・・・体が砕け散ってしまいそうな衝撃と痛みと共に視界が真っ赤に染まり、体の感覚が徐々に消えてしまっているのを直に感じていた。
「マ・・・・・・で・・・・・・!!」
・・・遠くから親しい友人の泣き叫ぶような声が聞こえた。いや、少し違うか。気配を近くに感じるし左手からほんのかすかに握られているような感覚がするから私の耳が遠くなっているだけか。
「死・・・!!だ・・・き・・・う・・・を!!」
あの愚かなくらい優しい恩人の弟の声がする・・・。そうだ・・・。こんな場所で寝ている場合じゃない。守らなきゃ、誰でもない私の手で。
運悪く右腕はぐちゃぐちゃに潰れて使い物にはならないが両足は何とか動かせそうだし、左腕も擦り傷程度で済んでいるみたいだ。
「く・・!ば・・のか、あい・・は!!」
「プ・・Bだ!あ・・・を殺・・・・!」
案の定私の友達を轢き殺そうとした襲撃犯が車から降りてきていた。何で襲ってきたのかは知らないが奴らの好きにさせるわけにはいかない。私は何とか立つことには成功したが視界の右半分が真っ黒に塗りつぶされており、もう片方も真っ赤に染まっていて碌に前が見えなくなっていた。
「・キ・!うご・・・・!・・てし・・・・・!」
私は喉からせり上がってきた血を吐き捨てながら左手を背中まで動かしていつも常備していた兎印のナイフを取り出そうとした。だが、いつもならすぐ取り出せるはずのナイフを中々取り出せないことに気づいた。不思議に思って左手を目の前に出してみたら人差し指と中指が変な方向にネジ曲がっているように見えた。どうやら痛覚も死んでるらしい。
私はネジ曲がっている指のことを考慮して残っている無事な指でナイフを強く握りしめナイフを取り出すと、襲撃犯までよたよたと走った。
相手が振りかざした刃物をよろめきながら避けて、相手の腹に思いっきりナイフを突き立ててやった。
だがそれが限界だったようで襲撃犯はナイフで刺された反射で出した蹴りを私は避けることが出来ずもろに受けてしまい、また道路に倒れてしまった。
立ち上がろうと左手と両足に力を入れたが、体は鉛のように重く少し動かすだけで精一杯だった。ならせめてにとなんとか顔を横にすると三人の襲撃犯が鈍器のようなものを持って私の方へ向かってくるのが見えた。
とそのとき私の視界に八つの足が写った。その足の持ち主達には心当たりがあった。恐らく私を守ろうとしてくれているのだろう。
「・・ナ・は・・・て・・・・・わよ!」
「ぜ・・・ま・・・・・・・み・・!!」
「こ・・・・・・い・・きず・・・・・わ・に・・か・・・!」
「もう・・・さ・・・・つけ・・ない!!」
『駄目だ私なんか放っておいて今すぐここから逃げろ』私はそう叫ぼうとしたが喉に血が溜まって声を出すことが出来なかった。襲撃犯達が激昂し何かを叫んだ様子を見て私はまずいと思った。襲撃犯が鈍器を握りしめたのを見て私は全身全霊の力を込めて立ち上がろうとしたが体は言うことを聞いてくれなかった。襲撃犯が鈍器で友達に殴りかかろうとした瞬間だった。
「やれやれ。世話のかかる馬鹿者達だ」
今までノイズばかりだった音だったのがこの声だけはしっかりと鮮明に聞こえた。黒いスーツに身を包んだ女性が三人の襲撃犯を蹴散らして行くのが目に写った。
(やっぱりすごいな『千冬』は)
私の様子に気づいた少年と少女の叫び声が聞こえなくなっていくのを感じながら私は意識を手放した。