早く朝田さん救出。
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