古き良き世界より   作:神凪響姫

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第二話 カードゲーム、しよ?(威圧

 

 

 

 デュエルマスターズ!

 

 

 それは今、世界で注目を集めているカードゲームだ!

 

 

 ルールは簡単! 40枚のカードを用意し、デッキを作る! 

 

 手札を使い、クリーチャーを召喚したり! 呪文を唱えたり! 時には城を使いこなし、クロスギアの力を借りて、相手とのバトルに勝利しろ!

 

 お互いのプレイヤーに用意された、五枚のシールドをブレイクし、相手にトドメをさした方が勝利となる! 

 

 

 

 さぁ。今すぐ君も、デュエマなう!

 

 

 

 

 

 ※なお、デュエルという名称がついているが、遊戯王デュエルモンスターズとはまったく関係がない。

 

 

 

 

「ちっきしょぉおぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

     第二話   カードゲーム、しよ?(威圧

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、神様マジ何考えてるんですか。馬鹿なんじゃないですか神様。末代まで呪いますよ神様。長くて面倒だから神じゃなくてゴミ虫でいいですかね。

 

 な・ん・で! 遊戯王じゃなくてデュエルマスターズの世界なんですか! そりゃ遊戯王は『遊戯王デュエルモンスターズ』なんて名前でしたけど! ちょっと似てるけど! 全然違うじゃないですか! 中身は宇宙の果てまで違いますよ!

 

「リオンちゃーん……デュエマ、やらない?」

 

 そんなボクの心境などおかまいなしに、不安げな顔で下から覗き込む紗雪ちゃん。

 

 くっ、なんというチワワ系オーラ! 構ってあげないと死んでしまいます的な雰囲気がビシバシと伝わってきますよ! でも腕を寄せて胸を強調するのはやめて下さい。なんですかその武器は。

 

「デュエマ、ですか……」

 

 手にとってみると、遊戯王のそれよりひと回り大きいことが分かります。

 

 こうして手にするのは、初めてですね。デュエマは。

 

そりゃ、カードゲーマーだった私でも聞いたことがあります。世界的に有名なカードゲームメーカー、WOCが開発したTCG、『マジック・ザ・ギャザリング』。世界で最初に生まれたTCGとして注目を集め、爆発的な人気を誇りました。

その会社が、メインターゲットを小中学生に移し、より分かりやすく、より簡単にしたものが、『デュエルマスターズ』です。

 

以上解説終わり。

 

 当たり前の話ですが、デュエマが主流となっている世界に遊戯王なんてありません。ボクがやりたくて仕方がなかった遊戯王はありません。どれだけ探してもデュエマしかありません。ヴァンガードもZXもありませんけど。

 

 試しに通りがかる人に「遊戯王って知ってる?」と訪ねてみたところ、「どこの王様?」と首をかしげられました。知っててとぼけてんじゃないかと思わなくもないですが、世界的に有名なTCGがカードショップに置いてない時点で諦めざるを得ませんでした。

 

 ちくしょう。

 

 まぁ、いいですよ。諦めますよ。

 

 こうなったらデュエマやってやりますよ。

 

 TCG自体好きですから、ハマればきっとのめり込むのは想像できますしね。結構続いているカードゲームですから、多くの人に愛されているのでしょう。環境バランスも割と良いらしいと聞いた気がします。

 

 十年も昔なので、かなりあやふやですけどね。

 

「まずカードプールを把握したいところですけど……」

 

 遊戯王ほどではないのでしょうけど、デュエルマスターズの歴史も相当長いです。確か私が転生する前では、子供の頃からやってましたからね。恐らく十年くらいは続いています。

 

 それだけ愛されているということでしょうけど、その分カードプールは相当なものになります。

 

 実際、紗雪ちゃんに聞いてみたところ、数千はあるんじゃないかとのこと。たまにパックに封入されていない幻のカードも存在するとかなんとか。未確認カードが存在するのはどこぞのカードゲーム世界でも一緒のようですね。めんどくさ。

 

 最悪なことに、ショップ定員の人に聞いても、正確なカード総数どころか、現状どれだけの種類のカードが出回っているのか分かっておらず、どの名称のカードがどういう効果なのかもイマイチ把握できていないんだそうで。おいおいそんなんで良いんですかアンタ。

 

 生憎遊戯王一本に絞っていたボクは、ちょっと子供向けかなーと敬遠していたので、どういう環境なのか分かりません。

 

 一応、聞きかじった程度のルールは知っています。しかし残念ながら、それはあくまで初心者中の初心者程度の知識しかありません。ルールを知っている、これは必要最低限、スタートラインに立った、あるいはその前段階の準備に過ぎません。強くなるには、相手が使うカードからデッキを把握する程度の知識は必要でしょう。

 

 幸いなことに、紗雪ちゃんは私がデュエマ素人だと分かっています。カードゲームをやったことがない、と言っておきましたから、ええ。この世界のカードゲームは。

 

 なので親切にもいちから教えてくれるそうで! 持つべきものは友達ですね! わざわざ取扱説明書と公式HPのQ&Aとにらめっこしながら自分でデッキ二個使ってWiki見つつプレイなんてぼっちプレイとはおさらばですよ!

 

 

 

 

 

 あ、なんか涙が……。

 

 

 

 

 

 さ。とりあえずデッキを用意するところからです。

 

 生憎、この世界に構築済みデッキなんて初心者向け上級者パーツ集め専用商品なんてありませんでした。なんて不親切な世界なんでしょうか。いきなりストレージからカード引っこ抜いて作れオラァなんてひどくないですか。子供はどうやってルール把握すればいいのやら。

 

 とりあえず、一度カードがどういう感じなのか、実際見てみない限りには何も分かりません。どんなデッキを作れるのか、どういう風な特徴があるのか。ボクは何一つ知らないので――

 

「紗雪ちゃんにお任せします」

「ダメ! ちゃんと自分で作るの!」

 

 んな無茶な。

 

 背中をグイグイ押されて、ストレージの前に立ちます。まぁ、どのみち見てみたかったので構わないんですが。

 

 紗雪ちゃんもお手伝いしてくれるらしく、使いたいカードがあるならそれを使ったデッキにしよう、と提案。まだ見たこともないのでなんとも言えず、ごちゃごちゃに突っ込まれたストレージから見繕うことに。

 

 しかしなんですかね。やっぱりカードゲーマーとしての血が騒ぐのでしょうか。カードを眺めているだけで幸せな気分になれます。

 

 が、

 

「なんかストレージからカレーの匂いがするのが非常に気になるのですけれど……」

「そ、そういうカードもあるんじゃない?」

 

 おかしくないですかそれ。

 

 ちょっと嫌な顔をしつつも、カードの山に向き合いました。大丈夫ですよね? 手にカレーの匂いがつくカードゲームなんて嫌ですよ?

 

「お」

 

 一枚適当に引っこ抜いて見ると、こんなカードでした。

 

 

 

 

 

●ブラッディ・イヤリング

 

 闇文明 クリーチャー:ブレイン・ジャッカー

 

 2マナ   パワー4000

 

 ■ブロッカー

 ■このクリーチャーは攻撃することができない。

 ■このクリーチャーがバトルする時、バトルの後、このクリーチャーを破壊する。

 

 

 

 

 

 すごい、パワー高いです! 究極龍やF・G・Dじゃないと倒せないじゃないですか! こんなの先攻で出されたらサイバードラゴンパワーボンドツインドラゴン二連打ァ!でも相手のライフ削りきれないじゃないですか! どんなパワーインフレですかこれは!

 

「2マナだから1ターン目じゃまず出せないわよ……」

 

 紗雪ちゃんに呆れられちゃいました。だってしょうがないじゃないですか、細かいところまでは知らないんですもの。

 

 

 ボクがカードをじっくり見て騒いでいる間にも、紗雪ちゃんは隣で頭を悩ませながらデッキを考えてくれています。これは邪魔しちゃマズいですね。わざわざやってくれているのですから、その厚意を無下にはできません。

 

 分からないことは後で聞くとしましょう。

 

 いやぁ、しかしなかなかイラスト良いですね。超獣世界の住人って雰囲気がしっかり伝わってきます。これは大人にも人気があるんじゃないでしょうか。

 

 躍動感あるポージングも、子供の興味をさぞ引くことでしょう。

 

 ネーミングも時々厨二心をくすぐるような、カッコ良いものが多いですし―――

 

 

 

 

●ドンドン吸い込むナウ

●ドンドン打つべしナウ

●ドンドン叩くナウ

●ドンドン守るナウ

●どんどん掘るナウ

 

 

 

 

 ボクは見なかったことにしました。

 

「おや? これは……」

 

 それからしばらくして、ひと際目をひくカードを見つけました。一見他となんら変わらない普通のカードなのですが、イラストが特徴的です。なんとパックを剥いたような絵なのです。

 

 

 

 

●カモン・ビクトリー

 

 水文明   呪文

 

 3マナ

 

 ■S・トリガー

 ■E2またはE3のブースターパック1袋を開封し、その中から1枚選んで手札に加える。残りを自分のコレクションに加える。

 

 

 

 

 ???????

 

 開発者は一体何を考えてこれを作ったんでしょう……。最早存在からして意味不明なんですけど。まるで意味が分からんのですが。

 

 恐らくこれは、開発側のお遊び的なカードなんでしょうね。そうだと思いたいです。まぁでも、こういったユニークなものも子供向けカードゲームなら、案外アリかもしれません。

 

 第一、こういう悪ふざけ的なカードが大会環境に割り込んでくるなんてありえませんしね。……ないですよね?

 

 しかし更に見ていくと、カードの印刷が上下逆になっているものや、明らかに子供の落書きなんじゃないかってものとか、別の漫画のキャラクターが描かれたものとか、とにかくネタ臭漂うものがまぁ出るわ出るわ、それこそネタカードだけでデッキひとつ組めるんじゃないかってくらい発掘してしまいました。

 

 なんかちょっと心配になってきました。大丈夫なんですかこのカードゲーム? システムバランスは整っていても、プレイヤーのモチベーションを著しく低下させるようではちょっと手が出しづらいんですが……。

 

 いや! 大丈夫です、問題ありません。せっかく紗雪ちゃんとお友達になれたんです、ここで逃げたら一生カードゲームできなくなっちゃいます。それは嫌です。

 

 考えてみれば、悪いところがないTCGなんてありえませんよね。それくらいで挫けていたらカードゲーマーはやってられません。逆境を乗り越えてこそ真の決闘者ですよ。あ、こっちじゃ真のデュエマって言うんですか。ややこしいですね。

 

 よぅし! ちょっとやる気出てきましたよ! さぁ紗雪ちゃんがひと段落したら、前向きになっているうちに早速対戦し――

 

 

 

 

 

 

 

 

「カレーパンはどこじゃあ!」

「すべッカム!」

「カレーパン、好きだよな?」

「カレーパンを食ってやるぜぇ!」

「カツドンでダイレクトアタックだ!」

「馬鹿が! イカガ・イカガでブロックだぜ!」

「アン・ドゥ・トロワ! ハイサイ・ラッシャイ!」

「ああっ! 俺のメリコミ・タマタマがっ!」

 

 

 

 

 

 もう一回死ねば遊戯王の世界に行けますかね、神様……。

 

 

 

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