BIOHAZARD CODE:M.A.G.I.C.A.   作:B.O.A.

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・2003年

謎のアンブレラデータが提出され、裁判にてアンブレラの敗訴が確定。
事実上の倒産を迎える。



推奨戦闘時BGM: バイオハザード アンブレラ クロニクルズ より「Convulsions」


chapter 5-9

・謎の結界、北側。

 

 

 

目的:コンソールの仕掛けを解く。

 

 

 

『此方レズモンド。三人共、聞こえてるな?』

『此方マミ。ハッキリと聞こえるわ』

『あー、此方杏子、で良いのか? コッチも聞こえてるね』

「此方ほむら。問題はないわ」

 

三手に分かれてから数分後、レズモンドの部下を拝借したほむらは、現実の方角で言えば街の北側に向かって小走りで進んでいた。

因みに、中心部から西向きが出口、南向きがマミ、東向きが杏子だった。

 

「こっちの方は、確かオフィス街が続いていたか?」

「そうだった筈だ。リッカーが最初に出没した辺りだったと思う」

「“リッカー”……」

 

“舐める者”という造語を名にするB.O.W.の事が後ろの部下二人の間から出て、ほむらは少し過去を思い返す。

 

(そういえば、私がこっちに関わりを持ったのも、ソイツが発端だったわね……)

 

今となっては、かなり苦々しい思い出だ。

と、二人の内の片方、中国系の男がほむらの様子に気付き、

 

「ああ、そう言えば君はその時からだったかな? まさかこんな風に協力し合うとは思わなかったろうけど」

「こんな事は、初めから分かってたら御免でしたけど」

「ハハッ、ま、そうだな。……後、俺は“ウォン”で良い。こっちは“ロイ”」

「ロイだ。この時だけでも宜しくな、嬢ちゃん」

「ほむらで良いわ。こちらこそ、ウォン、ロイ」

 

もう一人、恐らく東南アジア系の男と挨拶を交わすほむら。

そして、彼女等は街並みをただ北上していく。

この大きな一本道にはトラックやら乗用車やらがゴロゴロ転がっており、それらは他の脇道を完全に塞いでいた。

最初の一回だけ乗り越えてみたがその先は透明な壁があって進めず、結局彼女達に直進する以外の道はなかった。

 

(…………)

 

無言で、車の間をすり抜ける様に進むほむら。

焦りが無い訳ではないが、無闇に焦っても逆に事を仕損じる事は分かっていた。

何処かにいるであろうまどかの身の安否に身が引き裂かれる様な思いを覚えるも、彼女はどうにかそれを自制する事に成功していた。

それには、一つの“悩み”が消えた事で心理的に余裕が出来た事も一因していた。

 

 

 

 

 

“『気を強く持て。比喩とか例えとかは無しにだ』”

“「……え?」”

“『お前さんに入ったのは、確かに“潜伏期間”はほぼゼロに近い。が、実はその進行は気力次第でかなり“ラグ”が出るんだ。それこそ呑まれれば数分で終わるが、記録上“5日”先延ばしにした例もある。まあ普通は知らないし、“あの黒ずみ”を見た時点で一般人は先ず折れるがな』”

“「…………」”

“『ただ、発症してしまう事に変わりはない。直ぐに病院に行って治療を受けるべきだが、“君”なら後遺症を考えずに済むし、一件が終わり次第でも良いだろう』”

“「後遺症?」”

“『“彼”のソレはウィルスでは無く「体細胞」が侵入する、言わば“細菌感染”に近い。だから、治療で細胞そのものを殺しての完治が可能だ。だが、通常の細菌との徹底的な違いは、ソレが宿主の細胞と“融合”し増殖する事。つまり、治療時には同時に患者の身体の一部を“死滅”させてしまい、それが重要な部分だと後遺症が起きたりする事があるんだ。だが、君等は……関係無いだろう?』”

 

 

 

 

 

(無知って、つくづく恐ろしい物よね)

 

少なくとも、“約束”を果たす事にはまるで問題が無かったのだ。

全部が全部、彼女自身の早とちりだった。

結界に向かう途中でそれを知った時、思わず力が抜けてへたり込みそうになったのは既に黒歴史である。

 

(ただ、危機が完全に去った訳ではない。彼等の話からして、ここでもしも気絶する様な事があれば、その時点で私は“死ぬ”。だから、尚更慎重に行動しなくてはならない)

 

チリリッ、と身体の奥で痛みが走る。

目に見えない、体内の症状が進行しているのだ。

とは言え、話では寝ずに堪えれば最低2日程は気力で抑え込めるらしかった。

彼等の言うとおり、まどかを助け出して直ぐに治療すればなんとかなるだろう。

 

(……ただ、)

 

それでも、疑問は残る。

あの“夢の様な戦闘”、仮にあの時にほむらが“呑まれていた”なら……。

 

 

 

 

 

急に後ろから肩を掴まれる。

立ち止まって後ろを見上げたほむらに、ロイが首で左側の建物を示す。

彼等が見付けた物は、

 

「台座と、小型のエレベーター?」

 

ビルの壁に設置された、黒っぽい台座と物資を運ぶ為の小さな運搬機だった。

運搬機は40cm四方の「1番」と書かれたフタと横の小さな3つのボタンで構成されており、ボタンの上には「東」「南」「西」の文字が書かれていた。

また、台座には大きな円形の窪みがあり、何かを嵌め込める様だった。

 

「台座に何かを入れれば仕掛けが動くってか? 簡単な話だな」

「運搬機は、もしかしたら他の奴等の場所に物を送れるのかも知れん。聞いてみてくれるか?」

 

ロイの言葉に頷いたほむらはインカムに手を当て、マミ達に連絡を取る。

 

「此方ほむら。妙な台座と運搬機を見付けたのだけど、そっちにもある?」

『此方マミ。あったわ、1番の運搬機と台座。ええと、運搬機は……南以外の方向のボタンがあるわね』

『コッチも今見付けたよー。ボタンは東以外』

「ビンゴ。その運搬機、同じ番号の違う方角のに物資を送れるみたいよ。試しにやってみましょうか」

 

そう言って、ほむらが盾に手を突っ込んだ時、

 

 

 

 

 

チーン、という音が運搬機から響いた。

そして、「東」のボタンが赤く光り出す。

 

 

 

 

 

『ワリィ、先送った』

「……まあ良いわ」

 

ほむらが運搬機の中にあったグレープ味の飴玉を取り出すと、運搬機のボタンの光が消えた。

飴玉を適当に含みながら、ほむらは台座を見詰める。

 

(恐らく、この台座が仕掛けの鍵でしょう。大きさからして、レリーフでも嵌めるのかしら?)

 

 

 

目的:台座に嵌る物を探す。

 

 

 

「ほむら! こっちに来てくれ!」

 

その時、少し離れた場所からウォンが此方を呼ぶ声が響く。

ほむらがそこに向かうと、二人はビルの裏口のドアを開けようとしていた。

 

「この奥が怪しそうなんだが、さっきから扉が開かなくてな……」

「鍵は掛かって無いんだが、何かが突っ--」

 

ロイが言い終わるより前に、

 

 

 

 

 

 

 

いきなり、ほむらがドアに飛び蹴りを放った。

 

 

 

 

 

 

 

すると、なんという事だろうか。

ドアが蝶番ごと外れ、引っ掛っていた幾つかのダンボール詰めの資材と共に内向きに吹っ飛んだではないか。

 

「…………」

「…………」

「…………あれ?」

 

呆然とする二人、自分の行動に何故か驚くほむら。

辺りに微妙な空気が流れる。

 

「……行こうか」

 

ロイの一言で、三人は色々腑に落ちないまま探索を始める。

 

 

 

 

 

 

 

因みにこの場所、正規(?)ルートだと「西側にある工具キットを貰う→協力ジャンプでダクトに入り込む→柵をキットで外して建物の中に入り、ダンボール(中身は大型家電)を退かす」といった具合なのだが……もう此処では何も言うまい。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・謎の結界、東側。

 

 

所変わって、東側。

飴玉をほむらに送った後の杏子は、

 

 

 

 

 

「うぅぅぅぅあああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!?」

Stand aside, Son of a bitch (こっち来んな、このクソッタレが)!!!」

Go Go Go Go Go(走れ走れ走れ走れ走れ)!!!?」

 

物凄くピンチだった。

 

 

 

 

 

あの佐倉杏子が、背を向けて一目散に逃走していた。

大型の魔女どころか、下手すると“ワルプルギス”にすら余裕を持って挑みそうな、あの彼女がである。

とは言え、彼女が半狂乱になって逃げるのも、

 

 

 

 

 

 

 

真後ろから網目状のレーザーが向かって来たら、当然だろう。

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ、どうなってんだ!? 何でいきなり!!?」

「知るかよ!! どっかのセンサーにでも引っ掛かったんじゃないか!?」

 

杏子の横を走る大柄な黒人は、名をプリーチャー・レインという。

強面だが普通に気さくな人で、既に杏子とも打ち解けていた。

 

「不味い、二人共前見ろ! 閉まりかけてる!!!」

「イイ加減にしやがれェェ!!!」

「嘘だと言ってくれ神サンよぉぉ!!!」

 

二人に前を見るよう促したのは、リョウ・アトラス。

日系フィリピン人の2代目で、日本名で“亮”と書く。

そんな三人が全力で走るのは、市内の図書館の中の筈だった。

直線の廊下に入った途端に、後ろからレーザーが追って来なければ。

 

「あああああああああッ!!! コンチクショウが!!!」

 

目の前で閉まりそうなシャッターに、杏子が自身の槍を突っ込み無理矢理押し留める。

その間に二人がシャッターを潜り、反対側からシャッターを支える。

そして、槍を放り出した杏子がその下に足から滑り込む。

舞い上がったポニーテールの赤い髪の先が白いレーザーに接触し切り取られたが、身体自体はギリギリで間に合った。

 

「危なかったな……」

「死ぬかと思ったぞ……ホント」

 

プリーチャーの差し出した手を掴み、仰向けから立ち上がる杏子。

新たな槍を生み出し、杏子は閉まったシャッターの向こうを憎々しく睨む。

 

「……エゲツねェぜ、竜二さんよぉ……」

 

いつも通りな風に愚痴を吐く杏子。

 

 

 

 

 

だが、その心中は全く逆だった。

現在の彼女は、鹿目まどかの救出と竜二の“本性”という二つの事を只管考える事で、無理矢理“人魚の魔女”の事を頭の隅に追いやっていたのだ。

それに、彼女はあの時はさやか(人魚の魔女)が“殺された”と思っていたが、別にグリーフシードになった所を見てる訳ではない。

ひょっとするとまだ戻せるかもしれない、そう思い込む事で絶望し切らずに抗えていたのだ。

今の様に緊迫した状況も、その助けになっていた。

 

 

 

 

 

と、ここでリョウが近くにあった掃除道具入れのロッカーを開き、

 

「何だこれ?」

 

妙な形をした金属の棒を見付ける。

それの先は六角形をしていて、直角に二度折れ曲がったもう一方の先はプラスチックの取っ手になっていた。

 

「クランクか?」

「変な所に入ってんなぁ……」

 

二人がそれぞれコメントを述べる。

「六角クランク」を手に入れた三人は、図書館の中を更に進んでいく。

と、突き当たりに蔵書庫の入口が見え、三人はそこに近付き扉を開けようとしたが、

 

「クソっ、鍵が掛かってやがる」

 

プリーチャーが思わず扉を片手で殴って言う。

が、扉は分厚く蹴りでもどうにかなる様には見えない。

ぶち破るべく、杏子が槍を構えようとした位で、

 

「待て。此方に進めるぞ」

 

リョウが、蔵書庫の横の非常用扉が開いているのに気付く。

そこから出た三人は、非常階段を登って一階上に登る。

と、扉を開けて中に入った先には、

 

「2番……だと?」

 

三階の廊下に設置された、“2番”の運搬機があった。

ボタンが「北」「南」の二つに減っていた事を除けば、運搬機に特に大きな変わりはない様に見える。

驚いて呟いたリョウの横で、杏子は早速他の面子にそれを報告しようとして、

 

「えーと、此方杏子。2ば--」

 

 

 

『いぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!?』

 

 

 

「------ッ!!!??」

 

何かを避ける様に、杏子の頭がガクッと揺れる。

周りの二人にすら聞こえた悲鳴に、杏子が思いっきり顔を顰めながら、

 

「……何やってんだマミよぉ……」

『あッ!? 通信開いてた!!? ゴメン! ちょっとい----ッ、寄るな来るな触れるなぁぁぁぁぁッ!!!』

「お、オーイ?」

 

杏子が応答を求めるも、何やら凄まじい砲撃音がインカムから聞こえてくるだけであった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・謎の結界、南側。

 

 

 

『マミー? 一体どうしたのさー?』

 

インカムから杏子の声が聞こえてくるが、現在のマミに応答出来るだけの余裕はなかった。

 

「----ッ!!!」

 

マスケット銃を宙に浮かべ、血走った目で彼女は“ソイツ等”を睨む。

その“ソイツ等”は彼女の目の前の地面や壁を埋め尽くし、ガサガサと忙しなく蠢いていた。

黒色や茶色の艶のある小判形の胴体、異様に長い触角に脚から生える短い毛、大きさだけは30cm以上あるがそれでもマミには正体が直ぐに分かった。

当に、人間の女性の“仇敵”。

 

 

 

 

 

Large Loach(巨大“G”)

 

 

 

 

 

「消え去れェェェェェェェェェェェえええええええええええええええ!!!」

 

何故か別人の口調が移りながらマミはマスケット銃を四方八方に乱射、倉庫街のマンホールからワラワラ湧いてくる“黒G”や“茶G”共を弾幕で一掃していく。

元々地面に“黒い波”を作っていた程の数がいた筈だが、然も湧き方も間欠泉の如く尋常じゃない事になっていたが、彼女の殲滅力は拮抗どころか逆に押し返していた。

あっという間に、マンホール付近以外の“G”の姿が疎らになってくる。

 

「……何か、凄いなあの子……」

「流石は“彼”を追い詰めた子……か?」

 

因みに、BSAAの部下達は流れ弾を恐れてマミの背後の倉庫の影に隠れていた。

あの中に突入したらチーズよりも悲惨な事になるのは目に見えていたので、彼等でもそうせざるを得なかったのだ。

 

「兄貴、俺達さっきから仕事してなくないか?」

「あの子達が全部持ってってるだけだ……」

 

そんな二人は、実は双子の兄弟である。

兄がリードで弟がジャック、姓はウィッティングトンだった。

角から顔を出して彼等の覗く先では、発狂したマミの害虫駆逐戦が繰り広げられている。

 

 

 

 

 

そこに、新たな火種が舞い込んだ。

 

 

 

 

 

「なあ兄貴、あの壁の奴って……」

「誰かあの子を落ち着かせてやってくれ……」

 

ガサガサ蠢く“G”共を踏み越える様にやって来たのは、大型犬位の大きさの灰色の蜘蛛の集団。

更に、同じ位のサイズのカマキリの様な黄土色の昆虫までやって来る。

 

 

 

 

「ウェブスピナー」と「プレイグクローラー」。

 

何方も初期に生み出された昆虫型B.O.W.。

安価故にテロに使われやすく、BSAAには馴染み深いB.O.W.であった。

 

 

 

 

「……あ、あはは、あははははは……」

 

異形の怪虫達を見たマミが、等々何かが壊れたかの様に笑い出す。

その目は、完全に座っていた。

 

「殺してやる……、全部ケシサッテヤル…………ッ!!」

 

ある意味、彼女にもう迷いも恐れもなかった。

彼女の足元に巨大な魔法陣が生まれ、直後に見上げる程の巨体を誇る大砲が飛び出してくる。

そして、その砲身の上に乗ったマミが、

 

 

 

 

ボンバルダメント(砲撃)ォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わったみたいだ」

 

戦火が収まったのを確認し、二人が角から出て来る。

肩で息をするマミの前方一帯が完全に吹き飛び、そこに動く物は何も残ってはいなかった。

ただ、アスファルトの地面や倉庫の壁には“傷一つ存在しない”。

どうも、壊せる物とそれ以外とで強度が明確に分かれている様だった。

そんな彼女に二人が近付いて、

 

「気は済んだか?」

「……ええ、何とか」

「じゃあ、進もうか」

「はい……リードさん」

 

落ち着いてきたマミと共に、彼等は再び倉庫街を歩き出す。

 

 

 

実は、三人の中では比較的自然体なままなのがマミである。

まどかの救助と竜二への贖罪、それが今の彼女の主な戦う理由だった。

特に、一連の騒動を引き起こした原因である竜二への八つ当たり気味な襲撃について、彼女は表に出さないまでも心中では今も深い自責の念と後悔、罪悪感とを持ち続けていたのだった。

それには、そもそも襲撃を決意した“キッカケ”に心当たりが無いのも一因していた。

 

 

 

『マミー、もうイイかー?』

「あっ、御免なさい。何だったの?」

『“二番”の運搬機と、変なクランク見付けたんだけど、そっちはどうだ? 因みにほむらはとうに見付けていて、今大型のヤツと戦闘中だって』

「うーん……こっちはまだ……」

 

喋りながら歩いていた彼女が見付けたのは、今話題にしていた2番だった。

倉庫の壁に取り付けられたソレの前にマミは立って、

 

「今見付けたわ。それと……」

 

その直ぐ側、大きなシャッターの脇に六角形の穴が空いているのに気付き、

 

「そのクランク、六角形かしら?」

『アンタの方のか。じゃ、送るよ』

 

その後暫くして、チーンという音と共に運搬機のボタンが点灯する。

中から六角クランクを取り出したマミは、早速クランクを穴に入れて回そうとしたが、

 

「あれ? 動かない?」

 

穴の大きさはピッタリなのだが、何故か少しも動かない。

原因が分からず首を傾げているマミ、そこに声が掛かる。

 

「反対側にもあるみたいだ。此方で探してみる」

 

ジャックがそう言って隣の小さな小屋に入り、中からもう一つの六角クランクを持ってくる。

それをマミとは反対側の穴に嵌め込んだ後、二人は同時にクランクを回し出す。

と、倉庫の大きなシャッターがゆっくりと上がり始め、リードがアサルトライフル(SIG 556)を構えてその向こう側を警戒する。

 

ガシャン、という音と共に完全にシャッターが開き切り、直ぐにリードの側に固まった三人は、倉庫の暗がりを警戒しながらゆっくりと中に踏み込む。

そして、

 

 

 

「…………」

 

 

 

三人が同時に立ち止まり、暗がりの中の“ソレ”を見る。

冷や汗を流した兄弟がそっと横の少女を盗み見ると、

 

「…………ぁぁ…………」

 

顔面蒼白で目は虚ろ、挙句に身体全体がカタカタと不安定に震え出す。

失神数秒前、といった雰囲気のマミの右肩にリードがそっと手を置き、

 

「……此処は任せて、一旦引いておけ」

「兄貴と俺で多分大丈夫だから、心配は要らないよ」

「……お願いします、リードさん、ジャックさん……」

 

ウプッ、と口元を片手で押さえ、もう片手で肩を抱きながらマミは一歩下がる。

それを見て、改めて二人はアサルトライフルを構えて暗がりを睨む。

 

 

 

ギガガガガ…………。

 

 

 

その中にいたのは、10m以上もの長く巨大な生き物。

黒い胴体は幾つもの節に分かれ、そこから紅い足が幾本も生えている。

頭部には発達した大顎と長い触覚があり、尾部は二股の大きな鎌状の触手になっている。

 

 

 

 

 

それは、彼等から「センチュリオン」と呼ばれる大ムカデだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

・謎の結界、北側。

 

 

 

南側でセンチュリオンとのバトルが始まった頃。

 

ジュァァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!

「終わりよ」

 

レミントン(散弾銃)を構え、ほむらが“ソレ”に止めの一撃を放つ。

その弾は“ソレ”の頭部を捉え、その散弾によって集中的に穿たれた傷が致命打となった。

 

ジュァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアァァァ…………!!!!

 

最期の力でその手の“ハサミ”を振り回した後、硬い甲殻に覆われた胴体が力無く床に落ち、最後の力で上がっていた“尾”も遂には同じ末路を送る。

その5m程の大きな節足動物は、嘗てアンブレラの研究者達から試作B.O.W.「type-y139」と呼ばれ、今はBSAAから「スティンガー」と呼ばれる大サソリと酷似していたが、此方の方が大型で勝つ灰色の甲殻が黒色に変色していた。

ひょっとしたら後に生まれた“亜種”なのかもしれないが、この結界にいる以上真相は不明である。

 

「これで3体目……」

 

死骸を見下ろし鬱陶しそうに呟くほむらのいる場所は、侵入したビルの4階にあった会議室“だった”一室。

先程の“スティンガー”の襲撃の所為で部屋の壁やら天井やらが抜かれて、更に置かれていた机はスクラップになり最早嘗ての会議室の面影すら残っていなかった。

 

「7体、の間違いでは?」

 

と、抜かれた壁の向こうからロイの声が響く。

顔を上げて、壁から此方に顔を出した彼を見たほむらは、

 

「私が倒した数って事。こいつ等って、普通でもこんなに一杯放つ物なの?」

「そりゃ失礼。規定みたいな物は無いから何とも言えんが、此処までの大型はまあ放って3、4体だろうな」

「お二方ー。会話中悪いが、上から来るっぽいぞー。気を付けろー」

 

そんな声がロイの向こうから聞こえるや否や、ほむらの正面、ロイの頭の奥の方の天井が打ち抜かれ、新たに3体の“黒スティンガー”が現れる。

此方にハサミを向けて威嚇の声を上げる3体に銃を向けるほむらに、壁を乗り越えてロイとウォンが合流する。

 

「此処はアラビアンナイトのダンジョンか? サソリは良い加減見飽きたのだがな」

「まあ、下手に手強い奴が出るよりマシでしょうし、彼等にはとっとと死んで貰いましょうか」

「亜種でも弱点は変わらずって、改良の意味あんのかな此奴等?」

 

化物3体を相手に、だが呑気そうに彼女等は会話する。

既にそれ位の余裕を持って相手出来る程に、彼女等は慣れ切っていたのだ。

 

 

 

目的:“黒スティンガー”を倒す。

 

 

 

ジュァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ハサミを頭の前でクロスした3体のスティンガーは、尾を振り上げ咆哮と共に一気に突っ込んでくる。

その巨体に反した意外な速さの突進だったが、とっくの昔に彼等は速さに慣れていた。

適当に尻尾を狙い撃ち、その突進を食い止められて動きを止めたスティンガーの、ハサミが離れて剥き出しになった頭にほむら達の銃弾が襲いかかる。

中央と向かって左側の2体が、その弾丸を喰らってあっという間に絶命してしまう。

 

 

 

が、残りの右の一体は意外な動きを取った。

 

 

 

「おや?」

 

ロイが驚いた様に声を上げる。

“黒スティンガー”は両腕のハサミを前に揃え、長い尾を急角度に曲げて自らの背中に密着させると、そのまま“横に転がって”銃弾を回避したのだ。

右に一回転した“黒スティンガー”は、続けて床にハサミを突き立てて下階に姿を消す。

そして、下から物音がしたかと思うと、

 

「うおぉっ!?」

「きゃっ!?」

「うわっ!?」

 

ガゴォン!! と金属の何かが凹む轟音と地震の様な衝撃が下から襲いかかり、三人の身体が大きくふらつく。

直ぐに倒れ込む様に三人がその場を離れた直後、真下から“黒スティンガー”が床を突き破って此方に這い上がってくる。

そして、真正面に倒れるほむらにその尻尾を突き刺そうとして、

 

 

 

 

 

尾が、“何もない”床に突き刺さった。

 

 

 

 

 

「ハズレ」

 

その尾のすぐ横に、金属製の円筒形な“何か”が落ちている。

それからカチッという音が響くや否や、

 

 

 

周囲を大きな炸裂音が埋め尽くした。

 

 

 

「これで10体目。安売りにも程があるな」

 

ほむらからの念話の指示を受けて、伏せながら転がって逃げていたロイが立ち上がって彼女にそんな事を言う。

一方、部屋の外から歩いて戻って来たほむらは、尾と頭部が粉砕されているサソリを見た後、ふと自らの右手を見下ろす。

先程と同じレミントンを握るその手は、特に何の変化もない様に見える。

 

 

 

 

 

表向きには、だが。

 

 

 

 

 

(やはりおかしい。あの時から何かが違う)

 

実は最初のスティンガー遭遇から、ほむらは自身に“ある事態”が起きている事に気付いていた。

半信半疑だったそれが、今になって漸く彼女の確信に結び付いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

(“ライフル銃”が、握れない)

 

 

 

 

 

 

 

撃てないとか当たらないとか以前に、そもそも“握れない”。

彼女は周りが沈静化した事を確認し、盾裏に手を突っ込み今一度“バレット M82”を握ろうとする。

その手がグリップに触れて、それを掌の中に収める。

 

 

 

 

 

直後、稲妻に打たれたかの様な衝撃が全身を駆け、一瞬で五感が消え失せて意識が遠退きかけた。

 

 

 

 

 

(------ッ!!!)

 

消え入りそうな意識でほむらはどうにかそれを自覚する。

平衡感覚が消失して、上下左右どころか自分の体勢がどうなっているかすら分からなくなる。

まるで暗闇の中をデタラメに振り回されている様な、そんな錯覚を彼女は覚えた。

 

(----っ!!!)

 

何かを思った彼女だったが、その“何か”を言語として捉える事も出来ない。

最後の意思で、自らの身体を動かすべく力を込める。

 

 

 

その直後、一瞬で全てが“戻って来た”。

 

 

 

回復した視覚と平衡感覚に従い、ほむらは右足を前に伸ばして前のめりに倒れそうだった身体を押し止める。

直後、全身の毛が逆立ち動悸が一気に激しくなる。

同時に全身に激しい鈍痛と熱が生まれ、身体中から冷や汗が噴き出始める。

実際は1秒も無い“喪失”だったが、彼女は5分以上も経ったかの様に感じた。

突然荒々しく息を吐き始めた彼女の異常な様子に、大人二人が驚き慌てて声を掛ける。

 

「大丈夫か!? 何処か怪我でもしたのか!!?」

「心配は要らないわ。ただ少し眩暈がしただけよ」

「眩暈って……やはり病院に行くべきじゃないか? 気力が保てば良いとは言え、そんな調子ではこの先……」

「大丈夫って言ってるの。それより、この上の階の探索を進めましょう」

「おい……」

 

これ以上は時間の無駄、と言うかの様にほむらは先々と廊下に出てしまう。

残された二人は顔を見合わせ、同時に呆れた様な溜息を吐いてその後を追う。

彼等が彼女に追い付いたのは階段の踊り場、最上階に当たる6階に入る扉の前。

そこで立ち止まるほむらの後ろから彼等がその扉を見て、

 

「カードキーか?」

「ええ。何故かここだけ」

「5階には行かないのか? ひょっとしたらそこに……」

「“入れなかった”。透明な壁があったのよ」

 

今までは唯のアナログキーだったのに、この扉だけにはカードリーダーが付いていた。

恐らくこの先に仕掛けの鍵がある、三人はそう確信するも肝心のカードキーは下の階には無かった。

 

「他の方角かも知れない。連絡を取ってみる」

 

カードキーを探している旨を他の面子に伝えるほむら。

図書館の蔵書庫の鍵を探していた杏子の方には心当たりが無く、中央を守るレズモンドも当然知らない様子であったが、

 

『カードキー、確かこっちに……あ、あったわ』

 

なんとマミが序盤の方で入手していた。

聞くと、どうも「1番」の運搬機の近くに落ちていたらしかった。

何処か覇気のないマミにカードキーを送って貰い、3階にあった“2番”の運搬機からカードキーを入手。

直様6階に上がり、カードキーを使用する。

 

『ロックが解除されました。認証コード、G320-M20H03』

 

無機質な女性の声が響き、扉が自動でスライドする。

その向こうには一本の長い廊下があり、突き当たりにドアが一つあった。

三人は警戒しつつ廊下を歩き、突き当たりのドアに辿り着く。

ドアの前で三人は一旦息を整え、タイミングを合わせて一息に開く。

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、3階中の部屋を巡り回って途中に出て来た“ルンバモドキ”の集団を一掃し、漸く蔵書庫の鍵を入手した杏子達は今大きな扉の前にいた。

 

「あの機械オモシロかったなー、カーリングみたいにカンカン滑って他のに当たったら爆発して。もうチョット遊んでたかったかも」

「殺人兵器で遊ぶという感覚がスゴイな……」

「まあ、エアホッケーに似てなくも無いからなぁ」

 

そんな事を呟きながら、三人は蔵書庫の重い扉を開いて中に入る。

 

 

 

 

 

 

 

更に同じく。

 

「まあ、所詮は初期のイレギュラー(突然変異体)か。動きのパターンが単調だな」

「意外に速いのだけは難点だったけどな」

 

アサルトライフルの弾丸を頭部に撃ち込まれ続け、等々物言わぬ骸となったセンチュリオンを見下ろし、二人は静かに呟く。

流石はBSAAというべき働きで、特に苦戦もせずに戦闘を終わらせた二人の後ろから、成り行きを見守っていたマミが合流する。

 

「大丈夫ですか? 怪我とかありませんか?」

「ちょっと尻尾で引っ掻かれたかな。念のために……」

 

ジャックがそう言って、背中のポーチから緑色のラベルのスプレー缶を取り出して、左腕の切り傷に中身を軽く吹きかける。

と、中身の白い粉が傷口で固まって瘡蓋状に変化する。

 

「……ええと、それは?」

「外傷の治療に使われる“救急スプレー”だ。若干値段は張るが、これ一本で擦り傷に切り傷、刺し傷や火傷など凡ゆる傷を癒せる優れ物だ。まあ、流石に骨折とかは無理だがな」

「…………」

 

最早それ簡単な“治癒魔法”と大差無いのでは、とマミが思う前で二人はアサルトライフルを構え、倉庫の更に奥の方に視線を向ける。

そこには奥のブロックへと続く物なのか、大きな古びたシャッターがあった。

その横には同じ様に錆びたドアがあるのを認め、三人は固まってそこに向かう。

 

「二人共、良いな?」

「ええ」

「大丈夫だ」

 

扉の前に辿り着き、リードが二人に声を掛けた後、そのドアを開く。

 

 

 

 

 

 

 

それを、“奴等”は感じていた。

それを喜んでいた。

 

 

 

 

“悲願”が成就する時が、近付いていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうなってるの……?」

 

ほむらが呆然として呟く。

自分達が入って来たドアの前で、三人は只々立ち尽くしていた。

その目の前に広がっていたのは、真っ白い“ドーム型”の空間。

頂点までは凡そ20mはあるだろうか。

奥行きは更に広く、50m以上はある様に見えた。

どう考えても、只のビルに此の様な空間があるのは不自然である。

否が応でも、此処が魔女の結界だと彼女等は意識させられた。

 

だが、ほむらが驚いているのはそこではない。

 

天井まで20m近い高さがあるのに、柱らしき物は一本も通ってない。

円形の床には規則的な小さな溝がある程度で、大きな段差も遮蔽物も無い。

ガランとした、魔女の結界にしては酷く殺風景な場所。

だが彼女の六感は、此処に漂う濃厚な“死”を確かに感じていた。

そう、此処は……。

 

「実験場……いや、“闘技場”か?」

 

ウォンがそう呟いた、その時だった。

 

 

 

『“ターゲット”の入場を確認しました。これより、“実験”を開始します』

「ッ!!?」

 

 

 

扉から響いたのと同じ、無機質な女性の声。

直後、後ろでドアがスライドし閉まる音が聞こえた。

 

「ロックされた!?」

「クソッ! 何かおっ始めるみたいだな!!」

 

三人が銃を構えて辺りを見回す間も、アナウンスは淡々と続いていく。

 

『実験内容を確認します。内容は、“特殊条件下の戦闘能力の検証”。実験体を解放します、速やかに記録の準備を行って下さい』

「特殊条件下?」

 

ほむらが呟いた直後、ドームの天井に穴が開いて何かが落ちてくる。

ドサリと床に落ちた“ソレ”は、余りにもアンバランスな“異形”だった。

 

ギガガガガ……!!!

 

奇怪な鳴き声を上げ、ウゾウゾと床を這い出したのは“ムカデ”の様な胴体と頭。

そのムカデを“支え”に一気に立ち上がった“ソレ”は、全体として一応は人型ではあった。

ただ左腕のあるべき部分からはムカデが生え、胴体や背中からは鎌の様な触手にハサミ、ピンク色の二の腕程の太さの触手に、大きな爪を持つ緑色の鱗の生えた腕などが幾つも生えていた。

足のあるべき場所からは、灰色の甲殻に覆われた節がある“尾”が伸び、その先には露出した脳髄と大きな牙を生やした口が付いていた。

まるで神話の“キメラ”を彷彿とさせる禍々しい姿の左半身と対照的に、右半身は至って普通の“人間”のままだった。

 

 

 

だからこそ、彼等は分かってしまった。

 

 

 

「マジか……!!」

 

ロイが銃を向けながら言う。

長く伸びて傷んだ黒髪に、同じく黒い瞳。

身長から推測される年齢に比べて、少し童顔であるその“男”。

思わず息を呑んだ三人の上から、全く感情の籠らない声が降り注ぐ。

 

『条件設定、「複数の意識を同時発生させた暴走状態」。実験終了後は、以下の投薬と電気信号で“TYPE2”を鎮静化させて下さい。◯◯◯◯・×××・■■■■■■…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、別の場所では。

 

「……なあ、今アタシ達は“屋内”にいるよな?」

「その筈だな」

「じゃあ、この“街”は屋内の物なのか?」

「知らん」

 

重い扉の向こうにあったのは、大雨の中の真夜中の“別の街”だった。

そんな状況に置かれて、杏子達三人は扉の前で動揺を隠しきれない。

 

「……でも、只の街って訳じゃないな。雨なのに物の焼けた臭いが凄い」

「戦争の真っ只中って事か? その割に静か過ぎるがな」

 

リョウとプリーチャーがそんな会話をする。

戦闘に一先ず決着が付いたとも考えられるが、その割には付近の建物に付いた傷が少ない。

警戒を強めながら、ドアをくぐって街に踏み出す三人。

後ろを向いて確認すると、彼等はどうやらこの街の博物館から出てきた様だった。

その博物館からは火の手が上がっているらしく、上階の窓から赤い光が放たれている。

だがそのお陰もあって、真夜中でありながら博物館の看板がハッキリと見えた。

 

「……“ロックバレーシティ博物館”?」

 

プリーチャーがそう呟いた時だった。

 

 

 

 

 

何処かで悲鳴が上がった。

女性の声だった。

 

 

 

 

 

 

「ッ! 何だ!?」

「コッチの方だったぞ!!」

 

杏子が左側を指差す。

魔女の結界の中では悲鳴なんざ幾らでも聞こえる物だが、今回のは明らかに質が違った。

死の恐怖に直面した人間の、生々しい絶叫だった様に杏子は感じていた。

三人が視線を向けると、博物館正面の車道左側の方から人が走って来ている。

身長的に、杏子と同世代位だろうか。

暗くて表情の良く見えない彼女に、プリーチャーが声を掛けようとする。

 

「おい!! 何があっ----」

 

 

 

 

 

だが言い終わる前に、少女が“消えた”。

 

 

 

 

 

 

「なッ!!?」

 

杏子が思わず叫ぶ。

その声に反応して、少女を上空から左手で叩き潰した“ソレ”が、血の様に輝く瞳を彼女に向ける。

そして、その“男”は両目から止めどなく血を流しながら、腕から伸びる触手を少女だった肉塊から引き抜きながら、

 

 

 

 

「まだ湧くか、“人間共”」

 

怒りと憎悪の篭った声で、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最後は、彼女達。

 

「…………」

 

口を間抜けに開いたまま、三人は声を失っていた。

倉庫の中の扉を開いた、その先に広がっていたのは、

 

「海……!?」

 

朝日に煌めく、青く深い海。

磯の香りの漂う扉から、マミはそっと顔を覗かせる。

扉の前は緑色の平たい足場があり、その中央には大きく「H」の字が描かれている。

どうやら、海上のヘリポートに出た様だった。

 

「……流石魔法。何でもアリかよ……」

「今度はフナムシの大群でも出るのか? 勘弁してくれ」

 

兄弟が呟き、三人は扉の向こうに出る。

そして振り返って、また唖然とした。

 

そこにあったのは、海の上に立つ巨大な建造物。

四つのプラントで構成されたソレは、上空から見れば“四角形”に並んでいるのが分かっただろう。

 

「凄いな……」

「大きい……」

 

誰に言うのでも無く、ぼんやりとジャックとマミが呟く。

 

 

 

 

 

その時、いきなり轟音が響き渡り、建造物の一角の壁が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

「何だ!!!?」

 

リードがアサルトライフルを構えたその直後、

 

 

 

フォァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

“あの声”が響く。

そして、吹き飛んだ一角から大きな“黒い影”が跳び上がって、

 

 

 

ヘリポートの中心に着地した。

 

 

 

「ぬあッ!!?」

「きゃぁッ!!?」

 

凄まじい振動を受けて倒れ込んだ三人を、太陽を背にした四つ足で大きな肉腫を背負う“灰色の怪物”は、妙に落ち着いた佇まいで静かに睥睨していた。

 

 

 

 

 

 

 

それは、決してまやかしなどではない。

 

彼女達の前に現れた三体の“彼”は、今一つの真実を紡ぎ上げる。

 

それこそが、“彼”を狂わせた本当の“闇”。

 

 

 

 

 

終わりの見えない、“螺旋の物語”。

 

 

 

 

 




どうも、B.O.A.です。

今回は、少し真面目なお話があります。
今後の活動についてです。

私、3月からそれなりの更新速度を保ってきた訳ですが、この8月を境に更新がほぼ途絶える形になると思います。
全て此方の勝手な事情故の事では有りますが、どうかご理解の方をお願いします。
恐らく、来年3月から本格的に再開出来ると思いますが、ただお待たせした(と言うか待ってくれる人いるだろうか……)上で『復活だーっ☆!!』ってのも割に合わないかと思いましたので、


3月以降で、此処までの話を全てリメイクしようかと思います。


ストーリー自体はしっかり自分の中に有るのですが、最近になって「地の文増やしたいなー」とか「この間にワンシーン突っ込みたいなー」とか思う事も増えてきまして、今回が丁度良い機会かと考えたが故の事です。

……まあ、そもそも最初と今とで文章が完全に別物ってのも有りますがね。だからと言って、今のも結局素人に毛が生えたかどうかな訳ですが。


まあ、そんな訳で現状後3~4話程更新出来るかどうかという所です。
「chapter5」が終わるか否かといった所で、恐らく消えるかと思います。
本当に書く事を楽しんでいたので、この様な自らの状況が恨めしくてなりません。
ですが、必ずこの話自体は完結まで持って行きたいと考えてますので、また3月以降でヒョッコリとタイトル変わっていたら、「痛いの帰って来たわwww」とか思ってまた読んで頂けたらな、と思っています。

では、8月一杯残り数話ですが、奮闘して行きます。



所で、マミさん虫嫌いにしたけど……良かったよね?


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