【完結】DOD小説詰め合わせ   作:飛沫

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寝床(カイムとアンヘル)

女神フリアエを奪還するべく進軍を始めた数日後の夜、カイムは天幕の中で武器の手入れをしていた。

周りに建てられているそれらと比べれば、かなり控え目な大きさだが、いち傭兵部隊を治める者として個人で使用出来た。

その事を考慮すれば、カイムは一人でそれなりの面積を使用していた。

本人がその事を理解しているかは定かではないが。

 

「……」

 

カイムは布で、手にした武器の染み着いた汚れを丁寧に拭き取っていく。

同時に欠けや刃こぼれが無いか確認も怠らない。

それら全てが終わった武器は隣に積み上げられ、段々と高くなっていく。

そして、最後に鉄塊を手にし、磨き終えた時。

カイムの横にはうず高く積まれた武器の小山が出来ていた。

 

*  *  *

 

「……」

 

今にも崩れそうな山だが、カイムは気にした風もなく、眠る時に掛ける毛布を探していた。が、見つけた先は運悪く小山の下。

力任せに引っ張ると、音を発てて山が崩れていく。

 

天幕の中はちょっとした惨事となっていた。

大小様々な武器が散乱し、寝床は愚か足の踏み場も見つからない。

その有り様にカイムは小さく息を吐くと、とりあえず寝場所だけでも確保すべく武器へと手を伸ばしかけたが。

先程の光景を思い出した。

武器の小山。

自分の寝床を作るには彼処まではいかなくとも、やはりある程度の高さまで散らばっている武器を積み重ねる必要がある。

何時崩れるか解らない物を目の前にして眠ることが出来るのか。

 

――無理だな。

 

直ぐに決断を下したカイム行動は早かった。

鎧を脱ぎ持っていた毛布を肩に掛けると、別の寝場所を探すべく、外へと出掛けたのだ。

 

*  *  *

 

空は晴れていた。

月の光が届く範囲には雲はなく、雨の降る心配は無い。

それを確認すると、カイムは適当な場所は無いかと辺りを見回す。

 

元より兵士達の所で眠るつもりは無かった。

行った所で眠れる空間が在るとは限らないし、行けば間違いなく兵士達は自分に気を使い、満足に眠り事が出来なくなるだろう。

睡眠不足で進軍出来ない、なんて事はないだろうが進行や戦に不利が生じそうな極力避けたかった。

 

だから、幹の広い樹を見つけたら其処に背中を預けて眠るつもりだった。

 

「何だカイム、まだ起きておったのか?」

 

竜に呼び止められるまでは。

 

*  *  *

 

「もう遅いぞ。見回りでも」

 

――物が多すぎて寝る場所が無いんだ。

 

「何?」

 

カイムの思念に竜は僅かに首を持ち上げた。

そのまま天幕へと首を向けて中を確認すると。

 

「なんと、まぁ」

 

呆れた様な感心した様な声が竜の口から漏れてくる。

 

「使わない物も中にはあるだろう? お主の部下にでもくれてやったらどうだ?」

 

――呪い付きの武器をアイツらが使いこなせると思うか?

「……なら明日からでも無闇に拾ってくるのを控えることだな」

 

――考えておこう。

 

返答は直ぐにきたが、まるで条件反射のような早さに、竜は武器の収集を止めるつもりはさらさら無いのだなと確信した。

そして天幕の中で人知れず溜め息を溢していると。

後ろ脚に暖かい『何か』が触れてきた。

 

「?」

 

不思議に思い天幕から首を引き抜くと、温もりの正体はいつの間にか其処に移動したカイムだった。

何をしているのか見つめていると、竜の視線等気にしていないかのように擦ったり軽く押したりと好き勝手をしている。行為の意図が掴めずに見守っていると、カイムと目が合う。

 

――決めた。

 

「……何をだ」

 

つくづく主語を抜かす男だ、と思いながら訊ねると、返ってきた答えは。

 

――俺も此処で寝る。

 

と言う答えだった。

 

*  *  *

 

予想もしていなかった言葉に竜は固まっていたが、構わずカイムは続ける。

 

――樹の下で、と考えていたがお前の傍なら奇襲が来ても直ぐに対応出来そうだ。それに暖かい。外で眠るには丁度いい。

 

「……我に潰されるという心配はしていないのか?」

 

他にも言いたい事は頭の中に山のようにあったが、言葉に出来たの此が唯一だった。

 

――俺が死んだらお前も死ぬのだろう? なら気を付けてくれ。何、直ぐに慣れるさ。

 

問いにカイムは事も無げに返すと、用件は終わったとばかりに竜の脚を枕にして体を丸くし、眠る体制を取る。

一方竜は先程のカイムの言葉から己を寝床にするのが今回だけではない意図を知り、再び溜め息を着いた。

そんな竜の悩みを他所に、やがて、規則正しい寝息が聞こえてくる。

 

「やれやれ……」

 

譲らない事といい、直ぐに眠れる事といい、まるで子供だな、と苦笑する。

 

(成る程、ならば我が折れてやるのが道理か)

 

そう納得すると、尾でカイムの身体を抱くように包み込み、竜もゆっくりと瞼を閉じた。

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