かんせんぐらし?   作:Die-O-Ki-Sin

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12話―あてんだんす

 結局、いくら考えても答えは出なかった。七草生体研究所の七草が彼女だと言う確信は無い。でも彼女が薬を持っていたことを考えれば、彼女がこのパンデミックに関わっている確率は高いだろう。

 

「……圭、私は少し寝るよ。何かあったら起こしてくれ」

 

 私は後部座席にいた。左側には引馬が眠っている。昨日約束したから、今日の運転は圭の役目だ。とは言えモールと学校は遠くないからすぐに学校に着くとは思うけど。

 

「うん、時間は少ないかもしれないけどゆっくり休んでね、渚」

 

「悪ぃな」

 

 私は右側のドアに体重を掛けると、目をつむる。車の規則的な振動が私の眠気を増幅させていった。

 

「……こうやって無防備だと、ちょっと可愛いんだよね」

 

 そんな彼女の言葉を私は取り合えず、聞かなかったことにしておいた。きっと圭も疲れてるんだ。うん。

 

 

「……きて、渚」

 

 誰かに肩を揺すられている。うっすらと目を開けると、少し嬉しそうな表情をした圭が視界に入った。

 

「……ん?何だ、圭」

 

「学校、着いたみたいだよ」

 

 私は体勢を戻し、窓の外を見る。

 

「へぇ……」

 

 たかが1ヶ月程度通っていないだけなのに、酷く懐かしく感じた。

 永遠に続くような日常の中で、私が自宅の次に……いや、もしかしたら自宅以上に長い時間を過ごしたかもしれない場所。

 車は校舎の裏側に止められていた。

 

「さっき表から入ろうとしたんだけどさ、校庭に結構あいつらが集まってたの。だから取り合えず裏まで来て、渚を起こそうと思って」

 

「そっか。ありがとな」

 

 ふと左側に目を向けると、引馬はせわしなく周囲を見回していた。

 

「ここがおねーちゃんたちの学校っすか?」

 

 そしてキラキラとした瞳で問いかけてくる。

 

「あぁ。巡ヶ丘学院高等学校って言うんだ」

 

「こ、こーとーがっこう?」

 

「あー……高校ってことだよ」

 

 何はともあれ、目的地に到達することは出来た。次の課題は、学校への侵入方法。

 

「渚、どうしよっか……」

 

「校庭にそんな集まってたのか?」

 

「うん。何て言うか、放課後の部活中みたいな感じで」

 

 サッカー部や陸上部。そんなところか。あいつらには生前の記憶でもあるのだろうか。

 

「……車で蹴散らす!……のは危ないよね。でも1人ずつやっつけてたら日が暮れちゃうかな……」

 

 圭が頭を掻きながら思考を巡らせている。私も何か考えねば。

 今私達が使えるのは持ってきた食料に消火器位の物。これで出来る事は……。

 

「圭、引馬。荷物を頼めるか?」

 

「う、うん。わかったよ」

 

「おっけーっす!せんぱいっ」

 

 私と圭は席を交換した。圭と引馬には持ってきた荷物を持たせておく。

 

「2人とも、どっかに掴まっとけよ」

 

 車を発進させ、正門へ向かう。正門は開かれており、車での侵入も難しくは無さそうだった。

 

「行くぞっ」

 

 私はそれなりにスピードを出して校庭に突っ込む。何人かゾンビ達を引いて行く。その度に車は大きく揺れた。

 私は玄関前に車を止めると、二人に向かって叫ぶ。

 

「急いで校舎の中に入れ!中にあいつらがいたら知らせろ!」

 

「う、うん!」

 

 圭と引馬は校舎内へと走っていった。足の怪我は完治していないが、すぐ進めば校舎の中には入れる。

 私のやるべき事は、車の音に寄ってきたあいつらへの牽制!

 私は助手席から消火器を取り出すと、ゾンビの群れに向けて構える。

 

「久しぶりだな、名前も知らない誰かさんよ!」

 

 そして、発射。白い粉は煙のように広がり、あいつらの視界を遮った。私はその隙に校内へと侵入する。

 

「圭、引馬、どこだ?」

 

「渚、こっちこっち」

 

 玄関を開けて右側の部屋から圭が顔を出していた。周囲にあいつらの気配は感じない。私は足音をたてないよう、そっと電算室と書かれた部屋へ入り込んだ。

 部屋は外から入る光だけが頼りになっており、薄暗い。

 

「ここのパソコンって動くのかな?」

 

 足にしがみつく引馬の頭を撫でながら圭が言った。

 

「さぁな。でも太陽光発電があった気がするから動くんじゃないのか?」

 

 最も今は動かすつもりも無いが。明かりに誘われてあいつらにこられたら困る。この学校の中で何処までが安全なのかはまだ分からないのだ。

 

「……さて、学園生活部を探すとしようか」

 

「うん」

 

「が、がんばるっす」

 

 私は制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、構内見取り図のページを開く。1階にある階段は3つ。どれも2階に進むものだ。

 

「一番近いのは……っと」

 

 この部屋を出てトイレの先にある階段が一番近いようだ。2階の真ん中の階段に繋がっているだろう。生存者が何階の何処に居るかは分からないから、広い範囲を見渡せる真ん中の階段は都合がいいだろう。

 

「よし、行くぞ」

 

 安全区域を作るために、何かしらのバリケード等が建てられているかもしれない。

 

「ま、まって渚。しゃがんで」

 

 圭に肩を掴まれ、その場にしゃがみこむ。コンピューターの群れの中からこっそり顔を出して覗きこむと、ゾンビが1体部屋に入ってきている事に気づく。

 

「圭、引馬。私が合図するまでは絶対に出てくるなよ」

 

 私は姿勢を低くし、なるべく音を立てずにゾンビに近寄り、後ろを取る。

 

「……おやすみ」

 

 私は消火器を振り上げると、それを思いっきりゾンビの頭に降り下ろす。大きな音がして、ゾンビの頭がパソコンに突っ込む。

 

「今だ!」

 

「行こっ、理千亜ちゃん!」

 

「うんっ」

 

 圭が引馬の手を引き走り出す。私はゾンビが動かないのを見届けると、2人の後を追った。

 

「きゃっ!」

 

 2人が逃げた先――男子トイレからゾンビが飛び出てくる。さっきの音に寄せれたのだろう。

 

「任せろ」

 

 私は2人の前に躍り出ると、消火器を発射しようと構える。だがしかし。

 

「ッ!?弾切れ……!?」

 

 仕方がないので私は消火器を横に薙いだ。ゾンビの頭は不快な音を立て半分ほどの太さになる。

 

「ひっ……」

 

 その光景に引馬が小さな悲鳴をあげた。

 

「我慢だ、引馬。後ちょっとで休めるさ」

 

「……ぅ、うん」

 

 そして私達は階段を上り、2階に到着した。階段から顔だけ出して2階の様子を探ると、違う階段から同じ様な姿勢で周囲を見渡していた1人の少女と目があった。




ようやっと学校へ到着です。12話でした。
最初に考えたものとだいぶブレて来てしまったような気がします。主に渚の半ゾンビ化の扱いとかですね。
ここまであんまりその設定には触れてきませんでしたが、学校で暮らし始めてからは生かしていきたいなー……と思っております。グダグダな進行で申し訳無い……。
さてさて。それではまた次回お会いできれば嬉しいです。
ではでは。
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