結局この会話の後で彼は私たちと別れてしまった。どうやら彼もまだ目覚めたばかりらしいので、令音が大事を取って今日は休ませることにしたらしい。今日初めて想い人との初会話をした私だったが、彼からは良い印象を持たれたと思っていいだろう……
私も一応、あの精霊の攻撃のおかげで少し体が痛かったが、彼と別れる際に赤い髪の精霊からの攻撃を庇ったことにちての礼を言われた嬉しさで、そんなものはどこかに吹き飛んでいてしまった。それに、まだ令音とは話さなければならないことが多く残っていたので少しばかり体に無理をさせて、令音との会話を続けていた。
「ところで令音……そろそろ、あなたたちとの立場を明確にしたいのだけれども。」
「?……あぁ、そういうことかね。」
「察しがよくて助かるわ。私はあなたたち〈ラタトスク〉の敵になるつもりはないわ……でも、完全にあなたたちの味方になるわけじゃない……」
「まぁ、そこらへんは理解できるが……ならば、君はどのような関係を望むのかね?」
「まぁ、ここまで言っておいてなんだけど味方にはなるつもりよ。ただ、無条件で味方になるということは、逆にいえば無条件で敵になりうる可能性があるってことだから……」
「つまりは、契約することによる制限か……君が我々に望んだ条件を満たしていれば、君は味方で居続ける。逆に満たさなければ――」
「まぁ、満たさなかったら敵に……ってわけじゃないけど、その方が互いにやり易いでしょう?」
別にこうしなければ味方にならないというわけではないが、令音が言うように契約することによって心理的な拘束力を互いに持たせることができるからだ……まぁ、単純に私自身があちらに要求したいものがあったからというのもあるのだけれども……
「とりあえず、私からあなたたちに出す条件は三つ……まず、一つ目は『私の戸籍を作ること』
二つ目は『衣食住が最低限度以上は整っている環境を用意すること』……そして三つめは――」
「――で、どうかしら?そして、こちらは『私が出した条件をのんでいる限りはあなたたちとは敵対はしない』また『そちらが困難な状況に陥ったときには、私は手を貸すこと』というのは」
「ふむ……それならば構わない……と言いたいところだが私の一存では決めることができなくてね。」
「?……あぁ、そういえば令音は解析官だったわね。それじゃあ、この組織の司令官は誰なのかしら。」
「……一応、君も見たことがある人物だよ。」
私の質問に答えた令音は、どこか言いづらそうにしていた。
しかし、私が見たことがあるというがそんなのは……いや、一人だけ該当する人物がいたはずだ。
しかし、もしそうなら彼女のとった行動には疑問を生じるが……
「狂三との戦いに現れた、あの赤い髪の
「その通りだ……だがいまは彼女は会うのが難しく――」
「――その前に少し質問良いかしら?その子の事なんだけど、途中から急に人が変わったかのように雰囲気が変わったわよね……あれは一体なんなのかしら?」
「……それを話すには私一人の判断では……いや、その質問に答えよう。答えたうえで、もし君の力でそれが解決できるのならば解決してもらいたい。正直、今は藁にも縋る思いだからね。」
「随分と深いわけがありそうね……わかったわ、できる限りことは尽くしてみるわね。」
「――というわけで、あなたに会いに来たのわ。」
「何がというわけなのかしら?そもそも、なぜ今連れてきたのかしら令音?」
私の目の前にいる少女【
この少女は間違いなく、狂三との戦いのときにいた赤い精霊だった。少なくとも、あの時感じた霊力が彼女から確認できる……しかし、それよりもまだ幼い彼女が司令官であるということの方が驚いたが……そんな私をよそに令音は彼女からの質問に答えようとするが――
「……それは――「私があなたの抱えている悩みを解決できるから。」……だそうだ。」
「――ッ!?……詳しく聞かせてくれないかしら?」
「まぁ、解決できるとは言ったものの、あくまで一時しのぎにしかならないかもしれないわ……あなたの『破壊衝動』を収めるにはね……」
「私の独断だが、彼女に事情を説明したよ。その代わりに、条件を飲むことにしたがね。」
「まぁ、大した条件ではないから安心しなさい……とりあえず物は試しでやってみましょうか。
〈
いつものように現れたカードは私の周りを飛び回っていたが、私の方のはあまり本調子ではないが……とはいえ、泣き言は言ってられないので彼女がいつ破壊衝動に飲まれるかわからない以上、早めにやることを終わらせよう。
「【
「たしかに楽にはなったわね……ところで条件のことを詳しく聞かせてもらえないかしら?令音が認めたということは問題が無い程度の条件だろうけど、私は立場上把握しなければならないしね。」
「まぁ、大したことではないわ……とりあえず私の出す条件は――」
「――この三つが私の出す条件。無論、最後の条件に関しては私の能力で誤魔化すから。」
「なるほどね、そういった意味ではこちらにもメリットがあるか……それと、助けてもらって失礼かもしれないけど一つ聞きたいのよ。私たちに条件を飲ませるためだけに私を助けたのかしら?」
「……別に条件を飲もう飲むまいが、どちらにしても手を貸すつもりだったわよ。一応、狂三との戦いでは手を取りあったんだし。それに――」
そして彼女が五河士道の妹であるから――というわけではない。
正直、彼女がどこの誰であろうと助けるつもりではいたのだ。まぁ、ただ単純に言うとするならば。
「琴里ちゃんのことが単純に気に入ったから……では不足かしら?」
「ちゃん付けはしなくていいわ……どうやら、長い付き合いになりそうね。」
「えぇ、というわけで迷惑かけるわね琴里。それと、こちらも王花で構わないわ……とにかくよろしくお願いするわね。」
「こちらもね……それと、私も王花のことは嫌いではないわよ。」
しばらく見つめあった後に、どちらからともなく互いに手を差し出して握手を交わしていた。
やっぱり兄妹というだけあってか、精神的な部分がどこか彼と似ていると感じつつ、今日という一日は終わりを迎えた。