IS~ゼンマイ仕掛けの人生~(仮題)   作:はにゅー

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壊れた機械『マキナ・ゲブローチェン』

 一夏SIDE

 

 緊急治療室に運び込まれていく"マキナ"を見送りながら俺はどうしてこんなことになったのかを思い返していた。

 

 

~回想~

 

 それは学校から帰る途中の出来事だった。いつものように俺と鈴と弾とマキナの四人で談笑しながら帰っていたら途中で同じく帰宅途中だった弾の妹の蘭と偶然遭遇し合流しようと信号を渡っていた時だった。

  

 信号が赤にも関わらずスピードを緩めるどころかどんどん加速しながらバンがこっちに突っ込んできたのだ。あまりに突然のことで俺達は恐怖で動くことが出来なかった。ただ一人マキナを除いては。

 マキナは平均的な女子中学生よりも低い身長には似つかわしくないくらいの腕力で俺達を道路から歩道に押し出した。その瞬間その小さな体は猛スピードで突っ込んできたバンによって吹き飛ばされた。

 

 かなりの距離を吹き飛ばされて血塗れになりながらゴロゴロと転がっていくマキナを見た俺達は慌ててマキナの元に走り寄った。マキナの状態は酷い有り様だった。右腕はぐちゃぐちゃに潰れて左手の五本の指の内二本が曲がってはいけない方向に曲がり、頭からはだらだらと血が流れていた。鈴が泣きながらマキナの左手を握って必死に呼び掛け、弾は救急車を呼ぼうと手間取りながら携帯電話を取り出そうとしたときだった。

 

 「マキナ!立っちゃ駄目!!」

 

 鈴の叫び声にぎょっとして俺と弾が振り返るとそこにはふらつきながら必死に立とうとしているマキナの姿があった。その時のマキナの目は今まで見てきた中で最も冷たい光を放っていた。

 

 「お、おいマキナ?」

 

 マキナは俺のことをじっと見つめたあと左手を背中に持っていき、少し時間をかけてナイフを取り出した。それを見て俺達は唖然としてみていた。と、そのときだった

 

 「くそ、何で生きてやがるんだ!化け物かあいつは!」

 「プランBだ。どうせあの化け物はまともに動けまい。今のうちに目的を果たすぞ」

 

 マキナを轢いたバンからマスクと黒い帽子そしてサングラスをした男達が鈍器を持って降りてきたのとほぼ同時にマキナがふらつきながらも大怪我しているとは思えないほどの速さで不審者達に駆け寄った。

 

 「な!?こいつ!」

 

 男の一人が鈍器を振りかぶったがマキナはそれをギリギリで避け男の腹にナイフを突き刺した。

 

 「がぁ!!こ、こいつ!」

 

 男はマキナを引き剥がそうと膝蹴りを放った。もう避ける余裕がないのかマキナは避けることが出来ずナイフから手を離してしまったのと同時に仲間の一人が鈍器をマキナに叩きつけた。マキナは新たに血を噴き出しながら転がっていきピクリとも動かなくなった。血まみれのマキナを見て俺は無意識に足を動かしてマキナを守るように目の前に立った。

 実際馬鹿なことをしていると自覚はしていた。だって武器を持った男の前に立つなんて正気の沙汰じゃない。だけど体が勝手に動いてしまったんだ。きっと俺の隣に立っているみんなだってそうなのだろう。

 

 「これ以上マキナに手は出させないわよ!」

 

 吼えるように鈴は叫んだ。負けじと俺も

 

 「絶対マキナを守って見せる!」

 

 若干震えている自分を奮い立たせるように叫び、 

 

 「これ以上こいつを傷付けさせるわけにはいかねえな!」

 

 「もう傷つけさせない!」

 

 五反田兄弟も男達に威嚇するように叫んだ。そのとき男達は俺達を馬鹿にするように笑い始めた。まぁ、当然だろう。俺達は本当に馬鹿なことをしているのだから。

 男達が手に持った鈍器を振りかぶり、俺は防御するために腕を交差させようとしたときだった。

 

 

 「やれやれ。世話のかかる馬鹿者達だ」

 

 声が聞こえた瞬間三人の男達の目の前に黒いスーツを着た女性がたっていた。次の瞬間には男達がまるで漫画のように空を飛んでいた。ぽかんと俺達は唖然として目の前で起きている蹂躙劇を見ていると後ろからけたたましいエンジン音が鳴り響き、先程のバンが仲間を見捨てて逃げようとしたときだった。

 

 「仲間を見捨てて自分だけ生き残ろうとするか。つくづく情けないものだな」

 

 スーツの女性はそう吐き捨てると近くに落ちていた鈍器を拾い上げてバンに向かって投げつけた。鈍器は猛スピードでバンのタイヤに直撃し、バランスを崩しながら電信柱に突っ込んだ。

 

 「やっぱりすごいわね千冬さんは」

 「あぁ、本当にすごいよ千冬姉は」

 

~回想終了~

 

 

 それからは先程呼んだ救急車でマキナを病院まで搬送し、病院に到着してからすぐに緊急治療室で手術が開始された。先程俺達の様子を見に来た看護師の人によればマキナが助かる確率はかなり低いらしい。それでも俺達はマキナが助かることをただ祈ることしか出来なかった。

 

 マキナの手術が始まって四時間の時間が流れた頃だった。手術中の電灯が消え中から担当医が出てきた。俺と鈴はすぐさま担当医にかけよって手術の結果を聞いた。

 

 「マキナは、マキナは助かったんですか?」

 「はい、彼女の人並外れた生命力のお陰でなんとか。ですが・・・」

 

 と担当医は衝撃的なことを口にした。

 

 

 「彼女はもう二度と立ち上がることは出来ないでしょう」

 

  

 その言葉に俺は自分の耳を疑った。

 

 「今なんて?」

 

 鈴は震えながら担当医に問いかけた。担当医は悔しそうに顔を歪めながら

 

 「彼女の脊髄が損傷してしまったんです。それだけではありません。右腕の骨の至るところが折れて、砕けてしまっている上に神経もズタズタになってしまっています。なので右腕は切除するしかありませんでした」

 

 絞り出すように答えた。

 

 「そんな・・・そんなのあんまりじゃない!」

 

 鈴は泣きながら崩れ落ちた。

 

 「あれだけ酷いことがあったのに何でなの!どうしてマキナばかりこんな目に・・・」 

 「鈴・・・・・」

 

 俺達は鈴が泣き止むのを待ってから、担当医にマキナの見舞いは出来ないかと聞いてみたが許可は降りなかった。俺と鈴は最後までなんとかならないのかと交渉してみたが担当医は決して首を縦には振らなかった。結局千冬姉に「マキナは大丈夫だから帰ってお前達も休め」と頼み込むように言われ俺達は渋々病院を後にした。

 

 

 

 SIDEOUT

 

静寂な闇に包まれた病室の白いベッドに様々なコードで繋がれた少女が横たわっていた。 その病室は面会謝絶となってり、誰もいない筈だった。

 空間から湧き出てくるようにそれ(・・)は現れた。

 

 「よっこらせっと☆」

 

 青と白の服を着て頭にはウサミミとまるでアリスインワンダーランドから迷い混んだような服装でぶっちゃけて言えば相当に痛い服装をした少女(笑)がそこにいた。

 

 「マッキーどうせ起きてるんでしょ?早く起きなよ」

 

 そう言葉を投げ掛けると本来まだ目が覚めない筈だったマキナは普段通りに目を覚ました。

 

 「どうしたんです束博士?私の見舞いですか?」

 「うん、まぁそんなところかな」

 

 と束はいきなり懐かしそうな表情になって私に話しかけていた。

 

 「それにしても今の君を見てるとであった頃のことを思い出すよ」

 「それはドイツの研究所で私が廃棄されそうになっていたときですか?」

 「うんうん。あのときは私もビックリしたなぁ。だってマッキーは研究所にいる人形の中でも異質そのものだもん。そりゃあ研究所だって君を廃棄したくなるだろうねぇ。だって」

 

 『あいつらが求めているのは命令に忠実な機械なのだから』

 

 だからこそあの人たちの命令に疑問を抱き、反抗してしまった私は壊れた機械なのだろう。だからこそ私はあそこには居たくなかった。あんな場所には居られなかった。

 

 「あの研究所はつまんない人形ばっかりしかいないと思ってたけど君だけはそうじゃなかった。今でも思い出すと笑っちゃうねぇ。あ、やば。また笑いがこみ上げて・・・・」

 

 束は笑いを噛み殺しながらまた思い出を語りだした。

 

 「・・・・・・・・笑いすぎじゃないですか?」

 「いやだってさぁ?普通人形は自分に記号はつけられないものなんだよ?なのに君は自分に名前をつけたんだ。安直なネーミングだったけど私がマッキーを気に入るには充分すぎることだったんだよ」

 

 『マキナ・ゲブローチェン(壊れた機械)

 

 それがあのとき束博士に名前を尋ねられた時に答えた自分の名前だ。検体番号325ではなく、不良品でもなく、失敗作でもない。私だけの名前。あのとき、あの瞬間から私はマキナ・ゲブローチェンになったのだ。

 

 「・・・・・・・まぁ、今は精神面(ソフト)だけではなく肉体面(ハード)も壊れてしまいましたが」

 「ふっふっふ。だぁいじょうぶだよぉマッキー」

 「・・・・・・あなたが大丈夫だといっても全く信用が出来ないんですが」

 

 私は怪訝な表情で言うと束はけらけらと笑いながらポケットからA4サイズのバインダーを取り出した。今目の前で起きた理解不能な現象は見なかったことにした。

 

 「じゃーん!!体が動かなくなった君に特別プランがあるんだけどどうする?どうする?」

 

 私はまるで保健のサービス案内のノリで書かれたそれを細部まで読み込んだ。

 

 「マッキーの好きなプランを選びたまえ!」

 

 軽い調子で言われたがこれは一種の悪魔の契約みたいな内容だった。しかしだからと言ってこのまま一生寝たきりというのは嫌だ。だから私はーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 次の朝。一夏の危惧した通りマキナ・ゲブローチェンは病室から姿を消した。

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