死は誰にでも、終わりは何にでも   作:すどうりな

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幕間 私の幸せ

 

 私の姉は私の姉ではなかった頃があるらしい。

 

 年が離れていれば当たり前の話だ。 だが奇妙な事に私達は双子、一卵性というらしく本当にこの世に生まれ落ちたのは同時だったのだ。

 

 では何故か、産まれて間もない頃に手違いで姉が妹として扱われていたとかそう言う事ではない。

 かと言って物心つく前に別々の場所で育てられていただとかそう言う訳でもない。

 

 姉は以前の記憶、姉が姉になる前の記憶を持っていたというだけなのだ。

 

 所謂前世、俗に言う生まれ変わり。 姉は脳科学........というか全ての科学に真っ向から喧嘩を売る様な人だった。

 

 その事で家族の仲がギクシャクした事すらあった。

 姉は抜けている、マイペース、正直者........オブラートに包まなければバカだ。 そんな姉は恐らくその言葉が招く混乱だとかそう言ったモノを一切考えずに発言したに違い無い。

 

 自分は『誰か』の生まれ変わりだと。

 

 姉がそう言った時の言葉はハッキリとは覚えていない。 だが似たような言葉を言った筈だ。

 

 当時の私はまだ幼く、何となく『おねえちゃんすごい』程度にしか考えていなかった。

 普通その言葉は余程頭のネジが跳んでいる人間くらいしか真に受けない言葉だっただろう........だが姉は普通では無かった。

 幼稚園に入る位の子供が新聞を読み、パソコンを操作している光景は普通では無いだろう。 私が知っているだけでも姉の年齢に合わない行動はまだまだある........両親はさぞ不気味だったに違いない。

 両親は姉に対する接し方が解らなくなり、姉は寂しそうにしている事が多くなり、私はそんな姉と両親の間で不安になっていただけだ。

 

 まぁ........ギクシャクした期間は恐ろしく短かったが。

 

 解決方法は単純明快、姉もそう言う意図があった訳では無い偶然の出来事にして必然の出来事。

 姉がそれをした途端にギクシャクした家族関係は、家族の溝は一瞬で埋まりまた何時も通りの日常が帰ってきたのだ。 まるで魔法のように。

 

 姉は泣いた。 それはもうわんわんと。

 

 悲しくて泣いたのだ。 構って貰えなくなったから、ちょっとだけ距離を置かれたから........そんな『子供』っぽい理由で。

 それを見た両親は姉に謝りながら泣いて、そんな三人を見た私も泣いてしまって........何か私が言った様な気もするがもう覚えていない。

 

 良い思いでだ。

 もし姉が前世を話さないままだったなら姉は心の何処かに罪悪感を抱えたままだっただろう。

 もし姉があの時泣かなかったなら家族の溝は永遠に埋らないままだっただろう。

 私は、私達は一生後悔していたに違いないのだ。

 

 

 

 私の姉はファンタジーだ。

 

 前世を覚えているという事もあり、既に随分とファンタジーな姉ではあったが........つい最近、ファンタジー具合に拍車をかけ始めた。

 

 小説を読んでいた私はその小説の主人公が他人事とは思えない課程を経て能力を獲得していた事を知ったのだ。

 

 『死』を経て能力に目覚めたのだ。

 

 『直死の魔眼』ありとあらゆるモノの『死』が見え、否が応でも保持者に『死』を見せ続ける拷問の様な能力に。

 嫌な予感がした。 創作の世界、有り得る筈の無い力........そう断言出来ない理由が直ぐ近くに居たのだから。

 

 姉に聞いてみる........案の定見えていた。 否、見えてしまったのだ私のせいで。

 

 その時ばかりは冷や汗が出た。 調べれば調べる程録な事が書いていないのだ。

 死に近い、死にやすい、寿命は長くない........そんな言葉は見たくなかった。

 格好いいという書き込みを見て書いた奴を殴りたくなった。 格好いいものか、こんなものは只の呪いだ。

 

 私が殺してしまう、私が教えてしまったばっかりに姉を殺してしまうと半泣きで調べた。 姉を死なせない方法を。

 

 結果的に私の一人相撲だった訳だが........あの時は本当にどうしようかと思った。

 

 何時もと同じ様な何も考えていない提案をされた時は何とも言えない無気力感に包まれてしまったが、私は悪くない。

 

 

 

 私の姉は私を大切にしてくれている。

 

 自惚れでは無い筈だ。 姉はなんというか........私に対して過保護だった。

 

 私の足は動かない。 沢山の医者が匙を投げた足を絶対治る筈と夜遅くまで医者を探してくれていたのを知っている。 今の先生、石田先生だって姉が見つけ出してくれた先生だ。

 

 姉は学校に行っていない。

 面倒だからと言う理由で学校に行っていないのだ。

 嘘は言っていない、だけど本当の事も言っていない。 姉は解りやすいのだ、嘘は簡単に、隠し事をしているのは直ぐに解る。

 ただ内容は解らない........露骨に話を反らして会話にならなくなるのだ。 姉なりの知恵という奴なのかも知れない。

 それを私が心配で学校に行っていないと考えるのは........流石に自惚れだろうか?

 

 

 姉は私の為ならきっと犯罪だって平気でやる。

 あの夜、私は薄れる意識の中で姉を見た。

 化け物見たいなオジサンの両腕をなんの躊躇も無しに切り落とした姉を、あの時の姉の目に宿っていた本当に恐ろしく優しい『何か』を。

 オジサンを殺し尽くした姉の姿を見た。

 

 『願いが叶う石』そんな夢物語見たいな石を探し回っていたのも知っている。

 姉は私に隠そうとしていた様だが........あれだけキラキラとした目で『願いが叶う石があったら何願うん?』とか『もし足が治ったらどうするん?』と聞かれれば誰でも怪しいと気づく筈だ。

 

 家から出して貰えなかった理由の半分は夜中に『一日だけ借りてもバレへんやろ』という犯罪にしか聞こえない言葉を呟いていたからという理由なのだが........姉は気づかない様な気がする。 姉が気付き、今後こう言った無自覚の犯罪予告を言わなくなっても心配なので黙っているが。

 

 

 大体、私は今でも充分に幸せだ。

 

 両親に生き返って欲しいなんて願いを持っていないと言えば嘘になる。

 足が動いて欲しいという願いが無いと言えば嘘になる。

 

 それでも今の私は充分に幸せだ。

 

 姉と........しきと遊んで、泣いて、笑って........一緒にいるだけで――――

 

 

 

 ――――私は充分に幸せなのだから。

 

 

 

 

 




 
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