Preghiera di duo〜君に永遠の歌を 貴方に永遠の愛を〜 ―悲哀恋歌― 作:紅 奈々
実にすみませんm(__)m
ここ最近、引越しなどで纏まった更新時間がありませんでした。
いや、夜中にちょこちょこ書いてはいたんですがね。
それでも、100文字書けたらいいくらいの速度でした。
もう、最近、8ヶ月になる息子が中々寝付いてくれなかったり、やっと寝付いてくれたと思ったら、夜中の2時とか3時とかで、更新ができませんでした。
さて、それはさて置き、第3楽章です。
早速、リオンが雲雀にロックオンされます←
標的1
「クッソォ、何でこんな事に!!」
桜も散り終わり、もう直ぐで五月病患者が増え始める季節がやってくると言う、4月の後半。
リオンは昼休みの廊下を一人、全力で追跡者から逃れる為に疾走していた。
リオンの背後には雲雀が、トンファーを振り回しながら追い掛けて来ている。
それも、目が爛々と輝いていて、獲物を喰らわんとする肉食獣の如くその口元には獰猛な笑みを浮かべていた。
くそッ、何でこんな事になった!?
俺が何をしたっていうんだよ、畜生!
そんな事を毒吐く。
何故、リオンが雲雀に追い掛けられているのか、それを説明するにはまず、30分前に遡らなければならない。
「……は?
今、何つった、不良委員長」
「聞こえなかったかい?
耳も遠くなる程に年を取るなんて、嫌だね。
最近、どうも退屈気味だから、ちょっと付き合ってよ」
丁度リオンが雲雀に追い掛けられる30分前、風紀委員会が根城にしている応接室にて、リオンは雲雀に呼び出されていた。
雲雀の言葉は空耳だろう、と思い、リオンは雲雀に聞き返すも、雲雀からは嫌味が返ってきた。
雲雀の嫌味にリオンは「こいつがミオンの弟子で一応、生徒じゃなかったら今すぐに全治数週間の怪我は負わせてやるのに」と、内心でプルプルと怒りに震える。だが、自分はもういい歳をこいた大人だ。これくらいの嫌味など、何処吹く風の如く聞き流せ。
リオンはそう自分に言い聞かせる。
リオンは年齢に反して割と大人気ない所があったりするのだ。
「お前、俺とお前の立場って理解しているか?
一応、俺は教師で、お前は生徒だ。
教師が生徒に手を上げたとあっては、色々と問題になるんだが?」
「知らないね。
関係ないよ、そんな事。……少なくとも、僕にはね」
リオンの正論を、雲雀はバッサリと切り捨てた。
その目は爛々と輝いていて、口元には獰猛な笑みを携えている。
そんな表情の雲雀はとても危ない、と、出国前にミオンに聞かされた様な気がするが、頭の中で警鐘がなっているリオンにそれを思い出す余裕はない。
どうにかこの場を切り抜けなければ。
「君の事は君がこの学校の教師になると書類で知った時に調査済みでね。
マフィアの9代目ボス候補なんだって?じゃあ、当然強いんだよね?
暇潰しに相手してよ、センセ?」
リオンがこの場の打開策を模索していると、雲雀がリオンを挑発するかの様にその顔を覗き込んできた。
雲雀の挑発的な言動にイラッと額に青筋を浮かべ、殴り飛ばしたい衝動を必死に抑える。
耐えろ、耐えるんだ、俺……っ!
こんな事、教師として送り込まれた時に想定していただろうに……!
そうだ、目の前に居るのは聞き分けのない反抗期のクソガキだ、そんな奴の挑発に乗っては、約1世紀もの間、繁栄を築いてきたルーン家当主の傍に仕えていたヴァルフォア家末代までの恥!ここは、冷静に淡々と受け流すべきだろう。
何とか殴りたい衝動を抑えて、リオンは雲雀を見据えた。
(折角、身近に良い暇つぶしの相手が居るのに、退がるなんて面白くない。
ミオンは居ないし、沢田じゃ面白くないし、獄寺隼人は喫煙野郎だし、山本じゃ役不足だし、草壁は論外、ラクスも暇潰しにはならないし、その前に条約があるから手出しできないし、やっぱり、この黒猫野郎しか居ないよね。
どうやってその気に……)
雲雀の黒曜石の目を見据えた時、うっかりその心理を読み取ってしまったリオンは、何も見なかった事にしよう、と、雲雀から逃げる算段を模索した。
つかこいつ、仲間の事は酷い言い様だな!?
まぁ、それが雲の守護者らしいと言えば否定はできないのだが。
リオンの心理を読み取ってしまう読心術は、本人が相手の心理を読み取らない様に意識していないと抑えられないと言う、とても困った能力で、時々、こうしてふとした時にリオンの意思と反して相手の心理を読み取ってしまう。
そんなだから、幼少期はヴァルフォアの親族のみならず、普通の同級生などにも気味悪がられたりしていたものだ。
「とにかく、俺にお前と戦う気なんざないから、俺はエスケープさせてもらう!」
三十六計逃げるが勝ちだ!と、リオンは言い終わる前に脱兎の如く応接室から逃走した。
「逃がさないよ!!」と、その後を雲雀がトンファーを振り回して追い掛ける。
こうして、雲雀とリオンの鬼ごっこが始まり、冒頭に続くのである。
「畜生、いつまで追い掛けてくるつもりだよ、クソっ!」
走りながら毒吐き、リオンは何処か隠れられる所を探す。
幸い、リオンの授業は午後は入っていない為、最悪、放課後まで何処かに隠れている、と言う手もある。
災難だ、まったく。
どうして、任務で教師として送り込まれたのに、生徒と鬼ごっこなどしなきゃならないんだ。
「良い加減、諦めて咬み殺されなよ」
「だが断るっ!!」
追い縋ってトンファーを振るう雲雀の凶刃をリオンは身軽にひょいと避け、トンファーを踏み台に高く跳躍すると、そのまま、リオンは右手に見えていた階段に登る。
雲雀との距離が開いて、リオンはそのまま走って何処か隠れられる所を探した。
あー、本当に災難過ぎる!
「委員長!」
草壁が雲雀を追い掛けて、引き留める。
引き留められた雲雀は、憮然と立ち止まって、リオンの逃げていった階段を一瞥し、良い所を邪魔してきた草壁を恨めし気に見遣った。
真正面から憮然と睨まれると、草壁は顔を青くする。
でも、報告だけでもしておかないと。
草壁は、背筋を正して、雲雀に報告する。
「校内の見回り、完了しました。
それと、来週から留学生が来るそうなので、その報告もしておきます。
おそらく、詳しい話は理事長がされると思いますが・・・・・・」
草壁の報告に、雲雀は憮然としていた表情から無表情になる。
雲雀が言葉を挟まないのを確認すると、草壁は報告を続けた。
「一応、軽く調べておきました。
いつでも良いので、確認をしてください」
そう言って、草壁から差し出された書類を、雲雀は受け取る。
長年行動を共にしてきた為か、草壁は自分が欲しいと思う情報をこうして事前に調べて、報告してくれる様になった。
初めて会った時は、ただただ鬱陶しかっただけの様な気もするが、今では有能な部下だと、認めざるを得ない。
雲雀は、貰った書類をこの場でザッと目を通す。
書類の写真には、茶色のロングヘアーに紅い目の少女が写っていた。
そして、名前を見ると一瞬だけ、驚いた様に目を見開く、雲雀。
そして、次の瞬間には、その口元に笑みを浮かべていた。
「うん、後でじっくり読ませてもらうよ。
もし、この学校で何かをしようものなら、咬み殺す」
草壁に頷くと、雲雀はトンファーを振り回す。
後半の言葉は、誰に向けられたものでもなく呟かれた独り言だ。
その言葉からは、雲雀がこれからとんでもない事が起きそうな予感を察知したのだと、草壁は思う。
(誰が来ようが構わないが、頼むから、委員長の機嫌を損ねる様な事だけはしないでもらいたい所だ)
密かに心の中で、何処にいるとも知れない神とやらに祈る草壁だった。