S級ヒーローの中にハジケリストたちがいる。   作:にゃもし。

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番外編:実験体サンプル66号と天の助

  

 

ゾンビマンがヒーロー名簿に登録する十数年前…

 

 

とある山奥にある朽ち果てたビル。見た目だけならそう思うだろう。しかし、その建物の下――――地下深くにはその危険思想故に学会から追放され、世間から忘れ去られた一人の狂った科学者が世にもおぞましい実験を繰り返していた。彼の名はジーナス博士「進化の家」の創始者である。余程上機嫌なのか「くっくっく…」と不気味な含み笑いが薄暗い研究室内に木霊する。

 

 

「……遂に手に入れたぞ、最高の生命力と不死同然の再生能力を持ち合わせた怪人――――」

 

 

幽鬼のような青い顔に道化師が浮かぶ狂喜の笑みを張り付けさせて白衣の男――――ジーナス博士が見つめるその先には巨大な水槽に入れられた一体の怪人。大雑把な四角い人型をした水色の怪人。それが静かに目を閉じて水槽の中でプカプカと浮いていた。ジーナス博士はその怪人の名を口にする。

 

 

「ところ天の助を!!!!」

 

 

名を呼ばれた怪人は静かに目を開いて…

 

 

「悪いんだけど、もうちょっと静かにしてくれない? 震えるんで、声で」

 

 

怪人の体がゼリーのようにプルプルと小刻みに震えていた。

 

 

「すいません…」

 

 

バツが悪そうな顔でジーナス博士は謝罪した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何度見ても凄まじい再生能力ですね。この細胞の謎を解き明かせて取り込むことができれば…」

 

「死なない兵隊、旧人類撲滅用の更なる強化が…」

 

「我々の目的である人工的進化」

 

「そのためにももっと彼のことを調べねば…」

 

 

ジーナス博士と同じ顔をした男たちが研究機材を雑多に並べて天の助の周囲を取り囲んでいる。彼らはジーナス博士が造り出したクローン。そのうちの一人、モニターを観察していたのが驚きの声を上げる。

 

 

「どうした? 何か発見したのか?」

 

「いや、これが関係あるのどうか正直…心底どうでもいいかなと…」

 

「今は一つでも情報が欲しい。もしかしたらその情報がきっかけになる可能性もある。言ってみてくれないか?」

 

 

モニターを見ていたクローンが小さく頷いてから至極真面目な顔で答える。

 

 

「天の助の体の成分、95%がところてんで残り5%がゼリーなんだ…」

 

「本当に心底どうでもいい情報だな…いや、待て「ところてん」ってあの「ところてん」なのか…?」

 

「ああ」

 

「動物が怪人化したんじゃなくて、食べ物が怪人化したものなの、これ?」

 

「そうなりますね」

 

「マジか?」

 

「マジで」

 

 

暫し見つめ合い静寂が流れる。

 

 

「――でも驚異の再生能力を持っているのは事実だ。予定通り天の助の細胞を実験体サンプルに組み込もう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――んで彼が僕の細胞に適応した唯一の被験体ってわけ、ジーナスちゃん?」

 

「君ほどの再生能力はないがそれでも他の生物と比べたら群を抜いているよ。彼は人類の進化の到達点の一つといっても過言ではない。あとちゃん付けはやめてくれないか?」

 

 

天の助とジーナス博士の前には一人の青年が手術台の上で大の字で拘束されている。

 

 

『やめろォ、進化の家!! ぶっとばすぞォ――――っ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「何はともあれこれで「豆腐撲滅」と「ね撲滅」へ一歩近づいたことになるな」

 

 

ワイングラスを片手に「ふっふっふ」と笑う天の助とジーナス博士。

 

 

(――悪いが天の助君、君の下らないことに付き合うつもりはない。頃合いを見て君を研究所の地下深くで拘束、封印させてもらうよ。君の細胞はまだ利用価値があるからね?)

 

 

突如、研究所内が点滅。「ウゥゥゥッ――――!!!!」と警報がけたたましく鳴り響く。

 

 

「何事だ!?」

 

 

すぐさまジーナス博士が画面のモニターに向かって叫ぶと返答が返ってくる。

 

 

『大変です! 実験体サンプル66号が脱走しました!』

 

 

さらに研究所内にて爆発音とともに建物が微かに揺れて、扉が爆風で吹き飛ばされる。その奥からは両手にアタッシュケースと散弾銃、背中には日本刀を背負った青年――実験体サンプル66号が現れる。激しい戦闘でもあったのか体のところどころを血で赤黒く染めている。

 

 

「そいつには「豆腐撲滅」も「ね撲滅」しようとする意思は微塵もないぞ、天の助…」

 

 

――とアタッシュケースを地面に置いて中身を見せる。中に入ってあったのは「ね」と書かれた御札数枚と豆腐等の大豆加工製品が数点。

 

 

「どういうことだ…? 俺を騙していたのか…?」

 

 

信じられない、と言わんばかりにジーナス博士を見つめる天の助。

 

 

「別に騙していたわけではないさ、いずれは説得しようと思っていたんだがね…? それに君の力をこんな下らないことに使うなんて間違っているさ……ししゃもぉ――――っ!?」

 

 

天の助が投げた巨大なししゃもがジーナス博士の顔面に命中。後ろに仰け反り背中から倒れる。

 

 

「きさまらは豆腐の恐ろしさを知らないからそんなことが言えるんだよ! このメガネイケメンヤロー! お前とは縁を切らせてもらう!」

 

「それじゃお前は今後進化の家とは協力しないと判断していいのか?」と青年。

 

「当然だ、俺を誰だと思ってる?」

 

 

「残念だよ…君とはいい友達になれそうと思っていたんだけどね…」

 

 

鼻を押さえながらジーナス博士が起き上がる。近づく複数の足音。銃を持ったジーナスのクローンたちが部屋へと乱入。二人を取り囲み銃口を突きつける。

 

 

「天の助君。君のその再生能力は驚異的だが、こと戦闘能力に関しては低い。君にここを抜け出すことができるのかな?」

 

 

「問答無用! 純情な乙女心を弄んだその罪、俺も天も決して赦しはしない! そして裁かれるがいい、天王星の裁きを!!!!」

 

 

部屋全体が「ぬ」の文字で埋め尽くされてジーナス博士とクローンたちがわけのわからん攻撃で吹っ飛ばされ、ついでにメガネが「パリーン」と割れて気を失う。

 

 

「なんか変な技出した!?」

 

「よし今のうちに脱出するぞ! 俺たちにはゆっくりしている暇はない!」

 

 

言うな否や出口へと駆け込んでいき、青年も後を追う。

こうして実験体サンプル66号、のちのゾンビマンと天の助は進化の家を脱走したそうな…

 

 




 
 (´・ω・)にゃもし。

 ここまで読んでくれて、ありがとうー。
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