BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A. 作:B.O.A.
アルバート・ウェスカーがコーカサス研究所に意図的にバイオハザードを起こし潜入、その後セルゲイを倒してアンブレラの巨大コンピュータ「U.M.F-013」にあった全データを入手、並びに人工AI「Red Queen」ごと初期化し姿を消す。
バイオハザード・アンブレラ・クロニクルズ ~アンブレラ崩壊~
推奨戦闘BGM:DmC devil may cry DLC “Vergil's Downfall” より「The Wisp Emerge」
・見滝原市、廃工場。
何が、起きたのか。
何が、起こってしまったのか。
「……暁美さん?」
巴マミは、前に立つ少女に呆然と言う。
少女は大きなライフル銃を持ち、ボロボロの魔法少女のコスチュームに身を包み、マミに背中を向けて佇んでいる。
彼女には、何故かその背中が酷く小さく見えた。
「君が……これを、一人で……?」
レズモンドが驚愕を隠さずに彼女に聞く。
周りの隊員も、唖然と言った風で佇んでいた。
「…………」
少女が、ゆっくりと振り向く。
その表情は、マミ達には滑稽に見える程に驚愕と恐怖に満ち溢れていた。
「……私、なの……?」
ポツリと、彼女は言った。
弱り切り、地に伏せて呻く“怪物”を背景に。
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ー十分前ー
振り下ろされた左爪。
パニックになったほむらに、避けられる筈もない攻撃。
だが、“彼女に当たらなかった”。
代わりに砕いたのは、彼女の右側の地面のアスファルト。
その破片を鳩尾に受け、彼女の身体は大きく飛ばされる。
「がっッ!!!?」
その苦痛でほむらは我に返る。
口の中に苦い液体が湧き上がって、赤黒いそれを地面に吐き出す。
対し、“怪物”は奇妙そうに彼女を眺め、その左手を地面から抜く。
グロロロロロ…………。
此方に歩いて向かって来る“怪物”、だがほむらに立ち上がって逃げる気力は無い。
(生き残っても化け物になるなら、此処で死んだ方がマシ……)
いや、立ち上がる気が無いという方が正しいか。
唯一の“目的”が遂行出来なくなったと悟った事で、彼女は全てに対して投げ遣りになってしまったのだ。
直ぐ側まで接近し、左手を再び持ち上げる“怪物”。
もう逃げ場は無い。逃げる必要も無い。
目を瞑ったまま、その時を待つほむら。
その閉じた右目に、黒い“侵食”が行き着いた。
グロロロ…………。
上げた腕を、何故か振り下ろさない“怪物”。
さっきまで目の前に倒れていた彼女の姿が消え、代わりに小さな“何か”が落ちていたからだ。
長方形の箱の様な形をしたそれから、カチッ、という小さな音が響いて、
700個の小さな“鉄球”が、真正面から襲い掛かった。
M18“クレイモア”。
アメリカ軍が多用する“対人指向性地雷”。
今回使ったのは、時限式の物だった。
至近距離から高速で放たれた“鉄球”が、チーズの様にその頭部を穴だらけにする。
絶叫を上げ、“怪物”は頭を庇う様に左腕を掲げる。
その腕に、太い“風穴”が空いた。
フォァァァァァアアアアアアアアアアアアアアvgyjffsvhrwsghulnlppjnfrsxsayvehjjkfr!!!!??
一際大きい悲鳴を上げて、“翼”の目玉で周囲を見渡す。
そして、見付ける。
「……“全く、手間掛けさせやがって”」
血の混じった唾を吐き、巨大なライフル銃を肩に担ぎ、首をぐるりと回した“ほむら”を。
その右目が“充血”し、“爬虫類の様な目”になった“彼女”を。
身体のあちこちが、灰色に近い黒い組織に侵食された“彼女”を。
「“巻き込まないんじゃ、無かったのかよ。おい”」
肩からライフル銃を下ろして不機嫌そうに言う彼女を見て、“怪物”の様子も大きく変化する。
グロロロロロロロ…………。
唸り声に内包された敵意が濃くなる。
再生した頭部の赤い目が、本能以上のギラつきを放つ。
右腕で、闘牛の様にアスファルトを掻く。
“怪物”から湯気の様に湧き上がる殺気を向けられ、だがほむらは全く怯まないどころか、不敵な笑みすら見せていた。
「……“聞き分けのない奴だ”」
その言い方は別人の様で、でも何処かほむらの匂いがあって。
違う誰かの発言の様で、でもほむらの心情を表している様で。
赤くなった右目の、真ん中に細く残る紫の瞳で“怪物”を睨んだまま、
「“良い加減、目を覚ませ”」
グォォォォォァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアxtsuhfgrhxtsufjchjvgseaqkxtsupbhfehxrhfrwdhjfrg!!!!!
その言葉が合図となり、“人外”の気迫を持った二者が激突する。
目的:“怪物”を倒す。
最初に動いたのは“怪物”。
その左爪を降り上げ、小さく跳び掛ってほむらに叩きつけようする。
が、
「“遅い”」
見切ってたかのように、右に軽くステップしてほむらは躱す。
そして、素早く手に持った大きなライフル銃を構え、
ガラ空きだった左足付け根の眼球に、大穴が空いた。
バレット M82。
ピアーズの持つ“ダネル NTW-20”と違って、此方はアメリカ製の
弾薬含めて高価で貴重だが、実はスポーツ用としても普及している。
絶叫を上げる怪物を尻目に、腰だめに構えたままほむらは連射する。
連射出来るのはセミオート故の利点だが、反動が強すぎて魔法少女の彼女でも腰だめでなくては抑えられないのだ。
初弾を含めて11発全弾をを放ったほむらは、リロードをせずに直ぐに盾の中に銃を戻す。
そして、代わりに取り出した“物”で、
眼前に迫った触手の一本を、身体を傾けて躱しながら同時に切り落とす。
フォァァァァァアアアアアアアアアアアvfegxrewfhwagikbjgddtgrexx!!!!!!
“怪物”が絶叫し、更に複数の触手を伸ばす。
が、ほむらは連続でバク転を決め、素早く“怪物”と距離を取る。
(“魔法なんか、使う必要ない”)
“怪物”が此方を向き、微かに上体を上げるのを確認する。
ほむらは素早く左手にバタフライナイフを持ち替え、盾裏から取り出した“ベレッタM92F”を右手で構える。
(“どんなに化物地味てても、此奴は所詮血の通った“生き物”だ。
“怪物”がブレスを吐くより先に、彼女の方が駆け出す。
低い体勢で走る彼女の、その直ぐ左側を高圧で放たれた血液が通り過ぎ、左腕の盾を僅かに掠める。
それを無視して、ブレスを吹く頭部へ向けてベレッタを数回発砲。
放たれた弾丸は、正確に“怪物”の口内に潜り込む。
フォォォォォォァァァァァァァァアアアアアアアアアアアgftsgythvgtjvhjjpogdsrxqqaqnk!!!!??
体内を傷付けられ悲鳴を上げる“怪物”を尻目に、それに駆け寄ったほむらはその右腕を踏み台に横にスピンしながら跳び上がり、
(“お前には、コレで充分だ”!!!)
此方を見詰める“翼”の、その眼球をナイフで横に切り裂く。
更に絶叫を上げた“怪物”は、“翼”の触手を使ってほむらを薙ぎ払おうとする。
が、ほむらはスピンしたまま空中でベレッタを乱射。
放たれた弾丸の数発が触手に当たり、それを本体から捥ぎ取った。
だが、それで躱し切れる訳ではない。
触手の一本がほむらの胴を横に薙ぎ、その身体が横に大きく吹き飛ばされる。
“怪物”が怒りの咆哮を上げて、吹き飛ぶほむらに二足でターンし駆け寄ってくる。
が、地面に転がったほむらはその勢いで素早く立ち上がり、“怪物”の左アッパーを向かって右斜めに飛び込む様にして躱す。
(“リロードはしない、武器を変えた方が効率が良い”!)
血反吐を吐き捨てたほむらは、ベレッタを仕舞い“SIG P226”という別のハンドガンを取り出す。
再生していた左足の目玉に、彼女は銃撃を加えるべく右手を構える。
「“チィッ”!!?」
が、発砲直前になって、彼女は舌打ちして突然腰を深く落とす。
舞い上がった長い黒髪の先を、振られた尾の”デンノコ”が刈り取った。
続けて伸びてきた触手が上から迫り、それを銃とナイフを併用しつつ迎撃し、彼女はどうにか後退する。
「“舐めやがって”……!!」
怒りの形相で、彼女は“怪物”を赤の右目と紫の左目で捉える。
“怪物”も追撃の為に向かって来るが、ほむらは“SIG 226”を仕舞うと
何故なら、その行動にはしっかりとした“根拠”があったからだ。
だが、それは“彼女”の知識ではなかった。
彼女の中の“何か”の知識だった。
“何か”は彼女にそれを教える代わりに、“ある事”を彼女に望んだ。
『殺せ。“アレ”を殺せ』
『持てる力を持って、確実に抹殺しろ』
激しい憎悪と憤怒を持って、彼女に“それ”を求めた。
同時に、彼女の中にも湧き上がる物があった。
それは、“何か”と同じ様な“怒り”の感情だった。
散々計画を潰され散々事態を掻き回され、挙句自分の命すら奪おうとする“彼”に、彼女も実は心の奥底では激しく苛立っていた。
普段は決して現れない様なそれが、“何か”の怒りに呼応する様にこのタイミングで表面化したのだ。
そして、どうせ此処で死ぬのなら最期に此奴だけは道連れにしてやる、という復讐染みた考えが彼女の中に浮かんだのだった。
直ぐ側に“怪物”が迫っている以上、決断に時間は掛けられなかった。
だから彼女は“受け入れた”、“何か”の正体も知らないままに。
それが、“あの一瞬”に起きた事だった。
サブマシンガンの銃弾が、怪物の胴体に穴を空ける。
“怪物”が小さく咆哮を上げて身体を捩り、小さく跳び上がる。
振り回される“尾”をほむらは地面に転がって躱し、立ち上がって更に弾丸を撃ち込み続ける。
絶叫を上げて“翼”をはためかせ、“怪物”は二足で立ち上がって高速で突進してくる。
(……“フッ”)
その僅かな時間に、だが彼女は“ソレ”に気付いた。
その口元が、凶暴な笑みを浮かべる。
そして、彼女は突進に正面から突っ込んでいく。
グォォォォァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアveerggddwqqqjkjhkppkkjgrrhcdshjj!!!!!
“怪物”が左爪を構え、そのまま突き出してくる。
だが、彼女は足から滑り込む様にして爪を躱し、あろう事かそのまま股下を潜ってしまう。
直後に“VZ61”を仕舞い、同タイプの銃“
悲鳴を上げて、“怪物”は直ぐに此方に振り向こうとする。
その足が、突然“もつれた”。
「……“どうしてか、教えてやろうか”?」
両手両足で、何とか倒れ込まずに身体を支える“怪物”に、立ち上がったほむらが嘲る様な調子で言う。
“
「“あなたの異様な再生力、瞬発力、己の“血液”すら武器にする能力。その全ては、嘗てあなたが溜め込んだ“エネルギー”に由来している。……私の前で、一瞬で平らげた“食事”から”」
“怪物”の胴体、サブマシンガンに空けられた穴から“血が溢れ出ていく”。
立ち上がれずにその場で呻きながら藻掻く“怪物”に向かって、右手で銃をぶら下げたままゆっくりと彼女は歩み寄る。
左手のナイフも、歩きながら盾に仕舞う。
「“だから、始めの“鬼ごっこ”が正解だった。それか、今の様なインファイトの削り合い。そうすれば、あなたは勝手に私より早く自滅する。“ガス欠”で全く動けなくなる”」
苦しそうに呻く怪物の、頭部近くまで彼女は歩み寄ろうとする。
と、“怪物”の左右二本の尾が動き、四つに分かれた“デンノコの刃”を飛ばす。
が、
「……“その様子なら、“疲労”と言うより“貧血”って所か”」
あらぬ方向に飛んで行った“刃”を見送り、彼女は右手に下げてた銃を両手で持ち直す。
グゥゥゥゥウウウウウウウウッ!!!!??
怪物の様子が更に豹変する。
それを見て、ほむらは心底愉しそうな笑顏を作る。
「“そんなのになっても分かるんだ、“コレ”の事が。……そう、“コレ”はあなたにとって、思い出したくない“悪夢”の引き金。全ての“大罪”の始まり……、だからこそ、あなたは“コレ”に裁かれ、殺されるべき。でしょ”?』
グォォォォゥゥウウウウウウウウウウウウッ!!!!!!!
怨嗟の篭った咆哮が響く。
目の前の少女を憎しみの篭った目で睨み、触手が彼女を貫こうと襲いかかる。
が、それが届くより先に彼女の銃が火を吹いた。
瞬時に触手が砕け散り、辺りに血肉が飛び散る。
が、触手は“再生”するそぶりが無い。
遂に“怪物”の目の前に彼女が立ち、その銃口を頭に向ける。
フォァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!
最期の抵抗というかの様な咆哮は、最初のそれその物だった。
だが、もうそれに彼女は一切の恐ろしさを感じなかった。
寧ろ、まるで積年の恨みを漸く晴らせる様な、恍惚とした気分にさせた。
敢えて憎々しさを込めた言い方で、ほむらは言い放つ。
「“さようなら”」
それを最後に、彼女は引き金に掛けた指を一気に引く。
フルオートの銃弾が発射され、“怪物”の頭部が粉砕される。
筈だった。
ガチリ、という音がした。
(え?)
突然の事態に、ほむらの思考が一瞬止まる。
引き金は引いた、100発入りのドラムマガジンの残弾には余裕がある、なのに弾丸が一発も出て来ない。
彼女は自分の銃に視線を落とす。
引き金の5mm程手前で、指が止まっていた。
(なッ!?)
慌てた彼女がどれ程力を込めても、指が震えるだけでそれ以上全く動かない。
接着剤か何かで固めた様な感じだった。
その隙を、“怪物”は見逃さなかった。
(っ! しまった!!)
“怪物”の殺気を感じ、目を戻したほむらが見たのは高く持ち上がった左腕。
右の“翼”の爪を地面に付ける事で、左腕の自由を確保したのだ。
そのまま、ほむら目掛けて左爪が瞬時に振り下ろされる。
力は殆ど乗っていないが、それでもほむらを切り裂くには十分な重さがあった。
両手は塞がっていて、時間停止は間に合わない。
なす術無く、左爪がほむらを頭から引き裂く。
その直前に、手の中の銃が“勝手に”火を吹いた。
「ッ!!!??」
突然の銃声にほむらは肩を縮める。
銃口は何時の間にか左腕の根元を狙っていて、そこにフルオートでNATO弾が捻じ込まれていく。
“怪物”が絶叫を上げて怯み、左腕の狙いが大きく逸れる。
手元を再び見た彼女は、指がしっかり“引き金を引いている”のを確認する。
そして、
マガジンに詰まった弾丸が全て撃ち込まれ、左腕を根元から切り離した。
グロォォォォゥゥゥ…………。
弱々しい悲鳴を上げ、等々怪物が地面に突っ伏す。
それを他所に、ほむらの手が勝手に銃身を操作し“怪物”の右側に銃を向ける。
訳の分からぬままに、下部に付いていた“M320 グレネードランチャー”を発射。
40mm擲弾はそこにあった建物の小さな、だが重い煙突の根元に当たって炸裂、放置されてただけあって脆いそれが崩れ始め、此方に向かって倒れ始める。
慌てたのはほむら自身だ。
自分に向かって来る煙突から逃げるべく、ほむらは“怪物”に背を向けそのまま全力で遠ざかり出す。
そして、
煙突は、轟音と共に“怪物”を押し潰した。
「ッくぅ!!!」
衝撃に煽られて地面に伏せていたほむらは、ゆっくりと立ち上がって背後に身体ごと振り向く。
”怪物“は胴体を煙突に潰されて、弱々しく唸っていた。
(…………)
まだ生きている事も驚きだが、彼女は更に別の事が気がかりだった。
(さっきのは、一体……?)
今までとは打って変わって、彼女からは嘘のように怒りや憎しみが引いていた。
幾分か冷静になった頭で、彼女は“先程の事”について漸く考え始める。
記憶は存在する。
その時の感情も覚えている。
が、その全てがまるで“夢を見ていた”様に遠く感じた。
その理由を考えていると、彼女はある事に思い至った。
(“痛み”が無かった……?)
薙ぎ払われた時、全く痛みが無かったのを思い出す。
自分の身体を見下ろして、彼女は更なる事態に気付く。
(なッ、あ……!!?)
脇腹の傷が、跡形も無く消えていた。
あの黒い侵食も同様だった。
(ど……どうなっているの、これ……ッ!?)
彼女に治療した覚えはないし、そもそも戦闘と並行して傷を癒せるのは“美樹さやか”程それに特化した存在位しかいない筈である。
だから尚更、自分がそんな高度な治癒魔法を使える訳がない。
(だと、すると……)
思い当たるのは、影の魔女“エルザマリア”との戦闘直後。
傷を負った筈の、“彼”の胴体。
自分は“B.O.W.”だと言った、“彼”の能力。
(…………)
先程自分に語りかけた“何か”、夢の様に感じた戦闘、それとは別に突然動いた身体、そして癒えた傷。
その“正体”には予測が付いても、その実態が全く掴めない。
何が起こってるのか、全く分からない。
底の見えない大穴を覗き込んだ様な、漠然とした不安にほむらが飲み込まれそうになる。
「BSAAだ!!! B.O.W.の鎮圧に来た!!!」
「暁美さん!!!」
そんな時に、彼等は合流した。
「……え?」
ほむらの言葉に、マミは思わず聞き返す。
対し、ほむらは今にも消え入りそうな声で、
「……分からない…………アレを、私がやったのか……それとも、私の…………」
声を震わせる彼女がその先を続ける前に、誰かがその頭に手を置く。
「今は考えるな。事情は、また後で聞く」
レズモンドだった。
見上げる彼女に、彼は落ち着いた口調でゆっくりと続ける。
「後は此方でやる。その子と一緒に後ろにいてくれ」
彼は首でマミを示して、彼女もそれに頷く。
そして彼女と入れ替わる様に、レズモンドと部下達が潰れている“怪物”の前に並ぶ。
「“D.R.A.G.O.N.”を見付けたが、“彼女”の奮闘で煙突に潰されてる。これは、戻した後に重機が必要だな」
『
「流石に彼が可哀想だ。市の救助隊に出動を要請してくれ」
『分かった』
レズモンドが“ジャマー”を構えて、怪物の頭部へ近付く。
部下達は、各々のアサルトライフル“SIG 556”を向けて少し離れた所から警戒する。
(ダイヤルは先ず1番、“人間体に変異させる信号”を与える。その後2番、“活動停止の信号”を与えて“リミッター”を戻す。“あの子”のお陰で、無難に行きそうだ)
頭の中で工程を反芻したレズモンドは、“ジャマー”の先を“怪物”の頭部へ向ける。
一方、マミの元に引き下がったほむらは、手元の弾切れの銃を握ったままレズモンド等の後ろ姿をぼんやりと見ていた。
マミは彼女の両肩に手を置き、同じくその後ろ姿を眺めていた。
普段と明らかに違う彼女の様子に、マミは彼女の身に何かがあった事を確信していたが、それについて此処で聞く事はしなかった。
ほむらもほむらで、マミに話しかける様な事はしない。
このまま、二人の前で一つの騒動が終わりを告げる。
その矢先だった。
「ッ!」
二人は同時に、“ソレ”を感じた。
おどろおどろしく、感じの悪い、だが二人に馴染み深い気配。
ほむらは自分の左手を確認する。
やや濁った自身のソウルジェムから、淡い光が漏れ出ていた。
然も、その点滅が速い。
(魔女? でも、これは……)
横を向き、マミと目を合わせるほむら。
マミの目から、彼女も同じ結論に達しているのを確信した。
その直後、
ゾッとする様な寒気が、二人の全身を巡った。
同じくして、“ジャマー”の先端を突き刺そうとしたレズモンドが、
「……何だ?」
妙な気迫を“怪物”から感じ取っていた。
眉を顰めたレズモンドの前で、“怪物”の身体が微かに震え始める。
痙攣するかの様なそれに、レズモンドは嫌な予感を覚えた。
レズモンドは部下達を一旦振り返り、彼等と目配せした後、
“ジャマー”の先端を、一気に頭部に突き刺した。
そして、ほむらも、マミも、レズモンドも、その部下達も、全員が見た。
“ジャマー”の先端から、ドス黒い“煙”が立ち上がったのを。
「ッ!!? 下がれ!!!」
レズモンドが“ジャマー”を引き抜き、バックステップで距離を離す。
アサルトライフルを構える部下達の前で、黒い“煙”が“怪物”の姿を覆い尽くす。
“ジャマー”をバックパックのホルダーに戻したレズモンドも、胴に掛けていたアサルトライフルを構える。
その後ろでマミとほむらも各々の武器を取り出し(ほむらは新たなマガジンに交換)、前の“煙”に向けて構える。
『マミ、この魔力は……!』
『ええ……、信じられないけど……!!』
二人が念話で話している間にも、“怪物”からは恐ろしいプレッシャーが放たれている。
それにマミが表情を険しくしながらも、後を続ける。
『これ、“
マミが念話でそう言った直後、黒い“煙”に覆われた“怪物”の、その瞳が血の様な紅い光を放って、
「ッ!! 何か来る!!!」
マミが叫んで、
「クソッ!!!」
レズモンド達が更に後ろに下がろうとして、
xyftseqrjhgfhvdgdghyujoppinkghfafxedsdrhftghjhhfrsr!!!!!!!!!!
咆哮と共に、真っ黒な“波動”が辺りを埋め尽くした。
「ぐおおおおおおおおッ!!?」
ライフルを盾に“波動”から身を守ろうとするレズモンド達。
その後ろで、嫌な予感を感じてたマミが咄嗟に張ったリボンのバリアで身を守る二人。
そして、黒い“波動”が収まって、レズモンド達が顔を上げた時には、
「消えた!?」
吹き飛ばされた“煙突”の残骸しか残ってなかった。
13人全員で辺りを見渡すが、“怪物”の姿は影も形もない。
ほむらの左手のソウルジェムの反応が急激に小さくなっていく。
「遠ざかってる……ひょっとして、彼奴が逃げているの!?」
「分かるのか!?」
「どう言う訳だか分からないけど、あの“煙”は魔女や使い魔の魔力その物だった。だから、これで探知出来てもおかしくは無い……!」
それを裏付ける様に、マミが張ったリボンのバリアの表面がドス黒く変色し、ボロボロに腐り落ちていた。
どう見ても、物理的な現象に因る物ではない。
(確かに、彼は一度は確実に“薔薇園の魔女の使い魔”と遭遇してる。恐らくそれが一因なのだろうけど、でも、“生物”が魔力を操るなんて事が本当に起こり得る事なの?)
ほむらは知らない事だが、魔法少女が“加工”した魔力を一般人が操る事は実際にあり得る話である。
ただ、それを知っていたとしても今回の事は説明出来ない。
頭を捻るほむらの前で、レズモンドが思わず舌打ちをして、
「追い詰められた“アレ”が街中に出たら、間違い無く“捕食”が始まる。そうなったら最悪この街が丸ごと壊滅してしまう……ッ!!!」
『急いでくれ、何としてでも阻止しなくては……!』
「ま、待って下さい!」
“怪物”の後を追って正門へ戻ろうとする彼等を、マミが引き留める。
立ち止まったレズモンドは、彼女等としっかり向き合って、
「分かっている。“アレ”を君達はそれで追えるのだろう。済まないが、少し力を……」
「そうじゃなくて、身体の方は大丈夫なんですか!? 魔女の“穢れ”を真面に喰らっていて何も無い訳が……!!」
「ああ。今も身体は怠いし頭は痛いし、最悪のコンディションだ。だが、それでお手上げとも言ってはいられない。それは、皆も同じさ」
レズモンドの言葉に、部下達も一様に頷く。
マミの表情は一貫して心配気な物だったが、彼の言葉に何も言い返す事は出来なかった。
一方、ほむらは自身のソウルジェムに溜まって来た“穢れ”を浄化すべく、銃を肩から下げた後に盾からグリーフシードを取り出していた。
別の時間軸で、美樹さやかに分け与えようとしていた“ソレ”を、自身のソウルジェムに近付けて、
(…………待てよ)
その手が途中で止まる。
(“アレ”はどう言う訳だか“魔力”を持っている。それなら、私達を探知出来てもおかしくは無いけど……)
再び手を動かし、ジェムを浄化しながらほむらはマミにふと尋ねる。
「マミ、一つ聞きたい事があるのだけど」
「何かしら?」
「あなた、私と別れてから工場の何処にいたの?」
「そんな事? ええと、“怪物”をやり過ごす為に正門近くの建物に……」
(そう。“魔力”という条件なら、継続的に隠れて“治癒魔法”を使っていた彼女の方も襲われて当然の筈。なのに、“アレ”はマミの方が距離的に近くても此方を狙っていた。いや、そもそも一度でも私を狙わなかった時があったか?)
此方を何処までも粘り強く追っていた“怪物”が、急にマミをアッサリと諦めたのは明らかに不自然である。
つまりは、“怪物”が追っていたのはマミになくて自分にある物という事になる。
例えば、見下ろした自分の手の中にある、
(……まさか、
確かに、仮に魔力を他のエネルギーに変換出来たとすれば、グリーフシードはかなり有用なエネルギー源になりうる。
ほむらは、先程の“戦闘の記憶”から「弱点は燃費の悪さ」だと言っていた“自分の言葉”を思い出した。
それは逆を返せば、“怪物”がより大きな“エネルギー”を求めて行動しているという可能性に繋がる。
ただ、今は“何か”の気配が無い為、その証拠となる“知識”は頭から出て来ないのだが。
(そうだとすると……彼奴が次に向かうのは…………ッ!!?)
グリーフシードを探知するなら、当然、魔女の結界を探し出す事も出来る。
更に、“彼”は嘗て単独でお菓子の結界に入り込んでいる。
そして、この付近には“予想出現ポイント”が他にもある。
「まさか……、そんなッ!!?」
蒼白になったほむらが叫ぶ。
驚いた顔で振り向いたマミ達と彼女との目が合う。
肩に下げていた“H&K XM8 オートマチック・ライフル”が、彼女の動きに合わせて僅かに揺れた。
ほむらが気付いた、“最悪の可能性”。
「え……? なに、これ…………?」
「足跡……か?」
それは、現実になる。
B.O.A.です。
少し早めに出来たので、投稿しました。
はい、“彼”の弱点は燃費の悪さ、つまり鉄分不足でした。
なので対策として、粉々にするより散弾でチマチマが有効です。
それは下手に分解すると、奴は“個別”で動き出すからなのです。
解説はこの辺で。
では、また次回。
感想等、お待ちしてます。
そして、少女達は、堕ちていく。