ある晴れた昼下がり、とはいかずとある雨天の昼下がり。
そんな雨を見つめながら、1人悩む元労働者がいた。
「仕事はどうしようかな…」
悩むのもそのはず、士郎には大量の資産がある。
前の職業柄である紛争を終わらせたり、怪奇現象に悩まされていた国の謎を解明し、解決したりと国と言う大きな物を救う場面は少なからずあった。
その為か、その度に支払われる大量生産の謝礼金を拒みながらも受け取っていた結果、5世代くらいは遊んでくらせそうな資金があった。
それは、もうあかいあくまが発狂するほどの。
常人なら、働かないのが普通だろう。いや、働いていてもすぐやめるであろうが、衛宮士郎の人柄のせいか毎日暇というのも落ち着かないのだ。
「どうしたのですか?シロウ?」
「あー、いや別に大した問題じゃないけど仕事どうしようかなって。」
「仕事、ですか。私とは生前、縁のなかったものですね。だが、逆に言えば縁のなかった物であるこそ興味があります。」
最近、セイバーは王であったころにやらなかったことに興味を持つようになった。その精進っぷりはすごいことで、家事も今ではほとんど任せられるようになった。料理も今は、俺の弟子として修業中だ。
「興味あるか?なら、一緒に働かないか?別に、そこまで張り切ってする程、必要でもないからバイトにするのもありだな。」
そうだ。バイトならシフトの融通も利くし、2人の時間もたくさん取れるだろう。何より、この家には来客者が多いんだから2人の時間を大切にしたいし。
「そうですね。私も、この時代の金銭感覚が分かってきたので、シロウの貯金には度肝を抜かされました。あの様子では、そう気を張って働く必要もないでしょう。」
「ああ、まあ、夢を追った結果があの貯金だから俺も他に比べたら大成功してるな。じゃあ、バイトの事だけど馴染みのあるネコの所に聞いてみるよ。」
「はい。よろしくお願いします。あの店は他とは違う雰囲気があって興味がある。」
■■
「あ、もしもし?ネコさんですか?」
「ん、エミヤん?久しぶりだねぇ〜!どうしたの?」
「あの、バイトって今探してますか?」
「探してる探してる!いつでもあたしの店は人が足りてないからね!」
「僕ともう1人いるんですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ?で、なに?彼女?」
「……」
「待って、図星!?」
「まあ、はい。そうです。」
「分かった!じゃあ楽しみにしとくね〜」
■■
バイト辞めてから随分と経ったけど、やっぱりネコさんは変わらないな。何か、軽い。とりあえず、軽い。でも、それでいて勘が鋭い。
まあ、でもあそこでやる事は大体知ってるし、何より馴染みのあるところの方がやりやすい。
変な期待を背負ったが、それは大丈夫だ。何たって、セイバーだ。
俺と比べて、見劣りするなんてことはありえない。
まあ、それはともかくバイト先がすんなり見つかってよかった。
「セイバー?バイトの事でちょっと話があるんだけど、来てくれないかー?」
「はい。シロウ。すぐ行きます。」
と、セイバーが見ていたテレビを消してこっちに来る。
何か、馴染んだもんだ。元々、この時代の人間じゃないなんて到底思えない。
「あ、セイバー。バイトするには、ちょっと書類みたいなのを書かないといけないから、明日、店に来てくれだってさ。それは、俺も行くから。
あと、バイトの日数だけど、どうする?1週間に何日か、で決めて欲しいんだ。」
「日数ですか。労働の経験がないのでよく分かりません。
シロウはどうするんですか?」
「俺は、週に3日くらいで抑えとくよ。あんまり、多すぎると疲れが溜まるからな。お金はあるんだし、セイバーもそうしたらどうだ?」
「はい。そうします。できるなら、シロウと共に働いて見たいですね。」
セイバーの顔がほんのり赤くなる。いつも、思うけどいつまでも初々しい。いや、別に悪い事ではないんだけど、現に俺も顔に熱がある。
これは、俺達が成長していないんじゃなくて、いつまでも熱が冷めない恋なんだと信じたい。
「あ、ああ。ネコさんに頼んでみるよ。俺もどうせなら、セイバーと一緒が良いし。」
と、沈黙が流れる。2人とも頬を赤らめて目を合わせない。
これは、聖杯戦争なんて、生々しいストーリーの結末がこれなんてまるで思えない。青春もののラブコメディーだ。
「フ、フフッ…」
「?」
「いつまでも経ってもこの調子なんですかね?私たちは?」
と笑いを堪えながらセイバーはそう言った。
なら答えは一つ。
「うん。そうだろう。いや、できるならそうでいたい。いつまでも、初々しさを忘れない2人でありたいと思ってる。」
と、セイバーを見ると。また、赤面して俯いている。
次はこっちが笑ってしまいそうだ。
「ははっ…」
ーーいつの間にか雨が上がり、幻想的な虹を見せている空に2人の笑い声が響くのであった。