BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. 作:B.O.A.
オズワルド・E・スペンサー等がアフリカの遺跡地下で「始祖ウィルス」を発見。
・2009年9月、日本。
白い壁に囲まれた空間の中で、その少女は目を覚ます。
黒く長い髪を三つ編みに束ねたその少女、「暁美ほむら」は病室の天井を静かに見上げる。
(…………)
つい先程までの記憶を振り返り、ほむらはその端正な顔を歪める。
また助けられなかった。
巴マミは魔女に殺され、美樹さやかは絶望して魔女になり、佐倉杏子は美樹さやか“だったもの”と心中し、一人でワルプルギスの夜に挑むも敵わず、結局、鹿目まどかが魔法少女となってワルプルギスの夜を倒し、直後に最悪の魔女となった。
幾度となく繰り返した“失敗”だった。
「……まどか」
無力感に襲われながら、思わず、救えなかった“友達”の名をつぶやくほむら。
もう何度目の繰り返しなのかもはっきりしていない。あと何度繰り返せば良いのかも判らない。
このまま繰り返し続けて意味があるのか。
「……ッ!」
頭に浮かんだ最悪の考えを振り払うほむら。
思い出すのは、かつて“友達”と交わした約束。
自分に全てを託して死んでいった友達との約束。
(……例え何度繰り返す事になっても、あの子を救い出すまでは、何があっても私は止まれない)
ベッドから起き上がり、三つ編みを解きながら窓の外を見つめるほむら。
深夜の空に浮かぶ満月に誓いを立てるように、彼女は決意する。
(運命は私の手で切り開く。この世界の未来は私の手で変えてみせる)
彼女は知らない。既にこの時、世界の有り様は彼女の想像を大きく外れている事を。
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・同日同時刻、見滝原駅。
終電の時刻を過ぎた駅のベンチに、一人の男がうつむくように座っている。
ホームにはこの男以外に人影がなく、電灯が照らす範囲の外は夜の闇に覆われている。
「…………」
男は座ったまま微動だにせず、周りに動くものは何一つない。
夜の静寂だけがこの場を支配していた。
ティルルルルルルルルルルルルルル!!
唐突に、甲高い電子音が鳴り響く。
男が腰のポケットから取り出した端末を操作すると、そこから低い声が聞こえてくる。
『無事に到着したようだな。
「ああ」
「竜二」と呼ばれた男が、その顔を上げながら答える。
黒い短髪に灰色に近い黒の瞳、整った顔付きは20代前半の彼を中学生ぐらいの若さに見せている。
羽織っている黒のコートは、両肩の部分でジッパーが腕をぐるりと囲んでおり不思議なデザインをしていた。
「今回もアンタがバックアップか」
『その通り。このジョージ・ルータスがお前のバックアップだ。
……というか、俺以外にやる奴がいないだろうが』
「まあ、そーだな」
『……やる気ないな。任務なんだからもう少し緊張感を持ったらどうだ』
「こんな夜遅くまで、“その”任務のために待たされたこっちの身になってみろ」
『……分からん事もないな』
その任務というのがこういうものだ。
某国のテロリスト集団のアジトをBSAAが抑えた時、その幹部が落としたらしい手帳の中にこの場所のことが書いてあったらしい。
そして最近、日本国内で取引があるという噂が裏社会で広がっているんだとか。
「そのあるかどうかも分からん取引の真相を掴んで来いというわけだ」
『……分からん事もないな……』
「というか、何でそんな不確定な情報でアメリカの、大統領直属のエージェントの俺が動くことになってるんだ」
『知ってるか、最近基地の移設とかで大統領は物凄く忙しいらしいぞ』
「政治ってやつは……」
思わず天を見上げる竜二。
『おいおい、一応お前の上司なんだからちゃんと敬え。俺も含めて』
「敬って欲しいなら、アンタも上司に対して“一応”とか言うなよ……」
言いながら、竜二はベンチから立ち上がる。
「それで、荷物は何時届くんだ?」
『数日中には着くはずだ。追って受け取りの場所は伝える。それまで観光がてら地理情報の確認をしていてくれ』
「了解」
通信を切り、駅のホームを後にする竜二。
(何事もなく終わってくれれば良いけど)
だが、そんな竜二の思いも虚しく、運命の歯車は確実に回り始めていた。
動き出した二つの物語。決して交わることの無いはずの物語は、“彼”を中心に交わることになる。
それが演じるのは悲劇か、それとも喜劇か。
その答えは、“彼の過去”だけが知っている。
どもー、B.O.A.です。
プロローグだけで、こんなに大変だとは思いませんでした……。
次の chapter 1-1 はいきなり話が飛びます。具体的には、まどマギ一話の放課後からになります。