ようこそ!ダヴィンチちゃんの素敵な聖杯戦争へ! 作:はむらび
「で、結局令呪は手に入れたのか」
「もちろんです、先生。」
結局、アトラム君の右腕を強奪することにはならなかった。野郎の右腕なんて要らない。優秀な魔術師の右腕なら魔術的に価値はあるからまだしも石油王の右腕なんて廃棄コストがかかるだけだ。
え?その持ってるものは何かって?
簡単だろう?
『石油王に令呪を委譲する前の優秀な魔術師の右腕』の方をもぎ取ってきた。
まあ、優秀な魔術師といえど「魔術協会に配られる令呪を管理する」魔術師となれば、おそらくは法政科の魔術師だ。彼らは根源に興味がないが故に、生存に特化した魔術を扱い、そしてあくまで『魔術師』として考えれば強くはない。不意打ちすれば腕の一本くらいいけるいける。
「おい」
「どうしました?」
「法制科の?」
「はい」
「令呪を取り扱うレベルの重鎮から?」
「はい」
「右腕をもぎ取ってきた?」
「そうですね」
「お前、自分が何をしたかわかってるのか?」
「大丈夫ですよ。あの人なら腕くらいあとで生えてきますから。魔術刻印を破壊したで無し、何の問題もないじゃないですか。」
「大アリだ馬鹿者め!」
何が問題なんだろう。まさか先代ロードエルメロイが刻印を破壊された時の忌々しい過酷な労働の記憶でも蘇ってきた?すごく奔走してたらしいしな・・・
「そうですね。とりあえずあとで謝ってきます。」
「そうじゃない!そうじゃないんだ!」
そうか。謝る必要もないか。
「そうですか。ならあとは先生、よろしくお願いしますね。」
「おいお前怒られた理由わかってて言ってるだろ」
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サーヴァントの呼び出しという点に置いて、最も重要なのは能力か?違う。宝具か?はたまた性格?それも違う。
「狙ったものを」「安定的に」呼び出せること。それに尽きる。
たとえば「オジマンディアス」。ギルガメッシュ級の大英雄の上慢心しない王の中の王。妻を愛し民にもある程度寛容。宝具は超ド級の神殿、神獣、船。触媒としても大英博物館に「本人のミイラ」が存在するが、
『呼べない』。聖杯に託す願いがほとんどないため呼んでも来ないが、嫁の遺物を使えばブチ切れて出てくる。
そして愛する嫁の墓を荒らした不届き者を誅した後、自害して座に戻ってしまう。
たとえば「スパルタクス」。かのローマ帝国にほんの十数名で叛乱を引き起こし戦力を瓦解させること無く奮戦した指揮官であり、本人も闘技場と戦場で闘い抜いた熟練の剣士。そしてぎりぎり神代にならないくらい古い史実の英霊であり、知名度も問題ない。しかし、圧政者への叛逆を根底としている為、例えどのクラスで呼ぼうと
たとえば「エミヤ」。奈須きのこの考えた最強のサーヴァント。未来の英霊であり、触媒がほとんど存在しない。というか「未来の英霊を呼ぼう」と発想できるマスターなど居ない。発想したとしても触媒の当てがない。
たとえば「ハサン・サーバッハ」。18人居る。ひとりひとりが高ランクな気配遮断と暗殺特化の宝具を誇る。人格的にも問題ない。髪を伸ばし、鋼鉄の硬さにして首を撥ねたり、相手の心臓を遠隔から握りつぶしたりなどの能力は、基本どの聖杯戦争でも強いだろう。「18人のうち誰が呼ばれるかはわからない上宝具についての想像ができない」という点を除けば。
そして「神霊」。強い。呼べない。仮に呼べるなら聖杯なんて必要ない。
故に、サーヴァントを呼び出す時は「その遺物が本物であり、安定的に狙ったものが呼び出せるか」確証の持てる触媒を使う必要がある。
という訳で触媒は、「魔術的な」方向から手に入れるべきではない。魔術的な観点からは、触媒の真贋についてはあまりわからない。分かるのは、その触媒に残る神秘のみである。
つまるところ「それが触媒になり得るか」は魔術的な方法でのみ、「それが誰の遺物か」は科学的な方法でのみ鑑定が可能ということだ。勿論「推測」で良いならどちらでも可能だが。
ただ、表の顔はただの名家のボンボンである僕が頼んだところで、科学の粋を集めた鑑定はしてもらえないだろう。
じゃあ、鑑定が終了した物を持ってくればいい。
「ツタンカーメン王のマスク」「チャールズ・バベッジの脳髄のホルマリン漬け」「へし切曽我部」etc…
鑑定が終了している遺物は、得てして美術館や博物館に置いてあるものだ。
それでも来なかったオジマンさんも居るけども。
少し借りてこよう。
大丈夫、あとで返すし。
では次。サーヴァントを選ぶ時に2番目に考えるべきこと。それは汚染聖杯への耐性だ。
メディアさんクラスの正統派キャスターなら問題無く汚染聖杯を使える。
ダビデ王は「キリストの祖」としての性質上聖杯への耐性を持つ。
希望と同化したような英霊を呼んで相殺するというものも考えられるが、そんなサーヴァント多分居ない。
アンリマユを内部から除去できればいいのだから、神殺しのスカサハや、固有結界の中の神性を焼却する織田信長でも確実性は無いが可能性はある。
後は「聖杯」そのものにアクセスできる天草四郎時貞。コイツは持ってる願望が厄介だしおそらく呼べない。
確実性を考えるなら正統派キャスターかダビデだ。
その次にやっと来るのが性格だ。
ソロモンさんは帰って、どうぞ。
次に戦闘力。
メディアさんとプラヴァツキー夫人は第五次では生き残れない。短剣とUFOじゃ無理。お帰りください。
そうなると、ここまでFate全作品で登場したサーヴァントのうち、残るのはダビデ王とダ・ヴィンチちゃんだけだ。氷室の天地はよくわかんないから割愛。
ダビデ王は聖杯戦争中でもフリーダムに動きそうだし王様だし扱いが難しそうだしうっかりしたら自害させちゃいそうだから呼び出すのはダヴィンチちゃんで。
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サーヴァントを呼び出す前に、準備が当然ながら必要だ。具体的には工房と魔法陣。これによりステータスが向上したりとかするわけではないが、召喚した時に「持ってくる」魔力量が増える。魔力供給を少し軽くする程度だが、やっておいて損はない。
工房に必要なのは、霊脈と手間だ。
科学的に考えてしまうなら、電気が長い電線を通ると抵抗で少しづつ少なくなるように、川を流れた水が下流では勢いを失うように、魔力も回路が長いほど、複雑にするほど少なくなっていくはずなのだが、どうもそうはならないらしい。
魔力を余すことなく流転させることが必要故、工房には手間をかけ、長い回路を構築し、きちんと召喚用の物を整えるのが必要だ。
ロード・エルメロイ二世監修のため、工房としての隙はない。
足りない物資や礼装なども存在したが、友人に頼み投影魔術で三十分ほどの間のみ用意してもらった。儀式用ならこんなものでいい。衛宮士郎が規格外なだけで、これだけでも十分に使える。というかそもそも『撃ち出す』ことが前提なら現世にとどまっている時間は三十秒ほどでいい気もする。
霊脈は時計塔の物を引っぱってくればいい。実家まで帰るのは時間の無駄だ。
魔法陣はダ・ヴィンチを呼ぶことに合わせ、当時使われていた絵具に似たもので描いた。赤の絵具なのは、さっき獲ってきた魔術師の血を混ぜても違和感を起こさないためだ。そこそこの魔術師の血なら十二分な魔力を持っている。召喚の助けにもなるだろう。
触媒は大英図書館から拝借してきた『レオナルド・ダヴィンチ手稿』のうち、アランデル手稿と呼ばれる代物。
さあ、召喚を始めようか。
ダヴィンチちゃんを呼び出すと思った?
残念!それは次回だ!