俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

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第23話

 

「三雲くん!」

 

伊佐が追い付いた。

 

「! 伊佐、無事か?」

 

「うん。木崎さん達が抑えてくれてる」

 

「よし、本部に急ごう」

 

修達は本部に急いだ。

 

 

ボーダー基地東部。風間隊vsエネドラ。菊地原のサイドエフェクトである強化聴覚を共有して攻撃を躱していた。

 

(こいつら……目で見てるんじゃねーな。音か振動か……)

 

エネドラはそう考えると、そこら中から音を立たせた。至る所からゴボッ、ガリガリ、ザクッ、ギギ…、ミシミシッと雑音が混じる。

 

『そこら中から音が……!』

 

『流石に「音」に気付いたようだな』

 

『ふーん……』

 

それでも3人とも慌てた様子はない。

 

『原始人レベルですね』

 

菊地原はそう言うと音を聞き分けて言った。

 

『右上と左の上下、それ以外は無視していいです』

 

そう言われた所から攻撃が飛んで来て、風間も菊地原も歌川も回避。

 

「玄界の猿が……‼︎」

 

イラついたエネドラは怒鳴り散らすと、フル攻撃を放った。

 

「あ〜〜〜面倒くせえ‼︎雑魚に付き合うのはもう終わりだ‼︎」

 

ゴバッと液状化のブレードが伸びて、ビルを丸ごと破壊した。

 

「フルパワーで八つ裂きにしてやる‼︎」

 

そう吠えた直後、エネドラの首が飛んだ。カメレオンで背後に回った風間が切り落としたのだ。

だが、切り落とした首がゴポッと液体になり、ブレードが出て来た。

 

「⁉︎」

 

それでも風間は避けて距離を取り、頭の中で分析をする。

 

(……なるほど、ブレードだけじゃないということか。こいつのトリガーは全身が……)

 

「『全身が液体になれんのか』と思ったろ?残念ハズレだ」

 

「⁉︎」

 

エネドラがそう言った直後、風間が口からトリオンを吐き出した。

 

「! 風間さん!」

 

「あーあ……このやり方つまんねーんだよな。いまいちスカッとしねー」

 

『なんだ……⁉︎攻撃を食らってないはず……三上!』

 

『わかりません!原因は不明ですが、風間さんのトリオン体の内部に敵のブレードが発生しています!』

 

『内部……⁉︎』

 

そして、風間の身体からブレードが飛び出て、緊急脱出した。

 

 

ボーダー基地付近。No.4アタッカーの村上がラービット三体を相手にしていた。

 

(色がつくと攻撃方法が変化するのか。けど、俺がこいつらの相手をしてる間は、その分他が楽になるはず。倒せなくとも、1秒でも長く引き付けてやる)

 

そう思いながらレイガストを構えたとき、ズパッと一体のラービットが真っ二つになった。

 

「⁉︎」

 

「よう、村上。俺、忍田さんにこいつら斬ってこいって言われてんだ。もらっていいか?」

 

「どうぞ、太刀川さん」

 

直後、旋空孤月によってその場のラービットは殲滅した。

 

「国近、新型撃破数ランキングはどうなっている?」

 

『風間さん三体、伊佐くん三体、嵐山さん二体、B級合同二体、小南一体、C級一体』

 

「C級?」

 

『トリオン怪獣ちゃんだね〜、ボーダー基地本部の壁に穴を開けた子。ちなみに太刀川さんは今ので三体でトップタイだね』

 

「俺のから二匹村上につけとけ。結構ダメージ入ってた」

 

『了解〜』

 

「さて、次はどこに行きゃいいんだ?」

 

すると、忍田から通信が入った。

 

『慶は東部地区に向かえ。風間隊に変わってトリオン兵を排除しろ。C級と市民を守るんだ。人型がC級や市民を狙って市街へ向かった場合は交戦を許可する』

 

「太刀川了解」

 

そう返事しながらと別な事を考えていた。

 

(来い来い黒トリガー来い)

 

(「黒トリガー来い」って思ってるなこの人は……)

 

 

本部基地付近南西。

 

「おー、頑張ってるな遊真」

 

迅が遊真と嵐山と時枝の所にやって来た。

 

「あっ」

 

「迅!お前西部地区の担当だったんじゃないのか?」

 

「向こうは天羽に頼んで来た」

 

で、迅は遊真の頭の上に手を置いた。

 

「嵐山、悪いんだけどこいつちょっと借りていいか」

 

「それは構わないが、お前が動くってことはこの先何かが起こるのか?」

 

「千佳ちゃんと賢介が心配なんだ。今、ちょうど未来の分かれ道っぽくてな。最善から最悪まで不確定な未来がいくつも見える」

 

「オサムのとこにはこなみ先輩が行ったんじゃないの?こなみ先輩が負けるような相手がいるってこと?」

 

「小南が負けなかったとしても、最悪になることはある。未来を決めるのは勝敗だけじゃないからな」

 

「最悪な未来だとどうなんの?チカがさらわれるとか?」

 

「いや、それは最悪の一歩手前だ」

 

「………⁉︎」

 

「最悪の未来では、賢介が捕まる」

 

その言葉に、嵐山も遊真も声を上げた。

 

「伊佐くんが……⁉︎」

 

「ケンスケが捕まる……?」

 

「いやいや、まだ決まったわけじゃない。最悪の場合そうなるって話だ。それをさせないために俺たちが行くんだ」

 

「ふむ」

 

「遊真を連れてって、城戸司令とか大丈夫なんですか?」

 

「さっき本部で話したよ。警戒区域を出なきゃOKだそうだ」

 

「警戒区域でるギリギリまで行って、そこでオサムたちを待つってこと?」

 

「いや、俺たちと合流する頃には、もう警戒区域まで入ってるはずだ。そこまでレイジさんたちが連れてきてくれる」

 

 

警戒区域外。レイジと烏丸の弾丸がヒュースに襲い掛かるも跳ね返される。

 

「無駄だ」

 

すると、烏丸が弾を切り替えた。弾道が変化し、各方面から襲い掛かる。

 

「⁉︎」

 

磁石の盾を崩し、広範囲に広げた。その背後から小南が斬りかかった。それをガードするヴィザ翁。

 

「ほっほ、元気なお嬢さんだ」

 

「っ」

 

後ろに下がる小南。

 

「ふむ、中々勘もいい」

 

(何……?今の……こいつのトリガー、ヤバイ感じがする)

 

「ヒュース殿、手練れと無理に戦う必要はない。この方達は私が引き受けます。先に向かって下さい」

 

「分散してしまってよろしいのですか?」

 

「私もすぐに片付けて追い付きます。金の雛鳥に逃げられるのは御免こうむりたい。敵の足を止めてくれればいいですし、なんなら捉えて来てくれて構わない」

 

「分かりました」

 

直後、ヒュースの背中から磁力の羽根が生え、磁石の道を作って飛んだ。

 

「飛んだ……⁉︎」

 

「小南!」

 

レイジに命令され、小南はヒュースに斬りかかった。その直後だ。

 

「『星の杖』」

 

街に斬撃が走り、周囲の建物を粉々に崩した。偶々回避に成功し、レイジも烏丸も小南も無事だったが、ヒュースは行ってしまった。

 

「クッ……この威力、黒トリガーか」

 

「どうします?黒トリガーだとすると、3人がかりで叩かないとキツくないっすか?」

 

そう聞いた直後、さらにトリオン兵が建物を壊して街を侵攻して来た。

 

「………!」

 

「敵地での戦闘では、やはりこれが効く。さぁ、どうされますかな?玄界の戦士たちよ」

 

「………仕方ないか。小南、トリオン兵を片付けろ」

 

「………了解」

 

「京介は俺と黒トリガーを止めるぞ」

 

「あっちの人型はいいんすか?」

 

「どちらにしろあの速さじゃ追い付けない。あいつは、伊佐に任せるしかない。何より、この黒トリガーは俺だけじゃ止められない」

 

「了解っす」

 

小南はトリオン兵の駆除に向かい、烏丸とレイジは臨戦態勢に入った。

 

「おや、いいのですかな?ヒュース殿を追わなくて」

 

「いい。俺たち以外にも優秀な奴はたくさんいる」

 

「ほう……しかし、こちらには、もう一手ある」

 

「⁉︎」

 

 

その頃、伊佐と修。

 

「こちら伊佐。南西部のC級を基地に連れて行きます」

 

それだけ伝えてから、逃走を続けてると、「あっ」と伊佐が声を漏らした。

 

「ハルちゃん。何してんの?」

 

「! ケンくん⁉︎」

 

「伊佐、知り合いか?」

 

「うん。彼女」

 

「へ?か、彼女?」

 

修を無視して伊佐は聞いた。

 

「何してんのこんな所で」

 

「今日は学校だったの。オペレーターの私じゃ本部に着く前にトリオン兵に襲われると思って避難誘導に協力してたんだよ」

 

「………そっか。怪我とかはしてないよね?」

 

「うん。さっきちょっと擦りむいたくらい」

 

そんな話をしてる時だ。千佳がピクッと反応した。

 

「!」

 

「? どうした、千佳?」

 

修が聞いた直後だ。新たな門が開き、ラービットがさらに6体現れた。

 

「!」

 

「三雲くん!雨取さんとハルちゃんを守って!」

 

「わ、分かった!」

 

言うと、伊佐はハンドガンを構える。

 

「伊佐くん!」

 

「どうしたの雨取さん?」

 

「一人、ものすごい勢いで迫って来る!」

 

「⁉︎」

 

千佳の視線の先を見ると、ヒュースが飛んで来ていた。

 

「……本部長、こちら伊佐です。人型と新型六体に挟まれました。初任務の新人にこんな仕事やらせるブラック企業なんて聞いてませんよ」

 

『! 了解した。付近の隊員に可能な限り援護に向かわせる』

 

ボヤきながらも、伊佐は構えた。

 

 

旧・三門市立大学。そこでランバネインは堂々と歩いていた。

 

(不用意に撃ってこなくなったか。思ったより我慢を知っているな。定石通り市街地を攻撃して誘い出すか、いっそヴィザ翁たちに加勢するか……)

 

そんなことを考えてる所を、上から見てる3人がいた。

 

「よねやん先輩、どうすんの?本部長は玉狛を援護しろって言ってるよ」

 

「どーすっかなー。もうこっち来ちまったもんなー」

 

「放っといたら玉狛の方行くかもしんねーし、ここであいつ倒しとく方がいいだろ」

 

「だよな、賛成」

 

緑川、出水、米屋がランバネインを見下ろしていた。

 

 


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