若き海軍中将の学園生活   作:月見だんご

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6話

放課後、七月の激しい日差しが照り付ける中レイは中庭を駆けていた。

綾斗とユリスがタッグパートナーになり二週間。綾斗とユリスは毎日のように訓練に励んでいた。そして二人の訓練相手としてレイも訓練に参加していた。

サイラスの件の後、綾斗達に何があったのかは分からないがタッグパートナーになったらしい。綾斗の実力をユリスが認めたというのもあるだろうが、おそらくあの件で綾斗に惚れてしまったのだろう。レイのほうはというと、あれから特に変わったことはなかった。

いや、変わったといえばクローディアに関してだろう。クローディアはいつもどおり話しかけてくるが、レイのほうはクローディアに対して壁を作ってしまい、それにクローディアも気づいているのかそれ以上は踏み込んでこなかった。あまり態度には出さないようにしているが、ついこの間のことを思い出してしまう。

話を戻してなぜ急いでいるのかというと、担任である匡子から雑用を押しつけられてしまったのが原因なのだ。余裕をもって出てきたはずがあの暴力教師のせいで遅くなってしまったのだ。温厚な性格の綾斗なら許してくれそうな気もするが、ユリスはそうはいかないだろう。

 

「急がないと、ユリスに丸焼きにされちゃ―――」

 

中等部校舎と大学部校舎を結んでいる渡り廊下を横切ろうとしたその時、レイは人の気配を感じた。

死角になっていた柱の陰から、一人の女の子が飛び出てきたのだ。速度を緩めようとするもこの距離では間に合わない。ので、無理矢理に方向転換を試みた。これで安堵するもなぜか身をかわしたその先に、女の子顔があった。

さすがに今のは避けきれず、レイと女の子は真正面から派手にぶつかってしまった。

レイはすぐに起き上がると、地面に座り込んでいる女の子に駆け寄った。

 

「おい、大丈夫か?怪我はないか?」

 

「あ、はい・・・・大丈夫です」

 

「悪かった、こっちの不注意だった」

 

レイは軽く頭を下げ、その少女が怪我がないのか確認すると、スカートがめくれていることに気づき顔をそらす。それに気づいたのかその女の子は慌ててスカートを直し、縮こまるように自分の体を抱きしめた。それがかえって豊満な胸を強調してしまっているのに気づかずに。

とりあえず、もう一度謝罪の言葉を言ってから手を差し出した。しばらく戸惑うような視線を向けていたが、やがておずおずとその手を取った。

立ち上がった

女の子は取り繕うようにスカートの埃を払うと、ぺこりとお辞儀する。

 

「私のほうこそごめんなさいです。音を立てずに歩く癖が抜けなくて。いつも伯父様に注意されるんですけど」

 

「あ、ちょっと待って。そこに何かついてるよ」

 

「ふぇ・・・っ!ど、どこですか?」

 

「ほら動かないで」

 

「え・・・・」

 

苦笑いしながら髪を傷めないようそっと小枝を取り除く。

 

「あ、ありがとうです」

 

女の子は今にも湯気を出しそうなくらいに真っ赤になりながらお礼を言った。そしてもじもじと俯いたまま、それきり黙ってしまう。どうしたものかと考えていると、ふいに中等部校舎のほうから大きな声が響いた。

 

「綺凛!そんなところで何をやっている!」

 

「・・・・は、はい!ごめんなさです、伯父様!すぐに参ります!」

 

女の子はもう一度お辞儀すると、中等部校舎のほうに小走りで去っていった。

伯父様と言っていたが、親族といえども学園の敷地には容易に立ち入ることはできない。やはり、学園関係者なのだろうかと考えていると。自分が何のために急いでいたかを思い出し慌てて駆け出した。

 

 

レイがトレーニングルームに着いたときにはすでに甲高いアラームがなったときだった。

 

「ごめん、遅れちゃった。あはは、これにはわけがあってね、実は匡子先「うるさい!言い訳は聞かん。」・・ッつ!」

 

そう言い火球を飛ばしてくるユリス。それを刀で切り捨てながら避けるレイ

 

「おい!危ないだろ!てかほとんど本気じゃないかよ」

 

「ふん、まあいい。どうやら理由があったようだし仕方ないな。」

 

その言葉に安堵のため息を漏らすレイ。

苦笑いしながらそれを見る綾斗。

 

「ねえ、ところでレイ。前から気になってたんだけどさレイの使っているその刀、いったいどこから出してるんだい?」

 

「ふむ、それはわたしも気になっていた。まさかとは思うが魔術師ではないだろうな?」

 

ユリスがそう言うのは、魔女や魔術師はその能力と自分がそうであることを登録しなければならないのだ。しかしレイのプロフィールにはなにも魔術師とかいていない。

 

「いや、魔術師ではないよ。でもこれはそれに近いのかな?・・・まあ今は教えられないな」

 

「ふーん。じゃあ、前に使ってた焔一刀流?だっけあれは?そんな名前聞いたこともなかったけど」

 

「あー、あれはだなこの辺では・・なかったかな?」

 

「なんとも歯切れの悪い答えだな」

 

「まあ、あれは刀に炎を纏わせ、炎そのものを断ち斬る剣・・・ってところかな」

 

「そうなんだ、煌式武装でもないのに斬撃が飛んでいたようにみえたけど実剣であんなことができるなんてレイはすごいんだね」

 

「はは、そうかあっちの世界じゃ、ざらにいたけどな」

 

「あっちの世界?」

 

「あ、いやなんでもない。ただ俺の育った環境ではそういう人が多かったてだけ」

 

「そうなんだ、あ、あれは?」

 

「ほんと質問多いな・・」

 

「ごめんごめん、レイが攻撃する前にまっ白だった刀身が黒くなったのは?」

 

「ああ、あれね、あれは―――」

 

と、そのとき鈴を転がしたような音が響いた。それから少し遅れて、空間ウィンドウが展開する。どうやらお客さんがきたようだ。

 

訪ねてきたのは、レスターと紗夜だった。綾斗が二人がなぜここに来たかのか疑問に思っていると。紗夜がユリスに向かって指を突きつけて。

 

「ずるい」

 

「は?」

 

「ずるいって・・・いったいなにがだ?」

 

「ここのところリースフェルトは綾斗を独り占めし過ぎ。――――」

 

と、ほとんどレイには関係のない話が始まったので、レイはレスターのほうを見た。

 

「レスター、退院おめでとう」

 

「ああ、あれくらいの傷どうってことねぇよ」

 

「ところで、どうしてこんなとこに?紗々宮と一緒なんて珍しいな」

 

「このちんちくりんは途中で拾っただけだ。なんかしらねぇ道で迷ってたみたいだし、行く場所が同じだったからな。まあ、ついでだ」

 

「誰がちんちくりんか。でも連れてきてもらったことには感謝する。ありがとう」

 

ぺこりと頭を下げた紗夜は、再びユリスに向き直って不毛な言い争いへと戻っていった。

 

「行く場所が同じだったってことはレスターも俺たちになんか用があるのか?」

 

「あー・・・なんだ、その、サイラスの件なんだが・・・・一応、あれだ。結果的にとはいえ――助けてもらったことには違いねぇから、な。その、礼っつーか、ケジメっつーか、まあ、それをだな・・・」

 

レスターはそこまで言って、顔をそらしたまま小さく頭を下げた。

 

「と、とにかく世話になった!それだけだ!」

 

「あ、ああ・・・」

 

「あら・・みなさんお揃いでしたのね」

 

そこへ聞き覚えのあるゆったりとした声が聞こえてきた。

ドアから入ってきたのは案の定この星導館学園の生徒会長であるクローディアだった。

そして見慣れない顔の女性が二人・・・

 

「ほほー、ここが星導館のトレーニングルームかー。ふふっ、きれいだねー」

 

「あまりはしゃぐんじゃない、エルネスタ」

 

そんな注意をものともしない様子の白衣を着た女性はエルネスタというらしい。

 

「ご紹介しますね。こちらはアルルカント・アカデミーのカミラ・パレートさん。そしてエルネスタ・キューネさんです」

 

「アルルカンとの・・・?」

 

綾斗はなにか合点がいったように言った。

 

「このたび、我が学園とアルルカントが共同で新型の煌式武装を開発することになりまして。今日はその契約のためにいらしたのです」

 

「―――どうも」

 

褐色の肌をした女性――カミラ・パレートが申し訳程度に頭を下げる。

 

「共同開発だと・・・ふん、そういうことか」

 

どうやらユリスは気づいたらしい。サイラスの一件を公表しないかわりにアルルカントに技術を提供させるということらしい。

 

「それはまあいい。だがなぜそいつらがここにいる?」

 

「はいはーい、それはわたしが見たいって言ったからでーす」

 

ひょこひょこと飛び跳ねながら手を挙げたのはエルネスタという少女だった。

 

「いやー、ぜひともこの目で拝んでみたくってさー。あたしの人形さん達をぜーんぶぶった斬ってくれたっていう剣士くんと、焼き付くしてくれたっていう剣士くんをね」

 

「「は?」」

 

その瞬間なんともいえない沈黙が周囲を包んだ。

それはそうだろうこの少女は自分が黒幕だと白状したようなことを言ったのだ。

 

「んで、君たちが噂の剣士君たちだねー。ふむふむ、なるほどー」

 

エルネスタは綾斗へ近づくと、じろじろとながめながら何度もうなづく、

 

「ん、なかなかいいわねー。気に入っちゃった!」

 

そして、綾斗の耳元に顔を寄せる、そして綾斗の頬にキスをした。

綾斗は慌てて飛びのくが、星導館学園の女性二人が目の色を変える。

ユリスが細剣を抜き、紗夜は煌式武装の砲口をエルネスタに向ける。

 

「にゃはは、怖いな怖いなー。ちょっとした挨拶じゃないかー」

 

そお言うと今度はレイのほうへ体を向ける。それをクローディアは綾斗と同じようなことをされるのではないかと警戒する。特に警戒したからといってなにかするというわけでもないのだが。

 

「君にも興味があるんだよねー。君からは全く星辰力が感じられないから星脈世代じゃないよね?なのにあの力、それと見えないところから刀を取り出したよね?あれはどうやったの?魔術師でもないのにそんなことができるだなんてすごく興味あるなー。」

 

「え、えーと」

 

レイが返答に困って、助けを求めて周りを見てみると綾斗、レスター、ユリスは紗夜とカミラ・パレートの話を興味深そうに聞いている。クローディアはこちらのほうを見ていたが目が合うと目を逸らされてしまった。やはりこの間のことをお互いに引きずっているようだ。

どうしたものかと思っていると、

 

「こほん」

 

やっとクローディアが助け船をだしてくれた。だが今のは紗夜たちのほうにだったようだが・・・

 

「さて、お客人。そろそろ本題のほうへ取り掛かるとしませんか?」

 

そんなこんなで最後までレイにまとわりついていたエルネスタだったがカミラに連れられトレーニングルームを出ていった。

 

 

 

翌日の昼休み、レイは綾斗にル・モーリスに一緒に来てくれないか、といわれて今高等部校舎を抜けて、中等部校舎へとつながる渡り廊下へ向かっている。綾斗は夜吹に昨日きたアルルカントの者たちについて聞いたところ、昼食をおごれと言われ了承したがこんな高級店だとはおもわなかったらしく助けてほしいと言われたので仕方なく向かっているというところだ。

渡り廊下を歩いているとふいにパァンという乾いた音が聞こえてきた。

なにごとだと見てみると男が女の子の頬を平手で叩いたところだった。そして再び男の腕が振り上げられ、女の子を叩こうとするが、

 

「そこまでにしとくんだな」

 

それが振り下ろされる寸前、レイが二人の間に入り男の腕をつかんだ。

女の子は驚いたように目を見開く。

 

「・・・なんだ、貴様は」

 

「どんなことがあろうとも無抵抗の女の子に暴力を振るうのはよろしくないな」

 

「ふん、今のは伯父としての躾だ。部外者は口出しをするな」

 

「伯父だと?」

 

「私は刀藤鋼一郎。そこの刀藤綺凛の伯父だ」

 

レイが綺凛に視線を向けると、おびえたような表情ながらもコクリと頷く。

 

「わかったならそこを退け、小僧。そもそも貴様ら星脈世代がこの程度でどうにかなるわけではないだろう?」

 

「あいにく、俺には分からないな。俺は星脈世代ではないんでね。だがまったく痛みを感じないわけではないんだろう?」

 

「ほう、貴様は星脈世代ではないにもかかわらずここにいるのか・・・貴様、名前は?」

 

「レイ・クローリーだ」

 

鋼一郎は携帯端末を取り出し空間ウィンドウを展開させた。

 

「・・・ふん、在名祭祇書入りもしてない雑魚か」

 

「まあ、それだけで実力を量るのもどうかと思うがな」

 

「そこまで言うならば、決闘をして勝ってみろ。そおしたら二度とこいつには手を挙げん」

 

「伯父様!待ってください!」

 

「へぇ、いいよ。やってやるよ、決闘・・で相手は?」

 

「貴様の相手は、これだ」

 

そおいうと綺凛の背後に回り、綺凛の肩に手を置く。

 

「は?」

 

「安心しろ。貴様が負けたところで、こちらから要求するようなことは何もない」

 

「あまり俺をなめるなよ」

 

綺凛は抗議するような声をあげたが、鋼一郎の凍りつくような目と有無を言わせぬ声に萎縮してしまう。

鋼一郎は綺凛に背を向け、ゆったりとした足取りで距離をとった。

さっそくさわぎを聞きつけたのか、何人かの学生が足をとめ遠巻きにこちらを眺めている。その中には綾斗達の姿もあった。

 

「さー、やるか刀藤さん。こう見えてかなり強いぞ俺」

 

「・・・・・ごめんなさいです」

 

「気にすんな、俺がかってにやったことだし」

 

「わたしは・・刀藤綺凛は、レイ・クローリー先輩に決闘を申請します」

 

綺凛とレイの校章が赤く発光する。

 

「お願します、先輩。ここで先輩が引いてくださればそれで収まります。そうしてください」

 

「嫌だ」

 

ばっさりと切り捨てるレイ、

 

「そうですか、クローリー先輩は優しいですね。・・・仕方ありません。わたしも負けるわけにはいかないのです」

 

綺凛は刀を抜く。レイは少し距離をとると同じように刀を―――取り出さず。丸腰のままだらりと腕をさげる。

 

「決闘を受諾する」

 

決闘が始まるというのに構えないレイ。

 

「・・・?先輩始めますよ?」

 

「ああ、さっさとかかって来い」

 

「――参ります」

 

綺凛がそお言い、レイの胸元に白刃が迫る。

 

「鉄塊・・」

 

しかしそれはまるで金属に斬りかかったような音ともに止められてしまう――レイの腕によって。

 

「なっ!?」

 

綺凛は目を見開き驚いた表情をする。普通ならたとえ星脈世代だろうと刀による斬撃を生身で受け止めるなどありえないからだ。それに驚いたのは綺凛だけではなかった。周りで見ていた生徒たち、もちろん鋼一郎もだ。

綺凛は一度大きく距離をとる。どうやら刀による攻撃が通じないので、それの対処法を探しているらしい。だがそれを最後まで待つほどレイも甘くない。

 

「・・・・剃」

 

レイがそう小さくつぶやくとレイの姿が消える。しかしすぐに綺凛の背後に右手を大きく振りかぶって現れる。だがさすがは序列一位とでもいうべきなのか。綺凛も僅かな気配でレイの場所を察知し、刀で受け止める。そこから右足の蹴り、足払い、最後に左からの回し蹴り。だがどれも綺凛に防がれてしまう、金属音とともに。

そしてもう一度大きく距離をとる。

 

「先輩は、お強いんですね。あんな体術みたことないです。しかもそれで星脈世代じゃないなんて・・・」

 

「刀藤もな、あれを全部防がれるとは思ってなかったよ。・・・まあこっからは少し本気をださせてもらう」

 

刀を取り出し構えるレイ。それを見て構えなおす綺凛。

しかしそれはある生徒の声によって中断させられてしまう。

 

「お、おい。あれ見てみろよ」

 

その声にギャラリーの生徒たちがそっちに注目し始める。やがてレイも一時中断し注目されているところを見るとそこには――

 

「なっ、あれは!」

 

レイが空間転移を使用するときにできるゆがみがあった。そしてそこから複数の男と思われるものが出てきた。なかでもひときわ目立っていたのはピンク色のコートを羽織り、サングラスをかけた金髪の男――

 

「お前は・・ドフラミンゴ!!」

 

「フッフッフ・・・久しぶりだなレイ・クローリー。会いたかったぜ」

 

サイファーポールを引き連れた、王下七武海の一人ドンキホーテ・ドフラミンゴだった。

 

 

 

 




今回はいつもよりかなり長くなってしまいましたすいません。
なぜ、ドフラミンゴがこちらの世界にこれたのかは次回。

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