BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. 作:B.O.A.
「Gーウィルス」の情報を得たクリスがヨーロッパに発ち、反アンブレラを掲げる。
・見滝原市、巴マミ宅。
竜二との電話を終えた後、暁美ほむらは巴マミの元を訪ねていた。
(…………)
ドアの前で、暫し固まるほむら。
この様なシチュエーションが無かったとは言えないが、余り精神が強くない彼女の事なので少し緊張しているのだ。
(…………よし)
気を入れ直して、ドアを開けようとノブに手を掛けた時、
ガチャ。
ガンッ!!
「あら? 誰か…………」
ドアを開けたマミが見たのは、玄関の前で額に手を当てて俯くほむらだった。
「…………大丈夫?」
「…………ええ、何とか…………」
額の手を戻し、正面を向くほむら。
「少し話をしたいのだけど、時間は大丈夫かしら?」
「心配ないわ。さ、上がってちょうだい」
マミに部屋の中へ通されるほむら。
「急だったから、ロクなお持て成しも出来ないけど……」
「別に気にしないわ」
「そう。今紅茶を入れるね」
マミが紅茶を入れて持ってくる。
受け取ったほむらは、リビングの机を挟んでマミと向き合う。
「また、訪ねて来てくれて嬉しいわ」
「あなたが学校に来てなかったから、様子を見に来たのよ」
「まあ、心配してくれたの?」
「その通りよ」
特に表情を変えずに言うほむら。
だが、マミは満足したようで、
「御免なさい。でも、一日休んだ事で自分に区切りがついたわ。私達の身体がゾンビみたいな物でも、私は今を生きられるなら問題ないわ。それしか手は無かったのだし、この街やあの子達を守りたい思いに変わりはないしね」
「そう。それは良かったわ」
嘗ての時間軸と大して変わらない反応に、ほむらは少し安堵する。
(でも、まだ終わった訳ではない)
まだ明かされてない“もう一つの事実”がある。
そちらが知れれば、どうなるかは分からない。
「問題は美樹さんの方ね」
「あなた、知っていたの?」
「鹿目さん達と連絡先は交換したから、ほらね」
マミが携帯を出して、画面をほむらに見せる。
そこには、まどかが送ったらしきメールが表示されていた。
「あの子、幼なじみの為に契約したでしょ? 私よりもショックが大きいと思うし、実はさっき訪ねてみようと思ってたの」
「結論を言うと、多分大丈夫よ。ここに来る時に、佐倉杏子と一緒に歩いているのを見たから」
「佐倉さんが?」
「険悪そうではなかったし、あの子が何とかするでしょう」
実際は見た訳でなく、飽くまで“今まで”からの憶測でしかないが。
(彼女にとっての本当の問題は、その後なのよ)
ほむらは改めてマミの顔を見ると、
「ただ、あなたが動揺すれば彼女も安心出来ないでしょう。あの子達の為にも、明日はしっかりして欲しいわね」
「言われなくてもそのつもりよ。ちゃんと明日しっかり話すわ」
(駄目そうなら銃突き付けてでも引っ張り出すつもりだったけど、手間が省けたわね)
「? 何か言った?」
「いいえ」
聞こえないようにボソっと物騒な事を言ったほむらに、マミが首を傾げる。
「それに、今あなたに動揺されると致命的なのよ」
「何かあったの?」
「ええ、心して聞いて」
マミの表情が真面目な物になる。
「端的に言うと、私達は狙われてる」
「狙われてる? 誰に?」
「昨日の“怪物”、あれを作った組織よ」
「!?」
マミが驚愕に目を開く。
「作ったって、あれを!?」
「そう。あれは人が作った兵器、
「兵器……!?何で…………!!?」
「詳しくは分からないけど、この街の何処かでそれの取引があるの。竜二・シーザーの本当の目的は、それを差し押さえる事」
「竜二さんの……!?」
「その彼が、私達の事が相手に伝わってると、だから気を付けろと言ってたの」
「でも、何でそんな事に…………!?」
「キュウべえよ」
少し顔を顰めるほむら。殺意すら感じられる視線で、
「あいつが、そいつ等に情報を漏らしたの。それ所か、そいつ等の一員にすらなったみたい」
「キュウべえが!?」
「本人が言ってたのだから事実よ。目的は分からないけど」
「っ…………」
マミは顔を曇らせて、下を向いてしまう。
このマミは、キュウべえに対し強い信頼を寄せていた。
それは、命の恩人であり、身寄りのいない彼女の唯一の家族のような存在だったから、という所が強い。
その傾向は、彼女が魔女との戦いに没頭して、友人が減り孤独になるにつれて強くなっていた。
昨日の事も、キュウべえが何かしら事情があったと言えば、恐らく彼女は信じただろう。
だが、今回のは決定的だった。
「そんな…………、どうして…………」
「分かった? あいつには、人の価値観なんて通用しない。信じるだけ、こっちが損するだけよ。」
「ッ! …………」
「それでどうするの? また明日も休むのかしら? あの子達を放り出して」
「……………………」
暫く身動ぎ一つせずにいたマミだったが、顔を上げると、
「いいえ。もう何も出来ないのは御免よ」
「そう。なら、あの子達をしっかり守ってあげて」
「フフッ。まるで私は貴方の後輩ね」
(…………本当は、私の方が後輩だったのだけど…………)
聞こえないように呟いたほむらは、席を立って、
「そろそろ、失礼させて貰うわ。……さっきの事、あの子達にもしっかり伝えて」
「まだ伝えて無かったの?」
「電話が今日の放課後で、あなたの家に向かってる時だったから」
「分かったわ。伝えておく」
玄関で靴を履き、ノブに手を掛けたほむら。
と、そこに、
「また明日ね。暁美さん」
「!」
一瞬動きを止めたほむらは、その後に少し微笑んで、
「…………ええ、また明日」
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・見滝原市、街頭。
夜の道を、一台のバイクが走っている。
それに乗る男、竜二は運転しながら別の事を考えていた。
(…………グラン・フォートか…………)
竜二自身、検査の為に非公式でお世話になった事がある。
その時に社長と会ったのだが、彼処の社長はB.O.W.に対して強い敵意を持っている印象を竜二は持っていた。
彼に対しては余り攻撃的ではなかったが、それでも結構皮肉られたものである。
(…………まあ、それとこれとは違うが、仕方がない。全力で暴いてやる)
あの後、レズモンド、クリス、ピアーズ、そしてジョージに竜二はグラン・フォートの調査を依頼していた。
その際、唯一魔法少女を知らなかったレズモンドに、彼女等の事を教えておいた。
“「本当に信じられん話だが、お前達が言うならそうなんだろう」”
一応、信じてくれたらしいので、先の事について話した所、
“「グラン・フォートは日本系の企業だ。話の筋は通ってるな」”
“「ここの調査は俺がやっておく。お前達はグラン・フォートについての情報を集めておけ」”
“『データについては此方でやっておくよ。後は、直接踏み込んでみなきゃ分からん』”
“「それはこっちでやっておく。竜二、君には彼女達の事を任せて良いか?」”
という事で、レズモンドの部隊が下水道の調査、クリス・ピアーズ等はグラン・フォートへの捜査、ジョージがデータの洗い流し、竜二が彼女達の周辺の捜索という分担になった。
という事をほむらに掻い摘んで報告すると、
“『じゃあ、佐倉杏子に伝えておいてくれるかしら?』”
そして、今竜二は風見野へ走っていた。
(ここを右っと………)
市街地を抜け、やがて小さな丘の前に着く。
バイクを停めてその辺の木にチェーンを巻き付けると、竜二は丘の先を眺める。
ほむら曰く、この先に杏子がいるそうだ。
(魔法って万能だな……)
竜二は、ほむらが魔法で杏子をサーチしたと思っていた。
雑木林に覆われた坂道を登って行くと、やがて大きめの建物が見えてくる。
「協会か?」
シルエットから判断した竜二だったが、やがてその細部が見えてくると、
「…………」
数年間も放置されたらしい協会の廃墟に、竜二は眉を潜める。
(こんな所に本当にいるのか?)
秘密基地にするにも、街から離れ過ぎている。
妙な考えを持ちながら、竜二は正面に立って中を覗いてみる。
「…………竜二さん?」
「アンタ、どうして此処に…………?」
「…………何時の間に仲良くなってたんだ?」
中には、祭壇に座る杏子と、その前に立つさやかがいた。
「美樹ちゃん、身体は大丈夫か?」
「あっ、大丈夫です。擦り傷だけでしたし」
「そうか…………。で、何で此処に?」
竜二がさやかに聞くと、さやかは一回杏子を見た後、
「こいつが、あたしに話があるって呼んだんです」
「あんときゃ、アタシが熱くなり過ぎてたからね。もう一度、面と向かって話したかったのさ」
「…………そうかい。ま、今回は好都合だったな」
「? 何かあんのか?」
竜二の言葉に杏子が尋ねる。
「昨日の“怪物”についてだ」
「!!」
二人が目に見えて身を固くする。
「知ってるんですか!?」
「おい、アイツは一体何なんだ!? 教えてくれ!」
「ああ、知ってるし、教えるとも。ただ、その前に…………」
そう言って竜二は杏子、さやかの順で二人を見ると、
「本当に済まなかった。俺達の不手際で、お前達を巻き込んでしまった」
「竜二さん!?」
「なあっ!?」
突然、二人の前で大きく頭を下げる。
「あ、頭を上げて下さい! 気にしてませんから!!」
「取り返しのつかない事をしてしまった事は自覚している。許して貰えるとは思ってない」
「お、おい! らしくねェぞ!! 頼むからやめてくれ!!!」
二人の全力の懇願を受けて、ゆっくり竜二が頭を上げる。
「あのっ! とりあえず、知ってる事を話してくれませんか?」
「…………分かった」
竜二は二人に、“B.O.W."について嘗てほむらに話したように説明し出す。
「…………ざっと、こんな所だ」
「……………………」
竜二の前で、二人は驚愕の余り言葉を失っていた。
「……大丈夫か?」
竜二が声を掛けると、我に帰った二人は、
「そんな物を、この街に……!」
「イカレてやがる……!」
それぞれの怒りを露わにする。
「落ち着いてくれ。その“イカレ野郎”がお前達に目を付けてんだよ。自分達の身を考えてくれ」
「でも! そいつ等の所為で街の人が……!!」
「魔法少女にケンカ売るたぁイイ度胸じゃねェか……!!」
(…………、はあ)
完全にヤル気になってる二人に内心溜息を付いた竜二は、
「……お前達の見たあの“怪物”だけどな」
中学生程の年の二人を前にして、
「“ノビスタドール”っていう名前でな、“人間”と“虫”を掛け合わせて作られた兵器なんだ」
「!!??」
「な、考えてくれ。同じ人間ですら“あんな風”にする奴等に目を付けられてるって事をな」
顔面を蒼白にする二人を見て、竜二は、
「こっちの事は、俺達に任せてくれ。お前達は自分の身を優先してくれ。な?」
「…………!!」
可哀想なぐらい従順に頷く二人。
「よし、俺からは以上だ。んで、お前達はどうする?」
「あ、あああああたしっ、家帰るね!」
「お、おう! アタシもホテル戻るわ!!」
(……やり過ぎたかな?)
さっきの威勢が一転、完全にビビリまくっている二人。
杏子がソウルジェムを掲げようとしたのを見た竜二は、
「そこまでせんでも、何なら送ろうか?」
「車で来てるんですか!?」
「いや、バイクだが。まあ、ついて来い」
二人を連れて、丘を降りる竜二。
ギャーア、ギャーア!!!
「ひ、ひいッ!!?」
(…………はあ)
仕切りに周りを気にする二人を苦笑して見る竜二。
因みに、今のはカラスである。
そんな内に、やがてバイクを停めた場所に着く。
「へェ~」
「わっ。これ、サイドカーですか?」
「そ。荷物載せんのに便利だからね」
感嘆の声を上げる二人の前には、サイドカーの付いたバイクが停まっていた。
木に巻き付けたチェーンを外しながら、
「どっちかはそっちの席で、もう一方は俺の後ろだ」
「早い者勝ち!!」
「あっ! こら! ズルいぞー!!」
さっきのテンションは何処へやら、サイドカーにいち早く飛び込む杏子を、さやかは大声で非難している。
「足元にヘルメットあるから、付けときな」
「おう。…………って、付け方分かんない…………」
「ああ、はいよ。見せてみな」
杏子にヘルメットの付け方を教える竜二。
「…………あの、竜二さん。あたしも…………」
「分かってたよ」
同じ過程をさやかにもして、竜二はバイクに跨がる。
「しっかり掴まっとけよ」
「う、うん」
その後ろにさやかが乗り、竜二の腰に手を回す。
「お似合いじゃん。二人共~」
「ちょっと杏子! からかわないでよー!!」
サイドカーから茶々を入れる杏子に、恥ずかしそうに声を上げるさやか。
「…………出すぞ」
それを流した竜二は、バイクのエンジンを掛ける。
「場所知ってるから、杏子から送るわ」
「了解~!」
二人の返事を聞き、竜二はアクセルを踏みバイクを発進させる。
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・見滝原市、さやか宅前。
さやかのマンション前に一台のバイクが停まる。
「ここでいいか?」
「うん。本当にありがとうございました」
「気にするな」
竜二の後ろから降りるさやか。
何故か、杏子が降りた後もそこに乗っていた。
「…………」
「? どうした?」
マンションに入ろうとしないさやかに、竜二が声を掛ける。
此方を向いたまま、暫く視線を泳がせていたさやかだったが、
「……あのね、竜二さん」
意を決したように、話し出す。
「あたし、最初に会った時から、余り竜二さんの事、良く思ってませんでした」
「…………」
「何か、変に冷たいというか、怪しい感じがしたというか。それであの路地裏があって、正直自分の事しか考えてない奴だって思っていました。…………でも、本当は、あたし達を巻き込まない為に、距離を置いていてくれたんですね」
「面倒事を増やしたくないだけだ」
「それだけだったら、最初にあたしの身体を心配しませんよね?」
「…………」
さやかはニコリと微笑むと、
「マミさんが、竜二さんに勇気付けられたって言った時、あたしは信じられませんでした。でも、やっと、それが間違いだって気付けました。だって、竜二さん、凄く良い人ですから」
「俺は……」
「だから、竜二さんをあたしは信じます。この事は、竜二さんに全部任せます。…………本当は今も震えそうだけど、でも、あたしも竜二さんに勇気貰いましたから」
「…………」
「あたしは、あたしの道を自分でもう一度歩いてみようと思います。だから…………」
さやかは、竜二が来る前の協会との会話を思い出していた。
“「アンタ、前から竜二の事を知ってたよな?」”
“「まあ、知ってるけど?」”
“「多分、アイツもアタシと同じだよ。“失って絶望した人間”」”
“「あいつが?」”
“「でも、何かアイツは違うんだよなぁ。アンタともアタシとも違う」”
“「あたしは、あんた同様の自分勝手な奴って思ったけど?」”
“「そいつは違うよ。一回話せば分かる」”
さやかは優しい笑顔を竜二に向けて、
「竜二さんも、“もう一度歩いていけますよ”」
「ッ!!?」
呆然とする竜二を置いて、さやかは一礼すると、マンションに戻って行った。
「…………歩いていける、か…………」
さやかが去った後、竜二はまだその場に残っていた。
“「お兄ちゃんがいるから、ユイ、寂しくないよ」”
「ッ!! があッ!!?」
急に頭を抱えて、バイクに突っ伏す竜二。
『竜二!? 大丈夫か!!? バイタルが不安定だ!!』
通信機からジョージの声が響くが、本人は聞こえてないようだ。
「ッぐうううぅぅ!!」
必死に頭を押さえる竜二だったが、突然バイクから落ちて地面に倒れる。
『クソッ!! “ジャマー”を使うぞ!!』
地面に倒れ、蹲る竜二が最後に見たのは、
血に塗れた、少女の“遺体”。
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・見滝原市、美国邸。
美国久臣が書斎で事務仕事をしていると、ドアがノックされる。
「失礼します」
入って来たのは、若い西洋人の女性だった。
それを見た久臣は笑みを浮かべて、
「集まったか?」
「ええ、もう十分よ」
「良くやった。これで、あの忌々しい連中を消せるな」
久臣は立ち上がり、彼女に歩み寄る。
「車は?」
「手配済み。直ぐに出られるわ」
「良し。なら、データを」
女が出したフラッシュメモリを久臣はポケットに入れる。
「君には後で褒美を考えないとな」
「あなたの為だもの。褒美なんて要らないわ」
二人はそのまま部屋を出て行く。
残された机の上には、一枚の書類が乗っていた。
表のようなそれの、その右端に書かれているのは、
どうも、B.O.A.です。
数分前、タイトル書かないままに謎の暴発投稿をしてしまいました。
ご迷惑をお掛けして、本当にすいません。orz
さて、謝罪はそこまでにして。
書いてく毎に、このさやかは「当たり」だな、と思ってしまいます。
自分で書いてるのに、です。
次回も気合い入れて行きます。
感想等、お待ちしてます(^-^)/