自由落下に身を任せていたアジ=ダカーハは、水面に顔が移った頃に翼を広げた。
翼を使い浮かびその場にとどまった。
藍楓に関しては自身を無害の風を惑い水面に浮かぶ。
一方、その他の三人―――
『ぎにゃああああああ!!お、お嬢おおおおおお!!』
………と一匹は、落下地点に用意してあった緩衝材のような薄い水膜を幾重も通って湖に投げ出される。
その様子を見て二人は思う。
召喚者は近くに潜み安全面を確保していることから挑戦では無いと分かる。そうなると人材(コマ)が必要なのであろう。ならば答えは1つ。
「きゃ!」
「わっ!」
ボチャン、と着水した。水膜で勢いが衰えていたため三人は無事で済んだが、猫はそうもいかない。
一人の少女が慌てて猫を抱きかかえ、水面に引っ張り上げる。
「………大丈夫?」
『じし、じぬがぼおぼた死ぬかと思った………!』
まだ呂律が回らないながらも猫の無事を確認した少女はホッとする。
別の二人はさっさと陸地に上がりながら、それぞれが罵詈雑言を吐き捨てていた。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺り込んだ挙げ句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「………いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
二人の少年少女はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。その後ろに続く形でもう一人の少女が岸に上がる。同じように服を絞る隣で猫が全身を震わせて水を弾く。茶髪の少女は服を絞りながら呟いた。
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
茶髪の少女の呟きに金髪の少年が応える。何にせよ、彼らの知らない場所であることは確かだった。
適当に服を絞り終えた金髪の少年は軽く曲がったクセっぱねの髪の毛を掻き上げ言う。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは〝オマエ〟って呼び方を訂正して。―――私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「………春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。最後に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
ケラケラと笑う十六夜。そんな彼から傲慢そうに顔を背ける飛鳥。耀に至っては猫と遊んでいた。
だが、十六夜はフッと軽薄な笑みを浮かべると上空を指差して飛鳥に言う。
「それとお嬢様。最後は俺じゃなくて―――アイツらの方だろ?」
「え?あら、本当ね。何かしら?」
三人の視線が二人の試練へ向けられる。
「えっと、私は藍楓と申します。以後お見知りおきを」
此処で後悔したことは何時もの癖が出たことである。
等の四人は気にしていないようだが。
「そう。宜しくね藍楓さん。それで最後の男性は?」
そしてアジ=ダカーハに目を向けられる。
「我の名は(・・・)アジd.... 「アジが好きなのは覚えているけど他の記憶が少し無いんだって。」ぬぬ!?」
本名を言う前に止める藍楓。
藍楓が止められた理由は同じ退廃の風による物。
藍楓は箱庭にも同類にも歓迎されているようだ。
「ヤハハ、記憶喪失か。アジ... そう思えば俺の読んでた本にアジ=ダk... 「アジって美味しいよね。あの人の姿は現代と違ってるだけだよ。」(・・・)」
十六夜の台詞に割り込む藍楓は十六夜に目を付けられた事は知らない。