BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1988年
スペンサーの命令の元、アルバート・ウェスカーとウィリアム・バーキンがマーカスを殺害。マーカスの記憶と思考は変異ヒルが吸収する。


chapter 2-3

・見滝原市立病院、病室。

 

 

 

「……ん……」

 

ほむらが目を覚ますと、白い天井が見えた。

 

(病院……? 私は……)

 

ほむらは意識を失う前の事を思い出す。

 

(あの怪物をイレギュラーが倒して、気が抜けてしまったのね……)

 

勿論、腹の傷の事もあっただろうが。

一応自分の腹を見てみようと、ほむらが起き上がった所で、

 

 

 

 

 

 

 

(え…………)

 

 

 

 

 

 

 

自分のベッドにもたれ掛かって寝ている人物がいた。

 

「ん……」

 

と、目を覚ましたらしく、瞳をこちらに向けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん起きた~」

 

 

 

 

 

 

 

緑色の髪を揺らしながら、“千歳ゆま”はそう言った。

 

(……この子は……)

 

彼女は別に“今の彼女"を知っているのではない。

かつて繰り返した時間軸の中に、彼女と共闘した時があったのだ。

 

「……あなた、どうしてここにいるの?」

「“あなた”じゃなくて、“ゆま”」

「…………何故ここにいるの、千歳ゆま」

「お兄ちゃんが、ここでお姉ちゃんと待ってて、って言ったの」

(お兄ちゃん? イレギュラーの事かしら)

 

考えるほむらを他所に、ゆまは“お兄ちゃん”について話し出す。

 

「大っきな“カエルさん”にゆまが食べられそうになった時に、お兄ちゃんがドカーンってやっつけたの。凄かった~」

(“カエル”があの怪物なら、私が遭遇する前から戦ってたのかしら?)

 

どちらにせよ、彼に聞かなくてはならないのには変わりない、とほむらは思う。

 

「わたしも戦えるかな?」

 

ゆまが丁度そう言った時に、

 

 

 

 

 

 

「起きたみたいだな」

 

 

 

 

 

 

病室の扉を開けて竜二が入ってきた。

 

「お兄ちゃ~ん」

「どうした? ゆまちゃん」

 

足元に駆け寄ったゆまに、少し屈んで竜二が聞く。

 

「ゆまも、お兄ちゃんみたいに強くなれるかな?」

「…………」

 

一瞬顔を固くした竜二だが、すぐに笑顔を作ると、

 

「ああ、きっと、お兄ちゃん以上に強くなれるさ」

「ホント!!?」

「ホントだ」

 

両手を挙げて喜ぶゆまの頭を撫でると、竜二は後ろにいた人に話しかける。

 

「この子の事は、任せます」

「ええ。さあ、ゆまちゃん。おじさんと遊びに行こうか」

「おじさん、誰?」

「おじさんはね……」

 

ゆまを連れて、その人は病室を去って行く。

 

「市の児童保護施設の職員だ。心配はいらない」

 

竜二がそう解説する。

 

「…………」

 

ほむらはジッと彼を睨みつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの子の両親は駄目だった」

 

 

 

 

 

 

 

「!」

「これは俺達のミスだ……。“追手”を一体と考えたのが間違いだった」

「追手?追われる様な事をしたの?」

「念を入れられたんだ」

 

静かに竜二は言う。

 

「あなた……。何者なの?」

「所属は言えんが、ある組織の下っ端(エージェント)だと思ってくれ」

 

竜二はほむらの目を見て言う。

 

「目的は兵器の違法取引の差し押さえだ」

「兵器?」

「あの怪物の事だ……。あれは“リッカーβ”と言うB.O.W.(有機生体兵器)、生き物の体弄くって出来た兵器だ」

「!?」

 

想像を超えた話に、ほむらは絶句する。

 

「元々は、アンブレラって言う会社が作ったウィルス兵器が発端でな。それを使って二次的に作ってるのがアレって事だ」

 

多少博学な人なら、この世代でもアンブレラ社は聞いた事があるだろう。

だが、この世界に数日前にきたほむらに知る由も無い。

 

「ウィルス兵器……!?」

「そう、遺伝子を変異させるウィルス兵器だ。ばら撒いただけで、“リビング・デッド”の再現が起こっちまう」

「そんな危険な物がこの街に!?」

「アンブレラ自体は潰れたが、兵器は残っててな。安価で応用性が高く、核より有効って訳で全世界に広がってるんだ」

 

淡々と語る竜二。

 

「そんな……」

「まあ、心配するな。それを食い止める為に俺やBSAAがいる訳だし、お前はお前の事(魔女退治)をやればいい」

「……そう言ってもいられないの」

「何?」

 

険しい顔をしたほむらに竜二が聞く。

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ、この街に“ワルプルギスの夜”が来る」

 

 

 

 

 

 

 

「ワル……、何だって?」

「魔法少女の間で伝説になってる魔女よ。天変地異を引き起こすと言われてる」

「何でそれが来るって分かるんだ?伝説だろ?」

「……それは言えないわ」

「……、まあいい。で、それが来るとどうなるんだ?」

「“聞いた話だと”、ワルプルギスの夜は出現と同時に、巨大な嵐を引き起こすらしいわ」

「…………成る程な」

 

話を読んで、険しい表情を作る竜二。

 

 

 

 

 

 

 

「嵐が起きれば、治安も交通も無茶苦茶になる。そこで“兵器漏れ”でもしたら……」

「……まあ、相当な被害が出るだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ面倒になってきた。

 

「未曾有のバイオハザードを防ぐには、そのワル何ちゃらが来るまでに取引を抑えて、兵器を運び出すか処分するかしかないな」

「……そうね」

「そのワル何ちゃらの事は、マミちゃんに話したのか?あの子も魔法少女だろ?」

「巴マミはあのショックで寝込んでて、話せてないわ」

「あ~」

 

お菓子の結界での経験の事は、まどか達から少し竜二は聞いていた。

 

(それだけじゃない。美樹さやかに佐倉杏子の事もある。止まってはいられない)

 

そう思うと、ほむらはベッドを降りて腕に刺さっていた点滴の針を抜き、近くの手荷物を持って病室を出ようとする。

 

「どこに行くつもりだ? お前は……」

「もう平気よ」

 

答えると、ほむらはドアに手を掛け、竜二の方を振り向いて、

 

「ワルプルギスの夜の出現には大きな魔力予兆がある。それは私達にしか分からない。だから、一刻も早く、取引を押さえて。此方は此方でやるわ」

「じゃあ、予兆があったら連絡くれないか?」

「……そうね」

 

互いの連絡先を交換する二人。

 

「此方も何かあったら連絡する。この事は呉々も内密にな」

 

竜二が言うのを聞いて、ほむらはドアを開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほむらちゃん!?」

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

開けた先には、まどかがいた。

中にいた竜二も目を丸くしてる。

 

「大丈夫!?通り魔に刺されたって、二日も起きなかったんだよ!心配したんだからぁ~!」

 

若干興奮気味で言うまどか。

 

『……私、そんな設定だったの?』

『うお、これが念話って奴か……。まあな、表に出したら騒ぎになるからな』

 

因みに、最初の新型のは“廃工場に不法投棄された有害物質発見”と言う名目で一帯を封鎖してる。

 

「もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」

「ほんとに良かったよぉ〜」

 

涙ぐみ始めたまどかを見て、ふと、何か引っ掛かりを感じるほむら。

 

「……あなた、さっき何て言った?」

「へっ? ほんとに良かったって……」

「その前よ」

 

 

 

 

 

 

「ん~っと、通り魔に刺されて、“二日”も起きなかったって……」

 

 

 

 

 

 

「っ嘘!?」

「ふえええええ!?」

 

急に詰め寄られて、焦るまどか。

 

「その間、何かあったの!? 答えて!!」

「ちょ、顔が近いよぉ~!?」

 

クールなほむらの珍しい様子に完全に気圧されるまどか。

 

「……ごめんなさい」

 

まどかの様子に気付き、すぐに引くほみら。

 

「そんな、謝る事じゃないけど……」

「……聞かせてくれる?」

「えっと…………」

 

ほむらは、既に嫌な予感を感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が魔女に捕まったのを、さやかちゃんが助けてくれたんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………何て事…………)

 

ほむらは愕然とする。

自分が寝ている間に、一番の“危険因子”が動いてしまったのだ。

 

「…………」

 

ほむらはそのまま歩き去ってしまう。

追いかけようとしたまどかは、此方に気付いて一旦会釈し、また追いかけに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……行ったか)

 

竜二は、自分しかいない病室で連絡を取りだす。

 

「ジョージ、あの子に話しちゃって本当に良かったのか?」

『下手に嗅ぎ回られるよりはマシだろう、あの子も不思議パワーの持ち主だし。それに事態が事態だから、近い内に隠すのも難しくなるだろうしな』

「良いなら良いんだけど。……まあ、聞きたくなかった情報も手に入れたしな」

『“ワルプルギスの夜”か……。元は北欧の魔女達の祭りを指す物なのだがな…………』

「その天災が来るまでに片付けないといけなくなったんだ、案外、このタイミングで“アイツ等”を呼んだのは幸運だったかもな」

『その彼等だが、もうすぐ到着するみたいだ』

「OK、迎えにでもいくか」

 

病室を出て、廊下を歩き出す竜二。

しばらく歩くと、前方から誰かがこっちに向かってくるのに気付いた。

その人物、中学生くらいの灰色の髪の少年は壁の手すりを掴んで一歩ずつ進んでくる。

 

「…………」

 

二人は何事もなく、そのまますれ違う。

 

「うわっ!」

 

と、足が縺れたのか、少年が突然バランスを崩す。

そのまま倒れ込むかと思われたが、

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 

 

 

 

引き返した竜二が襟を後ろから掴んで止めていた。

 

「ありがとうございます」

「どういたしまして。今日はリハビリかい?」

「いえ、飲み物が欲しくて自分で買おうとしたんですが……、やっぱり無茶でした」

「若いのに苦労してんな。ついでだし、俺が付き添ってやろう」

「いいんですか?」

「急ぎの用事も無いし、放っといて怪我された方が気分が悪いしな。入口の所で良いか?」

 

 

 

 

 

 

 

そのまま、少年の速度に合わせて歩き出す竜二。

その間、二人は読んでいる漫画や、昨日のテレビの話題など他愛のない世間話をしていた。

それは時間が経つに連れ、自然と少年の身の上話に変化していく。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、その足は事故の後遺症だったのか?」

「足だけじゃなくて、最初は殆ど全身麻痺してたんです。右手はすぐに回復したんですが、それ以外は駄目で、特に左手は絶望的だって言われました」

「ふーん……? その割に、左手は機敏に動いてるな」

「ええ、それが、一昨日になって急に動く様になって、先生も驚いてました」

 

少年はまるで歌うように語る。

 

「僕は幼い頃からバイオリニストを目指していて、自慢じゃないですが、コンクールで表彰された事もあったんです」

「ほ~。凄いじゃないか」

 

素直に感心する竜二。

 

「でも、今年になって事故に遭ってしまって……、病室で横たわりながら、何で自分はここにいるのかって、もう、悪夢のような日々でした」

「…………」

「先生が左手は諦めろって言った時は、目の前が真っ暗になりました。そのせいで、幼馴染に八つ当たりしてしまって……、最悪でした。でも、一昨日になって左手が動くようになって、バイオリンを続けられると知った時は、涙が止まりませんでした。きっと、神様が奇跡をくれたんだと思います」

「…………俺はそうは思わんな」

 

こちらを見る少年に対し、竜二は静かに続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「奇跡はただ上から降ってくる物じゃない、対価を出してルーレットを回すような物だと俺は思う。でも、回すための対価は要らない。対価は、当たり目を増やす為に出す物なんだとね」

「当たり目を増やす……?」

「そ。何も出さなきゃ当たり目は無いし、出せば出すほどそれは増える。でも、結局は運任せだって事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

竜二は、少年の顔を覗き込む様にする。

 

「お前も、その奇跡があったって事は、何か対価を出してるって事なんだよ」

「…………それって、僕が祈祷か何かしてたから、っていう事ですか?」

「アハハハハッ。そうじゃない。別に、対価は決まってる訳じゃないんだ」

 

少し戯けた感じで竜二は言う。

 

「昔、ある人がこう言ったそうだ。“人の運命は、その人の過去が決める”ってな。どんな形でも、お前の過去の何かが対価になってるんだよ」

「僕の過去が……?」

「ただ、“過去”と言っても、お前だけの事じゃない。お前に関わった人も含めて“過去”だ。それがお前の対価になって、お前の奇跡を引き当てたんだよ」

「…………」

「ま、あくまで俺の考えなだけなんだがな……っと」

 

竜二がその歩みを止める。

 

「無事に着いたようだな」

 

話してる内に、二人はロビーの自販機前に来ていた。

 

「何飲むつもりだったんだ?」

「コーラか何かを……ってちょっと!?」

 

少年が止める前に、勝手に竜二はコーラを買ってしまう。

 

「まあ、こいつはその手のお祝いって事で。遠慮すんな」

 

呆然とする少年にコーラを手渡すと、竜二は少年に背を向ける。

 

「悪いが、帰りは看護師さんに見て貰いな。急ぎでは無いが、用事はあるのでな」

「え……、あの」

「俺が結局言いたかったのは、事が落ち着いたら周りの人達に、しっかり礼言っとけって事だ。特に家族や幼馴染何かには、二三度は言っときな」

「…………あの!」

 

立ち去ろうとする竜二を、少年は引き留めようとする。

 

「ん?」

「その、名前聞いても良いですか?」

「……ハハッ。そういや、言ってなかったな」

 

竜二はもう一度少年と向き合って、

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、竜二・K・シーザー。お前は?」

「僕は、上条恭介、です」

「上条恭介ね。覚えておくよ。テレビで見かけるかもしれないから」

「まだ当分先でしょうけどね」

 

 

 

 

 

 

 

暫く互いに笑い合うと、竜二は病院を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「竜二さん、か……」

 

近くの椅子に座った恭介は、渡されたコーラの栓を外す。

 

「……さやかに改めてお礼を言おう」

 

コーラを飲みながら、そう思う恭介だった。

 

 

 

 

 

 




間が空きました。B.O.A.です。

反応から分かるかもしれませんが、今回、ゆまは両親の死を知りません。
これが物語に関わるかは未定です。

それと、この病室は竜二のコネで用意した物です。勝手に出てってもさして問題は無かったりします。

補足はこんな物かと。
また、間が空きますが、応援して頂けたら幸いです。
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