前回の茅場明彦の「明」は「晶」の間違いでした。今回から直してます。
ピピピピピ・・・。
アラームの音に「ユウキ」は目を覚ます。寝ぼけながらも感じる柔らかな感覚。それは自分の部屋のベッドと同じようなもので。
(!?)
覚醒。あたりを見渡し昨日までと変わらない宿屋の光景に落胆する。
(1週間経つってのにまったく学習しないな・・・。)
ベッドの感触までもがリアルなのだから、毎朝起きるたびに勘違いする。
(今日で1週間か・・・。)
茅場晶彦が実現した仮想空間、ソードアート・オンラインがデスゲームの舞台になった日から1週間が経った。結局ただの高校生であるユウキがとった行動は他多数のプレーヤーと同じく、第一層、始まりの街にある宿屋に引きこもる事だった。
(確かβテストでは2ヶ月で10層までしか行けなかったはず。単純計算ならそろそろ第一層を攻略できるはずだけど・・・。攻略組だったっけか?。このゲーム内でゲームオーバーになったら現実でも死ぬかも知れないってのにすごい連中だ。もちろん、そいつらだって死にたいわけじゃないだろうから、攻略にはもっと時間がかかるだろうな。)
少なくとも俺には無理だ。とユウキは考えることを止め、現実と変わらない硬さのベッドへ再び身を投げる。
ふと窓の外を見ると昨日までの青い空とは違い、暗い雲が目に入ってきた。
(雨か・・・。)
部屋の中だからか雨音は聞こえないものの、窓の外では割と強めの雨が降り出していた。
そういえばこのゲームで雨が降るのは初めてだったな。と彼は体を起こす。何とはなしに外に出てみたくなったのだ。NPCの受付に見送られ、宿の外に出る。
(はは、こんなところまでリアルなのか。)
顔に当たる水滴の感覚に彼は驚いた。周りを見てみると他にも数名のプレーヤが宿の入り口から雨を見ていた。自ら雨に当たるような酔狂なものは彼以外には居なかったが。
そんな状況に苦笑しながら彼は宿のすぐ近くにあるNPCのアイテムショップへ向かった。この世界に来た初日に訪れて以来だ。その時は何も買わなかったが、あまりに手持ち無沙汰なため、何か面白いものでもないかなと足を進めた。
ユウキはこの第一層に留まると決めた時に、ひとつ決まりを作った。それはお金を使わないこと。もともと浪費癖があるわけではないのだが宿に寝泊りする料金のことも考えて彼はただひとつの武器すら買っていなかった。だから、今見ている商品も基本的に買うつもりはない。現実世界だったら迷惑行為だが、相手はNPCなのだから特に文句も言わない。そんなこんなで商品を眺めること数分。ユウキは店の隅に一本だけ、まるで捨てられたように横たえられたそれを目に留めた。
(傘?雨の日限定のアイテムか?)
初めての雨だからまだ売れてないのかもな、と思いながら現実世界ではなんども使ったことがあるその形にユウキは少しだけ懐かしみを覚えた。
彼の考えに付け加えるならばこのゲームの中では基本的にお腹もすかないし眠気もない。(もちろん、認識してしまった疲労は休まなければ、空腹は何かを食べないと取れないが。)同様に雨が降っていても少し視界が悪くなる程度で服がぬれてもすぐに乾く。だからゲーム内の雨はそこまで気にするほどではないし、ましてやまだゲームは序盤も序盤。少しでも節約するべきこの状況で傘など買う余裕のあるプレーヤーは存在しない。といったところだろう。
「店員さん、そこにある傘見せてよ。」
なんとなく気になりもう少し近くでそれを見ようと店員に話しかける。店の中にある商品ならば、位置から使い方まで知ってるはずの店員NPCだが帰ってきた反応は予想外のものだった。
「?」
頭に疑問符を浮かべながら首をかしげるNPC。こちらが相手の想定にないことを聞いている証拠だ。
「あれ?伝わってないのかな?ほら、そこにある黒い色の傘。」
今度は傘を指差しながらさらに詳しく聞く。ようやく合点が言ったようにNPCはユウキの希望にこたえた。
「申し訳ありません。お待たせいたしました。」
丁寧な口調でNPCは謝罪する。
「いや、大丈夫だけどさ。ところでそれはいくらなの?」
「これは売り物ではございません。」
「雨の日限定のアイテムかと思ったけど、非売品かあ・・・。」
「いえ、そうでもないのです。私もあなた様に言われてはじめてこのアイテムに気がつきました。てっきりあなた様が忘れたものを取りに来たのかと思いましたが違うのですか?」
再び頭に?を浮かべたNPCの言葉にユウキは再び考える。
(バグかなぁ。傘なんて初めてみたし、もしかしたら貴重なアイテムかもしれないけど)
そんなことを考えていると黙秘は肯定と受け取ったのか、NPCが話しかけてきた。
「よろしければこちらもらっていただけませんか?」
御代は結構ですから。とNPCはすすめてくる。もしかしたら本当に誰かが忘れたのかもしれないと思ったユウキだったが結局押し切られる形で受け取ってしまった。
色は黒。大きさも重さも現実のそれとなんら変わらない傘がユウキがこの世界ではじめて買ったものだった。
今回も読んでくださりありがとうございます。結局タイトル本タイトルまではたどり着けず・・・。原作沿いとはなんだったのか。まあ次回にはおそらく一番書きたいシーンを書けるはず。次回は早ければ明日。遅くとも来週中です。