俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

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第6話

 

「生身でトリオン兵とって……?」

 

千佳が恐る恐る確認するように尋ねるが、伊佐も遊真も答えなかった。

 

「空閑くん、あの近界民については何か知らない?」

 

「あれはバンダー、捕獲・砲撃用のトリオン兵だ。近距離で戦えば大して強くない、修でも倒せるレベルだ」

 

「修でもって……酷い言いようだね」

 

「それと、これは全部のトリオン兵に言えることだけど、弱点はあの口の中の目みたいな所だ」

 

「………目みたいなところ、であって目じゃないの?」

 

「あそこでものを捉えるのは確かだけど、バンダーの場合はあそこから砲撃が飛んで来るぞ」

 

「砲撃、ね」

 

少し顎に手を当てて考える伊佐。自分の買い物袋の中を見た。中には砂糖、醤油、小麦粉、ねぎ、大根が入っている。

 

「………いけるな」

 

「なんか思い付いのか?」

 

「うん。しかも、今回は捕獲じゃない」

 

そう言うと、伊佐はいつもの無表情で間を置いてから言った。

 

「駆除だ」

 

 

説明の時間はないので、遊真と千佳は伊佐に言われるがまま、準備をした。

遊真はいざという時のために千佳を守り、その千佳は囮役。二人はバンダーの前に出た。

 

「来るぞ、千佳」

 

「うん」

 

直後、二人に向かって砲撃をぶっ放つバンダー。遊真が千佳の手を引いて、走って回避する。

 

「ケンスケが指定した建物って何処だっけ」

 

「もう少し先だったと思う」

 

そのまま二人は真っ直ぐと走り、マンションの中に逃げ込んだ。その二人を追いながらマンションに突っ込むバンダー。

その直後、マンションは大きく爆発した。

 

「っ⁉︎」

 

「な、なんだ⁉︎」

 

遠くで戦っていたボーダー隊員から声が上がった。マンションを通り抜けた遊真と千佳が上を見上げると、マンションが爆発していた。

 

「うおっ、何あれ……。何したんだケンスケ?」

 

「さ、さぁ……?」

 

話してると、伊佐が歩いて来た。

 

「終わったよ。空閑くん、雨取さん」

 

「ケンスケ、何したんだこれは?」

 

「粉塵爆発だよ」

 

「………フンジンバクハツ?」

 

「部屋に小麦粉を充満させて、火をつけると爆発するんだ。トリオン兵の身長はどのくらいか目測で推測して、頭が突っ込みそうな部屋を選んだんだ。あとは、トリオン兵が突撃して、火花でも起こせば爆発するって感じ」

 

「なるほど、分からん」

 

「ま、この爆発を喰らって生きてられる生物なんているはずないから。さて、戻ろう」

 

そう言った時だ。ズシンと後ろから音がした。後ろを見ると、バンダーが立ち上がろうとしていた。

 

「えっ、嘘でしょ……?」

 

「ふむっ……やっぱりか」

 

「…………」

 

倒しきれなかった。伊佐も千佳もバンダーを見上げる。遊真が最終手段のつもりか、いつでもトリガーを起動できるように身構えた。その時だ。

バンダーの口の中の目の様な所に弾丸が突き刺さる。

 

「っ⁉︎」

 

「ボーダーだ。大丈夫か?」

 

そう言いながら降りてきたのはボーダー隊員だ。

 

「お前らがやったのか、これ?」

 

「俺は何もしてないよ。全部、ケンスケの考えた作戦だ」

 

言いながら遊真は伊佐を指した。

 

「そうか。まぁいいや、俺たちは後処理がある。ここは警戒区域だ、お前らはさっさと帰れよ」

 

遊真と伊佐と千佳は警戒区域を出た。

 

 

千佳と遊真と別れ、伊佐は玉狛支部に向かった。

 

「すみませーん」

 

声を掛けると、ニュッと顔を出したのはメガネの少女だ。

 

「………おお、来た。迅さんの言ってた新入りさんだよね?」

 

「伊佐賢介です」

 

「宇佐美栞です。よろしくね。さ、入って入って」

 

言われるがまま、伊佐は玉狛支部に入った。直後、視界に入ったのは変な犬と子供だった。

 

「………?」

 

「むっ、しんいりか……?」

 

「宇佐美さん、これは?」

 

「林藤陽太郎、ここの最古参メンバーの一人だよ」

 

「ふーん……俺は伊佐賢介。よろしくね、陽太郎くん」

 

「うむっ」

 

軽く自己紹介して、伊佐は栞の後に続いた。

 

 


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