そういえば、それは小学校の時だった。
夜ふと目がさめる。
「...んん、おといれ....」
眠い目をこすりながら布団をでると、白いゴミ箱が目に入った。
夏休みの宿題で出た、この夏の思い出を書いてくる様にと渡された画用紙。
両親と行った江ノ島の絵が、ビリビリに破かれて捨てられていた。
ーーーーーーー
そこは、まだ暑さの残る9月末。
目鼻立ちの良い顔に、胸元のあいたスーツ。
キツイ香水をまとい歩くその女はこの夜の街に似合う。
男達は派手な女に卑しく振り返る。
これはこの女の日常。
扉をあけると、目当ての男が立っていた。
「おせぇよ、さくら」
『何時に待ち合わせだなんて決めてないわ?』
「俺は女に待たされるのが一番嫌いなんだよ」
『そう、私もよ』
男は深くため息をつきながら、いつもの席に女をエスコートする。
席までの道を歩く女に、店の男やその女が彼女を見送る。
それを横目に席に着くと、長い脚を組みタバコに火をつけた。
『この店は毎度ブスしかいないのね』
「さくら、お前は本当に顔は綺麗なのに口が悪いな」
『ふふっ、だって本当のことじゃない』
「例えそうだとしても、そういうのあまり言うもんじゃないよ」
『……』
隣に座る男に、女はその綺麗な顔を微笑ませながら覗き込ませる。
『怒ってるの?尚也』
「……」
『怒らないで?』
女は尚也の耳元で甘く囁き甘噛みした。
「…っ、さくら」
『なぁに?』
「今日こそは店終わった後、俺といてくれるだろ?」
『…嫌よ』
「もうそろそろ俺の気持ちに応えてくれてもいいだろ?」
『…考えとくわ』
「いつもそうはぐらかすじゃねぇか、弄ぶのもいい加減にしてくれ」
『……』
女は静かにタバコを消すと鞄を手にスッと立ち上がる。
『帰る』
「ええ!?無理だよ困る!」
『あんたの都合なんか関係ないわ?』
そういうと、颯爽と出口に向かいタクシーに乗り込む。
『信号を左に曲がって下さい、後は道なりで』
後ろから男が引き止めようと必死においかけてきていたのが見えてクスっと笑い、鞄から携帯を手にする。
『…もしもし?』
_はいはい!もしもし?_
『今、尚也の所から帰るところよ』
_あら?さっき行ったばかりなんじゃないの?
『そうなのだけど、もう"用済み"になってしまったの』
_さくら、今回は結構手間取ったじゃない?一年でしょ?_
『そうね、少し手間取ったけど貰えるものは貰ったし、もう尚也は終わりよ』
_そう、そしたらもうバカな遊びはやめにしたら?時間の無駄よ?_
『……』
_もしもし?聞いてる?_
『つまんないこと言わないでくれない?』
_もう、さくらの為を思って言ってんじゃんよー_
『…つまんない、切るわね』
_あ!ちょっとさくらっ_
『……どいつもこいつも』
ため息をつきながら、タクシーの窓に頭を預ける。
この街は夜でも明るくて眠りづらさを感じながら瞼をとじた。
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朝、母親にその絵を見せた。
不器用にセロハンテープで繋ぎとめられた絵を見た母親は言葉を失くしていた。
その絵の無残さと、悲しい気持ちは、大人になった今でも鮮明に覚えている。