BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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ボイスレコーダーの調子は……っと、概ね良し。
台本も覚えたし、そろそろ始めるか。
カウント、3、2、1、



ここまでの、“BIOHAZARD”。



日本、世界で最も戦争から遠い国。

その国で、生物兵器の取引があるという情報を得た俺こと、“竜二・K・シーザー”は大統領の命令を受けて見滝原市を訪れる。

そこで俺が目にしたのは奇妙な“怪物”と、彼等と戦う謎の少女達だった。

“魔法少女”と名乗ったその少女達は、自らの願いと引き換えに人知れず“魔女”と“使い魔”と戦う使命を背負っていた。

だが、そんな事は俺の知る事ではない。

彼等に背を向けようとした俺だが、そこである情報を聞く事になる。

伝説の魔女、“ワルプルギスの夜”がこの街にやって来るとの事だった。

大嵐を伴って現れるその魔女がこの街に来れば、確実に未曾有のバイオハザードが発生する。

丁度その頃、俺の現地協力者が突然殺され、俺はBSAAに協力要請を出していた。

俺は彼らと共に、いち早く取引の実態を掴む必要に迫られていた…………。




Chapter 3 -Excambium et Desideriis-
chapter 3-1


・見滝原市、ほむら宅。

 

 

 

街の中心街から少し出た、小さく古いアパートにほむらは部屋を借りている。

改装しているらしく、アパートの見た目に反して部屋は、住居と言うより寧ろ芸術作品か何かのような、前衛的なデザインの一室になっていた。

 

(不味い事になったわね……)

 

部屋の中央には天井で振り子が揺れており、壁には沢山の写真や資料のような物が貼られている。

その振り子の下には円周状に背もたれの無い長椅子が数個並んでおり、その一つにほむらは腰掛けていた。

 

(巴マミが生存したまでは良かったけど、今となっては、完全に裏目に出てしまった……)

 

悩みの種は、さやかの契約にあった。

今までの経過上、さやかが魔法少女になった時は、ほぼ確実に杏子とさやかは対立する。

そして、魔法少女の“真実”が明らかになるのだ。

 

(特殊な例でもない限り、巴マミのメンタルでは真実に耐えきれない。最悪、私にも被害が及ぶ可能性がある)

 

良い時で戦意喪失して自害、酷い時は発狂して無差別に暴れる時もある。

 

(この世界には想像以上の“イレギュラー”がいるけど、余り当てにしてもいられない)

 

そもそも、竜二は当初自らは関わらないと明言している。

人当たりは良さそうだが、無垢な少女が命懸けで戦っているのを見過ごせない、などといったようなお人好しな人物には見えなかった。

飽くまで、彼の目的は取引の差し押さえである。

例え、相談した所で一蹴されるのが落ちだろう。

 

(可能性は低いけど、真実が明るみに出る前に二人を和解させるしかないわね)

 

行動方針を決め、次の一手のためにほむらは動き出す。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市地下、下水道。

 

 

 

竜二、クリス一行は下水道の探索を続けていた。

見滝原市はそこそこ発展した街なので、下水道も当然広く、また複雑な構造をしている。

流れる下水のせいで、辺りは湿ってキツい臭いが充満しており、光源もライトしかないかなり劣悪な環境であった。

そのせいで、人より優れた五感を持つ竜二の長所が殆ど無意味になっており、彼等は慎重に探索する必要に迫られていた。

 

 

 

目的:下水道に潜むB.O.W.の手掛かりを探す。

 

 

 

「うへぇ、髪の毛が大量に流れてる……」

 

何気なく照らした水面を見て顔を顰める竜二。

 

「臭いもキツイし、最悪の職場環境だ」

「文句を言っても始まらんぞ、竜二」

 

竜二の愚痴に小言を付けるクリス。

 

「分かってるけどさ、五感が常人より強い分、イライラが半端ないんだよ……」

「やっぱり、変わるもんなんですか?」

「犬が香水で悶絶するみたいな物。強いのが常に取り柄になる訳じゃないさ」

 

ピアーズの質問に答える竜二。

与太話をしながらも、11人は常に周りに注意を向け、ライトで照らしていく。

今の彼等の頼みの綱は、銃身に取り付けたライトによる視覚だけだった。

 

「…………」

 

竜二は黙ったまま、壁沿いをライトで照らしていく。

 

(……やれやれ)

 

少し嘆息すると、ある一点でライトを固定する。

 

 

 

 

 

 

 

「……やはり君という存在はとても奇妙だ。今の僕は常人には見えないはずだからね」

 

 

 

 

 

 

 

ライトで照らされた白い獣、キュウべえが竜二に話し掛ける。

不思議な事に、クリス等は声すら聞こえてないようだった。

 

「…………」

 

黙ったまま、竜二は自分の頭をさりげなく示す。

意図を察したキュウべえが足下に寄ると、

 

『これでいいかい?』

『……何が目的だ』

『勿論、君自身の事だ。魔法少女や魔女の存在を知らないのに、君は魔女の結界に入り込む力を持っていた、普通に考えてあり得ない事だよ』

『触れたら飲み込まれただけだし、次も出来るとは限らない。何で出来たかは俺にも分からんから答えようがない。分かったら、とっとと消えて貰いたいね』

『やれやれ、冷たいなぁ』

 

キュウべえは目を瞑って呆れたような態度を取る。

 

『そもそも、見える事が異常なんだけどね。本当に心当たりは無いのかい?』

『…………』

 

竜二は最初の使い魔との遭遇を思い出す。

 

『……やはり、あるみたいだね』

『“そっち側”とは関係の無い要因だ。答えるつもりはない』

『となると、今君達の捜査の事かな? それにしては随分と重装備だけど、戦争にでも行くつもり……ッキュ!?』

 

いきなり、竜二が足下のキュウべえを蹴り飛ばす。

キュウべえはすぐ側の壁に激突して、悲鳴をあげる。

 

『俺は“そちら側”には自ら介入しないと明言した筈だ。必要性のある情報以外は知るつもりはない。だから、そちらも“こちら側”を詮索するな。必要な事はこっちから伝える。以上だ』

『……酷いなあ、蹴り飛ばす事は無いじゃないか』

『しつこいな、撃たれなきゃ分からないか?』

 

やれやれと言うようにキュウべえは首を振ると、そのまま立ち上がって闇に消えていく。

竜二は気配が消えるまでその後を見つめる。

 

「? どうした?」

 

その様子に気付いたクリスが竜二に尋ねる。

 

「……何でもない、気のせいだったようだ。」

 

竜二は顔を戻すと、また探索を続ける。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、さやか宅前。

 

 

 

さやかが玄関のドアを開けると、そこにまどかが立っていた。

 

「まどか?」

「あ……、さやかちゃん、その、これから……?」

「そ、悪い魔女を探してパトロール。マミさんの分も頑張らないとね~」

 

気合十分といった具合に言うさやか。

 

「一人で大丈夫なの?」

「へーきへーき。マミさんだってしてたんだし、今は迷惑掛けられないしさ」

 

それを聞いてまどかは一回息を飲むと、思い切って、

 

「あ、あのねっ。私、何にも出来ないし、足手纏いにしかならないのは分かってるんだけど、でも……邪魔にならない所までで良いの。行ける所まで、一緒に……連れてって貰えたら、って……」

「…………」

 

さやかは一旦キョトンとすると、優しく微笑んで、

 

「頑張り過ぎじゃない?」

「ご、ごめん……駄目だよね。やっぱ、迷惑になるよね……」

「ううん、そんな事ないよ」

 

そう言って、さやかはまどかの手を握る。

驚いた顔をしたまどかに微笑みながら、さやかは続ける。

 

「ね……分かる?手が震えちゃってさ、さっきから止まらないの。情けないよね。マミさんの分まで頑張ろうって言ったのに、一人だとやっぱ怖くてさ……」

「さやかちゃん……」

「すっごく嬉しいよ。まどかがいてくれて、付いて来てくれて、本当に嬉しい。邪魔なんかじゃない。心強くて、それこそ百人力って感じ」

「私……」

「マミさんや転校生みたいに、まだあたしは強くはないけどさ、でも安心して着いて来て。必ず守ってみせるから」

 

優しく微笑みながら、ただその目に決意を漲らせるさやかを見て、まどかははにかみながら、

 

 

 

 

 

 

 

「……うん」

 

一回、頷いた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市地下、下水道。

 

 

 

地下にて探索を進めていた竜二一行は、新たな局面を迎えていた。

 

「……これは……」

「間違いないな……」

 

一行が見つけた物、それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ……これで三人目だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民間人と思われる無惨な死体だった。

 

「原形が無いな……、無茶苦茶だ」

「食い荒らされたんだろうな……、恐らく、リッカーだ」

 

竜二とクリスが話していると、付近で調査していた隊員が、

 

「……あれ? 変だな……」

「どうした?」

「今血痕を調べてたんですけど、妙なんですよ」

 

近くで付近を警戒していたピアーズも寄ってくる。

 

「どういう事だ?」

「死体を引き摺った跡が無いんです」

「ここは下水道だぞ。地面の血痕は消える」

「そっちは自然なんですけど、近くのマンホールの下の壁にも無いんです」

 

隊員が示すと、確かに梯子にも血痕が無い。

 

「この死体はまだ日が経っていません。壁の血痕まで消えるとは思えません」

「という事は、ここまで態々遠くから延々運んで喰ったって事か?」

「そうとしか……」

 

クリスは頭を抱えると、

 

「今までのリッカーとは思えないな」

「ここは奴等の巣って事ですか?」

「ああ、一度集合掛けるぞ。今居ないなら、何れかここに……」

「…………もう遅いな」

 

突然、竜二はポツリと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お帰りのようだ」

 

その視線は、今来た道を向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「グウウウウウウウウウ…………」

「ガアアアアアアアアア…………」

 

闇の奥から、悍ましい声が聞こえてくる。

一斉にライトを向ける11人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘だろ…………」

 

誰かがそう呟いた。

そこには、壁や天井など一面に“30匹”以上のリッカーが張り付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……確か、リッカーβって繁殖力強かったよな……?」

「……そんな資料を見た覚えがある……」

「……こんなだっけ……?」

「……さあ……」

 

クリスすらも、アンブレラコーカサス研究所並みの大量発生に唖然とする。

 

「グウウウウウウウウウ…………」

「……総員、戦闘体制」

 

クリスが静かに指示を出す。

 

「…………」

 

無言の肯定を10人が出すと、彼等は静かに集まり出す。

それぞれが己の銃を掴み、前のリッカーの群れに向ける。

と、しまう暇がなかったのか、出したままだった機材を不注意で一人が蹴飛ばしてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャアアアアアン!!!

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

それを合図に、30匹以上のリッカーの群れが一斉にクリス達に襲いかかってきた。

 

 

 

目的:リッカーβの群れを迎え撃つ。

 

 

 

「撃て!!!!」

 

クリスが叫ぶのと同時に、一斉に11人の銃が火を吹く。

 

「ガアアアアアアアア!?」

「グオオオオオオオオ!!」

 

クリス等の放ったアサルトライフル“SIG 556”の弾丸と竜二の“H&K MP5”の弾丸が、先頭のリッカー達を捉えて絶命させていく。

だが、その死体を乗り越えて次々とリッカー達が押し寄せる。

 

「不味い、敵の数が多過ぎる!!」

「後退しろ!!!」

 

クリスの指示に合わせ、じわじわ後退する11人。

 

「次の角まで下がるぞ。そこから手榴弾で仕留める!!」

「了解!!」

 

耐えず撃ち続けながら、彼等は必死に後退していく。

リッカーの勢いはとどまる所を知らず、辺りにキツい血の臭いが立ち込め始める。

 

「隊長、早く!!」

 

声でクリス等が振り返ると、一番後方にいた隊員がT字路の角から顔を出していた。

 

「よし、引くぞ!!」

 

先頭で撃っていたクリス、ピアーズ、竜二が角まで走り出そうとした時だった。

 

激しい悪寒が竜二の背を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「後ろだ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

横でピアーズが叫ぶが、もう遅い。

 

「!?」

 

最後尾の隊員が後ろを振り返った瞬間に、

 

バスッッッッッッッッ!!!!!!

 

破裂音と共に、その頭が“消える”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリス達を挟み込む様に、後方から咆哮が轟く。

 

「新型!!?」

「クソッタレが!!!!」

 

竜二が叫ぶと、マシンガンを連射する。

対して新型は身を翻すと、素早く来た道を引き返していく。

 

「待ちやがれ!!!!」

 

竜二はショットガンに持ち替えると、新型を追って走り出す。

後方からクリスが何か言っていたが、竜二の耳には届かなかった。

右へ左へ、新型はかなりの速さで逃げていく。

その尾を追って竜二が下水道をひたすら走り続けていると、何処か広い場所に出た。

 

(洪水対策の地下貯水池か?)

 

河川と繋がっているのか、貯水池には水が溜まっていた。

 

(何処かに潜んでいる筈だ。ここで仕留めてやる)

 

 

 

目的:新型B.O.W.を倒す。

 

 

 

マシンガンから外したライトを水面に向け、新型を探す竜二。

と、いきなり遠くで水が裂ける音がする。

 

「ジャアアアアアアアアア!!!!」

 

咆哮と共に放たれた水圧カッターを転がって躱す竜二。

立ち上がると、その頭部に向けてショットガン“ウィンチェスター”を撃つが、新型は素早く水に潜ってしまう。

 

(奴め……、尾を見た時から予想してたが、やはり水生か)

 

あのブレスと言い尾の形と言い、此奴はヘビの中でもコブラ類かもな、と予想する竜二。

と、今度は割と近くで水が裂ける音がする。

勢い良く振り回された縦に広い尾を横に走って躱すと、竜二はその尾にウィンチェスターを一発撃ち込む。

新型の尾ヒレには穴が空いたものの、大してダメージは入ってない様子で水中に引っ込む。

 

(やはり、狙うのは頭部か)

 

次の放射に合わせて撃つ、と竜二は決める。

だが、新型は隙を伺っているらしく、中々出てこない。

 

(奴を誘い出す方法は無いのか……?)

 

警戒しながら辺りを見渡すと、天井付近に足場があるのを見つける。

 

(出し惜しみの必要は無いし、あれは使えそうだな)

 

ウィンチェスターの銃身にライトを固定した竜二は水面を見ると、意を決して、

 

「ソイヤッ!」

 

水の中に一気に飛び込む。

そして水面から顔を出すと、そのまま中央に向けて泳ぎ出す。

 

(さあ、掛かってくれよ……)

 

貯水池中央の柱に向けて泳いでいると、竜二は後方の方から接近する気配を感じ始める。

 

(よし、もうチョイだ……)

 

気配が大きくなるにつれて、微かに水を掻く音がし出す。

それが、限界まで近づいた瞬間に、

 

 

 

 

 

 

 

(今だ!!)

 

 

 

 

 

 

 

竜二は泳ぎを止めて、天井に銃を持たない左手を向ける。

直後、竜二の体が突然水面から宙に舞い上がる。

 

「ジャアアアアアアアアア!!」

 

竜二に喰らいつこうとしていた新型が、その体を追って水面から大きく顔を出す。

 

「お上がりだ」

 

目前で大口を開ける新型に竜二はウィンチェスターを突き付けて、発砲。

 

「ジャアアアアアアアア!?」

 

凄まじい悲鳴と共に、血飛沫をあげながら新型が水中へ逃げ出す。

 

(上手く行ったか)

 

竜二はそのまま天井の足場まで登っていき、フワリと足場に着地する。

そして、左手から伸ばしていた、鈍いピンク色で人の二の腕ぐらいの太さの“触手”を服の下に格納する。

この“触手”こそが、竜二を天井まで吊り上げた物の正体だった。

 

(まあ、致命傷にはなってないだろうが、今のは効いただろう)

 

水面を割って、新型が天井に向けて水圧カッターを放つ。

竜二は足場から飛ぶと、そのまま中央の柱の側面に張り付く。

赤く光る二つの瞳が、眼下の敵を見据える。

 

(こっからは、“怪物”同士の戦いだ)

 

竜二は新型の頭部に向けてウィンチェスターを発砲する。

 

「ジャアアアアアアアアア!!!」

 

今度は避けきれずに頭部に銃弾が命中する。

と、悲鳴を上げて悶える新型の首元が大きく開き、コブラの頭のようになる。

 

(この予想も当たるとはな……)

 

ただ、一般的なフードコブラと違って、広がった部分はピンク色のヒダ状になっており、その端の方は硬い鱗で覆われていた。

その部分は直ぐに閉じられ、硬い端の方しか見えなくなる。

 

(形状からして、エラか何かっぽいな。あれが弱点か?)

 

新型が水の中に戻ると、竜二はもう一度触手を出し、天井の壊れた足場を掴む。

そして、空中ブランコの要領で最初の足場に戻ってくる。

 

「ジャアアアアアアアアアア!!!」

 

と、竜二が着地したと同時に、水面から新型が顔を出して喰らいつこうとする。

避けられるタイミングではない筈だが、竜二はニヤリと笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、ご苦労さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大口を開けた新型の顎に、それぞれ両腕から伸びた触手が絡みつく。

その口にウィンチェスターを突っ込むと、

 

「ご褒美だよ。味わいな」

 

立て続けに口内に弾丸を撃ち込む。

肉が爆ぜ、竜二の頬に返り血が跳ぶ。

 

「ジャアアアアアアアアアアア!!!?」

 

絶叫を上げた新型は、その頭部を竜二ごと持ち上げ、壁に叩きつけようとする。

 

「よっと」

 

だが、竜二は叩きつけられる寸前で身体をずらし、頭の上を飛び越えるようにして着地する。

轟音と共に、叩きつけた頭部によって壁の一部が凹む。

 

「ジャアアアアアアア…………」

 

頭を上げた新型は弱々しい声を上げると、別の下水道のトンネルへと逃げ出した。

 

(また逃げるかコイツ……)

 

ウィンチェスターに弾込めすると、竜二は後を追ってトンネルへ走る。

 

(逃げても無駄だってのに)

 

弾込めの所為でかなり差が開いていたのが、走り出した途端に一気に詰まる。

プロの短距離走選手も顔負けの速さだった。

差を詰めた竜二は、そのまま一旦新型を追い抜く。

 

「ジャアアアアアアアアアア!!」

 

水圧カッターを出すためか、新型が大きく口を開く。

 

(貰った!)

 

その直後に、竜二は新型の頭部にウィンチェスターの弾を放つ。

悲鳴を上げる新型の首元が大きく開き、エラの様なヒダが露出する。

そこに目掛けて、更に弾丸を放つ。

 

「ジャアアアアアアアアアアアアア!!!??」

 

今までで一番凄まじい絶叫を上げ、新型は苦しそうに悶える。

 

(やはり、そこが弱点!!)

 

更なる追撃の為に、竜二がウィンチェスターから薬莢を排出した時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから強い気配を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(!!?)

 

振り向きざまに発砲する竜二。

 

「ガアアアアアアアアア!??」

 

弾丸が捉えたのは、飛び掛ってきていたリッカーだった。

 

「グウウウウウウウ……!!」

 

吹っ飛んだリッカーと同じ方向から更に二体のリッカーが現れる。

 

(クリス達の所にいたので全てじゃなかったのか? ……いや、そんな事はいい!!)

 

もう一度振り向くと、新型が鎌首を擡げていた。

この道は一本道であり、通り抜けられるような穴もない。

 

(完全に囲まれた……!)

 

舌打ちをして、打開策を考える竜二。

 

(本気でやっても良いが、この道の狭さじゃ余り意味がない。一旦引いて、体制を立て直すべきか……)

 

後ろのリッカー達を見る竜二。

 

(彼方の方が抜き易いな。一旦攻撃をやり過ごして包囲を突破する!)

 

方針を決めると、改めて目の前の新型を見据える。

 

「ジャアアアアアアアアアア!!!」

 

怒りの咆哮と共に、水圧カッターを薙ぎ払ってくる。

それを後ろに跳んで躱すと、着地間際にリッカー達が飛び掛ってくる。

 

「ガアアアアアアアアアアアア!!」

(コイツ等……!?)

 

着地と同時に屈み込む事で、リッカー達をやり過ごす。

と、立ち上がる暇を与えず、今度は新型が喰いつこうとする。

 

「このッ!!」

 

腕から出した触手で新型を受け止めると、今度はリッカー達が舌を伸ばして貫こうとする。

二本は左手で掴み取ったが、一本は掴み損ねて腹を貫く。

 

「ぐあッ!!」

 

激痛に顔を顰めるが、直ぐに次の行動に出る。

まず、抑え込んでいた新型の頭部を壁に叩きつける。

 

「ジャアアアアアアアアアアア!?」

 

悲鳴を上げた新型にウィンチェスターを撃ちながら、頭部を放した触手で腹に刺さった舌を絡めて引き抜く。

 

「お返しだ……!」

 

そのまま、三本の舌を引っ張ってリッカーを引き寄せると、一纏めにして一気に蹴り飛ばす。

 

「ガアアアアアアアアア!!??」

 

吹っ飛んだリッカーに止めのウィンチェスターを撃つ。

そのまま新型と向き合おうとしたが、

 

 

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアア!!!」

「うおお!!?」

 

 

 

 

 

 

 

いきなり新型が左の牙から液体を噴出し、竜二に浴びせかける。

 

「何だこれ!? 臭え!!」

 

異様な悪臭を放つ液体に悶えていると、その隙に新型は姿を晦ましてしまった。

 

「クソが……!」

 

竜二は辺りを見渡すが、既に気配は消えている。

 

(ざまあねえな……。突っ走った挙句に、逃がしちまうとはよ……)

 

とりあえず、はぐれたクリス達と連絡を取らねばならない。

触手を元に収納し瞳も元の黒に戻すと、竜二は下水道を進む。

貫かれた腹は痛みを発するが、血は既に止まっている。

 

(アイツ等の事だ、リッカーの群に殺られる事はないだろう……)

 

竜二が求める物は意外と近くにあった。

地上へと続くマンホールの梯子だ。

 

(とりあえず、現在地を知らないとな……)

 

梯子の前に立って上を見ると、マンホールの蓋から微かに光が漏れている。

梯子に手を掛け、竜二はゆっくりと登り出す。

無論、マンホールから顔を出して、外を見ようとしている訳ではない。

 

(そうしなくても、自分の位置を知る方法はある)

 

マンホールの真下まで登った竜二は、そこで通信機を出してマンホールの小さな穴に向ける。

 

「ジョージ、聞こえる?」

『……何かあったのか?』

 

若干ノイズが走るが、通信機から声が響く。

 

「地下での捜査中にクリス達とはぐれちまってな、GPSで現在地を教えて欲しいんだ」

『お前は……。まあいい、直ぐに調べる』

 

一旦通信機から声が聴こえなくなる。

そのまま竜二が待機していると、妙な金属音が聞こえてくる事に気付く。

 

(上からか?)

 

不良共がおイタイ喧嘩でもしているのか、と竜二は思う。

だが、その内破砕音が強く響き出し、地面にいる自分にも振動が伝わり出す。

 

(おいおい……、レベルがおかしいだろ……)

 

ここまで来ると、最早戦争レベルである。

 

(まさか、新型が地上に出たのか?)

 

そう思っていると、通信機から声が響く。

 

『今位置を掴んだよ。丁度そこは、街の裏路地のようだ』

「クリス達の位置は分かるか?」

『BSAAの待機組と連絡を取った。今そっちに合流地点までのデータを渡す・・・って、何ださっきからこの音』

「上で何か起きてるようだ……。一応、覗いてみる」

 

通信を切ると、竜二はマンホールに手を置き、そっと開けて上を覗く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果たして、そこにいたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あん?」

 

槍を持った赤い服の少女と、

 

「…………?」

 

その前で、膝を突く青い服の少女と、

 

「竜二さん!?」

 

その奥、赤い奇妙な柵の向こうにいて目を丸くする制服の少女と、

 

「…………へえ」

 

その足元にいる白い小動物だった。

 

「……………………」

 

本気で頭を抱えたくなる気分になりながら、竜二は一応、

 

 

 

 

 

 

 

「…………何やってんだ…………?」

 

 

そう聞いた。

 

 

 

 

 




どうも、B.O.A.です。

今回から少し書き方を変えてみました。
具体的には、会話文の間隔を減らしました。
読み易くなっていれば幸いです。
ひょっとしたら、今までの文もこっちに手直しするかも知れません。

ではでは、続きでまたお会いしましょう。
感想等、お待ちしています。

PS:新型戦闘BGM ~バイオハザードディジェネレーションより「Battle Against Each Other」(すこし長いので最後の数十秒は除いて、最初は走り出した所から。)
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