BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. 作:B.O.A.
「S.T.A.R.S.」ブラヴォーチームが、アークレイ山中の猟奇殺人事件の捜査の為に、ヘリで向かうもエンジントラブルで不時着。
R.S.のレベッカ・チェンバースが元海兵隊員の死刑囚ビリー・コーエンと協力し、窮地からの脱出を図る。
~バイオハザード0~黄道特急事件
・見滝原市内、ゲームセンター。
今日は、世間的には休日に当たる。
ゲームセンターには、子供から大人まで様々な年代の人が、思い思いのゲームで遊んでいる。
その中を、暁美ほむらは歩いて行く。
彼女の目当てはゲームではない。
ゲームで遊んでいるだろう人物の方だ。
「…………」
ほむらは目的の筐体を見ると、心の内で静かに満足する。
ダンスゲームの筐体の上でステップを踏みながら、ステック状の菓子を食べているのは佐倉杏子だった。
勿論の事、プレイ中の飲食は禁じられている。
「…………」
ほむらは遊んでいる杏子に近付き、その隣に立つ。
それに一瞥もくれずに、黙々とスコアを伸ばす杏子。
「よぉ……。今度は何さ?」
突然、杏子はほむらに話しかける。
「この街を暫くあなたに預けたい」
意外な言葉を聞き、思わず菓子を食う手を止める杏子。
ただ、ステップだけは停めない。
「どういう風の吹き回しよ?」
「あなたの力が借りたい。その対価として、この街を差し出す」
「ここはアンタのもんじゃねェだろ?」
「私から言えば、巴マミは納得してくれる筈」
ほう、と杏子は息を吐く。
「じゃあさ、あっちは? “青いヤツ”はどうなんだ?」
「なるべく穏便に済ませたい。美樹さやかは私と巴マミが対処する。あなたは手を出さないで」
「…………」
ゲームは黙々と進む。今の所ノーミスだ。
「……まだ肝心なトコを聞いてない。アンタ何者だ? 一体、何が狙いなのさ?」
「……二週間後、この街に“ワルプルギスの夜”が来る」
眉を顰める杏子。
「何故分かる?」
「それは秘密。兎に角、そいつさえ倒せたら私は良い。それまでは、巴マミ達には最低限の魔女しか狩らせない。それ以外はあなたの物」
「倒したら、どうする?」
「私はこの街を出て行く。その後の彼女達との交渉も、有利に進められる様にしておく」
「ふーん…………」
ゲームも最後の山場に近付きつつある。
「マミ達と協力できんなら、何でアタシを態々引き込む?」
「彼女達だけでは戦力に不安が残る。揃えるだけ、手札は揃えたい」
「……ま、“ワルプルギスの夜”相手なら納得だな」
要求されるステップの数が増えてくる。
「どう? 破格の条件だと思うけど」
「ま、条件は悪くないな」
最後の山場を完璧に踏んでゆく杏子は、少し溜めると、
「ただ残念だ……。協力は出来ないよ」
(!?)
予想と違う展開にほむらが驚く。
表面では何とか平静を保って、
「どういう事かしら?」
「そのまんまだ。アタシは条件を飲まない。交渉は決裂」
「何故? あなたにとって悪い条件は無い筈だけど」
「昨日までなら無かったろうな。だけど、今は違う」
ゲームクリア。ノーミス達成。
杏子は筐体を降りると、ほむらに不敵な笑みを浮かべて、
「もうイイだろう? アタシはアタシのやり方でやる」
「…………」
呆然とするほむらを残し、杏子は筐体を降りて立ち去る。
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・見滝原市、工事現場。
クリス・レッドフィールドは優秀な隊長である。
10年前、“S.T.A.R.S.”入隊後に起こった猟奇殺人事件、そしてその調査に駆り出されたブラヴォーチームの失踪。
当時、アルファチームの
それが、今にまで及ぶバイオ兵器との長い戦いの始まりだった。
元米空軍のパイロットとして優秀な兵士だった彼は、山中で“ゾンビ犬”に襲われ洋館に逃げ込む。
だが、逃げ込んだ洋館は、正に“モンスター・ハウス”だった。
迫り来る
隊長、“アルバート・ウェスカー”の残した悪夢の兵器“タイラント”すら倒した彼等は、ヘリから炎上する洋館を見ながら打倒“アンブレラ”を誓う。
証拠集めの為に一度はジルと別れたクリスだったが、後に合流して私設の対バイオハザード部隊を設立。新型B.O.W.の情報を得て、アンブレラに最後の止めを刺しに行く。
結局は“死人”の干渉によってアンブレラは消滅するが、彼等の熱意はそこで終わらなかった。
対バイオハザード部隊を発展させ、“BSAA”を設立した彼等は、アンブレラ消滅によって全世界に広まった“負の遺産”の対応に今なおも追われている。
繰り返すが、クリス・レッドフィールドは経験豊富で非常に優秀な隊長である。
数々の地獄を乗り越えた彼は、嘗ての失敗も糧にして、どんな状況下でも生き残るための最善最適な選択を出来るだろう。
既に死んでいった“仲間達”の為に、悔やみこそすれ決して止まる事は無いだろう。
そんな彼が、
「マミちゃーん、こっちに紅茶持って来てくれる?」
「はいはーい! 紅茶ですね~」
「へえ~、最近の子は凄いなあ……」
「いやー、あたしなんかまだダメな方ですよ。勉強出来ないし・・・」
「うまっ! これ本当に君が作ったのかい?」
「ほ、本当ですよ! 私が作りましたよ。……ティヒヒッ」
(どうしてこうなった…………)
完全に状況を見失っていた。
発端はお昼頃から始まる。
朝にレズモンドと交代したクリスは、部下と共に捜索活動を再開した。
昨日の事もあってか、目立った進展も無く午前中は終了。
流石に下水道で飯を食う気には成らなかったので、彼等は一度地上に出てから昼食を取り、午後からまた再開する予定だった。
(装備を外して、下水道を出たまでは予定通りだった。だが……)
下水道を出た彼等を待っていたのは、
「クリスさん、お疲れ様です」
「うおっ、スゴッ! 凄い筋肉!」
「ちょ、さやかちゃん。初対面の人に失礼だよ」
大量のランチボックスを抱えた、三人の中学生だった。
「……た、隊長、ひょっとして…………」
「……………………」
恐る恐る聞くピアーズだったが、クリスは驚愕の余り茫然自失となっている。
「…………クリスさん?」
「……っ」
マミの声でようやくクリスが戻ってくる。
「…………君達、どうしてここに…………?」
「相談に乗って貰ったお礼に、お昼を後輩達と作って来ちゃいました」
『昨日あの後、コッソリ付いて行ったんです』
(!?)
『大丈夫ですよ。“何をやってるか”までは知りませんから』
身を固くしたクリスに、マミがそう念話を送る。
因みに、念話の存在もクリスは知っていた。
「マミさんの恩人ってなったら、協力しない訳にはいかないからね~」
「あの…………、どうぞ、食べて下さい」
後輩二人がそう言って、ランチボックスを差し出す。
「隊長、どうします?」
「…………」
ピアーズの声に、少し思案するクリス。
飽くまで任務中だし、無関係な他者から貰い物を受けるのは、余り良ろしくない事なのだが…………。
(正直、昼食と言ってもパワーバーな訳だし、余りピリピリするのもあれか……)
これが半年前のキジュジュなら断っただろうが、今は日本である。
食当たりや陰謀の危険性は限りなく低い。
(ここは、彼女達の好意を受け取っとくか)
「有難う。皆で食べるよ」
クリスの言葉に三人は顔を明るくする。
「良かったあ。受け取らないかと思ってた…………」
「じゃあ、今から準備しますね。行こっ、まどか」
「うん」
そう言うと、三人は地面に敷物を敷き詰め出す。
…………ん?
「君達、何をやっているんだ?」
「どうせ食べるなら、皆でお茶しながらの方が良いかと」
「あたし達に出来るのは、これくらいしか無いんで」
「私達も、お昼はまだなんです」
クリスの問いに、三人が答える。
どうやら、彼女達もクリス等と昼食を取りたいらしい。
(うーん…………)
流石にクリスは悩み出す。
自分達はピクニックに来ている訳ではない。
三人には悪いが、ボックスだけ貰ってお引き取り願おうとした時、
(…………?)
後ろから妙な気配を感じ、チラリと後ろを見る。
(美少女とサンドイッチ、美少女とサンドイッチ、美少女とサンドイッチ、…………)
(うおおおおおおおおおおおおお!!!?)
食に飢えた
それぞれも優秀な部下達であるが、流石に下水道に長時間篭るのは精神的に辛い物がある。
そんな中で、突然目の前に舞い込んで来た“癒し”である。
ストレスと空腹で、彼等のテンションはおかしな事になっていた。
(くっ……、だが然し…………)
部下達の懇願するような目に、クリスは頭を抱える。
実は、かく言うクリスも先程から展開されているボックス内のサンドイッチに、かなり心を引き寄せられているのだ。
(ぐ……………………)
隊長としての威厳とプライドと、“癒し”への欲求に挟まれて苦しむクリス。
と、ふとここで、ピンクの髪の子が開けたランチボックスに目がいく。
その中にも、サンドイッチがギッシリ詰められている。
だが、クリスが注目したのはそこでは無い。
彼の目に飛び込んで来たのは、サンドイッチからはみ出た……………………。
(気が付いたら、手が動いていた。あんな事もあるのだな…………)
ワイワイ騒いでいる部下達を見ながら、バナナサンドを頬張るクリス。
(……………………ジルには、黙っておこう……………………)
そう誓うクリスだが、結局バレて散々からかわれるのは後の話である。
取り敢えず、今クリスが懸念すべきは、
「いや~、こんな良い子達と知り合うなんて、隊長も隅に置けないですねぇ~」
ピアーズ…………、後で、話がある…………。
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・見滝原市、商店街。
お昼時の商店街には、昼食を求める人々とそれを売り込む人々で活気に溢れている。
少し混んでいるその通りを、暁美ほむらは歩いていた。
難しそうにしているその顔は、はたから見ると強く惹かれる物があり、道行く人が皆彼女を振り向いている。
だが、彼女自身から出る拒絶に近いオーラで、誰も声を掛ける事はない。
(佐倉杏子は条件を飲まなかった)
ほむらは午前の事を考える。
(今までと同じなら、グリーフシードを条件に出したらまず乗っかってきた。でも、今回は違う。この“時間軸”の佐倉杏子も、変わってきている)
ほむらは一つだけ心当たりがあった。
今までとの違いを引き起こせるだろう存在を知っていた。
それを確かめる為に、ここに来たのだ。
(ここだったわね)
携帯のメールで送られて来た場所は、商店街の一角にある洋食屋だった。
ドアを開けて、中に入るほむら。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「いえ、待ち合わせが「お、来たな」」
ほむらの声を遮るように、男の声が響く。
ほむらがその方向を向くと、
「ちょっとそこで待ってろ。直ぐ食い終わる」
軽く十人前近くの皿が積んであるテーブルの奥で、竜二がカレーライスを掻き込んでいた。
(……………………)
量も然りだが、先に食べていたとは思わず、その場で固まるほむら。
しかも、
「よし、おねーさん。勘定お願い!」
「あらあら、お姉さんだなんて」
何と自分の分の勘定を済ませて、足早に店を去ろうとする。
「ん? 何やってんだ? 早く行くぞ」
「…………ええ…………」
「?」
不機嫌そうなほむらに、竜二は首を傾げる。
実は彼女、まだ食事を取ってないのだ。
店を出て、商店街を歩き出す二人。
「……………………」
「~♪~」
終始不機嫌なほむらと、鼻歌交じりで進む竜二。
その不釣り合いに周りの人々も疑問に思うのか、チラチラと視線が飛ぶ。
「…………あなた、何処に向かっているの…………」
「ん?」
等々痺れを切らしたほむらが竜二に聞く。
「何処って…………」
竜二は少し早足になって、
「ここだよ?」
中華料理屋の前で立ち止まる。
(…………は…………?)
言っている事が理解出来なくなるほむら。
「お前、丁度タイミングが良かったぞ。ここが俺の本命だ」
(いや、本命って…………。まだ食べる気なの…………?)
呆然と立ち止まっているほむらを置いて、竜二は店内に入ってしまう。
(……………………)
色々納得出来ないまま、ほむらは後を追う。
これが、竜二にとって五件目である事は、ほむらには知る由も無い。
「え~と、チャーシューメン大盛りにネギ増量、ニラレバ炒めに天津飯、炒飯、麻婆豆腐、回鍋肉、八宝菜に小籠包、ライスも大盛り付けて、餃子五人前、ん~と、担々麺も入れよう。デザートは杏仁豆腐で!」
「…………天津飯一つ」
「あいよーーーーーー!!」
席に付き、それぞれ注文を終える二人。
「内装的には余り目立たないが、正に隠れた名店っぽくて良いな」
「時間を無駄にしたくない。始めて良いかしら」
店内を物色し出す竜二に、ほむらが切り出す。
「食事時だぞ。まだ来るまで時間はあるし、ゆっくりしても良いんじゃ?」
「私の時間は限られている。あなたとは違うの」
その言葉に、微かに目を細める竜二。
「なら良い。急に何の用だ?」
「ワルプルギスの夜が来るのは、二週間後」
竜二はピクッと片眉を動かす。
「確かか?」
「ソースは言えないけど、ほぼ確実」
「…………分かった。それまでには、蹴りを付ける」
竜二は手帳を出して、メモを取る。
「話はそんだけかい?」
「もう一つあるわ」
ほむらは竜二の目を見ると、
「あなた、昨日佐倉杏子と何かあった?」
「…………? 何でそんな事を聞く?」
「確かめたい事がある」
竜二は昨日を思い返して、
「仕事帰りに喧嘩売られて、その後少し話したな」
(やはり…………)
ほむらの中で予想が確信になる。
確信を元にほむらは竜二に、
「これ以降、あの子達と一切関わらないで」
「どうして?」
「あなたが関わると、こちらがやり辛くなる。必要な事は私から伝える。あなたにとって不利益は無い筈よ」
「…………」
竜二が頭を掻いた時、丁度彼等の料理が出始める。
「おっ、旨そうだ」
「…………」
お互い料理を食べ始め、一時会話は中断する。
「中々良かったな。満足だ」
(…………あれ?)
一品しか頼んでないほむらとほぼ同時間で食べ終わる竜二。
奇妙な事態にほむらは眉を顰める。
「…………さっきの話だがな」
竜二はほむらを見ると、
「別に俺は構わない。元々、ワルプルギスってのが無ければ関わるつもりなんて無かったからな。タイムリミットだけ知れればそれで良い」
「それは良かったわ」
(これで予測不能の“変化”は治まる筈。見通しもある程度立つ)
ほむらは席を立とうとする。
「ま、どうせ悲惨な事になっても、言い掛かりなんて付けられたくないしね」
「…………何ですって?」
「お前は俺って“異分子”排除すれば、自分の思い通りに行くなんて考えてるんだろ? 確かにマミちゃんやアイツなんかより、余程俺の方が想定外な事をするよな。でもな、何でもかんでも全部上手く行くなら、そもそも“魔法少女”なんていない筈だぞ?」
「勝手な事を…………!」
「お前はルーレットの玉を完璧に入れられるか? どんな時でも、正確に当たり目を出せるか? NOだ。例え盤の全てが当たり目でも、玉が外に出たら入らないよな?」
「屁理屈なんて聞きたくないわ」
「計算高いっていう人種もいるけどな。お前はそうは見えん。邪魔か必要か、それだけでしか他を見てない。ロボットだな。目的の為にしか動かない」
ダァン!!!!!!
ほむらが机を叩き、店の中が静まり返る。
「…………私は、“あの子”が無事ならそれで良い。その為なら、他の何を犠牲にしてでも成し遂げると誓ったの。それだけが、私の存在意義。あなたには分からないでしょうね」
「…………分からないな」
竜二は立ち上がり、伝票を取って会計に向かう。
「全く、何にも、キレイサッパリだ」
ほむらの分も済ませて、竜二は出口に立つ。
「“全身全霊の勝負”してる奴の事なんざ、“びた一文無い”奴には分からん」
「…………!」
それだけ言い残して、竜二は店を去る。
ほむらは、その後をただ見詰めていた。
店を出て商店街を歩く竜二。
そこに通信機のコール音が響く。
竜二は脇道に逸れて通信機を取る。
『竜二、その』
「……気にしてないよ。寧ろ、ジョージには感謝し切れないさ」
竜二は空を見上げて言う。
「俺が今、こうやって人の中で生きられんのも、ジョージが全部計らってくれたからだ。アンタがいなかったら、今頃死んでるか永遠に地下深くに閉じ込められてるかしてたさ」
『…………』
「俺はアイツの態度が気に食わなかっただけだ」
空の、その向こうの“何か”を睨むような目で、竜二は、
「他人の為に全てを投げ打ったね…………」
怨む様に続ける。
「全てを投げ打っても、今しか生きれない奴もいるんだよ。幸せ者」
どうも、B.O.A.です。
この小説はほぼ書き下ろしなので、色々ミスも多いと思います。
書き溜める事が出来ない自分の性格が所以です。orz
次回で、三章も終わりの予定。
忙しくなる前に書き上げたいと思います。
感想等、お待ちしています。(^-^)/
PS:すっかり描写忘れてましたが、まどかは胸元のマミのリボンでマジカル翻訳の恩恵を、さやかは自力でやってます。