『諏訪隊長緊急脱出!穂苅隊員が逃さずに狙撃した!』
『伊佐隊員が笹森を落としたのがデカイですね。完全に力技でしたが』
『うっ……ヤなこと思い出した……』
解説する東と嫌そうな顔をする緑川。
『続いて伊佐隊員対荒船隊長ですが、どちらに分があると思いますか?』
『荒船は少し前までバリバリのアタッカーでしたからね。ガンナーの伊佐隊員の方が分は悪いと思います』
『けど、笹森先輩の時、普通に近距離戦で勝ってたからね。まだ分からないよ』
「………実際、どっちが強いと思う?」
チラッと綾辻が出水を見た。
「いやーどうだろうな。さっきのは実際、無名のB級相手で笹森が油断してたってのもあるし」
「にしても背負い投げはヤバくね?」
「それなー。まぁ完全にアタッカーの間合いだし、伊佐が何か仕掛けようにも仕掛ける隙がないよな」
一方、穂苅はバッグワームで身を隠しつつ、荒船を援護できる場所に向かった。
*
荒船の攻撃を避けて、ズルズルと退がる伊佐。
(反撃が来ない……。これだけ落ち着いて捌いてれば、反撃出来ないわけじゃないだろ。となると、誘い込まれてる?)
直後、荒船にビュオッとものすごい勢いで迫って来る影があった。ギリギリ孤月でガードする荒船。遊真が伊佐の隣に立った。
「悪い、仕留め損ねた」
「いや、途中から気付いてたっぽいし、仕方ないよ」
「………チッ」
二人を見て舌打ちする荒船。直後、パシュッと高台が光った。
「エスクード」
穂苅の狙撃を伊佐がガードした。
「! マジか……!」
そして、穂苅の狙撃位置を千佳の砲撃がブッ壊した。
「ッ⁉︎」
慌てて飛び降りる穂刈。空中で身動きの取れなくなった穂苅を、カメレオンで隠れていた修のアステロイドが撃ち抜いた。
『よくやった千佳。後は隠れてろ!』
『了解』
「さて、後は俺たちの仕事だな」
「援護するよ」
荒船に斬りかかる遊真。後ろから伊佐がアステロイドで援護する。だが、二人がかりに勝てるはずもなく、程なくして、遊真が荒船を落とした。
*
試合と解説が終わり、修、遊真、千佳、伊佐、宇佐美は部屋を出た。すると、米屋、緑川、古寺、国近、綾辻、出水がやって来た。
「うぃーす」
「おつかれ〜」
「ケンくん!お疲れー!」
米屋、緑川、綾辻と挨拶した。
「おー、ミドリカワ」
「米屋先輩」
「ハールちゃんっ。見てたの?」
「当たり前じゃん。ケンくんの試合のためなら学校の試験でも休むよ」
「ごめん、そんな事したら嬉しくても怒る。自分の将来を甘く見るな」
「………なんか怒られちゃった」
ゲンナリと肩を落とす綾辻。その横で、緑川が遊真に言った。
「良い感じだったじゃん、グラスホッパー」
「おかげさまで」
「勝負する約束忘れないでよ」
「OKOK、なんなら今からやるか?」
「おっ、いいね〜!」
「ちょっと個人ランク戦してくる。オサムたちは先に帰ってていいよ」
そのまま空閑と緑川はランク戦の会場に向かった。
「じゃ、俺たちも行くぞ」
出水が伊佐に声を掛ける。
「? 何処にですか?」
「お前のお祝いだよ。勝利おめでとうって奴。食いに行くぞ」
「マジですか?」
「うんうん。だから早く行こ〜」
伊佐も綾辻、出水、国近に連れて行かれた。
*
焼肉屋。
「では、玉狛第二の勝利を祝して!」
「「「「かんぱ〜い!」」」」
出水の音頭で、四人はグラスをぶつけ、それぞれの飲み物を飲んだ。
プハァーっと男前に息を吐いて、国近が伊佐に聞いた。
「いやーそれにしても、すごかったね。あの作戦誰が考えたの?」
「三雲くん」
「へ?賢介くんじゃないの?」
「俺は今回は何も口出してませんよ。全部三雲くんと空閑くんと雨取さんが考えてました」
「そういうのは参加した方がいいんじゃないのか?」
そう聞いたのは肉を焼いてる出水だ。
「しましたよ。三雲くんが頑張りすぎてたので、気分転換に四人でサイクリング行ったり」
「へぇ……」
「その途中で烏丸さんにお寿司もらいました。美味しかった」
「いーなー。てか、意外と仲良くやってるじゃん」
綾辻がホッとしたように言った。
「おい、焼けたぞ伊佐。食え」
「あ、どーも」
焼きタレが注がれた小皿に、出水が肉を置く。
「あの、お先にいただいても?」
「どうぞどうぞ」
「歳下なんだから気にしないの」
国近、綾辻に言われて、伊佐は肉を一口食べた。
「どう?」
「めっちゃ美味しいです」
「おお!じゃあ俺ももらうわ」
自分で焼いた肉を出水は一口食べる。
「ほんとだ。美味ぇ」
「でも、次はもっと厳しいよ。ケンくん」
「厳しい、とは?」
「次の2チームは那須隊と鈴鳴第一だったよね?鈴鳴の方にはナンバー4アタッカーの村上さんがいる」
「ナンバー4?」
「そうそう。あの人はヤバいぞ。特にサイドエフェクトがな」
出水が肉を頬張りながら説明した。
「調べりゃ分かることだから言うが、あの人のサイドエフェクトは『強化睡眠記憶』。村上さんは、一眠りするだけで学んだことをほぼ100%自分の経験に反映できる」
「ふーん……。なるほど。期末試験とか勉強しなくても点取れる人ね」
「えらくわかりやすい例えだな」
「まぁ俺も勉強しなくても取れますけどね」
「………綾辻、伊佐ってそんな頭良いの?」
「うん。ムカつくほど」
「………羨ましいぜ畜生」
伊佐に恨みがましいような視線を送る出水。
「まぁ、とにかく村上って人のことは分かりました。那須隊は?」
「自分で調べろよ。それも含めてランク戦だろ」
「聞き込み調査ってことで」
「………仕方ねぇな」
「教えちゃうの出水くん⁉︎」
そんな事をしながら、四人で楽しく焼肉を食べた。
ちなみに、夜の営みは結局綾辻がチキってやらなかった。