BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1998年12月27日

ロックフォート島にクリス到着。死んだはずのアルバートと遭遇し、クレアを追って南極基地に向かう。





バイオハザード CODE:Veronica~ロックフォート島襲撃事件~




BGM:バイオハザード ダークサイド クロニクルズ より「Hydra」


chapter 4-11

・見滝原市、市民公園。

 

 

 

目的:“デカい奴”を倒す。

 

 

 

(さてと……)

 

水面を睨みながら、佐倉杏子は思考を開始する。

ヤトノカミは深く潜航しているらしく、姿が全く見えない。

 

(相手は水の中、飛び込むのは流石に無謀か……)

 

杏子はそのまま屈み、槍を持たない左手を地面に着ける。

 

(なら)

 

直後に紅い魔法陣が浮かび上がり、

 

 

 

 

 

 

「足場を作ってやるか」

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!

 

水面から紅く太い槍が幾つも突き出てくる。

 

 

 

 

 

 

槍はある程度伸びると、切っ先の部分が外れて垂れ、

 

「よっと」

 

その先の上に杏子が飛び乗る。

 

「……今のに巻き込まれたりしてないよな?」

 

槍が飛び出たのに関わらず、全く動きが無い水面下を見下ろしてポツリと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達がこの場に居合わせたのは、本当に偶然だった。

 

“「こういう風に二人で居るのは、本当に久しぶりね」”

“「まあな。そもそも、アタシは二度と無いと思ってたけど」”

 

杏子とマミは、二人で集合場所に向かっていた。

四人で行動する事にした彼女等だったが、杏子だけは学校も行ってなく携帯も無かったので、三人との連絡が取り辛かった。

出来るだけ撹乱する為にも、集合地点は変えて行きたい彼女達にとって、それは大きな障害だった。

その為、杏子は前日にほむらが伝えた別の場所まで行き、そして三人がローテーションでそこに迎えに行く事にしていたのだ。

昨日がほむら、今日がマミ、明日がさやかとなっていた。

 

“「じゃあ、貴方の予想が外れて良かったわ」”

“「アタシとしては、不本意なんだけどな」”

 

杏子は元々、完全に和解した訳では無い三人と行動するのは気が進まなかったが、現場を考えて渋々妥協していたのだった。

 

“「……昨日は、ありがとうね」”

 

不意に、マミがポツリと言う。

 

“「急にどうしたんだよ」”

“「美樹さんの事、守ってくれて」”

“「あんな目の前でチョロチョロされたら、気にすんなって言われた方が無理だよ」”

“「…………」”

“「……おい?」”

 

怪訝に思った杏子がマミの方を向くと、少し顔を暗くしたマミが、

 

“「私は、やっぱり無理なのかな……」”

“「……は?」”

“「あの子達の事を守るって決めたのに、美樹さんは止められなくて、鹿目さんも危険な目に遭わせて、やっぱり出来ないのかな……」”

“「……らしくねェ事言ってんじゃねェよ。アンタはアタシと違うんだ。アレは本当にアイツがおかしかったんだ。アンタだけの所為じゃ無い」”

“「でも……」”

“「言い方悪りぃが、結局無事だったんだ。今メソメソしたって次が良くなる訳じゃ無い。だったら、次は失敗しない様、全力で当たるしか無いだろ」”

“「…………!」”

“「結局、全部アンタ次第の事だ。アタシにはそれぐらいしか言えない」”

 

そこまで言って、ふと杏子は今の言葉を振り返り、

 

“「……“自分次第”、か……」”

 

それは“アイツ”の言った言葉。

あの時、まどかを身を呈して守った男の言葉。

 

“「……佐倉さん?」”

“(…………)”

 

“アイツ”は、自分の意見に納得してくれた最初の人物。

然も、自分の後押しすらした。己の意見を言った上で。

 

“(アイツは……何なんだ?)”

 

マミやさやかとは違う。

自分の様に我が儘にやってる訳じゃ無い。

近いとしたらほむらだが、何故か違和感があった。

でも、それが何かが分からない。

 

“(何の為に、戦ってんだ?)”

 

答えは出ない。

その訳が、自分達がアイツについて余りに“無知”だからという事に気付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

その矢先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きゃぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!

 

“「!?」”

 

遠くから響く悲鳴に辺りを見渡す二人。

 

“「今のは!?」”

“「結構近かったわ! 協力してくれる!?」”

“「チィッ! やってやるよ!」”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(結果的には、来て正解だったな)

 

水面下を隈なく見て、ヤトノカミを探す杏子。

だが、相変わらず水面下に動く物の気配は無い。

 

(何処に隠れやがった……)

 

夕焼けで黄色く色付く水面はタダでさえ湖底が見え辛いのに、運悪くも体色の黄色いヤトノカミが隠れ易い状況だった。。

 

 

 

 

 

 

 

とは言っても、さほど関係は無かったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

ダァァァアアアン!!!!!!

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

その咆哮は、背後の湖沿いの遊歩道のマンホールの方から響いた。

 

「ッ!?」

 

咄嗟に振り向くと、マンホールから身体を出したヤトノカミが大口を開いている。

直様、槍を身体の前に構え迎撃しようとする杏子。

だが、

 

「うあっ!?」

 

足場の悪さを考えなかった所為で、大きくバランスを崩しかける。

大きく身体が反れ、槍を上に突き出す体勢になる杏子。

 

 

 

 

 

 

 

当に幸運だった。

 

 

 

 

 

 

 

バスッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!

 

「!?」

 

ヤトノカミの右牙から放たれた“白い線”は槍を撃ち抜き、一瞬前まで頭のあった場所を突き抜ける。

体勢を立て直して見ると、切っ先の金属の部分に大穴が空いていた。

 

「…………マジ?」

 

その威力に、杏子は顔を蒼白にする。

と、

 

「ジャアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

ヤトノカミはそのまま湖に頭を突っ込み、再び湖に姿を消す。

 

(アレは喰らったらマズイな…………)

 

金属の板ですら容易に寸断する水圧カッターを喰らえば、例え魔法少女でもスプラッター映画クラスの惨事になるのは簡単に予想出来た。

槍を魔力で補修した杏子は、水面から伸びた足場の先を渡ってヤトノカミを探す。

だが、様子を伺ってるのか水面下にまた動きが無い。

 

「また隠れやがって……」

 

足場の一つに止まり、彼女がそう毒づいた時だった。

 

 

 

 

 

ザバァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

 

 

不意に杏子の横から飛び出したヤトノカミが、素早く頭部を突き出してくる。

 

「ック!?」

 

槍を横にして受け止めようとする杏子だったが、

 

「うあッ!?」

 

足場の所為で踏み込めず、大きく跳ね飛ばされる。

 

「チィッ!」

 

だが、空中でクルッと回転して別の足場に乗ると、

 

「お返しだ!!」

 

持っていた槍を素早く投擲する。

槍は、ヤトノカミが三度水に潜った付近に向かって高速で飛び、

 

「ジャアッ!!!!??」

 

水面下のヤトノカミに突き刺さる。

だが、刺さりが甘いのか直ぐに槍が外れ、重みで水面下に消える。

 

(クソッタレ……待ち伏せしてやがったのか……)

 

ヤトノカミには、複数の水生生物の遺伝子が組み込まれている。

その内の一個体の生態が、ヤトノカミの行動に現れた結果であった。

 

 

 

ザバザバザバザバザバザバザバザバザバッ!!!!!

「チョコマカと……!」

 

 

 

新たに出した槍を手にする杏子の周囲を、ヤトノカミは足場の間を縫う様に高速で泳ぎ回る。

と、今度は少し離れた所から顔を出し、

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

バスススススススッッッッッッッッッッッッッッ!!!!

 

杏子の胴辺りで水圧カッターを薙ぎ払ってくる。

 

「当たるかよッ!」

 

それを跳んで躱すと同時に、多節棍状になった槍を繰り切っ先を向ける。

 

「ジャアッ!!!」

 

だがヤトノカミの反応も速く、身を翻して直様潜る。

 

(ッ!)

 

逃がすまいと杏子は一気に接近するが、

 

ザバアッ!!!!!

 

今度は尾だけを水面から伸ばして低い位置で薙ぎ払う。

 

「うおッ!?」

 

大きく振り回される尾によって、付近の足場はスナック菓子の様に根こそぎ折られる。

自分の足場が折られる前に、杏子は慌てて離れた足場に避難する。

 

「ヤロウ……!!」

 

再び静かになった水面を忌々しそうに睨む杏子。

単体の強さは魔女に劣るが、ヤトノカミの必殺の攻撃(水圧カッター)と明らかな地の利が彼女に苦戦を強いていた。

 

(これが“B.O.W.”か……)

 

元々強力な飛び道具を持たない杏子にとって、水中からの奇襲攻撃をコンセプトに開発されたヤトノカミとは必ずしも相性が良いとは言えない。

だが、

 

「仕方ねェ」

 

言って、一旦槍を眼前に掲げると、

 

 

 

 

 

 

「出し惜しみはしないでおこうか」

 

 

 

瞬時に、付近の足場に二人の杏子の“幻影”が現れる。

 

 

 

 

 

ロッソ・ファンタズマ(赤い幽霊)

 

嘗て杏子が使っていた多重分身魔法。

今は弱体化したものの、それと知って注意しなければ判別は不可能だろう。

 

 

 

 

 

「さて、どうする?」

「本物のアタシを見破れるかな?」

「精々、楽しませてくれよ?」

 

三人となった杏子が、バラバラに足場の上を跳んで行く。

幻影に攻撃を受けさせて一気に仕留めるつもりであったが、

 

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

頭を出したヤトノカミは、正確に本物の杏子にカッターを撃つ。

 

 

 

 

 

 

「チッ!」

 

別の足場に跳んで躱す杏子に対し、

 

「覚悟は良いッ!?」

「喰らいなッ!!」

 

二体の幻影が槍を構えて一気に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

ヤトノカミはその“槍だけ”躱して、水面から首を出したまま一気に杏子に突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なッ!?」

「はあッ!!?」

「ッ!!!」

 

幻影に脇目もくれずに向かってくるヤトノカミに一瞬唖然とするも、直ぐに槍を構えて横薙ぎに迎撃しようとする。

それに気付いてヤトノカミも素早く頭を引こうとするが、

 

「ジャアアアアアアアアアアッ!!?」

 

ヤトノカミの鼻先を槍が掠め、ヤトノカミは慌てて水中に引っ込んで行く。

 

(どういう事だ? どうして惑わされない!?)

 

予想外の事態に戸惑う杏子。

一先ず、効果の無い事が分かった幻影を消し、杏子は再び水面近くを泳ぐヤトノカミを睨む。

と、

 

 

 

 

 

ダァン、ダダァン!!!!!

 

 

 

 

 

「!」

 

銃声と共に、泳ぐヤトノカミの近くに幾つもの銃弾が突き刺さる。

 

「お待たせ! 大丈夫!?」

 

見ると、恭介等の手当と避難誘導を終えた巴マミが、杏子の側の足場の上に降り立つ所だった。

 

「ああ! だが気を付けろ、アイツの口から撃ってくる奴は避けるしかねェぞ!!」

「分かったわ!」

 

水面近くを高速で泳ぎ回るヤトノカミに周囲に展開したマスケット銃で銃撃しながらマミが答える。

 

「マミ、アレを拘束出来るか!?」

「分からない。やってみるけど、動きが速い……!!」

 

一気に潜水し、ヤトノカミの姿が消える。

 

「何処……!?」

 

夕焼けの湖の上で辺りを見渡す二人。

 

 

 

 

 

 

ドォォォォオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「!」

 

 

 

 

 

マミの背後から出てきたヤトノカミが、大口を開けて迫ってくる。

 

「ッ!!」

 

跳んでマミが躱すと、ヤトノカミはマミの乗っていた足場をへし折りながら水中に潜って行く。

だが潜り切る前に、

 

「当たれッ!!」

 

そこに向けて、空中で出現させたマスケット銃を一斉に撃つ。

放たれた弾丸は潜って行く途中のヤトノカミの身体に突き刺さり、赤い血が飛び散る。

 

「ジャアアアアアアアアア……」

 

身を捩り、弱々しい声と共に水に沈むヤトノカミ。

暫くすると、そこから赤い血が水面に広がり始める。

 

「…………やったの?」

 

濃い赤に色付く水面を見て、確認する様にマミが呟く。

周囲に漂い始めた血の臭いに、杏子がフンッっと鼻で笑うと、

 

「……思ったよりも、呆気なかったな」

 

槍を肩に担ぎ直して、ふぅっと杏子が一息吐く。

その様子を見てマミも安心した様に、

 

「ホントね」

「流石は“マミ先輩”だ。一瞬で決めちまった」

「もう一度鍛え直して上げましょうか? 貴方、苦戦してたじゃない?」

「……余計なお世話だ」

 

苦虫を噛み潰した様な顔をする杏子に、マミが面白そうに目を向けて、

 

「さっきのも、昔より全然キレが無かったわ」

「……見てやがったのか」

「力が戻ったのは良いけど、リハビリが必要みたいね。付き合って上げましょうか?」

「うっせェ! 余計なお世話だ!!」

 

怒鳴った杏子は、足場を渡って岸辺に向って行く。

マミも後を追おうとして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子の足元の水面に影が指しているのに気付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない!!!」

 

マミが叫び、足場の上で杏子が目を見開いた直後、

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

その下から飛び出したヤトノカミが螺旋を描いて上昇し、足場ごと一気に杏子に巻き付く。

 

「ぐッ……!? …………がぁッ……!!」

「佐倉さん!!」

 

拘束されたまま一気に締め上げられ、苦悶の声を上げる杏子。

 

 

 

 

 

バキッ!!!

 

 

 

 

 

足場の槍がへし折れて、そのまま杏子は宙吊りになる。

 

「ッ!!」

 

マミは直ぐにマスケット銃を展開するも、杏子への誤射を恐れてマスケット銃を手で構えてヤトノカミを撃とうとするが、

 

 

 

バスッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!

 

「きゃあ!?」

 

 

 

放たれたカッターに手元の銃を壊されて、思わず怯んでしまう。

 

「ぐぅ…………ッ!!」

 

杏子も抜け出そうとするが、まるで歯が立っていない。

ミキミキッと身体から嫌な音が響くのが聞こえる。

 

(マズい……これじゃ…………)

 

ヤトノカミが此方を向き、その口を開ける。

蛇にしては短いが、太く大きい牙が眼前に迫る。

 

(此処までか…………!!!)

 

その時を感じ、杏子は思わず目を瞑る。

 

 

 

 

 

 

タァン!!!!

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??」

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

その口から突然血が吹き出し、ヤトノカミが悲鳴を上げる。

その首元が開きエラ状のヒダが露出すると、

 

タタタタタタッッ!!!

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!???」

 

連続で銃弾が突き刺さり、悲鳴と共にヤトノカミの身体が崩れ落ちる。

 

「くっ!」

 

一緒になって水面に落ちた杏子は、のたうっている隙に拘束から脱する。

 

「誰ッ!?」

 

マミが周囲を見渡し銃声の主を探していると、

 

 

 

 

 

ブォォォォオオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

何処からとも無く、大型のバイクのエンジン音が響く。

 

 

 

 

 

 

「……お前本当に中学生か?」

「“一般的じゃない”中学生よ」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市市民公園、湖付近。

 

 

 

目的:新型B.O.W.を倒す。

 

 

 

(こんな事になるとは……)

 

公園の遊歩道を竜二の繰るバイクで突っ切ってきたほむらは、狙撃銃のリロードをしながら考える。

彼女の持つのは、フルオート射撃可能な“VSS”という狙撃銃だった。

 

(“真相”を聞くにも、先ずはアレを倒してからね……)

 

ほむらがそう思う中、善良な市民にお借りした(その辺から盗んだ)バイクを湖に横付けした竜二は湖を見て、

 

「あんな真ん中で暴れられたら、余り援護が出来んな……」

「その必要は無いわ。あなたの言った通りなら、私達でも仕留められる」

「想定外を平気で起こすのが“B.O.W.”だ……、無理があったら直ぐに引けよ」

「分かったわ」

 

後ろに乗っていたほむらの姿が消え、瞬時にマミの側の足場に出現する。

 

「……やっと来たか」

「二人共、まだ大丈夫な様ね」

「ええ……、ヘマしちゃったけど」

 

足場に上がった杏子と、少し凹んだ様子のマミを見たほむらは、

 

「凹むのは後。アレを倒すのが先」

「でも、どう為れば良いの? ティロ・フィナーレ(最後の射撃)を撃つにも、速すぎて狙えないし……」

「アレは口を攻撃されると首元が開く。そこが弱点」

「本当か!?」

「“竜二・シーザー”の情報だから、」

 

そこで一瞬言葉を詰まらせたほむらだったが、

 

「……間違いは無いと思う」

「そうね。竜二さんのなら間違い無いわね」

 

マミが納得した様に言う。

 

(今の現場、それ以外に情報が無い。弱点は既に実証されてるし、それだけでもアレを倒すのには十分ね)

 

竜二に“疑惑”を持っているほむらは、彼の言葉を無条件に信じる事は出来なかった。

緊急だったのもあるが、距離を置いた狙撃は彼の情報の“実証”の為でもあった。

三人は静かになった水面を睨みながら、次の行動を練り始める。

 

「佐倉杏子、あなたにはアレを撹乱して欲しいのだけど、頼める?」

「分かったけど……、アイツはアタシの魔法で幻惑出来なかった。そこまで大した事は出来ねェぞ」

「どういう事?」

「分からない。幾らアタシが弱体化したからと言って、“ヘビ”相手に出来ないなんて想定外だよ……」

「……分かったわ。余り無茶はしないで」

「私は?」

「あなたにはアレの拘束と、最後のトドメを頼みたいのだけど」

「分かったけど……アレの動きが速いから、上手く出来るかどうか…………」

「隙は私が作る。だから問題は無いわ」

 

具体的な行動は決まった。

 

ザバァァァァアアアアアアアアアアアアン!!!!!

「「「!」」」

 

湖に水柱が出来る。

三人は敵を倒す為に行動を始める。

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「…………は?」

 

ヤトノカミが出てきたのは、竜二の“目の前”。

 

「ジャアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」

 

喰いついてくるヤトノカミを、竜二は慌ててハンドガン(ベレッタ)を抜いて迎撃する。

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??」

 

悲鳴を上げてのたうつヤトノカミの首元に目掛けて撃ちながら、竜二はバイクを発進させて逃げ出す。

が、

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「おいおいおいおい!!?」

 

 

 

 

 

水に引っ込むかと思いきや、ヤトノカミはなんと水から上がってバイクを追い始める。

 

バスッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

「ぬあああああああああああああッ!?」

 

そのまま放たれた水圧カッターを、バイクがスピン寸前になりながら必死に躱す竜二。

 

「……………………」

 

呆然とする三人の前で、ヤトノカミが漸く水の中に戻る。

 

(確かに……想定外ね…………)

 

ほむらがそんな事を考えていると、

 

「……何だったんだ?」

「バイクの音に引き寄せられたのかしら……?」

「音でなら、アタシの幻惑が効く筈だぞ?」

「でも…………っ!」

 

突然、マミが何かに気付いた様なそぶりを見せる。

 

「何か分かったの?」

「ひょっとしたら…………、」

 

一方、エンストしたバイクに乗ったままの竜二は、

 

(……あり得る……)

 

ある結論に至っていた。

 

 

 

 

 

 

(「アイツは、“熱”で物を見ているかもしれない」)

 

 

 

 

 

「熱?」

「昔テレビで見たんだけど、蛇には“ピット器官”っていう熱を感知する器官があるの。それなら幻惑出来なかったのも、竜二さんのバイクに反応したのも説明がつくわ」

「あー……、確かに。体温までは再現出来なかったかも……」

「熱……、使えそうね」

 

ほむらがバイクの方を見ると、竜二が此方を向いて手招きしていた。

 

「彼も気付いたみたいね」

「流石は本職だわ……」

 

変に感心するマミを置いて、ほむらは竜二の側にワープ(時間停止)で移動する。

 

「暁美ちゃん。恐らくだが……」

「ええ……、多分」

 

互いが“それ”に気付いた事を確認し合った二人は、

 

「アレを誘き出す策がある。乗ってくれるか?」

「……分かったわ」

 

そう言ったほむらをバイクに乗せると、

 

「始めるか」

 

竜二は一気にスロットルを開く。

 

 

 

ブォォォオオオオオオン!!!!! ブォォォオオオオオオン!!!!!

 

 

 

バイクの空吹かしの音が盛大に響く。

そして、

 

「来たわッ!!!」

「オーケーッ!!!」

 

クラッチを繋げて、バイクは緩やかなカーブを走り出す。

水飛沫を上げながら迫るヤトノカミを、完全に引き離さない位の速度でバイクを走らせる竜二。

このまま全身を出してくれたら上々だったのだが、

 

「駄目ッ!! 警戒されてる!!!」

 

さっきの事もあってか、中々上がってこない。

 

バスッッッッッッッッッッッッッ!!!!!

「クソッ!!!」

 

撃ち込まれるカッターをどうにか避ける竜二だが、一向に相手が陸に上がる気配は無い。

 

「どうするの!? このままじゃ……」

「心配するな。考えはある」

 

やがて、バイクは直線に差し掛かる。

ハンドルを保ったまま、竜二は腰のポーチを漁って“何か”を取り出し、

 

 

 

 

 

「行くぞ」

 

“焼夷手榴弾”のピンを抜き、

 

「ッ!!!」

 

ブレーキを踏み、バイクを横に滑らせながら後ろに軽く放る。

 

 

 

 

 

手榴弾は歩道をコロコロと転がった後、

 

ダァンッッッッッ!!!!!

 

爆音と共に、瞬時に真っ赤な炎を生み出す。

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

 

その熱に当てられたヤトノカミが一気に地上に全身を出し、炎に頭を突っ込み掛け、

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!??」

 

鼻先に火傷を負い、頭を振って悶絶する。

 

「今だ!!!」

 

竜二が叫ぶと同時に、振り回されるヤトノカミの頭に向けて停止したバイクの上からウィンチェスターとVSSの弾丸が放たれる。

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!??」

 

弾丸が頭部に直撃し、首元を開いて苦しそうにのたうつヤトノカミ。

 

 

 

 

 

 

レガーレ(束縛)!!!」

 

 

 

 

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

そこに黄色いリボンが飛び、一気に拘束される。

脱出しようとヤトノカミが暴れるが、その拘束は固く相手を逃さない。

そして、

 

 

 

 

 

「これで、終わりだ!!!」

 

 

 

 

 

杏子が多節棍状の槍を繰り、拘束されたヤトノカミの首を切断する。

切り飛ばされた頭部が大きく飛び、ボトッと杏子の脇に落ちた。

 

ズゥゥゥン……!!

 

マミがレガーレ(束縛)を解除し、残された胴体が力無く落ちる。

 

「……飛んで火に入る夏の虫、かな」

 

竜二が呟き、ゆっくりと手元の銃を下ろす。

それに合わせて、三人も警戒を解く。

 

「終わったみたいね」

「ああ」

 

バイクに乗ったままの二人の方に、マミと、その後ろから杏子がそれぞれ歩いてくる。

 

「ま、結構歯応えあったな」

「じゃあ、此れからお茶にする?」

「いや、俺はこの…………」

 

竜二は見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の背後で、ヤトノカミの首が繋がる瞬間を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人共!!!」

 

慌てて銃を上げる竜二の前で、ヤトノカミが胴体を起こす。

 

「な……!?」

 

振り向いた杏子の前で、首が“複数の節のある触手”で繋がったヤトノカミはその牙を杏子に向ける。

 

(ッ! 不味い!!)

 

竜二の持つウィンチェスターは散弾銃(ショットガン)

最悪にも、ヤトノカミへの射線上に杏子はいた。

 

(ッ!!!)

 

マミも杏子も不意を突かれてしまい、自力の迎撃は間に合わない。

竜二は咄嗟に“左手”をヤトノカミに向けようして、

 

 

 

 

 

タタタタタタタタタッ!!!!!

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!??」

 

 

 

 

 

それより早く、ほむらがVSSをフルオートで撃ちヤトノカミの行動を止める。

 

「佐倉さん! 退いて!!」

「!!」

 

その声に杏子が飛び退くと、マミが胸元のリボンを解き、それが巨大な大砲に変化し、

 

「ジャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

水中に戻ろうとするヤトノカミ目掛けて標準を合わせ、

 

 

 

 

 

ティロ・フィナーレ(最後の射撃)!!!!」

 

 

 

 

 

生み出した大砲を撃ち、その胴体を一撃で消し飛ばす。

 

「クソッタレ!!!」

 

砲撃の衝撃で大きく吹っ飛ぶ頭部に杏子が素早く多節棍状の槍を伸ばして、

 

 

 

 

 

「消えろッ!!!」

 

 

 

 

一瞬で槍が縦横無尽に振り回され、頭部が文字通り“細切れ”になる。

 

「……Impressive(良い腕だ)

 

それを見て、ボンヤリと竜二が呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え……!? 仁美ちゃん達が!?』

「ああ、だが平気だ。既に“手当”は済んでるし、上条恭介も数日中に登校出来るだろう。」

 

電話にて、先程の事をまどかに報告する竜二。

ヤトノカミ戦から暫く経っており、辺りは既に暗い夜の闇に覆われている。

辺りでは、レズモンド達の部隊が事件の調査に動いていた。

因みに、クリス等は“ある場所”に行っていてこの街にはいない。

 

『でも……』

「心配するな。こっちから美樹ちゃんにも伝える。だから、明日ちゃんとフォローしてやりな」

『…………分かりました』

「じゃ、また明日な」

 

電話を切った竜二は、先程から背後から感じていた視線に振り返り、

 

「…………で、分かってるわよね?」

「ああ、待たせて悪い」

 

そこに居たほむら、杏子、マミに目を向ける。

既に他の二人にも、ほむらから話が伝わっていた。

 

「アンタ……何でだ…………?」

「どうして、そんな事を…………?」

 

二人共、聞いた事が信じられない様子であった。

二人は疑問を受け、竜二は一旦目を瞑ると、

 

「…………俺は「竜二、ちょっと良いか?」……何だ」

 

いきなり話をへし折られた竜二が、不機嫌そうにその元凶を見る。

その視線をスルーしたレズモンドは、

 

「近くに落ちていたのだが、お前の知り合いのじゃ無いか?」

「!!??」

 

“さやか”の携帯を竜二達に見せる。

それを見た竜二は焦った様な様子で、

 

「近くって、何処だ!?」

「湖近くの林の中…………」

「ッ!!」

 

話している途中のレズモンドから携帯を奪った竜二は、

 

「スマン!! 少し離れるぞ!!」

 

三人を引き連れ、直様公園を後にする。

 

(クソッ、無事で居てくれ!!!)

 

 

 

 

 




遅くなりました~、B.O.A.です。

さてさて、忌々しい新型との対決です。
バイクの所は作者の知識不足もあるので、間違ってたら指摘をくれると嬉しいです。

竜二は何やら焦ってますが、その訳とは……?
次回、本当に Chapter 4 終了。

感想等、お待ちしてます(^-^)/
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