BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1998年12月17日

クレア・レッドフィールドがアンブレラ・パリ研究所に潜入するも、拘束される。





バイオハザード CODE:Veronica ~ロックフォート島襲撃事件~


chapter 4-7

・見滝原市、ショッピングモール。

 

 

 

いつの日か、三人で来ていたファストフード店。

だが、今は嘗て程明るい空気ではなかった。

 

「…………」

 

席についてから既に五分は経過しているが、未だに会話は校門以来全くない。

その様子を、遠く離れた席で竜二は見守っていた。

 

「……話って何?」

 

空気に耐えられなくなったのか、さやかが聞く。

対面に座っていた仁美は、注文したアイスティーを一口飲むと、真っ直ぐさやかを見据えて、

 

 

 

 

 

「恋の相談、ですわ」

「…………!?」

 

 

 

 

 

二人が息を呑む。

 

「私ね、前からさやかさんやまどかさんに秘密にしてきた事があるんです」

「秘密……って?」

 

さやかの声が、何処となく掠れていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ずっと前から……、私、上条恭介君の事をお慕いしてましたの」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

二人は明らかに動揺している様子だった。

遠くで、特に興味も無くコーヒーを飲みながら聞き流していた竜二も、知った名前に眉をピクリと動かす。

 

「そ、そうなんだ……、あ、はは……まさか仁美がねぇ。なーんだ、恭介の奴も隅に置けないなぁ…………」

 

無理矢理笑顔を作って、何とか取り繕うとするさやか。

隣に座るまどかは、ただ黙っている事しか出来なかった。

一方、仁美もかなり緊張した顔つきで、

 

「さやかさんは、上条君と幼馴染でしたわね」

「あ……うん、そう。腐れ縁って言うか、何というか……」

「本当に、それだけ?」

「…………」

「私、決めたんですの。もう自分に嘘はつかないって。……あなたはどうですか? さやかさん」

 

 

 

 

 

 

 

「あなた自身の、本当の気持ちと向き合えますか?」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

(…………へぇ)

 

竜二は仁美を賞賛していた。

 

(あの台詞が出て来るって事は、つまり、相手を恋敵と見ているって事だろう。親友に自ら宣戦布告とは、度胸のある奴だ…………)

 

竜二がそう思っていると、仁美は微かに声を震わせながら、

 

「私、明日の放課後に上条君に告白します」

「…………」

 

茫然自失といった様子の二人の前で、

 

 

 

 

 

 

 

「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは、後悔のなさらない様に決めて下さい。上条君に……気持ちを伝えるべきかどうか」

 

 

 

ハッキリと、トドメを刺すように締めくくった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、通学路。

 

 

 

仁美と別れ、さやかとも会話する事なく別れたまどかは、今は竜二と二人で下校していた。

 

「…………」

 

あの場面以来、目に見えて元気の無いまどか。

それを見ていた竜二は、

 

「美樹ちゃんがそんなに心配か?」

「……さやかちゃん、きっと、苦しんでると、思います」

「まあ、当然だろうな。俺に恋愛事はよく分からんけど」

「…………」

「…………?」

 

最初は、友人の恋沙汰を気にし過ぎていると思っていたが、妙にさっきから様子がおかしいと竜二は感じた。

 

「えっと、あの仁美って子は美樹ちゃんの友人だろ? あの子も良い子そうだし、そこまで気に掛けんでも、二人でどうにかなると思うけど」

「……駄目なんです」

「何?」

「さやかちゃんは、多分、告白出来ないと思います」

「どうしてだ? そんなに奥手か? 美樹ちゃん」

「…………竜二さん、知らないんですよね?」

「…………何を?」

 

竜二は何となく嫌な感じを覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ソウルジェムの正体が、人の魂だって事、です」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

反応に戸惑った竜二は、それでも口を開こうとして、

 

「魂って、また随分と非科学的だな。流石はファンタジーだ」

「……………………」

「…………悪い。おちゃらけたつもりは無かったんだ」

 

睨む様なまどかの視線に、竜二が尻込みする。

 

「でも、それがどう関係するんだ? あの石ころが魂でも、生きてる事に変わり無いだろ?」

「……違うんです」

「?」

 

まどかはそこで顔を俯けて、

 

「キュウべえは、さやかちゃんの身体を、“外付けのハードウェア”だって言ったんです。心臓が破れても、身体の血を全部抜かれても、ソウルジェムさえ壊れなかったら平気だって……」

「……確かに、生きてる気はしないな」

 

そう言った竜二の目に、一瞬だけ影が差す。

顔を俯けたまどかは、それに気付けなかった。

 

「それで、そのゾンビみたいな身体で恋人なんて持てるか、って事か」

「……さやかちゃん、ただ好きな人の怪我を治したかっただけなのに…………、どうして…………?」

 

その言葉で、竜二は一つ確信する。

 

(美樹ちゃんの願いは、上条恭介の手の治療。タイミングもピッタリだしな)

 

一旦考え込んだ竜二だったが、

 

「……怪我治すにしたって、その時の美樹ちゃんには到底出来なかった事だろ? それを可能にしたんだから、俺は、代価としては合っていると思うな」

「っ!?」

「それに多分、美樹ちゃんの好きな人って上条恭介だろ? 彼の手は完治は絶望視されてたんだから、その人生変えたって分でも、やっぱり釣り合うと思うな」

「……どうして? どうしてそんな事言えるんですか!?」

 

まどかは竜二を睨み、彼女にしては珍しく怒鳴る様に言う。

 

「あんな身体にされる事なんて、さやかちゃんは全然知らなかったし、そんな事望んでも無かったのに! …………知らない内に取られて、それで、釣り合ってるなんて…………!!」

「……………………」

 

竜二は一旦彼女から目を逸らし、前方の風景を少し見詰める。

住宅街の背景の空は、少し傾いた日によって微かに黄金色に色付いていた。

 

「…………少し、知り合いの話をしようか」

 

竜二がそう言って、その顔をまどかに戻す。

 

「その人は、若くして不治の風土病にかかってな。既に母もその病気で亡くなり、彼女の命も空前の灯火だった」

「…………」

「でも、その人の父親が地元マフィアのボスでな、何としてでもその人を助けようとしたんだ。裏切りと犯罪で生きてきた男が、裏の情報を集め、愛する我が子の為に、全てを捨ててまでもな」

「どうなったんですか……?」

「結果的には見付かった。理論的には、それで完治する“らしかった”」

「…………?」

 

 

 

 

 

 

「何十人もの人間の臓器を、延々と交換する方法でな」

「!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

まどかは愕然とする。

 

「そんな……、そんなのって!?」

「暁美ちゃん達から聞いたと思うけど、俺が追っているのは“B.O.W.”っていう生物兵器で、それはウィルスや寄生虫の効果で生み出される物だ。寄生虫は兎も角、ウィルスの方は使用法を正しく守れば、不治の病も瀕死の重傷すらも治せる。それこそ、上条恭介の手ですらな」

「っ!!?」

 

屋上で、それらしい言葉があったのを思い出すまどか。

 

「その人に使われたのは、その中でも特に効能が強くてな。その分、抑えるのにそれだけぶっ飛んだ治療法をしなくてはいけなかったんだ」

「でも、何十人の人達が…………!!」

「そう、現に、俺の“先輩”が行った時には既に数十人が行方不明で、後に全員死体で見付かってる。臓器を抜かれた状態でな」

 

絶句するまどかを前に、竜二は空を仰いで、

 

「そうまでしてでも、失いたく無かったのだろうが……、その人自身は、その治療法に納得してる訳じゃなかった。今のお前と同じ、始まる前に知っていたら寧ろ拒絶しただろう。でも、その人が気付いたのは、治療が始まった後だった」

「じゃあ、その人は…………」

「治療の継続を拒否し、“人”としての死を迎えようとした」

「……………………」

「でも、結局死ななかった。今もアメリカで元気に暮らしてる。どういう訳か、治療は不十分な筈なのに、未だに暴走していないそうだ。…………とは言え、その身体は“人間”とは程遠い物であるのに変わりない」

 

もう一度まどかに目を向けた竜二は、

 

「それでもその人は、自分の治療の犠牲になった子達の為に、今も“人”として生きている。…………命の重さを比べる訳じゃないが、俺は美樹ちゃんの起こした事は、本来それ程の重さがあるものだと思う」

「…………」

「だからこそ、あの子が告白するのか、しないのか、いっその事全てバラしてしまうのか、結局それは彼女にしか決められない事だ。自分の背負った物には、自分で決着を着けなくてはならない……その人が、ウィルスで作り変えられた身体でも“人”として生きる事を選んだ様に」

 

俯いてしまったまどかの様子を見ながら、竜二はもう一度口を開いて、

 

 

 

 

 

 

 

「ただ、俺はキュウべえを擁護するつもりは無いし、寧ろ断罪されるべきだと思ってる」

「…………!」

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げたまどかと目を合わせた竜二は、

 

「お前達みたいな、ハッキリ言って世の中の世の字も知らんガキ連中の人生を、詐欺師紛いに狂わせる様な奴には、俺も憤りを感じるよ」

「竜二さん……」

「それに、あの子にしか決められないとは言え、お前の言葉であの子の考え方を変える事は出来る。明日学校に行った時にでも、しっかり話してみると良い」

 

前を向き、横目でまどかを見ながら竜二は続けて、

 

「まあ、キュウべえについては幸いにして、敵らしき組織の一員らしいからな。証拠が揃い次第、宇宙に送り返してやるさ」

 

ニヤッと笑って言った竜二に、まどかもつられて笑う。

その笑顔は、不思議とまどかの不安を押し流す力があった。

それは大人としての器の大きさか、エージェントとしての貫禄か、或はその奥の“何か”だったのか。

まどかに予測は出来なかったが、それでも、彼女は彼を信じてみたいと思えた。

 

「じゃあ、頼りにしても良いですか?」

「今はお前の護衛だし、それまではな」

 

そんな風に話していると、二人の前方にまどかの一軒家が見えてくる。

 

「あれだよな? お前の……」

 

竜二が横を向くと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?」

 

いる筈のまどかの姿がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌てて周囲を見渡すと、まどかは家とは別方向の道を進んでいた。

そっちに小走りで向かった竜二は、

 

「何処に行くんだ? 家と方向が違うだろ?」

「ちょっと、“寄り道”したくなったんです」

「…………」

 

にこやかに笑って言ったまどかに、竜二は思わず絶句する。

 

「鹿目ちゃん、お前は…………」

「勿論、さやかちゃん達に着いて行く訳じゃないです。皆に迷惑は掛けられないので。……ただ、“側を通ったりはするかも知れません”」

「………………………………」

「でも、大丈夫ですよね。竜二さんがいますから。頼っても良いですよね?」

「…………まあ、そう言ったしな…………」

 

下校時の護衛を任された竜二だが、特別に“下校ルート”を決めたり、“時間”を決めたりはしていなかった。

勿論、多少の寄り道は覚悟していたが……。

とは言え、今回の事も、竜二が駄目と言い張ればそれが通っただろう。

だが、

 

「竜二さん、早く来て下さい」

 

笑顔を見せて、歩いて行くまどかを今更止める事は出来ず、

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………泣かせてくれる…………」

 

ぼんやりと、竜二は呟くだけだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、倉庫街。

 

 

 

(…………全く、このイレギュラーは…………)

 

ほむらは、目の前の竜二を無表情に睨みながら思う。

既に日が落ちて、倉庫街の所々で街灯が点いている。

彼女がもしその下に立っていたら、その額に血管が浮き出ているのが見えたかもしれない。

 

「あの、ほむらちゃん。私が無理言っただけだから、余り竜二さんを責めないであげて」

 

その横で、まどかが竜二を庇う。

チラリとそちらを見たほむらは、改めて竜二を見据えると、

 

「言い訳があるなら言いなさい」

「下校途中の寄り道中に“偶々”さやかの姿を見付け、様子が心配になったまどかに押し切られて、ここまで尾けて来たんだ」

「何引き止め無かったの?」

「彼女の様子が気になったのは俺も同じだし、俺は緊急出動(エマージェンシー)さえ無ければ今日一日は予定が無かった。……それに、飽くまでまだ“下校中”だ。彼女の事は俺に任せて欲しい」

 

そんな言い訳をした竜二だが、実際の所、さやかを見かけたのは偶然では無い。

まどかと竜二は、寄り道”と称してさやかのマンションの近くまで行き、そこからさやかを尾行して来たのだった。

竜二自身、途中で駄目元で説得を試みようとしたのだが、

 

“「あんな風なさやかちゃんを放って置けないよ…………」”

 

と涙ながらに言われてしまい、このまま引き返しても後からまた追いかけそうな雰囲気だったので、結局竜二は折れたのだった。

 

「…………………………………………」

 

長い沈黙が場を包む。

竜二は、目の前の少女の自分への信用がガタ落ちになってるのを感じる。

と、そこに、

 

「……まぁ、来ちまったモンは仕方ないんじゃないの? 前線に立つ訳じゃないし、コイツもいるから、後ろにいるなら大丈夫だろうしな」

 

助け舟を出したのは杏子だった。

その横では、マミが苦笑しながら此方を見ている。

どうやら、彼女等は四人で行動する事にしたらしい。

 

「…………」

 

ただ、少し離れた場所のさやかは、先程から上の空であった。

それを心配そうに見るまどかを余所に、

 

「だけど彼は一般人で…………」

「一応、フル装備で来ているが?」

「だとよ。武器があるなら問題無いだろ?」

「過去にも追い詰めているしね。あんまりピリピリし過ぎるのも良くないと思うわ」

 

三人の意見に、ほむらは大きく溜息を吐いて、

 

「そこまで言うのなら、好きにして良いわ。ただ、足を引っ張る様なら、私はあなたまで護るつもりは無いから」

「子供に護られるエージェントはいないさ」

 

ほむらに軽口で返す竜二を見て、マミはさやかの方を向く。

 

「美樹さんもそれで良い?」

「…………ああ、うん。大丈夫だよ」

 

笑顔で返したさやかだが、その笑顔は何処か固い。

それに気付いたマミは、

 

「本当に大丈夫? さっきから顔色悪いみたいだけど」

「全然平気。心配要らないよ」

「そう、なら良いけど、何かあったら直ぐに言ってね」

「うん。分かった」

 

そう言うさやかだったが、やはり何処か覇気が無い。

心配そうにするまどかとマミの向こうで、ほむらは無表情に見詰めていた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・影の魔女の結界、最奥部。

 

 

 

不思議な光景だった。

あらゆる物が、まるで全ての色が落ちたように白黒で、隣のまどかですら目を凝らさないと真っ黒に見えてしまう場所だった。

前方には、黒い影絵の様な丘があり、その奥にはそこだけ赤い祭壇の様な物がある。

そして、その前にある黒い盛り上がりこそが、

 

「影の魔女、性質は“独善”、影の様な使い魔を駆使して戦う強敵よ」

 

ほむらが解説する。

 

「よく知ってんな。アンタ」

「前にキュウべえに聞いたのよ」

 

勿論嘘であるが、最近キュウべえの姿が見えないので、バレるとしても大分後になるだろうとほむらは思う。

 

(そう言えば、彼奴は一体何をやってるのかしら?)

 

ゆまの存在を確認した事で、一旦は織莉子を警戒した彼女だったが、彼女が調べた時は織莉子の父は存命で、キリカも最近家に帰っていないらしく姿が見えなかった。

実は、キリカは織莉子を見守る為に五郷市の空き家に勝手に住み着いていたのだが、そんな事はほむらに知る由も無かった。

なので、魔法少女絡みでの行動では無いとほむらは予測していた。

だが、“グラン・フォート”絡みの有力情報は少なく、その為彼女はキュウべえの行動の意図が読めないでいた。

 

(“彼等”に捕まって、兵器にされていたら幸いだけど…………)

 

まあ、無限湧きする兵器もそれはそれで脅威だが、まずあり得ない。

彼等と何か企んでいると考えるのが妥当であろう。

と、そんな事を考えていると、

 

「っ! 来るぞ!!」

 

杏子が言うと同時に、魔女の周囲に大きな変化が起きる。

十本近くの黒い触手が何処からともなく生え、先端の口を開き鎌首をもたげる。

 

「三人共、準備は良い!?」

「当ったりめェだ!!」

「うん!!」

「言われるまでも無いわ」

 

四人の魔法少女と、影の魔女の戦闘が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………………………………)

 

竜二は、目の前の光景に呆然としていた。

 

「……やっぱり、驚きます……?」

 

側のまどかがそう聞く。

影の魔女の結界の道中に使い魔は余りおらず、故に彼女等の本気の戦闘を見るのはこれが初めてだった。

 

(…………あの時は、相当手加減してたんだなぁ)

 

竜二の視線の先には、多節棍になった槍を振り回し、触手を根こそぎ刈り取る杏子がいた。

それ以外にも、迫り来る触手に対し、大量のマスケット銃を召喚して対抗するマミがいたり、長剣一本で魔女に突撃して行くさやかがいたり、それを援護するほむらがいたり。

 

(てか、暁美ちゃん。その手の物は“M16”か?)

 

アメリカ陸軍採用の高性能突撃銃、“M16”を慣れた手付きで扱い、ほむらは次々と触手を撃ち抜いていく。

 

(盗んだのかアレ……)

 

最初の爆弾といい、この子は異様に実戦型だなと呑気に思う竜二。

一方、当の本人はと言うと、

 

(くっ……、不味いわね)

 

内心かなり焦っていた。

 

(さっきから触手の数が全く減らない。やはり、此奴も今までよりも強い……!)

 

同じ思いを持っているのか、マミや杏子も微かに顔が歪み出している。

と、ここで、

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!」

 

叫び声と共に、さやかが魔女に突っ込んでいく。

 

「美樹さん!?」

 

マミが叫ぶと同時に魔女がさやかに反応し、触手がさやかの身体を覆い尽くす。

 

(…………!!)

「クッ! あのバカッ!!!」

 

目を見開くほむらの横で杏子が叫び、さやかを覆う触手を槍で切り払う。

 

「何やってんだアンタ!! 死ぬ気か!!?」

「…………」

 

中から出てきたさやかに杏子が怒鳴るが、さやかは反応を示さない。

再び剣を構えて、一気に突撃する。

対し、魔女の方も使い魔を出してさやかの身体を貫く。

だが、

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタ、まさか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子が呆然と言う前で、さやかは自らの身体に突き刺さる触手を切り裂き、足を止める事なく魔女に突進していく。

鮮血が飛び散り肉が抉られるが、彼女はそれに脇目もくれない。

マミもほむらも、ただ呆然としか出来ていなかった。

 

「さやかちゃん!?」

 

隣でまどかが思わず叫んでいる。

 

(…………)

 

竜二は、前の光景を静かに眺めていた。

やがて、魔女に辿り着いたさやかは魔女の頭部を切り飛ばす。

直後、

 

「がはあッ!!?」

 

断面から二本の触手が飛び出し、さやかを弾き飛ばす。

 

「ッ!!!」

 

ここでほむらが再起動し、アサルトライフルを構え魔女に発砲する。

その音で漸く二人も動き出し、マミの援護の元、杏子は倒れたさやかに駆け寄る。

 

「おい!! アンタ…………!!」

「…………」

 

声を掛けた杏子が息を呑む。

ゆらり、と立ち上がったさやかは、“瞳孔の開いた”目で魔女を見る。

また突進しようとするさやかを、今度は杏子が引き止めて、

 

「アンタいい加減にしろ!!! アタシらがヤルから……!!!」

「…………邪魔」

 

それだけ言って杏子を押し退け、さやかは魔女に突進していく。

 

「チィッ!!」

 

様子のおかしいさやかを護る為に、杏子は後を追う。

二人の援護の為、マミとほむらも前進する。

 

 

 

 

 

 

 

全員が、魔女に近付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

四人の攻撃で使い魔を無くし、影の魔女も等々虫の息となった。

 

「よしッ!!」

 

杏子が槍を翳し、さやかが剣を構え、止めの一撃を放とうとする。

 

 

 

 

その矢先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュゥン!!!!!!!!

 

「ッな!!!?」

「!!?」

 

 

 

 

 

 

 

魔女の脇から、一匹だけ残っていた使い魔が飛び出す。

前進していたマミとほむらの脇を抜けた使い魔の標的は、

 

 

 

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 

 

呆然とするまどかだった。

 

((!!?))

 

二人が慌てて振り向き武器を構えるも、その前に使い魔は彼女の目の前に迫り、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ!!!!!!!

 

肉が裂かれる音と共に、鮮血が“まどかの顔に”降りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぐああぁッ!!!」

「竜二さん!!?」

 

まどかを庇って前に出た竜二の右脇を、使い魔が牙で引き裂く。

だが、竜二は左手でハンドガンを抜き、身体を捻って背後の使い魔に向けて連射する。

その銃弾は使い魔を捉え、一瞬でその命を奪う。

直後、杏子が影の魔女本体に止めを刺す。

魔女の断末魔と共に、結界が崩れ元の倉庫街に戻って来た。

 

「竜二さん!! 大丈夫ですか!!? 早く手当てしないと…………!!」

「大丈夫だ……。それよりも…………」

 

竜二は立ち上がり、不安気に見上げるまどかを余所に、さやかの元に向かう。

ぺたりとその場で座り込んでいたさやかだったが、急に“瞳孔が閉じて”目を瞬かせると、

 

「あ、あれ? あたし…………ッ!!?」

「……美樹ちゃん」

 

竜二の声に、身を固くするさやか。

 

「あれが、お前の“答え”なのか? …………あれが、お前が求めた物だったのか?」

「…………」

 

黙ってしまったさやかに、竜二はゆっくりと、

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのお前は、“化物”に見えたぞ」

「ッ!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜二の言葉に、辛そうに顔を顰めたさやかは、

 

 

 

 

 

「さやかちゃん!?」

「美樹さん!?」

「さやか!?」

 

 

 

 

 

急に走り出して、姿を消してしまう。

 

「待って!! さやかちゃん!!」

 

まどかが後を追う。

竜二はそれを暫く見ていたが、

 

「…………はぁ」

 

溜息を吐いて、二人の後を追おうとするが、

 

「竜二さん! 貴方怪我してるでしょう!?」

「心配するな。かすり傷だ」

「駄目です!! どう見たって……」

 

 

 

 

 

「大丈夫だと言っているだろうが」

「!!」

 

 

 

 

 

急にトーンを落とした竜二の声に、マミが押し黙る。

 

「…………」

 

そのまま三人を残し、竜二は二人の後を追う。

 

「アイツ、ホントに大丈夫かよ……?」

 

杏子が呟くが、ほむらの耳には届いていなかった。

 

(…………!?)

 

ほむらは、自分の見た物を必死に理解しようとしていた。

だが、それは余りにも理解を超えた物だった。

 

 

 

 

 

自分の錯覚だと信じたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偶々見えた竜二の裂かれたシャツから、“傷一つ無い”皮膚が見えた事を。

 

 

 

 

 




お待たせしました。B.O.A.です。

久々の語りのシーン、本気で書き辛かった…………。
ビッミョーに後半戦闘チックですが、まあ、大丈夫ですよね。(^^;;

さてさて、次回か次々回がChapter4終了になるかな?
一層頑張っていこうと思います。

感想等、お待ちしています。(^-^)/

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