BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・1998年12月27日

南極基地にてクリスとクレアが合流。コールドスリープから目覚めたアレクシア・アシュフォードを倒し、南極基地を脱出する。
アレクシアによって「TーVeronica」の実験台とされたスティーブの遺体は、アルバート・ウェスカーによって回収され、基地は爆破される。





バイオハザード CODE:Veronica ~ロックフォート島襲撃事件~


chapter 4-12

・見滝原市、見滝原駅。

 

 

 

 

終電の過ぎたプラットフォームは、既に明かりが消えて暗い。

そこに設置されたベンチの一つに、美樹さやかは俯いて座っている。

あの場所から逃げる様に彷徨った挙句、彼女は此処に辿り着いていたのだった。

奇遇にも、彼女の座るベンチは嘗て竜二が座っていた物でもあった。

 

「……無事だったか」

 

そこに、安堵した様な竜二の声が響く。

彼はあの後、聞き込みやらを必死にした結果、此処に辿り着いたのだった。

その後ろには、ほむら、杏子、マミの姿があった。

 

「心配したぞ、携帯だけ落として行くなんて。何で顔出さなかった?」

「…………」

「……遅れた事位で余り気に病むなよ?」

「……ごめんなさい。違うんです」

「何?」

 

ゆっくりとさやかが顔を上げる。

その瞳に嘗ての様な光は無く、代わりのあるのは何処までも深い闇であった。

全てを失った様なその様子に、奇妙な危機感を竜二は覚える。

 

「あたしは、遅れてなんか無い。むしろ、始めからいたんです」

「!?」

 

思わず振り返って、三人と顔を合わせる竜二。

彼女等も互いを見合い、代表するかの様にマミが首を振る。

 

「……どういう事だ?」

「あたしは、助けに行かなかったんです。目の前で、恭介や仁美が襲われても」

「……何でだ? アンタはあれ程……」

 

杏子の言葉が途中で止まる。

さやかが彼女に笑い掛けたからだ。

恐ろしく乾いたその笑いは、当に自暴自棄になった者の嗤いだった。

 

「ゴメン、全部嘘だった。あたしはあんたと同じ、いやそれよりも自分勝手な奴だった。笑っちゃうよね。散々ぬかしておいて、結局、ただ自分自身から目を背けてただけだったなんて」

「美樹さん……?」

「自分の事は棚に上げて、人の悪い事だけ偉そうに非難する。あたしは、そんな最低な奴だったんだ」

 

さやかの言葉にただ不安を募らせる杏子とマミの横で、ほむらは何処か諦めた様な様子で佇んでいる。

その前で、竜二が彼女に一歩歩み寄って、

 

「……何があった。答えてくれ」

「…………」

「美樹ちゃん」

「……やっぱ最低だ。今になっても言えないなんて……」

「……美樹ちゃん?」

 

さやかが膝の上で握っていた手をゆっくり開き、その手の物を見せる。

そこにあるのは、真っ黒に濁った彼女のソウルジェム。

 

(……!?)

 

何処かで見た様な、禍々しく脈動するそれに竜二が目を奪われる。

 

「……マミさん、杏子、ほむら」

 

竜二がそれに目を戻すと、彼女は濁った目で竜二を見つめていて、

 

「……竜二さん、後で、まどかにも伝えて下さい」

「美樹ちゃん、何を……」

「本当に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………本当に、ごめんなさい…………」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・東京湾、グラン・フォート本社。

 

 

 

“グラン・フォート”が世界的良企業として知られているのは、何も実績だけが理由なのでは無い。

それには先ず、その名の由来が挙げられる。

アンブレラが“人々の健康を庇護する(Umbrella)”、ウィルファーマが“未来ある大製薬会社(Will Pharmacentical)”、トライセルが“「海運」・「資源開発」・「製薬」の三部門の複合企業(Tri Cell)”という由来で付けられたのに対し、グラン・フォートは“害悪から人類の健康を守る大いなる砦(Grand Fortress)”という由来を持っている。

つまり、B.O.W.撲滅を社名に唄っているのだ。

それ故に、彼等は積極的なBSAAへの無償援助、製薬企業連盟の発言力の弱体化に努めていた。

二つ目が、その企業体制。

対B.O.W.兵器開発に協力する為、彼等はB.O.W.の生産・実験を行っている事を公言している。

研究等には常に安全性を優先し、本社以下の研究施設を海岸や人工島に設置、周囲を高層ビルレベルの外壁が覆っており機から見ると当に“要塞”である。

また、BSAAや国家単位の団体には常に情報公開を徹底しており、噂では社員のトイレの回数まで一覧化していると言われる程である。

“敵を知り、己を知らば、百戦して危うからず”を体現していると言えよう。

 

「……それで、BSAAはどうしたの?」

 

ただ、何事も完璧な物を作る事は出来ない。

 

「社内情報の“公開部分”と、“立ち入り禁止区域”外を見て回って帰って行きました」

「そう、此処は気付かれて無いのね」

「大丈夫でしょう」

 

白衣の若い男女が歩きながら会話している。

彼女等がいるのは、社内の一角にある荒れ果てた研究棟であった。

既に今歩いている廊下も、埃や砂で覆われている。

仕方のない事だろう、此処は数年前に放棄されているのだから。

 

「それで、“スサノオ”は届いたの?」

「はい。既に館内、“Level10閉鎖区域”に運び込んでます」

「分かったわ。予定が早まりそうね」

「まだ半数以下の“200体”程ですが」

 

“Level10閉鎖区域”とは、“重度のバイオハザード及び有毒ガス発生区域”という事である。

数年前の“ある一件”以来、この研究棟含めてそういう扱いで厳重封鎖している“筈であった”。

 

「“ツクヨミ”の経過も良し、本当に“あの子”が協力的で助かるわね」

「ええ。それだけは予定外でしたね」

「お陰で、“劣化”の心配をしなくて済んだわ」

「大事な時期ですもんね」

 

女性の方が足を止める。

そこは丁度T字路の一角だった。

そのまま、振り返った男性の方に向けて、

 

「私は“あの子”の様子を見てるから、貴方は“そっち”の運び込みを頼むわね」

「了解です」

 

男の方が真っ直ぐ歩いて行く。

それを見届けて、女性の方も別の道を進む。

女性の行く先には、突き当たりに大きなスライド式の扉があった。

扉の上には、こんな表記がある。

 

 

 

 

 

《第六遺伝子実験場》

 

 

 

 

 

女がその扉の横にあるパネルに自身のネームプレートを翳す。

ロックを解除した事を知らせる音が鳴り、扉がスライドして開く。

が、

 

「……直せないってのも、辛いものね」

 

右の扉が中途半端に開いて止まる。

女は左寄りに扉を潜り、部屋の中に入る。

建物の二階以上の高さの天井を持つその中は、まるで戦場跡の様な惨状だった。

先ず、電灯が扉側の数個しか点いておらず、部屋の大部分が暗闇に覆われていた。

また、壁や床、天井には大きな傷跡が幾つも付き、傍にはデスクや椅子、パソコンの残骸が転がっている。

 

「……あら?」

 

ただ一つ部屋の扉付近に置かれていた、無傷のデスクに目を向けた女が驚いた様な声を出す。

 

「居たの? 貴方」

「少し前からね。通気口を開けといてくれただろう?」

「てっきり、時間通りに来るとばかり思ってたわ」

「お互い予定が早まったんだ。定刻以前に会った方が都合が良い」

「そうね」

 

デスクの上に乗るキュウべえが、女性に背を向けて話す。

 

「君達のお陰で、無事に彼女は“魔女”になった。感謝してるよ」

「こっちにもデータが伝わってるわ。互いの利益を産む結果になったわね」

「それで、君達は此れから……?」

「ええ。“最終段階”に入るわ…………無事に全て行けば、貴方の望みも叶う」

「……一つ、聞いても良いかい?」

 

キュウべえは部屋の奥の闇を見詰めたまま問う。

 

 

 

 

 

 

「これは、本当に“兵器”なのかい?」

 

 

 

 

 

 

「ええ。紛れもない“兵器”よ」

「僕が今まで見てきた物とは、明らかに一線を画しているけど」

「その認識は間違っていない。これは…………時代の“始まり”を告げる物になる。“弓”、“大砲”、“航空機”、そして“核”の様に。新たな“世界”の“標準(スタンダード)”になるのよ。」

「それはまた、随分と大逸れた話だね」

「貴方にはどうでも良い事かも知れないけど、これが、人類にとっても“希望”になると言っても良いわね」

「僕達からすれば、人類のする事全てが“観察対象”だ。どうでも良い事なんてないよ」

「そう」

 

女がデスクを通り過ぎ、部屋の奥へと消えて行く。

残されたキュウべえは、ゆっくりと頭を上に向ける。

 

「そう……“全て”さ」

 

キュウべえの真上に、何か妙な物が宙を漂っている。

それは大の大人の胴よりも太く、白っぽい甲殻に覆われている。

ヘビの様に長いその一方は闇の奥に消えており、もう一方は今、キュウべえを向きその先端を三つに開いていた。

三つに分かれたその先は鋭く、僅かに青い電光が走っている。

 

「僕としては、“君”も気になる所だけど」

 

それは、一本だけでは無い。

あちこちで、その青い電光が光り、宙を蠢き床を這う。

 

「ただ……」

 

キュウべえがその頭を一点に向ける。

丁度、建物の二階位の位置にぼんやりと、大きな青く光る球体が浮かんでいる。

その周りには、十個の青く光る細長い部位が、半円を描く様に並んで浮かんでいる。

宛ら、“青い太陽”だった。

そして、その球体の中に、

 

 

 

 

 

 

「今の“君”とは念話さえ出来ないのは、本当に残念だ」

 

 

 

 

 

 

“少女の様な人影”が、黒く浮かんでいた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・見滝原市、見滝原駅。

 

 

 

無人のプラットフォーム。

明かりも消えて暗く、微かに遠くを走る車の音が聞こえる。

その一角が、突然“空間が捻じれる”様に歪み、

 

「…………」

 

竜二が虚空から出現する。

傍らには、魔法少女姿の巴マミ、佐倉杏子、暁美ほむらがいた。

杏子の腕には、制服姿の美樹さやかが抱えられている。

 

「…………」

 

ゆっくりと、さやかの身体をホームに降ろす杏子。

さやかの顔は恐ろしいほど青白く透き通り、唇も青く染まっている。

ダランと垂れた腕には、一瞬の筋肉の震えも起きない。

十人が見たら、十人共がこう言うだろう。

彼女は、“死んでいる”と。

 

「…………どう言う事だ」

 

誰に聞く訳でもなく、竜二がぼんやりと言う。

あの後彼等は、目の前で壊れたさやかのソウルジェムの中から出て来た“魔女”から一先ず撤退したのだった。

 

「何故彼女があの化物に?」

「……それが、私達の運命だからよ」

 

ポツリと言ったほむらに、三人が注目する。

 

「この宝石が黒く染まり切った時、私達は魔女として生まれ変わる。それが、ソウルジェムの最後の秘密」

「…………」

 

傍らの杏子が唇を強く噛み締める。

その一方で竜二は額に手をやって、

 

「……お前は知っていたのか?」

「初めからね。だけど、話した所で信じてくれた“魔法少女”はいなかったし、そもそも、あなたには関係の無い事よ」

「まあな」

 

竜二は横たわったさやかに近付き、その傍らにしゃがむ。

 

「……他人の人生救った代償が、他人の人生壊す“化物”になる、ってか……。因果応報って所かな」

 

その死顔を見て呟いた竜二は、腰からタブレット状の通信端末を取り出し、

 

「此方竜二。美樹さやかを見滝原駅ホームで発見したが……、“別の要因”で死亡した。護送車が必要だ」

『了解。直ぐに警察の車両を向かわせよう』

 

ジョージとの通信を切り、竜二はさやかを横抱きにして立ち上がる。

 

(…………)

 

流石に、彼女達に掛ける言葉が思い付かなかった。

そのまま、駅のホームから出ようと数歩進んだ所で、

 

 

 

 

 

 

「待って」

 

 

 

 

 

 

今まで一言も発さなかったマミが彼を呼び止める。

その場に立ち止まった竜二は振り向く事無く、

 

「……彼女は警察に引き渡す。言い訳はこっちで考えて置く」

「そんな事じゃないわ」

 

彼女の言葉に首だけ振り返った竜二の目に、マスケット銃を構えたマミの姿が映る。

 

「……何のつもりだ?」

「貴方じゃないの?」

 

 

 

 

 

「全部、貴方が仕組んだんじゃないの?」

 

 

 

 

 

「…………」

「暁美さんから聞いたわ。貴方がテロの首謀者と会ってた事も、“彼奴等”と内通してる疑いが高い事も、勿論、貴方の“過去”の行いも。……キュウべえと手を組んでるって事なら、貴方が美樹さんや鹿目さんに近付いて来たのも説明出来るわね」

「手を組んで、俺に一体何の得が?」

「それを聞くんじゃないの。今から」

 

銃口を竜二に向けるマミの様子は、明らかに冷静さを欠いていた。

先程の事で強いショックを受けた彼女は、竜二の疑念を責める事でどうにか自分を落ち着けようとしているのだろう。

他の二人も“疑念”は持っていたので、これを止める事なくをただ静観していた。

 

「俺の目的は語った通り、この街での違法兵器取引の摘発だ。相手側と手を組む理由が全く無い。それに、俺は美樹ちゃんが“奴等”に攫われてないか心配で此処まで来たんだ。それに他意は無い」

「ふーん……本当に、そうなのかしら?」

「……嘘を言っているとでも?」

 

竜二の訝しむ様子に、マミは銃身を握る手に力を込めて、弱点を突くか様に、

 

 

 

 

 

「暁美さんから聞いた事だけどね。キュウべえは、協力している組織の意向で貴方に会いに行ったそうよ。敵対している相手に、態々自分の名を明かす様な事をするのかしら?」

「っ!?」

 

 

 

 

 

竜二はほむらに目を向けるが、彼女はただ黙って此方を睨むばかりである。

 

(彼女が仕組んだ? いや、態々護衛を頼んで来た彼女が、嘘を吐いて俺を遠ざける事のリスクを考えてない筈がない。だとしたら、奴等側の工作か…………? 何方にせよ、確信が持てない以上この場を切り抜けるのが先決だな)

 

「…………彼女の言葉を、相当信じてるみたいだな」

「暁美さんが嘘を吐いてると言うの?」

「じゃあ……聞くが」

 

 

 

 

 

「彼女の目的を、お前は知ってるのか?」

 

 

 

 

 

「…………」

 

黙るマミに、竜二が続けて言葉を掛けようとした時、

 

「ソイツの目的は、ワルプルギスの夜を倒す事だよ。それが終わったら、此処を出て行っても良いそうだ」

「ほう」

「……そんな事だったの?」

「……ええ」

 

杏子の言葉に竜二が感嘆し、マミが驚いて確認しほむらが苦々しく答える。

と、此処で竜二が嫌味ったらしい笑みを浮かべて、

 

「じゃあな…………、暁美ちゃんがそのワルプルギスを倒す為に、B.O.W.の戦力に手を出して彼等と内通、その一環で偽の情報をばら撒いた」

「っ!?」

「な!?」

「ふざけないで。そんな根拠の無い話を…………!」

「そうだな。此れに証拠は無い。なら、お前等の“それ”もそうじゃないか?」

 

竜二は三人を背中越しに見渡して、真面目な顔に戻ると、

 

「その情報も、誰から聞いたかは知らんが本当にそうだって言える証拠があるのか? 憶測だけで俺を裏切り者にしてないって言い切れるか?」

「…………」

 

魔法少女二人がほむらを見る前で、彼女は下を向き押し黙る。

 

(キュウべえが嘘を言わないのは確実。だけど、それを言ったら最悪私の事がバレる……)

 

ほむらが次に言う言葉に迷っていると、

 

 

 

 

 

「結局、誰なの…………?」

 

 

 

 

 

マミがポツリと言う。

その響きには、何処か追い詰められた様な雰囲気があった。

 

「誰が美樹さんを魔女にしたの? ねえ、誰なの?」

「…………」

「……マミちゃん。この事は……」

「…………もう良いわ…………どっちにしろ、魔法少女が魔女を産むなら…………」

 

マミの銃口が、隣の杏子に向く。

 

「っ!?」

「皆、ここで…………」

 

 

 

 

 

 

“「…………君の今一番守りたい物は何だ?」”

 

 

 

 

 

 

「っ…………」

 

“「君が今守りたいものが“仲間”だと言うのなら、立ち止まっている様なら“今ある物”も失う事になる」”

 

「…………今、ある物…………」

 

マミは、目の前の杏子を改めて見る。

 

(美樹さんはもういない。でも……まだ、鹿目さんや佐倉さん、暁美さんがいる…………。でも、私に……)

 

美樹さやかが“魔女”になるのを止められなかった。

自身のプライドや“使命”でさえも、守る為なら捨て去れた筈なのに。

自分の弱さを受け入れてくれた彼女に、“頼れる先輩”と言ってくれた彼女に。

今更後を追ったって、一体どうやって顔向けが出来ようか?

 

「…………」

 

ゆっくりと、銃口が降りて行く。

 

「……マミ?」

「どうすれば良いの……?」

 

涙を流しながら、そのままぺたりと座り込む。

 

 

 

 

 

「…………どうすれば、良いの…………!?」

 

 

 

 

 

 

嗚咽を上げて泣き出すマミを見ていた竜二は、少し目を細めて、

 

(…………俺には、何も、言う事は無い…………)

 

選択するのは、誰であろうと結局自分次第だ。

だが、選択肢の数は“同じとは限らない”。

だからこそ、彼に言える事は無かった。

 

「…………」

 

視線を前に向け、竜二はその場を去ろうとする。

 

 

 

 

 

 

ダァン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

「…………」

 

突然響く銃声。

竜二の左太腿を、大口径の銃弾が掠める。

 

「待ちなさい。まだ、あなたの話は済んでないわ」

 

マミと杏子が驚いてほむらを見る。

彼女の手にある“デザートイーグル”の銃口から、微かに煙が立っていた。

 

「…………」

 

竜二は無言で立ち止まっている。

 

「あなたの身体の方、まだ何も聞いてないわよ」

「…………美樹ちゃんに当たったら、どうするつもりだったんだ」

 

竜二がポツリと言う。

何処か、その言い方に感情が篭って無い。

 

「質問するのは私よ。それに、当たらない様に注意はした」

「此れは“質問”じゃない。本当の“質問”はこっちだ」

 

竜二は、もう一度振り向いて言う。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、“俺に銃を撃つ意味”が分かってるのか?」

 

血管が浮き出、“爬虫類の様に赤く染まった瞳”で。

 

 

 

 

 

 

 

三人がその瞳に目を奪われる。

だからこそ、ほむらは気付けなかった。

 

 

 

 

 

ビュオッ!!!!!

 

「ッ!!?」

 

 

 

 

 

ほむらの腕を強い衝撃が襲った。

手の中の“デザートイーグル”が大きく吹っ飛び、線路上に落下して一発暴発する。

だが、彼女等はそれに全く気を留める事は無かった。

彼女等の瞳は、ほむらの手を払った物に釘付けになっていた。

 

「……そんなに知りたきゃ教えてやる」

 

竜二のコート下から伸びた、5メートル程の鈍いピンクの“触手”が大きくしなり、

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、“B.O.W.”だ」

 

凄まじい速さで、ホームの柱に叩きつけられる。

鈍い金属音と共に、鉄骨の柱が少し“くの字”に歪む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………次は、無いと思え」

 

そう言い残し、触手を戻した竜二がホームを立ち去る。

誰も、それを止められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……全く、彼奴は……」

 

さやかの遺体を護送車に預け、竜二は今人通りの無い裏路地にいた。

その辺の電柱に寄り掛かった彼は、

 

「……いっつぅ……」

 

左のズボンのポケット付近を手で弄る。

そこに、“隠れる様に付いていたジッパー”を摘み、

 

「…………くっ…………」

 

一気に引き下げる。

それは左膝付近まで下がり、中のゴムの作用でズボンの太腿が一気に開く。

 

「彼奴…………」

 

その中を、黒い瞳で覗く竜二。

そこに見えたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狙った訳じゃ、無いよな…………?」

 

掌より大きな、真っ赤な“眼球”。

 

 

 

 

 

 




<予告編>BGM:バイオハザードリベレーションズより「Revelations」




「…………本当に、ごめんなさい…………」



此処がCheck Point(折り返し地点)



「……次は無いと言ったよな?」



「私に、何が出来るって言うの…………?」



悲惨な現実に、意志を折られる者達。



「“欧州本隊”の介入が決まったそうだ」



「何もかも全部、仕組まれてたと言うのか!!?」



それでも、“悪夢”と“絶望”は容赦無く引きずり込む。



「やめろ……、やめてくれェェェェェえええええええ!!!」



「みんな…………ゴメンね…………」



役者達の、運命は狂い出す。



「此処までデカいと、狙う必要が無くて楽だな」



「あそこにお兄ちゃんがいるの?…………ガンバって!!」



それでも、自身の願ったの“希望”の為に、



「協力させてくれ。私は、織莉子を助けられるなら命の放棄程度直ぐに出来る!!!」



「私の事なんてどうでも良い。どうか…………この“悪夢”を、終わらせて…………!」



彼等は、狂った運命に“叛逆”する。



「あの子の為にも……此処で決着を付けてやる!!!」



「なら、試してみるっ? あなたと私の“正義”、どっちが“正しい”のかっ☆!!!」





B I O H A Z A R D
C O D E : M. A. G. I. C. A.
Chapter 5 ー DCLXVIーII(666ー2)









『此れは命令だ。即刻任務を中断し、本国に“帰還”しろ』





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