とある山のふもとに、老夫婦がいた。生活は困窮しており、翁はやっと笠を作り、街へ売りに行った。
しかし、笠は全く売れず、絶望し、翁は呆然とした。
最後の気力を振り絞って帰路につくと、地蔵が雪まみれになって立っていた。
その地蔵の頭に、鳥の糞が落ちてきた。
翁は笑った。笑い転げた。のた打ちまわった。
そのテンションで笠を燃やして暖をとり、なお、笑い転げた。そしてかえってきた翁はおうなにことの次第を話した。
おうなは笑った。笑い転げた。のた打ちまわった。
この、小さな幸せを肴に酒を飲み、落ち着いて、眠った。
その夜のことである。
扉がぶち抜かれた。
敵は全部で6体。あの、鳥の糞をかぶった地蔵だった。
「おめーら笑いすぎ。ちょっとツラ貸せよ」
なんと、地蔵達は老夫婦の家にカチコミを仕掛けたのだ。
翁が地蔵を殴りつけた。しかし相手は石像である。
翁の拳が血だらけになって砕けた。
地蔵は飛び上がり、翁の脳天を砕いた。脳漿をぶちまけた翁に立ち上がる力はなく、絶命した。
おうなは包丁で地蔵を刺した。しかし、包丁は折れてしまった。
おうなのミゾオチに地蔵の頭突きが決まった。
「光もの、振り回してんじゃねぇよ、ババア。」
さらに地蔵はおうなの顔面に頭突きした。
鼻血を垂れ流しながら、逃げるが、地蔵に囲まれて、全身を踏みつけられた。骨が砕ける音は軽快に、筋肉がつぶれる音は鈍く、内蔵をぶちまけ、おうなは死んだ。
「きたねえ小屋だ。燃やしちまえ」
地蔵は老夫婦の家を焼き、暖をとり。はじめて笑った。
笑い転げた。
のた打ちまわった。
そして、地蔵は去って行った。
しばらくして、老夫婦の息子がやってきた。誰にやられたかは知らないが、足跡がある。
たどって行くと、地蔵があった。その地蔵の額には鳥の糞がついていた。
そして、何体かの地蔵には血痕があった。
息子が地蔵を観察すると…。
「なにガン垂れてんじゃ、クソガキ」
地蔵がしゃべった。
「そうか、わが両親を殺戮した犯人がわかった。」
そして、息子は足早に立ち去った。
ほどなく、20人ほどの友人を引き連れ、ヘルメットにニッカボッカを装備した集団である。石にとっては恐ろしいであろう、アスファルトフィニッシャを3台使い仕返しをはじめた。
つるはしで地蔵をガンガン突き刺した。砕けた破片をフィニッシャがプレスしていく。
大型のハンマーで殴りつければさすがの地蔵もたたらを踏む。重機集団は地蔵を粉々に粉砕し、両親のかたきを取った。
そこへ、声が聞こえた。
「ナウマクサマンダ、ボダナンオン、バサラ、ダトパン!」
奈良の大仏の5倍はあるであろう、観音像がやってきた。
舗装車を蹴飛ばすと、彼方まで吹き飛んだ。
今度は息子が、アスファルトフィニッシュしてしまった。
神を敵に回した、老夫婦とその息子は末代まで不運にみまわれた。めでたしめでたし。