Preghiera di duo〜君に永遠の歌を 貴方に永遠の愛を〜 ―悲哀恋歌― 作:紅 奈々
2017年7月8日
手直し完了。
ついでに、少しだけ話を追加。
標的1
── ──
拝啓
寒さもなくなり、暖かい日が続いています。
貴方は如何お過ごしでしょうか?
私は今日で並盛高校に入学して2年目になります。
高校生活はとても楽しいです。
ツナ君達も居るから、中学の時みたいです。
ただ、中学の時と違うのは、皆、部活や生徒会に入ってること。
山本君、お兄ちゃん、恭君は変わらず、野球部、ボクシング部、風紀委員会に入ってて、それぞれキャプテン、主将、委員長をしています。ツナ君は今年で生徒会長に、骸君は副会長、獄寺君は書記、私は会計をしながらコーラス部に入ってます。
それはそうと、今年は修学旅行があります。並高は3年になると受験や就職活動で忙しくなるので、2年で修学旅行に行きます。
なんと、今年の旅行先はイタリア!すごく楽しみです。
イタリアで会えると良いな。
それでは、季節の変わり目の風邪に気をつけて、ご自愛ください。
敬具
── ──
笹川京子は淡い青色の便箋を同じ色の国際封筒に入れ、切手を貼ると封をした。
ふと、時計に目をやれば時計の針はもう直ぐで7時を指そうとしている。
それを確認すると、椅子から立ち上がってクローゼットへ歩いた。
クローゼットを開けると、昨日、クリーニングから返ってきた制服が掛かっている。 それを取って、京子は着替え始めた。
── ──
着替え終わって部屋を出ると、キッチンからコーヒーの匂いが漂ってきて、パンが焼けた事を知らせるトースターの軽快な音が聞こえた。
京子はそう言えば今日は、お兄ちゃんが当番だっけ?と、寝不足のぼんやりした頭で考える。それなら、ギリギリまで寝てれば良かった、と。
「おはよう、京子!」
「おはよう・・・・・・」
ぼーっと考え事をしていたら、丁度ご飯が出来上がってキッチンから出てきた笹川了平に挨拶をされた。
彼は、京子の兄である。
朝から元気だなー、お兄ちゃん。と思いながら彼の挨拶に返事をすると、京子は戸棚からティーカップと紅茶のティーパックを取り出して電気ポットのお湯をカップに注ぎ、ティーパックを入れて席に着いた。
目の前に座る父親の顔を見て、京子はふと思う。 そう言えば、父親はルーンの血族だったな、と。
そう、京子は争奪戦の後、家族と和解して家に戻っていた。
その時に自身の従姉であるミオン・ルーンを家に連れて行くと、両親は驚きながらも、涙ながらにミオンを歓迎した。
京子の母親からすればミオンは姪、父親からすれば従姪なのだ。 と言うのも、京子の父親とミオンの母親は従姉同士、ミオンの父親と京子の母親は兄妹だったのだ。
父親を見ると、ミオンのような高貴なオーラと言うか、「特別な人間が発する何か」があるような感じではない。
むしろ、「特別な人間」と言うにはほど遠く見る限りでは、「一般市民」だ。
ミオンにしろレオナ・ルーンにしろ、ルーン家の人間は何か、自分とは違う世界の人間だと言う線引きがはっきりと見えるような感じだった。
あの、ミオンの家系の召使いの家系であり、遠縁の親戚であるリオン・ヴァルフォアでさえ、自分が踏み込めない場所に居るような感じがあった。
しかし、父親にはそんな壁を感じない。
そんな事をぼんやり考えていると、「寝不足か?」と聞く父親の声が掛かった。
掛かってきた声に驚いて顔を上げれば、父親は自分の目の下をトントン、と指で指す。
「隈。 また、夜更かしでもしていたのか?」
無表情に問いかけてくる父親に対して、未だに京子は顔色を伺うように父親を見る。
発言を遠慮している、と言うべきであろうか。
虐めの冤罪の誤解が解けた後、ミオンが直接架け橋となった母親と了平に関しては、もう、あの出来事が起こる以前よりも良い関係を築いている。 一方で、何故か父親に関しては、未だにその溝が埋められていなかったのだ。
京子自身が避けているのか、
どちらにせよ、京子はそんな父親と一定の距離を置いていることは自覚していた。
父親の問いに答えられない京子に代わって、了平が「どうせ、ミオンにラブレターでも書いていたのだろう」と、答える。
すると、父親の「はぁ!?」と言う驚愕した声と、京子の「お兄ちゃん!!」という、了平を咎める声が重なった。
それを気にも留めず、了平は言う。
「何たって、ミオンは京子の白馬の王子──」
「おにいちゃん」
了平の言葉を遮って、京子は低い声で了平に呼び掛けた。
今まで聞いた事のない京子の声が了平の耳を突き抜け、了平が京子を見ると同時に京子が了平の胸倉を掴みあげる。
初めて見る京子のその姿に、父親は驚いたように「京子!?」と名前を呼んだ。
「ミオンちゃんは勿論、私に同性愛の気はないんだけど……お兄ちゃん、まだ誤解してたの?
いい加減、その脳味噌に新しい情報をインプットしたら?
それとも、お兄ちゃんの頭はアップデートの利かないカスなの?」
真っ黒な笑みを浮かべている京子の目が段々据わってきてるのを見て、了平は「ま、まぁ、落ち着け」と、狼狽えながらも京子を宥める。
そんな子供達を見て、「いつの間にか立場が逆転してないか・・・・・・?」と、父親はぼーっと考えていた。
その時、玄関の開く音がして、「ただいまー」と、母親の声が聞こえた。
「京子も了平も、まだ居るみたいだけど2人とも、学校はー?」
ダイニングに入ってきた母親が、了平と京子を見て言った。
2人は母親の顔を見るなり時計を見ると、顔を蒼くした。
時計はもうすぐで午前8時半を差す所で、それを確認した京子は急いで紅茶を飲み干すとトーストを一枚取って、「行ってきます!!」と、バタバタと家を出て行った。
「極限に待つのだ、京子!!」
その後を追い掛けるように、了平もバタバタと出て行った。
── ──
「おはよう」
沢田綱吉は自室を出て階段を降りると、ダイニングへ入るなりキッチンで朝食を作っている自分の母親、沢田奈々に挨拶をする。
奈々は「おはよう、ツナ」と、綱吉に微笑みかけた。
奈々の顔を見て、「そう言えば、母さんはあれで37なんだよな・・・・・・」と、実際の年齢よりも幼く見える自分の母親にふと思った。
母親譲りの童顔は今でも中学生に見られる程だ。 その上、中性的な顔立ちの為につい先日、大学生くらいの外人男性にナンパされた事を思い出した。
その時のことを思い出すと腹が立つが、何故かその彼に気に入られてしまい、連絡交換までさせられたのだ。
そんな事を考えながら席に座ってケータイを確認すると、メールが一件だけ来ていた。
「ルキアさんからだ・・・・・・」
メールの送り主は、つい先日のナンパ外人からだった。
綱吉は彼のことを「ルキアさん」と呼ぶ。 単に呼びやすいからだ。
オルキデーア・ビアンコ。 それが送り主の本名だ。
メールは朝からテンションが高い事が窺える内容が書かれている。
───────────
何か真っ白い変質者
宛先:沢田綱吉
───────────
件名:Buongiorno!
───────────
おっはよ〜!
ツナヨシクンはもう、起きてるかなー?
今日から学校が始まるね、楽しみだなぁ〜!
あ、今度デートでもどう?
この前、美味しいスイーツの店ができたんだ♪
iHoneから送信
── ──
あ、これは無視で良いな、と、綱吉はメールの最初の方だけ読んで電源を落とした。
何気に彼の登録名が酷いことはこの際、無視しよう。
「
電源を落としたタイミングで、リボーンが部屋から出てきた。 彼が挨拶をすると、綱吉が先に「おはよう」と返す。
英語読みでは「チャオス」になるが、彼はイタリア人。
イタリア読みでは、「CHA」は「カ」と読むので、「カオス」となる訳だ。
「なんだ、ツナ。
今日はやけに早いじゃねぇか。 起こす手間が省けたぞ」
「うん、今日は生徒会で作業があるからね、遅刻できないんだ」
珍しげに自分を見てくる家庭教師に綱吉は、少し焦げたパンを囓りながら頷いた。
奈々がニコニコして、コーヒーカップを持ってきて、リボーンの前に置く。
「ツナったら、段々しっかりしてきたわよねぇ、前のあのダメっぷりが嘘みたいだわ。
それもこれも、リボーン君のお陰ね」
「いや、そんな事は。
俺が3年間見てきて何も変わらない様だったらそれは、ツナが本当の意味で「ダメツナだった」と言う事だ。
まぁ、中二の時はどうしてくれようとも思っていたが」
「そうねぇ。 信じられなかったけど、ミオンちゃんとレオナちゃんが来てくれて本当に良かったわ。
ミオンちゃん達にもう一度会いたいわねぇ」
奈々の言葉に、リボーンが「当然だ」と言いたい様に返す。 どうやら、満更ではないらしい。
そのリボーンの言葉を聞いた奈々はふと、争奪戦が終わった後にミオンとレオナと会っていた事を思い出した。
そして、実はレオナと奈々は従姪と従姉叔母の関係だった。
その事を知ったのは、レオナの口から綱吉に伝えられてだ。 その時、レオナは自分の事を忘れていた綱吉に怒って、無理矢理記憶を
そんな話をしていたら、ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
そのチャイムを聞いて、「あ、もうそんな時間か」と、綱吉は上着と鞄を取って、玄関へ向かう。
「今日は生徒会で打ち上げをするから、帰るのは夕方くらいかな。
じゃあ、行ってくるよ」
奈々とリボーンにそう残すと、綱吉はリビングを出て行った。
その背中を見ると、奈々は驚いたように「綱吉ってば、パパに似てきたわ!」と、頬を赤らめて言った。
その言葉を拾ったリボーンは「かも知れねぇな」と、エスプレッソを啜る。