ようこそ!ダヴィンチちゃんの素敵な聖杯戦争へ!   作:はむらび

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今回はロマニ以外の話。
つまりロマニ≠主人公ってことだ!


第六話「経験者の教える主人公力!上巻」

聖杯戦争。それは、七騎のサーヴァントを戦わせることにより、『万能の願望機』を取り合う儀式。だが、世界を救ったり根源を目指すなどの無理難題でないのなら、実はリスクとリターンが釣り合ってなかったりする。

 

私たち「沙条」の家は、冬木市に何代も拠点を築きながら、聖杯戦争には参加していない。理由はいくつかあるが、正直根源に至るのに聖杯を使うのは単に最終手段でいい、というだけのことだったと思う。魔術を極めた一族の党首に、触媒を集めるための多額の金銭。それに拠点の立地上、我が家(工房)をも失う可能性が極めて高い。まるで論外だ。

故に、私たちの一族としての方針は『傍観して、遠坂か間桐が根源に到達したらその分の霊脈をぶんどる』くらいのもの。つまるところ、ぶっちゃけそんなに興味がないのである。

 

 

まあ、それは単なる『一族の方針』にすぎない。

ここからは、『私の方針』だ。私は魔術師だ。だが、魔術師だと胸を張って言えるほど人間を辞めてはいない。

こう例えれば簡単だろう。

「明日、地震が起こることを貴方は知っています。さて、どうしますか?」

 

ここで「それを利用して自分が得をする方法を考えます」という人、魔術師に向いています。

ここで「それを防ぎ、すべての人々を救います」と考えてしまった人、底なしのバカか、英雄に向いています。

 

だけど私は凡人なので。

 

全てを救うなんて夢物語は実現なんてできないし、かといって昨日まで仲良く話していた友達が無残な死体に変わったりするのを見るのはとてもじゃないが嫌なので。

 

不思議系森ガールを騙る私としてはとても心外ながら、パトロールとやらをやっているわけである。

 

「まあ、こんなパトロールしたところでどうにかなるわけじゃないのだけれど。」

そう自嘲的に呟きながら歩いていると、何処かから金属音が聞こえた気がした。

普通ならまあ、気のせいだと断じてまた歩き出すだろう。私だって何時もはそうする。

 

だが今は普通ではないのだ。何か違和感を感じたら、それは全てサーヴァントの仕業だ!

 

・・・なんてほどではないけれども。大方、魔術師である私には即席の結界の効きが悪かった、くらいのものだろう。

 

今は夕方。聖杯戦争を行うとしてはまだ速いが、まあ、人通りも少ないし『起こっていても不思議ではない』。

とりあえず、私に聞こえる程度のものなら、『多少霊感の強い』一般人にも聞こえかねない。野次馬根性の輩が死なない程度に、私は避難誘導を開始する。

うっかり自分が死んでしまわないように気を付けながら。

 

side out

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

頼まれたことをすべて終わらせ、さて家に帰ろうかと思い立った直後、なにか近くで交通事故が起きたような、そんな音がした。普通の人間なら「何が起きたのだろう」と駆け寄ると思う。愚かな判断だ。俺はそのとき、「助けなければ」という、あとになって思えばバカみたいな感情に突き動かされて、そんな野次馬よりさらに愚かで、そしてかけがえのない判断を下したのだろう。

 

校庭が見えるところまで走り抜いた時、そこに居たのは圧倒的な異常だった。

 

だっておかしいだろう。槍を持った青タイツの青年に、双剣を構えた赤服の男、それに大盾を構えた少女(・・・・・・・・)が、己の武器を構え、今にも殺し合いを始めそうな様相を成している。

 

その後ろには何時ものような表情を崩さない遠坂が居た。それだけならそのまま逃げてしまっていたかもしれない。

アイツならなんとかしてしまうのではないかというものすごく甘くて自分勝手で、そして実は的確な推定をしてしまって。だけど、もう1人。そこには目に光の灯っていない(・・・・・・・・・・)赤毛の少女(・・・・・)がいた。

 

おそらくこの異質すぎる状況に恐怖を覚え、身動きすら取れないのだろう。そう早合点した俺の身体は、前に向かって走り出していた。

 

青タイツの男が嗜虐的な笑みを浮かべこちらに突撃してくる。それでいい。

 

あの2人が逃げる時間を稼げるのならば。

俺はカバンに強化魔術をかけ、迫り来る槍への盾とする。

 

一閃。赤い槍が振るわれ、途轍もない衝撃が腕にかかる。

それで構わない。俺はカバンを捨て、恐怖で機能を停止してしまった声帯を無理矢理震わせた。

 

「逃げろ」

 

そう言い終わった時、背後から赤い槍が俺の心臓を貫いた。

ああ、ダメだ。逃げる時間を稼げても、恐怖に足がすくんだ人間1人を救うことも出来ない。もっと、力が必要だ。

無理矢理にでも、女の子1人を救い切れる力が。

 

ああ、なんて虚しいんだ。自分が死んでしまうだろうということではなく、自分が誰も救えなかったということが。

 

side out

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

私は今でもふと思う。彼等にもう1度会うことはできないかと。どれが正史でどれがイフだったかではなく、彼等にもう1度会って、「私は大丈夫だ」と伝えることができればと。

 

魔術回路はたまたま人並みにあるようだが、魔術師の家に生まれたわけでない私には、英霊を呼び出す手法など全くもって分からない。英霊に話を伝える手法なんてもってのほか。時代や世界線が違うから私も魔術師(ウィザード)ではなく魔術師(メイガス)として魔術は使えるし、コードキャストの要領で魔力を循環させれば軽微な魔術くらいなら使える。

だけど、英霊召喚なんて大魔術、使えるべくもないから。

こうして毎晩、私は祈るのだ。

仏壇に祈れば先祖に話が届くように。神社に祈れば神が話を聞いてくれるように。月に祈れば、彼等(英霊達)もまた話を聞いてくれるのではないかと。

 

まあ、この世界線ではムーンセルは活動していないと、生まれ変わった時に聞いたので、届くことはないのだろうが。

 

とりあえず何があったかの説明を今更ながら始めよう。

 

私、サイバーゴーストとして月で生まれた岸波白野は、紆余曲折あって勝ち残る()がいくつか存在したらしい。そして、私が受肉を望んだ、または彼等(サーヴァント達)に受肉させられた可能性の集積体が私だ。

ただ、ムーンセルの人理観測システムにとっては私たちのように過去を改変する勝者というのは極めて不都合らしい。

 

故に(ムーンセル)はこう理論を提唱する。

『ムーンセルが活動停止した世界線において受肉させれば何ら問題は無い』

 

だから、私が共に戦ってきた彼等は現実世界どころか霊子虚構世界にも存在しない。それについて自覚はしているが、それでも私は月に祈る。この世界線以外には、必ず彼等が居ることを知っているから。

 

 

 

ビリッ

 

 

 

後になって考えてみると、ここでまたこの刺さるような痛みが起きたのは偶然だったのだろう。だけど、左手にこの懐かしい紋様が浮かび上がったことを、私は必然だと思いたい。

 

そして月を見上げる私の背後、お粗末ながら工房と化した私の部屋(マイルーム)に、風が吹き荒れた。

 

知っている彼等が来ることを望みながら、また、今度は誰が来てくれるのか(・・・・・・・・・・・・)を期待してしまう自分も居た。

 

見知った顔が来るのか、見知らぬ顔が来るのか。

 

聖杯戦争に参加する心構えも持たないままに期待に胸を膨らませる様は、後で考えてみると浅はかだったけど。

 

 

 

そして私の前に現れた顔は、一度たりとも会ったことがない、それでも知っている顔だった。

 

 

 

 

「エルキドゥ?」

 

side out

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うん。やっぱファスト風土化してるなーここ。」

「先輩、そのセリフは二度目ですし、前回来た時はここは世紀末でしたので、ファスト風土では無かったですよね。」

「炎上してもわかるものだよ?ふいんきで。」

「先輩、雰囲気です。」

こんな軽口を叩きながら私たちはこの発展してんだか発展してないんだかわかんない街にレイシフトしたわけであります。

「ところで所長、今回はどうすればいいの?」

「敬語を使いなさい敬語を。今回は2002年の冬木市ね。毎回のことだけどここもまた特異点化しつつあるわ。」

「要はいつものイベントですね。」

「やめなさい」

「ところでですが所長、周囲に敵性反応はありますか?」

そう問われた所長が答える前に、その上空から赤い双剣使いが降ってきた。

 

「早速だ!やっちゃえシールダー!」

「クラス名で呼ばないでください先輩」

「でもこれ、聖杯戦争でしょ?参加してる気分に(・・・)くらいは浸りたいと思わないの?」

「別に…」

なるほど。マシュマロおっぱいにロマンを求めるのは間違っていたか。

「ちょっと待ちなさい!まだ味方かもしれないじゃない!」

「構いません。サーヴァントを全滅させれば特異点は消えます。」

「ダメです所長!先輩(バーサーカー)に話は通じません!」

心外な。そんなふうに見られてたのね…

「ところでもう夕方ですし、平凡な日本人としては貰えるものを貰えないのも嫌だし。というわけで令呪をもって命ずる。『今日は勝手にしなさい』。というわけで私は放置で。」

 

「え?先輩…」

 

放置で。

 

落下してきた赤い弓兵とそのマスターらしき少女を追って、槍の兄貴も降ってきた。

「やっぱ両方警戒してるねー、いつものことだけど。」

「完全に他人事ですね先輩」

「そこは『マスター』と呼んでよ」

 

降ってきたのは『エミヤ』と『クー・フーリン』。女難の相が共通するサーヴァント達です。

エミヤのマスターは黒髪の少女。クー・フーリンのマスターはこの場には居ませんが、女難の相を持つ彼のマスターならきっと女性でしょう。

「先輩!危ないです退いてください!」

当然だ。戦闘態勢に入った英霊2騎のすぐそばで警戒もせず突っ立ってるなんて、普通に論外だ。

 

「だが断る!」

「なんでですか!」

「『勝手にしろ』」って言ったでしょ?わたしも勝手にするから。」

何より、盾の英霊なら私を守るくらいして見なさいな。

三竦みの睨み合いの中で最初に仕掛けたのは兄貴(ランサー)。突っ立っている私を最初に処分しようと走り出すが、盾の英霊をその身に宿したマシュが止める。

その隙にオカン(アーチャー)が双剣でランサーに切りかかるが、最速のサーヴァントは伊達ではなく、難無く躱す。まあ、現状最速のサーヴァントはライダー(アキレウス)アーチャー(アタランテ)だから死に設定では有るんだけども。

 

神域の決闘をただ傍観していた私より先に、修羅場を駆け抜けてきた英雄達は、戦闘をしながら気づいた。

 

『誰かが見ている』

 

それだけなら良かった。とりあえず後で処分されるだろうが。

あろう事かその覗き魔(少年A)はこちらに、無謀にも走りかかってきたのだ。

 

なんだコイツバカか?

 

カバンを盾にランサーの攻撃を弾いた辺り魔術師ではあったのだろう。しかし、人理保障機関 フィニス・カルデアに数合わせで呼ばれた私よりも遥かにお粗末と言っていい。

 

当然のようにランサーは追いついてもう一撃。彼の命は躊躇なく絶たれた。

 

その瞬間、彼の口が微かに動いた気はした。それが何だったのかに興味は無いし、その内容についてはどうでもいい。

 

重要なのは、私と、マシュ(・・・)がそれに気を取られたということだ。

 

兄貴は仕事人だから、その隙を見逃さない。アーチャーもドライだから、敵を助ける真似はしない。

 

 

紅い槍が私に上から迫る。

 

 

 

突然だが、自然の摂理をおさらいしよう。慢心したものは死ぬ。

 

 

これは正しくない。

逆に考えよう。英雄王(ギルガメッシュ)は慢心してもそうそう死なない。

 

 

 

 

 

わたしはその紅い槍を左手で軽く止める。

 

 

言い換えよう。慢心とは、強者の特権であると!

 

 




ダ・ヴィンチちゃん「愛歌ちゃんもジークくんも切嗣も『両儀式』もアルクちゃんも居ないなんて!これは大勝利だよ!ロマニ!」
ロマニ「上3人はまだ良い。ただしリヨぐだ子、てめーはダメだ。」
毎日回復する令呪に最大6騎のサーヴァント、万全なバックアップ。しかもマスターすらサーヴァント級とはこれいかに。
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