【完結】衛宮切嗣「僕は、メガガルーラを許さない」   作:吉田さん

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一応本編は完結(=´∀`)人(´∀`=)
思いついた番外編とかは後日に╭( ・ㅂ・)و ̑̑


チャンピオンリーグ

3.

 

 

メガガルーラ。そのポケモンを、衛宮切嗣は決して許さない。

彼もかつては、ポケモンチャンピオンという()()()()()()に憧れを抱いていた。

ただただ純粋に、ポケモンチャンピオンになりたいと。子供が正義の味方(ヒーロー)に憧れるのと同じように夢見ていたのだ。

・・・だが、いつの日だったか。それは突然訪れた。

いつものように、彼はテレビの前で生中継のチャンピオン戦を観戦していた。

そのチャンピオンの名前はワタル。ドラゴンポケモン使いのトレーナーだ。彼はそのトレーナーが、他の子供たち同様に大好きだった。

ドラゴンはかっこいい! そんな感じの理由である。

 

そして、今日もまたチャンピオンのワタルが相手のトレーナーを華麗に倒すのだろう。そう思いながら、切嗣は画面を観ていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『試合終了! 勝者は――――』

 

画面に映ったのはいつものチャンピオンの勝利ではなく。

無名のポケモントレーナーによる、所詮下克上だった。

それを切嗣は、半ば呆然と眺めていた。

 

圧倒的、そういう他ない試合だった。切嗣も言葉だけは聞いたことのある『メガ進化』を巧みに使い。その無名のトレーナーはワタルに勝利した。

それをどこか「嘘だ」と思いながら画面を眺めていた切嗣を。切嗣の隣で同じく試合を観ていた少女――シャーレイが苦笑しながら宥めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の二つ目の転機は、そのシャーレイが関係する。

切嗣の父親たる衛宮矩賢は優秀なポケモントレーナーで、オーキド博士ほどではないにしろ優秀なポケモン研究家だった。

シャーレイはそんな矩賢の弟子のようなものであり、ある日矩賢の机に置いてあった物を見つけてしまう。

 

「これは……」

 

メガ石、そしてガルーラの入ったモンスターボール。

これは矩賢があの日のポケモンリーグの試合を見た後、即時取り寄せたものだった。

シャーレイは将来有望とされるポケモントレーナーである。

そんな彼女はあの日の試合を切嗣以上によく覚えている。

 

「……」

 

そっと、それに手を触れるそして――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャーレイッ!!」

 

「ケリィ……!!」

 

切嗣の目の前にある光景は、この世のものとは思えないほどの地獄だった。

 

「――来ちゃだめ!!」

 

シャーレイが泣き叫びながら、切嗣をその光景から遠ざけようとする。

それは、そうだろう。切嗣にとって、この光景はあまりにも酷だ。

それをなによりも理解しているのは他でもない、この光景を作り出したシャーレイ自身だった。

 

「そんな、そんな……っ!!」

 

切嗣は“あり得ない”と思いながら、現実から目を背けながらも、誰よりも『これは現実だ』と理解していた。

 

「ガァァァアアアッ!!」

 

一体の巨大な体躯をしたポケモンが、相手のポケモンを吹き飛ばす。

シャーレイのポケモン――メガガルーラは大木を思わせる腕を振りかぶり、その剛腕を持って竜巻を起こして相手のポケモンを蹂躙していく。

・・・それだけなら、まだ良かったかもしれない。

メガガルーラの背中から、一つの小柄な影が飛び出した。

 

「あれは――」

 

切嗣はそれを見て目を見開きながら、その正体を理解する。

 

「――子ガル」

 

普段、ガルーラのお腹のポケットのなかにいるガルーラ子供だった。

だが、その体は普段のそれよりは大きく、瞳はどこか好戦的な感情を宿していた。

 

「がるぁぁああ!」

 

子ガルが、動く。相手のガードの隙間を縫い、チマチマとそれは攻撃して行く。

――だが、侮るなかれ。子ガルの攻撃はガルーラ本体の半分ものダメージを与えるほどの代物である。

さらにそれだけではなく、“怯み”と呼ばれる追加効果はガルーラ本体と同じ判定という鬼畜しようのものだ。

 

「あ、ぁぁ……」

 

――気合のタスキ?

そんなもので耐えたって、子ガルが止めを刺せばいいじゃない。

 

「ぁぁ……っ!」

 

――物理受け?

受け出しするならすればいい。だが、その交換先は一度凌いだところで、次の攻撃にも耐え切れるかな?

 

「こんな……っ!」

 

――スカーフで上から叩く?

たわけ。その程度で沈むような、柔な耐久などしていない。

 

「こんな、ことが……ッ!!」

 

――ふははは! エアームド! 貴様ならガルーラから有効打点はくらうまい!!

大文字乙。

 

小物が小細工を仕掛けようとも、メガガルーラはそれらを真っ正面から全て粉砕する。

地を砕き、滝を割り、伝説のポケモンとさえも渡り合うポケモン(バグ)それが――――。

 

「メガ、ガルーラ……ッ!!」

 

それからというもの、切嗣はいくつものメガガルーラによる蹂躙を見てきた。

そこで彼は知る。

メガガルーラが、最早頂点なのだということに。

 

「……どうすればいい」

 

そして、悩む。このままでは、メガガルーラはどの大会でもその力を遺憾無く発揮してしまう。

 

「メガガルーラが一体、その一体を斃すのに必要なポケモンが最低でも二体……。これじゃあ、天秤の針があべこべだ……ッ!!」

 

メガガルーラを倒せるのは、メガガルーラだけだなどという馬鹿げた状況が発生してしまう。

 

「そんなことは、断じて許されない……!!」

 

そして、ふと気づく。

 

「許されるべきじゃ――」

 

“一番始めに、メガガルーラを流行させたのは、誰だっけ?”

 

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして。切嗣の野望は決まった。

メガガルーラを完膚無きまでに叩き潰してチャンピオンを斃し、『メガガルーラなんて大したことなかったんだ』と思わせることだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして、その時は訪れた。

 

「……長かった」

 

いままで溜めてきたものを全て吐き出すかのように、切嗣はそう呟いた。

そこに込められていた感情がなにか、それは切嗣にしかわからない。

だが、これだけは言えるだろう。

 

「……今日をもって、メガガルーラは根絶する」

 

・・・まあ、その数を減らすが限度だろうが。それでも、メガガルーラの数は減るだろう。

 

切嗣が用意したのは、ありとあらゆるメガガルーラを無効に出来るだけのポケモンたちだ。

例えば物理一辺倒のメガガルーラが相手ならエアームドを。

無駄に居座りたがるメガガルーラにはメガゲンガーを。

大文字を兼ね備えているのならばバシャーモを――と、いった感じで。彼はありとあらゆるメガガルーラを殺し尽くすだけのポケモンを用意したのだ。

 

「……いこう」

 

そして、彼は戦闘フィールドに立つ。

かつて憧れていたステージに立ったというのに、そこにあるのはただただ『メガガルーラまじぶっ殺す』という感情のみ。

感動など不要な感情として捨て去りそして、対戦相手たるチャンピオンが現れ――――

 

「なっ!?」

 

そこで始めて、衛宮切嗣が顔に貼り付けていたポーカーフェイスが崩れ去る。

出てきたのはあの日から玉座に座り続けていたチャンピオン、ではなく。

 

「言峰、綺礼……ッ!?」

 

「久しぶりだな、衛宮切嗣。おまえと会わなくなってから、随分と経つ」

 

――バカな。僕が四天王に挑戦した時は、まだあの男がチャンピオンだったというのに!?

 

「残念ながら衛宮切嗣。それには一分と二十三秒ほど遅かった。その間に私があの男を倒し、僭越ながらチャンピオンの座へと着くことになったのだよ」

 

「ッ!?」

 

――くそ、これじゃあ計画が……ッ!!

 

潰える。そう結論し、絶望に打ちひしがれそうになった切嗣だったが。

 

「何をしている、衛宮切嗣」

 

「なっ――」

 

「早くしろ。あるいはその願い、叶うかもしれんぞ?」

 

そういい、綺礼はモンスターボールを放る。呆然としながら、その軌道を眺めていた切嗣だったが。

そこから出てきたポケモンを見て、彼の瞳に光が宿った。

 

「ガルー、ラ……ッ!!」

 

「フッ。さあ来い、衛宮切嗣!! 私とおまえの、最後の戦いといこうではないかッ!!」

 

その綺礼の言葉が終わると同時に、切嗣はモンスターボールを投げた。

カチッと言う音が鳴り、モンスターボールの中からポケモンが出てくる。そして――

 

「エアームド――」

 

「ガルーラ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガルーラ、戦闘不能!!」

 

「やった……っ!」

 

切嗣はなんとか、メガガルーラをエアームド一体で倒し切った。

これを思えば、岩雪崩で怯みをひくたびに「ふざけるな、ふざけるなッ!! 馬鹿野郎ォ!!」などと号泣しながら叫び、審判や観客及び視聴者に引かれたりしたことなど些細なことだろう。

 

「これで、世界は救われる……ッ!!」

 

大袈裟すぎる、などと言ってはいけない。

切嗣にとってらこれは快挙なのだ。ゆえに、彼は手放しで喜んだ。・・・喜んで、しまった。

それが、その行為が。彼の相対している言峰綺礼にとってかっこうの餌でしかないことを忘れて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――征け、ガルーラ」

 

「――は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさかの二体目のガルーラの登場に、切嗣の頭は完全にフリーズする。

 

「やれ、ガルーラ」

 

「え、ちょ、は、え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エアームド、戦闘不能ッ!!』

 

ドッ、と鳴り響く歓声のなか。切嗣は半ば発狂しながら、綺礼にむかって叫ぶ。

 

「メガガルーラが二体、なんだこの悪夢みたいな冗談はッ!!」

 

「なんだもなにも。見ての通り、としか言いようがないが」

 

「ふざけるなッ! メガ進化を二体使用出来たのはおいておいて、なんで同じポケモンを二体も登録出来てる!?」

 

ポケモンリーグ協会により定められた、レギュレーションというものがある。

これはポケモンバトルの公式戦において守らなければならないルールであり、これを破れば問答無用で退場とされるものだ。

そして、言峰綺礼はそのレギュレーションにより記されているルールのひとつ『同じポケモンを二体以上使用してはならない』を破った。――なのに。

 

「観客はおろか、審判までもがキミにジャッジを下さない」

 

それは、おかしいことだ。

目の前でルールを堂々と破っている男を、審判は放置している。つまりこれは――――

 

「なにをした、言峰綺礼……ッ!!」

 

――――八百長試合だ。

 

「ふむ」

 

「……」

 

「知っているかね、衛宮切嗣」

 

「……なに?」

 

「ポケモンチャンピオンへと至ったものに許される。特権というものを」

 

「特権、だと?」

 

そんなものは知らない、と。切嗣は視線を険しくして綺礼に返す。

そんな切嗣に綺礼は然りと頷いた。

 

「知らないのも無理はない。私も、チャンピオンになってから知ったのだからな」

 

「……」

 

「チャンピオンの特権。それは、レギュレーションの変更を可能にする、だ」

 

「なんだっ、て!? バカな! そんな事をすれば、ポケモン界は混乱の渦になる!!」

 

「だろうな。だが、チャンピオンとは常に他の有象無象の一歩先を行かねばならないとは、思わないかね?」

 

「それは――」

 

「ならば、問題あるまい。そのような混乱を生まぬためにも、チャンピオンとはその座を死守せねばならんのだ」

 

「……」

 

「最も。レギュレーションの変更などという馬鹿げたことをしたのは、私が初めてだったみたいだが」

 

話は終わりだ、とばかりに綺礼が切嗣に次のポケモンを出すように促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ポリゴン2、戦闘不能ッ!!』

 

そこから先は一方的だった。

切嗣がいままで何回も見てきた、メガガルーラによる圧倒的な蹂躙を、焼き返したかのように何度も何度も繰り返された。

衛宮切嗣は、あらゆるメガガルーラに対応出来るポケモンを揃えた。

だが言峰綺礼はその一歩先を行く。

ありとあらゆるメガガルーラに対応出来るポケモンを嬲り殺しにするメガガルーラを揃えていたのだ。

 

――こんなものは、断じてポケモンバトルじゃない!!

 

『衛宮切嗣のポケモンは六体すべて戦闘不能、よって勝者は――』

 

切嗣は激怒した。必ずかのメガガルーラの暴行を阻止せねばならぬと決意した。

 

『ちょ、切嗣選手!?』

 

 

切嗣にはポケモンを戦わせる理由がわからぬ。

 

「僕は――――」

 

切嗣はマサラ人である。いままで数多くのイシツブテを投げつけてきた。

 

「メガガルーラを――――」

 

だから肉弾戦には、人一倍自信があった。

 

「――――許さないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガルーラ、戦闘不能ッ!!』

 

静まり返る会場。

当然である。なにせ衛宮切嗣がメガガルーラを場外にまで吹き飛ばしたのだから。

それも、ただのグーパンチで。

 

「はあ……はあ……」

 

「……くくく」

 

そんな静まり返った会場のなか、くぐもって笑う男が一人。

 

「いい、いいぞ。衛宮切嗣ッ!」

 

その男の名は言峰綺礼。

彼はここに来て大きく感情を露わにした。

 

「それでこそ、マサラ人というものだ!!」

 

自身のモンスターボールの開閉スイッチを全て、彼は押し潰す。――誰にも、邪魔されないために。

 

「マサラ人の本懐とは、ポケモンバトルにおいて己の肉体を使用すること……」

 

ブチブチッと。音を立てて綺礼の服のボタンが弾け飛ぶ。その弾け飛んだボタンが審判の額に直撃し、審判の体が真後ろにマッハ3の速度で吹き飛んだ。

 

「言峰綺礼ッ!!」

 

「衛宮切嗣ッ!!」

 

途端。二人の体が消える。

先ほどまで彼らがいた場所は陥没し、会場の照明器具が一斉に割れる。

風が吹き荒れ、地面がひしゃげる。二人がぶつかれば天蓋は吹き飛び、そのまま飛び出せば天候が荒れ出す。

宇宙空間へと移動する際に、オゾン層で優雅していたレックウザが地に落ち。ロケット団の基地のなかで彼らの戦闘を念写で見てしまったミュウツーが、無言でハナダの洞窟へと避難した。

天候、ポケモンの生態、トレーナーの常識。それらを全てひっくり返すほどの戦闘を、彼らはその後三日三晩繰り広げる。

森羅万象を打ち砕く存在、それこそ――マサラ人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うとメガガルーラを使うトレーナーはいなくなった。そんなものより、人間の力の限界を見てみたいと名乗りを上げる『修羅』が続出したのだ。

だが、そんな世界になってなお、いやだからこそマサラ人はその真価を発揮した。

烈怒(レッド)紅麟(グリーン)憮瑠宇(ブルー)と言う。後に衛宮切嗣と言峰綺礼以来の逸材と呼ばれるマサラ人までもが誕生することになる。

 

こんな世の中になったことに、現チャンピオンである衛宮切嗣はこう語る。

「子供の頃、僕はポケモンチャンピオンになりたかった」と。やけに遠い目をしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




〜おまけ〜








時は来た。参加するポケモントレーナーは七人。
彼らポケモントレーナーはたったひとつのポケモンマスターの座を求め争い殺しあう。それが――ポケモンリーグ。









「――――問おう。あなたが、私のトレーナーか」


「ちょ、待て! なんで、俺がこんな目ぐぎゃ!?」


「やっちゃえ、メガガルーラ!!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎ーーーーッ!!!」


「そんな俺に残ったのは、厨ポケだけだった」


「聖杯戦争をしなさいよ貴方たち……ッ!!」


「……燕がおらぬとは、珍妙な世界へと飛ばされたようだ」


「メガガルーラを廃止しろなどという戯言は、メガガルーラを直視出来ぬ弱者の戯言にすぎぬ。雑種、貴様の理想とやらは――」


「俺は絶対に、メガガルーラを消し去るんだよおおおお!!!!」

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