かんせんぐらし?   作:Die-O-Ki-Sin

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番外編です。キャラの中ではみーくんが一番好きです。ガーター良いよね。


解答例―pandemic

「生きてればそれで良いの?」

 

 それが、私が親友と話した最後の言葉。彼女は俯いたまま何も言わなかった。

 こんなこと、したくなかった。もっともっと、美紀と一緒にいたかった。

 でももう、私には耐えられない。来るかどうかも分からない救助を待って、毎日毎日『あれ(ゾンビ)』らがたてる小さな音に怯えて……。

 私は、誰かを探しにいく。いつまでも寝ていては果報は来ないものだ。だから待ってて、美紀、太郎丸。私が必ず助けに戻るから。

 声に出せなかったその言葉は私の脳内をぐるぐると回り続ける。灯りの無いデパートの廊下にはどこまでも闇が続いているようだ。

 私は懐中電灯をつけると、音をたてないように気を付けながら階段を降りていく。本屋、洋服屋、ケーキ屋。どれもこれも、本来なら多くの人で賑わっている筈だった。本屋には破られた紙屑が散らばり、洋服屋のマネキンはボロボロ。ケーキ屋からは、放置され腐った食材の悪臭が漂ってくる。

 もう日常は帰ってこない。美紀と一緒に買い物に行くことも、映画に行くことも出来ない。

 

「酷いよ……何で、何でこんな……」

 

 涙が零れそうになるのを必死に押さえる。泣いたって、何も変わらない。ゾンビを呼び寄せ、自分の視界を歪めるだけ。

 

「ごめんね、美紀……」

 

 デパートに来たのは、1ヶ月ほど前だっただろうか。『あの事件』が起きてから、私たちはずっとここにいたと思う。最初は、明るくてしっかりとしたリーダーのお陰でなんとかやっていけそうだった。

 どんなに今が辛くても、何か楽しいものを持ってきてくれるリーダー。デパートには缶詰めが沢山置いてあったから、食べ物に困ることもあまり無かった。美紀だって私のそばにいてくれる。ちょっと不便だけど、皆と合宿しているだけ。そんな風に思い込んで、見て見ぬふりを出来た。

 終わりは突然だった。誰がウイルスを持ち込んだのだろう、避難所にもゾンビが現れたのだ。いくら外からの襲撃を防ごうと、内側で発生してしまっては意味がない。蝋燭が倒れ、集めてきた寝具に着火する。誰かが溢したお酒にも火は移り、火事の規模は大きくなっていく。

 私は美紀に手をとられ逃げ出した。もう、私達以外には誰もいない。いるのはバケモノだけ。

 私達は普段は入れないデパートの裏側で、どうにか暮らしていけそうな部屋を見つけた。半ば倉庫として使われていたのか、食料の入ったダンボールが積み上げられている。水道もあるし、窓もある。私達はそこで救助を待つことにしたのだ。

 ……それ以来、私は笑わない。笑うことなんて出来なかった。

 いつもいつもムッとしていて……美紀に当たったって、どうにかなるわけでもないのに。

 明かりが見えてくる。デパートの外には青空が広がっている。この空だけを視界に入れたら、私は何一つ変わらない日常にいる、なんて錯覚を覚える。

 

「ダメダメ、ちゃんとしないと」

 

 音をたてないように自分の頬を叩いて気合いを入れると、僅かな荷物と一緒に歩き始めた。まだ見ぬ他人を求めて。

 目指すは駅や病院の様な大きな建物。きっと生存者もいる筈だ。先ずはデパートから近い駅を目指して住宅街を進んでいく。

 驚くほどにゾンビは少なかった。たまに女性の様な身なりのものを見るけど、建物や電柱の影に隠れてやり過ごす。溢れんばかりに居たあのゾンビ達は一体何処へ消えたのだろうか。

 住宅街を抜けると、コンビニや薬局が建ち並ぶ駅前の風景が広がる。

 当然と言えば当然だけど、駅前に人気は無かった。

 

「あ、あれは……!」

 

 だけど私は見つけた。駅の入り口に積み重ねられた机を。あれはきっとバリケードなのだろう。

 あの中に、生きている人間がいるかもしれない。

 そして私は浮かれてしまった。

 机で出来たバリケードには足場が多い。バランスを崩したりしなければ乗り越えることは簡単だ。私が一段目の机に足をかけて登り始めた時、後ろから恐ろしい呻き声が聞こえる。

 

「アァァあっ!」

 

「きゃあっ!?」

 

 私は驚き、腰を抜かしてしまいバランスを崩して落下する。3段目までは登っていなかったから、高さ自体は大したことは無い。でも落下する際に足を捻ってしまった。

 

「いったぁ……」

 

 『遅刻』してきたのであろう、そのゾンビはゆらゆらと覚束ない足取りで私に近づいてくる。普段ならば走って逃げる事だって出来たが、足を怪我した今ではそれも難しいだろう。

 私は腰が抜けたまま後ろに下がるが、すぐにバリケードに遮られてしまう。

 

「嫌……死にたくない!」

 

 嫌だ嫌だ嫌だ!美紀を残して死ぬなんて、嫌だ!

 恐怖が私の身体を支配する。ゾンビから視線を外すことが出来ない。

 私は手探りで何か無いか探ると、手に冷たい物が触れた。

 

「ぅ、うあぁぁぁぁっ!!」

 

 私は手につかんだそれを必死で振り回す。ゾンビの身体が脆かったのか、それとも火事場の馬鹿力か。ゾンビの顔は潰れ、動きを止めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁっ」

 

 手にしたものを見る。私の手にあったのは、何度も殴り付けられたのか凸凹だらけの消火器だ。あちらこちらに赤黒い何かが付着している。

 

「いやぁぁぁぁっ!?」

 

 私は恐ろしくなり、それを遠くへ投げ捨ててしまった。

 私の上げた悲鳴に呼び寄せられたのか、あちこちの商店からゾンビが現れる。1体や2体では無い。二桁は越える数のゾンビ達だ。

 

「あ、あぁ……」

 

 もう、声もでない。私の目の前に広がるのは絶望そのもの。私の回りを取り囲むゾンビ、足を怪我して逃げられる自信は無いし、そもそも逃げ道もない。

 

「ごめんなさい、美紀……」

 

 震える声で、親友の名前を呼ぶ。きっと、バチが当たったんだ。大切な親友を置いていったから。

 

「ごめんね、太郎丸……」

 

 きっともう、美紀にも、太郎丸にも出会うことは出来ないんだ。ゾンビ達はもう、すぐそこに。ここが私の『最期』……。

 

「目ぇ塞いで息止めろッ!!」

 

 突然、後ろから聞こえる声。直後に白いスプレーがゾンビ達を襲う。

 

「手、掴めるか!?」

 

「う、うんっ!」

 

 バリケードの上から伸ばされる誰かの右手。私はそれを両手で掴むと、右手の主は私を引き上げてくれた。

 長い金色の髪、私と同じ制服を着て、その上にジャージを羽織っている少女。

 彼女は包帯の巻かれた左腕を隠すように、右手で私の頭を撫でた。

 

「よく、頑張ったな」




圭の登場です。彼女は渚と出会い、どんな物語を描いてくれるのでしょうか。彼女『達』のサバイバル生活はこれからが本番です。
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