俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

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第7話

宇佐美に連れて来られた先は作戦室だった。ここなら色々と説明しやすいとかなんとか。

 

「まずは、入隊おめでとう。スカウトって扱いだから、試験とかは全部免除されるんだ。配属先は玉狛って事でいいんだよね?」

 

「はい。本当は嵐山隊が良かったんですけど、空きがないそうなので……」

 

「ほう?なんで嵐山隊が良かったの?もしかしてファンだったり?」

 

「いや、彼女がいるからです」

 

宇佐美が手に持っていた湯呑みを握り潰した。

 

「………今なんと?」

 

「だから彼女がいるからですよ」

 

「どっち⁉︎」

 

「さぁ、どっちでしょうか」

 

「えー!教えてよー」

 

「嫌ですよ。なんか宇佐美さんって歩くスピーカーって感じしますし」

 

「おぉう……意外と毒舌だね……」

 

こほんと咳払いをして、説明を再開した。

 

「まぁ、とりあえずトリガーの説明するね」

 

言いながら宇佐美はトリガーホルダーの中を開いた。

 

「これが、トリガーホルダーの中身ね。このちっちゃいチップがいわゆる『トリガー』ね。使う人のトリオンをどういう形で表に出すか決めてるの。トリガーは合計8種類までセットできて、攻撃用とか防御用とかを切り替えながら戦うわけ」

 

チップを指差した。

 

「こっち側が利き手用の主トリガー。こっち側が反対の手用の副トリガー。両手で二種類同時に使えるの」

 

「………なるほど」

 

「じゃあまずは、攻撃手用トリガーから見ていこうか」

 

宇佐美は説明を始めた。

 

 

その頃、遊真と千佳は修と合流し、弓手町駅(現在閉鎖中)に来た。

 

「へぇ、オサムとチカは知り合いだったのか」

 

「ああ。いや、その前にお前たちはなんで一緒にいたんだ?」

 

「えっと……橋の下で知り合って……」

 

「自転車を押してもらって川に落ちた」

 

「さっぱりわからん。……まあいい。ひとまずお互いを紹介しておこう」

 

それで、修は眼鏡を直しながら指した。

 

「こっちは雨取千佳。うちの学校の二年生。僕が世話になった先輩の妹だ」

 

「……よろしく」

 

今度は遊真を指す修。

 

「こいつは空閑遊真。最近、うちのクラスに転校してきた。外国育ちで日本についてはまだよく知らない」

 

「どもども」

 

「えっ、修くんと同級生⁉︎じゃあ年上⁉︎ごめんなさい、わたしてっきり年下だと……」

 

「いいよ別に年の差なんて」

 

それで、修は話を進めた。

 

「空閑は近界民について詳しいんだ。千佳が近界民に狙われる理由も知ってるかもしれない」

 

「そっか。遊真くんもボーダーの人なんだ」

 

「う……まあ大体そんなもんだ」

 

「そんなもんのようです」

 

お互いの自己紹介を終えた所で、空閑は自分の考えを話した。

 

「しかし、近界民に狙われる理由なんて、トリオンくらいしか思い浮かばんなー」

 

「トリオン……?」

 

「近界民的にはトリオンの強い人間の方が欲しいだろうから、チカがしつこく狙われてるなら、それだけトリオン能力が高いってことかもな」

 

「トリオン能力って?」

 

「近界民の武器を使うための特殊な力のことだ」

 

「なんなら試しに測ってみるか?なあ、レプリカ」

 

言うと、遊真の指輪からにゅうっとレプリカが出て来た。

 

『そうだな。そうすればはっきりする』

 

「わっ」

 

『はじめまして、チカ。私はレプリカ。ユーマのお目付役だ』

 

「は、はじめまして」

 

レプリカの口からにょろんと、なんか変なのが出て来た。

 

『この測定策でトリオン能力が測れる』

 

「どうぞご利用ください」

 

「う、うん……でもちょっとこわいな……」

 

怖気付く千佳の前に、修が立った。

 

「レプリカ、僕が先に測っていいか?」

 

『了解だ』

 

修はその測定策を握った。

 

『計測完了』

 

出て来たのは新品のバスケットボールの箱の大きさの白いキューブだ。

 

『この立方体はオサムのトリオン能力は視覚化したものだ。立方体の大小がトリオン能力のレベルを表している』

 

「このサイズはどのくらいのレベルなんだ?」

 

「うーん、近界民に狙われるにはこの3倍は欲しいかな」

 

「……別に狙われたいわけじゃない」

 

そこを注意しておいてから、修は千佳の方を見た。

 

「千佳、お前も測ってもらえ。大丈夫だ」

 

「……うん、修くんがそう言うなら……」

 

測定策を握る千佳。

 

『少々時間がかかりそうだ。楽にしていてくれ』

 

「うん」

 

その間、修は遊真に聞いた。

 

「それにしても、近界民に狙われるのがハッキリ分かってるならボーダーに言って助けてもらえばいいじゃん」

 

「……あいつは、ボーダーには頼りたくないらしいんだ。千佳の話によると、近界民に狙われ始めた頃は、まだボーダーの基地もなくて、近界民を誰も知らなかった。だから、助けを求めるあいつの言葉を、誰も本気にしなかった。そんな中、一人だけ真剣に相手をしてくれる友達がいたらしいんだが、ある日突然その友達は行方不明になった。それ以来、人に助けを求めるのがトラウマになったそうだ」

 

「……ふーむ。あれ?俺は巻き込まれていいの?」

 

「お前は近界民だし、巻き込んだのは僕だからいいんだ」

 

「なるほどね。そんでオサムは千佳を助けたくてボーダーに入ったわけか」

 

そんな話をしてると、キィィィンッと音が響いた。

 

『計測、完了だ』

 

千佳の前に現れたキューブは車のキューブと同じくらいの大きさがあった。

 

「……⁉︎」

 

「うおお……!でっけー!オサムの何倍だ?これ!」

 

『尋常ではないな。これほどのトリオン器官はあまり記憶にない。素晴らしい素質だ』

 

「すげーな、近界民に狙われるわけだ」

 

「感心してる場合じゃない」

 

そんな話をしてる時だ。コツッと足音が聞こえた。振り返ると、学ランの男が二人歩いてきた。

 

「動くな、ボーダーだ」

 

現れたのは、三輪隊の二人だった。

 

 

玉狛支部。トリガーの説明を一通り終えた宇佐美。

 

「つまり、攻撃手がスコーピオン、孤月、レイガスト。銃手用がアステロイド、メテオラ、ハウンド、バイパー。狙撃手用がイーグレット、ライトニング、アイビスってわけですね?」

 

「そうだね。それと、防御用トリガーでシールド、エスクード、特殊工作員のスイッチボックス。オプショントリガーで、レーダーから消えるバッグワーム、自分の姿を消せるカメレオン、ジャンプ台のグラスホッパー、姿を瞬間的に移動させるテレポーター、ワイヤーを張るスパイダー、そんなもんかな」

 

「………なるほどね」

 

「ちょっと戦ってみる?」

 

「はい?」

 

「仮想訓練室っていうのがあるからさ」

 

「いいんですか?」

 

「いいよいいよ〜。トリガーはどうする?」

 

「僕はオールラウンダーでいきます。トリガーはメインにハウンド、スコーピオン、バイパー、メテオラ。サブでシールド、バッグワーム、カメレオン、アステロイドでお願いします」

 

「了解了解、合わなかったらまた言ってくれれば調整するよ〜」

 

「ありがとうございます」

 

地下の仮想訓練室に降りた。中はそこそこ広くて、天井も高かった。

 

「……広いな」

 

『トリガーで空間を作ってるんだよ。やろうと思えば仮想の街も作れるよー』

 

スピーカーから音が宇佐美の声が聞こえた。

 

『それで、どうする?』

 

「実戦形式でお願いします。街と、トリオン兵はモールモッド2匹とバンダー1匹で」

 

『えっ?初めてなんでしょ?いいの?』

 

「お願いします」

 

『分かったけど、危ないと思ったら止めるからね』

 

仮想戦闘を開始した。

 

 


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