伊佐は訓練を終えた修を出水の所へ案内した後、綾辻と帰宅した。
自宅でゴロンと寝転がって、3DSをつけた。
「帰ってすぐゲームは良くないよー」
「作戦室でもゲームのハルちゃんに言われたかない」
「それはケンくんが誘って来たからでしょ?」
「乗る方も悪い」
「むー。まぁ、仕事終わったから別にいいけどさ」
「で、なんだっけ。結局紅玉出たんだっけ?」
「………まだ」
「よし、出るまでやろうか」
「ねぇ、三雲くんも空閑くんも雨取さんも特訓してるのにケンくんはしなくていいの?」
「うーん、したいにはしたいんだけどね。俺は相手がいないから」
「相手?前にレイジさんに師匠になってもらったーってはしゃいでなかった?」
「レイジさんが唯一使わない武器、それがハンドガン」
「………じ、じゃあ実戦でも積めばいいじゃん!」
「玉狛の方々はみんなあれで忙しい身だしなぁ。他に仲良い人なんてそんな多くないし……。出水さんは三雲くんの特訓で忙しそうだし」
「………じゃあわかった。私が頼んでみるよ!」
「えー、いいよ面倒くさい。そもそも、俺別に強くなりたいとかないし」
「次のケンくんの試合ね、私が実況するの。ケンくんのかっこいいところ見たいなぁ」
「………じゃあ、次勝ったら今度こそ」
「…………」
「…………」
「………わかったよ」
「じゃあ、俺も特訓する」
*
翌日、ボーダー本部。伊佐がいつもの感じで太刀川隊作戦室に入ると、太刀川が待っていた。
「お、来たな伊佐」
「? 太刀川さん?なんでここに?」
「いやここ俺の作戦室だし。じゃ、行くか」
「どこに」
「個人ランク戦」
「…………えっ?」
*
市街地。どういうわけか、太刀川と戦うことになった。
(ハルちゃんの奴、どんだけ大物に声かけてんの)
そんな伊佐の気も知らずに個人戦開始。まずはお互いの姿を探す所から始まった。直後、
「旋空孤月」
建物を斬り裂きながら飛んで来た斬撃に、首をはねられて緊急脱出した。
「………え?」
『おいおい、迂闊すぎだろお前』
太刀川の声が聞こえた。
「す、すみません。孤月の人とは初めてなもんで」
『とりあえず、一人五本ずつって綾辻に聞いてるけど』
「は?一人って……?」
『は?知らんの?他にも色々相手してくれーってきてるぜ。20人くらい』
「…………二本目行きましょうか」
聞こえなかったことにして、二本目。再び市街地に転送された。
*
その後も風間、米屋、緑川、加古、黒江、歌川、木虎というA級ラッシュの後、村上、生駒といった上位アタッカーに、荒船、小荒井、奥寺、王子、笹森、遊真、犬飼、辻……その他諸々と戦闘させられ、人としての機能を一通り失った伊佐は、ラウンジのソファーで寝ていた。
「お疲れ、ケンくん」
「お疲れ、じゃねーよ……つか、途中で空閑くんがいたんですけど。それ以前に知らない人ばかりだったんだけど」
「うん、あまり知り合いいないって言ってたから私がお願いしといた。でもおかしいなぁ、私がお願いしたのは5人だけのはずなんだけど」
「多分、噂が広がったんでしょう」
「それな」
「あ、俺今多分初めてハルちゃんにイラっとした」
「やった!初めてイラっとさせられた!」
その反応に、もはやツッコム術もなかった。
「ちなみに、明日からずーっとお願いしてるから、まぁ、任務ある人は無理だから今日みたいにフルメンバーとはいかないけど、頑張ってね!」
「…………」
ツッコム術もなかった。