BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. 作:B.O.A.
「オペレーション・ハヴィエ」で負った傷が理由でクラウザーが米軍を去り、後失踪。公式には事故死したと発表される。
推奨BGM:パラサイト・イヴシリーズより「Escape from U.B.」( The 3rd Birthday のアレンジと両方)
・見滝原市、廃工場。
寂れた廃工場。
その正門に、二台の
目的:“暴走体”の鎮圧。
「此処か」
後部座席にて、“心臓”の入ったケースを見ながらレズモンド・デイビスが呟く。
“心臓”は触手を工場に向け、忙しく蠢いている。
“本体”の発する特殊な“電磁波”を感知しているのだ。
「……さてと、久しぶりのご対面だ」
手早く装備品を身に付け、彼は11人の自身の部下を引き連れ正門から工場内部に入る。
因みに、隊長とピアーズ以外のクリス隊は拠点の警備と下水道調査である。
取り敢えず、彼等は固まったまま正門近くの施設の扉に近付き、二人が横に張り付き中の音を伺い他の数名が横や後ろを警戒する中、レズモンドが自ら扉を開け中に突入して行く。
内部の広い空間に入った彼等は、散開しつつも決して孤立する事無く内部の探索を始める。
「誰だ!?」
「ま、待って! 撃たないで下さい!!」
こんな声が聞こえたのは、突入から僅か2分後の事だった。
二人の隊員に後を押されて、レズモンドの前に突き出されたのは黄色の髪の美少女。
大方、コスプレとしか思えない奇抜な格好をしていた彼女だが、先ず格好が全体的に汚れており、右腕に対して左腕の布地が圧倒的に少ない上、挙句に右足太腿が黄色のリボンに巻かれて肌が見えなくなっていた。
レズモンドは直ぐに直感した。
「君が、例の“魔法少女”とやらか」
「はい。巴マミと言います」
おお、と部下達から声が上がる。
彼等にとっても信じられない様な存在を目の前にしたのだから、当然だと言えよう。
だが、それが本当か否かは、マミの身体に付いた傷が全て物語っていた。
レズモンドを見上げる彼女は“嘗て”の冷静さを持った声色で、
「この工場に“彼”はいます。今は暁美さんが一人で引き付けている筈です」
「What!? 一人でか!!?」
「ええ。彼女なら多分大丈夫でしょうけど、早く助けに行かないと......」
「……分かった。此処は俺達に任せろ。君は早く此処を出て……」
「…………」
マミの様子の変化にレズモンドが気付き、発言を途中で止める。
右手で“左肘”を握り絞め、俯き黙っていた彼女は、やがてポツポツと呟く様に、
「……こうなったのは、全部、私の所為なんです……」
「…………」
「お願いです。どんな形でも良いので、どうか、手伝わせて下さい」
「君の気持ちも分かるが……」
「“彼”には、嘗て命を救われました。それに仇で返すどころか、泥を塗ったままにして置きたくないんです」
本当にお願いします、とマミは涙ながらに頭を下げる。
確かに彼女は一連の騒動の元凶だが、だからと言って彼女を全般的に責め立てる事が正しいとは言えない。
幾ら見聞きしたからと言って、普段の竜二の様子からあの“怪物”に変貌する事を想像出来るのは、相当な空想家位しかいないだろう。
あの“行動”に踏み切ったのも、それが理由だったの“かもしれない”。
現在の様子は、傷の回復に努める時間が確保できて、自身の行動と現状を省みる事が出来たからであろう。
それでも彼女が傷だらけなのは、“後始末”を考慮して最低限の魔力消費でしか治癒を行ってないからで、レズモンド達に断られる事を覚悟の上で頼むのも、彼女なりの“ケジメ”を付けるだった。
(…………)
頭を下げたマミから必死な思いと覚悟をひしひしと感じるレズモンドは、指示を待つ隊員に囲まれて、事態が事態なのでゆっくり考える事も出来ず、頭に一瞬で考えを巡らせて、
「条件が一つがある。何があっても、“自衛”以外の自己判断による戦闘をするな。良いな?」
「! ……あ、有難うございます!」
少なくともレズモンド自身マミの名前は知っていたし、更にアレを“彼”と認識している以上、“彼女”が常識外の力を持った存在であるのは疑い様がないと彼は考えていた。
それなら尚更、此処で突き放して下手に自分で動かれるより、いっそ此方の手元で首輪をつけて置いた方が良い、というのが彼の判断だった。
とは言え、彼女が完全にお荷物という訳でもなく、
「動きながらで良い、今の“彼”について知ってる事があったら教えてくれ」
「分かりました」
マミが返答し、彼等が動きだそうとした時、
フォァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!
一帯に咆哮が響き、続けて激しい銃撃音と爆発音、破壊音が続く。
「今のは!!?」
「暁美さん!!?」
二人は顔を見合わせる。
場が一気に緊張感に包まれ、十三人はその音の方向へ工場内を駆け出し始める。
と、此処でマミがレズモンド等に対して念話で、
『このまま聞いて下さい。私が今の“彼”について知っている事を話します……』
話を始めた彼女は、同時にその時を思い返す。
時間は、あの“喧嘩”の直後に遡る。
“「…………え?」”
建設途中のビルに空いた、一階まで続く穴の淵に立つマミは、砂埃の立つ穴の下から奇妙な音がするのに気付く。
まるで泥を捏ねる様な、気味の悪い音だった。
“「……嘘」”
嫌な予感が頭を過る。
直ぐに手元に一丁のマスケット銃を取り出し、左手で銃身を支えて右手で引き金に指を掛ける。
やがて、砂埃が収まり始め穴の下がはっきりと見えてくる。
と、穴の真下の砂埃に何かが蠢いているらしい影が映る。
“「--ッ!!?」”
死んでいなかった。
その事実に思わず戦慄した彼女だったが、それでもその影にマスケット銃の銃口をピタリと合わせる。
凄まじい衝撃がマスケット銃に襲いかかった。
その衝撃で、彼女の身体は一瞬でビルの外へ吹っ飛ばされる。
彼女が声を上げたのは、
「---ッああ!!!?」
地面に左肩から激突し、激痛が全身を駆け巡った時だった。
「ぐぅ……ぁ…………!!」
痛みに呻きながら、マミはうつ伏せに一旦倒れ、そこから両手を地面に突こうとして、
ここで、“左腕が動かない”事に気付く。
(え……?)
左腕をうつ伏せのまま見るマミ。
見えたのは、噴水の如く溢れる血で出来た水溜り。
血は全て、左肩から噴出していた。
「あ…………?」
“思考停止”。
“全て”が一旦止まる。
何が起きたのか、どうすべきかの“判断”が一切出来ない。
グルルルルル…………!!
唸り声は、頭上から響いた。
倒れたまま、マミは顔を上にあげる。
そして見る。
巨大な“怪物”が、自分の腕から“生き血を飲んでいる”のを。
「…………あ…………」
“再起動”。
全てが“リセット”される。
グルル……。
ビルを背に、切り口から血を啜っていた“怪物”が此方を見る。
その口から、ポタポタと自分の血が垂れる。
彼女の左腕は背中から伸びた触手の棘に刺さっていたが、それが外れて棘ごと地面に落下する。
粉々の“マスケット銃”とぶつかり、大きな音を立てる。
と、その棘が突然震えだし、棘の刺さっている所から黒ずみ出す。
そして、棘が震えながら腕にめり込んでいく。
まるで、土に潜り込む幼虫の様だった。
潜り込む度に黒ずみが腕に波及し、振動で腕自体も震え出す。
やがてその黒ずみから“何か”が伸び始め…………。
目的:“怪物”から逃走する。
“正常”な判断が彼女の脳内で下され、
「ッく!!」
左肩の激痛を堪えながら、右手で必死に立ち上がって逃走を開始する。
工事現場から人通りの無い路地の方へ出て、建物の屋上へ黄色いリボンをワイヤー代わりに跳び上がる。
放って置くのはマズイが、恐らく現状でアレを一人で倒すのは不可能、一旦引いて救援を呼ぶべきと彼女は判断したのだ。
血の吹き出る左肩は、応急的にリボンで止血しておいた。
魔力は残り少ないが、今更四の五の言ってられなかった。
フォァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
後ろから咆哮が聞こえ、直後に重い物が叩きつけられる様な音が響く。
振り向くまでも無い、追って来ている。
後ろを一切気にせず、マミは必死に建物の屋上や屋根を跳び移って行く。
が、
「クソッ!!!?」
普段の彼女からは考えられない様な言葉が出る。
その理由は、後方に響く叩きつける様な音が此方に急激に近付いていたからだった。
一回身を隠すべきか、そう考えてマミは跳びながら周囲の建物を見渡す。
そんな時だった。
“バスッッッッッッッッッッッッッ!!!!”
「ッあああああああああ!!!??」
跳び上がって宙に浮いていたマミの、右足の太腿を“何か”が高速で掠める。
彼女の視界の端には、“赤い線”の様な物が見えた。
バランスを崩した彼女だったが、幸いにして先の建物の屋上に倒れ込む。
凄まじい激痛が右太腿から発される。
それに顔を一気に歪める彼女だったが、太腿の様子を確認する事は出来なかった。
直後に、彼女の後ろから一際大きい“衝撃音”が響いたのだ。
(ッ、マズっッ!!?)
背中に寒気を感じたマミは、直感的に地面にうつ伏せになった体勢のまま横に転がる。
直後に轟音が響き、彼女のいた付近にヒビ割れが走って“透明な何か“が屋上の床に突き刺さる。
そして数秒も経たない内に、それが剥き出しの筋肉の“赤色”に色付いていく。
(“透化”してるの!!!?)
腕と足の激痛に顔を顰めながら、“怪物”の方を向いたマミの目が“実体化した”それのと合い、“怪物”が微かに唸り声を上げる。
何処か、それは魔女の叫びと似た雰囲気があった。
(----ッ!!!??)
言い知れぬ恐怖を感じた彼女は、だが立ち上がってその場を離れようとする。
“怪物”も追撃しようとするが、爪が深く刺さり過ぎて抜くのに四苦八苦している様だった。
「うぐぅッ…………!」
何とか立ち上がった彼女が右足をチラリと見ると、太腿の肉がごっそり削げ落ち血が溢れ出ていた。
人間なら失血死するレベルの傷だが、流石は魔法少女とでも言うのだろうか、筋繊維が抉れて右足の力が入らない以上の身体機能への影響は無い。
何処かに身を隠そうと、右足を引き摺る様にその場を去ろうとするマミ。
奇妙な影が正面に映ったのは、その時だった。
「--ッ!!!」
気付き、彼女は咄嗟に正面に飛び込む様に倒れ込む。
代わりに、彼女のいた場所に突き立ったのは“黒い棘の生えたピンクの触手”。
それは、“怪物”の口から大きく伸びていた。
更に、“怪物”の背中から同じ物が十本伸びて、抜けない左腕の代わりに此方を狙う。
それを見たマミの脳裏に閃くのは、先程の光景。
“アレ”がもし、自分の胸に刺さりでもしたら……。
(冗談じゃないッ!!!)
幾らなんでも、そんな死に方は御免だ。
触手から撃ち出される棘を、マミは倒れたまま再び横に転がって躱す。
と、そう直ぐに再生しないのか、棘の発射が止み再び“舌”が伸びる。
それの棘が彼女の右脇腹を掠めるが、刺さりはせずに床に突き刺さる。
躱し切ったと思った彼女は、立ち上がろうと足を曲げ床に手を突く。
『Dオン't leェァヴ aロォォooooooオオオオOOオオオオOオンe !!!!』
聞こえる叫び声。
ガリガリと、床を削る音が続く。
それを背にマミは立ち上がり、屋上の端へ走り出す。
恐らく、この足の怪我での跳躍は不可能だろうが、
(アレを放置するのはマズい。何処か人目の無い広い場所に誘わないと……!!)
幸いか、視線の先には300m程先に廃工場らしき建造物群が見える。
下に降りれば一本道だ。
屋上の端に着いた彼女は、そこで下の道を睨む。
彼女の目に、二車線の道の脇に路上駐車された乗用車が飛び込んでくる。
この足では、300mも逃げ切れない。
手段は、他に無い。
(……ゴメンなさいッ!!!)
口に出さずに心で詫びながら、屋上からマミは片足で跳び、車の上にギリギリで着地する。
そして、彼女が眼下の凹んだ天井に手を置くと、直後に車全体が黄色く輝く。
エンジンが一人でに掛かり、ギアがドライブにシフトする。
フォァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
叫び声が響く。
聞き届けない位で、マミを乗せた車が急発進する。
直後に轟音。
そして、
巨大で透明な“何か”が、車道に着地する。
衝撃で周囲に駐輪していた自転車が転倒する。
周囲に人がいなかったのが、本当に幸運だった。
「来たッ……!!」
この時点で、既に50m以上距離が空いている。
加速する車に乗ったまま、しゃがんだ体勢のマミは背後に振り向く。
視線の先の風景が奇妙に歪んで見えた。
その“歪み”が、“怪物”の姿を浮き彫りにしている。
どうやら、その場から此方を眺めている様だ。
「イイコだから、こっちにおいで……!!」
変に諦められても、周囲に被害が及んでしまう。
スピードの調整が難しい所だったが、今回は杞憂に終わる。
“怪物”が咆哮を上げ、実体化しながら追いかけて来たからだ。
二足で立ち、肉食恐竜の様な体勢で、凄まじい速さで。
(嘘ッ……!!!??)
血を流し過ぎて少し青いマミの顔が、更に蒼白になる。
既に“怪物”が走り出した時点で100m近く差があったが、それでも不安になる位の速さだった。
長く細い足でアスファルトを抉り、両腕を身体と並行に揃え、その巨体が確実に距離を縮める。
マミの視界を、巨体が埋め尽くしていく。
(急いで、もっと速く……!!!)
必死に車に念を送る。
車も一気に加速していく。
残り100mを切った。
(……間に合わない)
マミは悟った。
車の加速が間に合わない。
恐らく、直前で追い付かれる。
(どうする……、どうすれば……!!?)
後ろには、もう“怪物”が直ぐそこまで迫っている。
身体の下に巨大な左腕を構えている。
車ごと打ち上げるつもりだろうか。
(……もう、一か八か、やるしか無い……ッ!!!)
前に、廃工場の建物が迫ってくる。
衝突コースだが、どうせ追い付かれるので変わらないだろう。
覚悟を決めて、マミは“怪物”を睨む。
タイミングを図る。
マミの目が、“怪物”の姿がくっきりと捉える。
全てが、スローモーションに見える。
極限状態に置かれた彼女の知覚は、“怪物”の口から滴る唾液を、足が巻き上げる砂利を、細かな粒まで鮮明に見せていた。
彼女の体感で最早鬱陶しく感じる位の速さで、“怪物”が向かってくる。
頭部に付いた幾つもの赤い目が、一瞬ギラついた。
今だ。
彼女は右手を前方に伸ばし、左足だけで立ち上がり始める。
当然、急に動けばバランスを崩すが、今の彼女には関係なかった。
身体を支えきれず、右に体勢を崩し始めた位に、右手から一本のリボンが伸びる。
向かう先は車の右前、歩道に立つ電柱から突き出る鉄製の支柱。
電線を支えるそれに、寸分狂わず向かっていく。
“怪物”も動く。
身体を左に捻じり、左腕を下から引き絞り、
フォァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!
力を解放し、一気にアッパーを繰り出す。
長い爪が、車に下から迫る。
爪が迫る。
リボンが伸びる。
(と、ど、けぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!!)
加速した心で叫ぶマミ。
僅かに、リボンが速かった。
コンマ数秒の違いで、彼女の身体が先に巻き上げられ始める。
遅れて、爪が車を引っ掛ける。
車体がひしゃげ、後ろから大きく跳ね上がる。
だが、その時には彼女は宙を舞っていた。
その足先を、僅かにタイヤが掠めていった。
舞い上がる車体を余所に、彼女の身体は巻き上げられつつ振り子の様に振られる。
このまま、工場内に飛び込むつもりだった。
左側頭部に、衝撃が走った。
(ーーッ!!!?)
左側の視界が、急に暗くなる。
距離感が掴めない。
そのまま、彼女は宙に放り出される。
当然、真面に飛び込める訳もなく、途中でパイプらしき物に頭部を激しく打ち付けてしまった。
彼女を襲ったのは、ひしゃげた車から弾け飛んだ太いネジ。
不運にも、それが最悪のタイミングで彼女の視界を奪ったのだ。
朦朧とした意識のまま、高く飛んだ彼女の身体は工場の天窓に向かう。
落ちる寸前、彼女はボンヤリと思った。
自分は、何時、“彼”を殺そうと思ったのか、と。
『……これで、全てです』
今の“彼”の特徴を余さず伝えたマミに、レズモンドが渋い顔を向ける。
と、彼が発言する前に、
『……礼を言う。君のお陰で、最悪の事態は免れていた様だ』
彼の通信機から、別の声が聞こえる。
『ジョージ・ルータス、“彼”のバックアップだ』
「ッ!!! ……私っ、その」
『今更、君を恨んだり責めたりはしない。“彼”が恨まれる事自体は、何も間違ってなどないのだからな』
「…………」
可哀想な程に落ち込むマミに、レズモンドがふと、
「それより、その事は“彼女”は知っているのか?」
「……いいえ。自分の事で手一杯で、そこまで気が回らなかったので……」
『だったら、尚更急ぐべきだな。“アレ”を繰り返さない為にも』
十三人は工場を駆ける。
戦場は、直ぐ曲がり角の向こうに迫っていた。
「BSAAだ!!! B.O.W.の鎮圧に来た!!!」
「暁美さん!!!」
角から姿を現し、彼等は戦場に踏み込む。
「え…………!!?」
「何だと……ッ!!?」
そして、全員が“ソレ”に唖然とした。
夏になりました。B.O.A.です。
空白期の回想。マミさんの逃避行。
地味に激闘してました、彼女。
彼女の言葉も気になる所ですが、取り敢えず次回は“彼方側”。
彼等の見た物は一体?
ほむほむの運命は?
次回を、程々にご期待下さい!!!
感想等、お待ちしております!!!