ラブライブ!~もうひとつのsnow halation~   作:フィッシュボール

9 / 9
 今回は若干増量、おまけにシリアスも入っております。


#7 友達に……

~前回のあらすじ~

 

 転校を繰り返し友達ができず孤独な学校生活を送っていた希はいつも通り本を読みながら一日が過ぎるのを待っていた。

 そんなある日、ひょんなことで希と真逆の境遇にいる学校の人気者玖音 日向(ひさね ひゅうが)と出会う。

 初対面にも関わらず明るく希と接する日向に異性とまともに話したことのない彼女は堪えられなくなり逃げ出してしまった。

 

 

 「───いってきまーす」

 

 返事の返ってくるはずのないリビングに向かってそう告げると希は玄関の扉をおもむろに閉めた。

 転勤族の希の両親は仕事ばかりに(かま)けて家に帰ることがほとんどなかった。

 その両親が今の希の気持ちなど知る由もなかった。

 

 「はぁ……(学校、行きたくないなぁ……)」

 

 通学路を歩む希の足取りはまるで足に重りを着けたかのように重たく一歩進む度に彼女の表情はどんどん沈んでいった。

 友達がおらず学校でもいつも独りぼっちの希が学校に行きたくないと思うのは当然のことといえばそうであったが今日の彼女はいつにも増して学校に行きたくなかった。

 話は昨日のことに遡る、希はいつも通り放課後に独りで教室に残り本を読んでいた。

 ある程度読み終わり、希が帰ろうかと思ったその時だった。

 突然、教室の扉が開きなかから希のクラスメートの玖音 日向(ひさね ひゅうが)が飛び出してきた。

 突然のことに焦る希に日向は明るく話しかける、その明るさと馴れない異性とのふれあいに堪えきれず日向から逃げるかたちで教室を飛び出してしまった。

 そういうことで、希は今、スゴく学校に行きたくなかったのだった。

 

 (どうしよう……絶対、玖音くん怒ってるよね)

 

 とぼとぼと力なく歩みを進めても学校までの距離は近くなる一方だし、遅刻までリミットも迫っていた。

 もはや、進むも地獄戻るも地獄の八方塞がりな状態に希は陥っていた。

 

 もういっそうのこと学校をズル休みしよう! そう思って希が踵を返そうとしたその瞬間だった、

 

 「───うぉ!! 東條さん、どしたの? 忘れ物??」

 「~~~~~~~~~!?!?」

 

 振り返った希の視界いっぱいに玖音 日向の驚いた顔が広がる。

 希は声にならない悲鳴を挙げた。

 日向はそんな彼女に昨日と変わらない向日葵のような明るい笑顔を向ける。

 なにか喋らなければ、そう思ったものの舌が上手く回らず、言葉が出てこない。

 

 「ひ、ひ、ひさ、ひさね───ひさねくん!!」

 「おう! 東條さん、おはよう! 昨日は突然帰っちゃったけど、もしかして用事とかあった? ゴメンな、ひき止めちゃったみたで」

 「べ、別に! そ、そ、そんなことなゃい……」

 「なゃい?」

 

 希のおかしな言葉に日向が首を傾ける。

 

 (か、噛んじゃったあぁぁぁ!!!)

 

 次の瞬間、希の顔から一瞬色が消えたと思ったら、火が点いたように真っ赤になった。

 顔が火照り、頭が真っ白になり、視界がぐるぐると回り出す。

 

 (どうしよ……噛んじゃった。あぁ! もう!! 死んじゃいたい!!!)

 

 俯いて耳をはっきりと判るほど真っ赤に染めながら肩を震わす希を日向は心配そうに覗き込む。

 

 「どうしたの? 東條さん。大丈夫? 腹が痛いのか??」

 「…………」

 

 肩を震わしたまま黙りこくってしまった希に日向は少し困った顔をする。

 

 「とりあえず、具合が悪いなら学校近いし、まずは保健室に行こ。ほら、歩ける?」

 

 そう言って、日向は希の手を優しく取り、少し引っ張る。

 彼女の手から全身に電撃のように戦慄が走る。

 

 (手!? て、て、手手手手手!?!? どどど、どうしよ!!)

 

 昨日、異性と話しただけでも胸がパンクしそうな希がその翌日には異性に手を握られるなんてこと堪えられるはずもなく、希は本能的に日向の手を振りほどこうと抵抗した。

 

 「───ちょ!? 東條さん! どうしたの!!」

 「だ、大丈夫、大丈夫だからッ!!」

 「大丈夫って真っ赤だし! 熱でもあったらどうするの!!」

 「大丈夫なの! こ、これは元も───ヒッ!!」

 

 顔を上げた希、その目が捉えたものは……。

 

 日向の後ろ、右肩の辺りから半分だけ顔を覗かせているおぞましい形相の女。

 どす黒い髪の隙間から憎悪に満ちた鋭い眼が見え、口元は気持ち悪い薄ら笑いを浮かべている。

 希は直感的に、本能的のその女がこの世のものでなく、すでに死んでいると察した。

 今までに死人の幽霊を見ることは多々あった。

 けれど、希はかつて感じたこともないほどの禍々しい雰囲気に脚が震えていた。

 

 (な、なにコレ……? こんなの今までに見たことない。嫌だ、怖い、逃げたい、怖い怖い怖い怖い怖い!!)

 

 衝動的に逃げねばと思った希は腕に力を込めると日向の掴んでいた手を振りほどいた。

 その力は日向、ひいては希すらも驚く程強かった。

 

 「───!?」

 「……ゴメン」

 

 一言だけ謝罪の言葉を残すと、驚く日向を背に希はあの女から一歩でも遠ざかりたいと全力で走り去る。

 日向も今度は逃がすまいと慌てて希の後を追いかけた。

 

 「あっ! 東條さん!! 待って!」

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 「───東條さん! 東條さん!! ちょっ! 待ってよぉ! (てか、足速っ……)」

 

 

 希と日向の鬼ごっこはもう、かれこれ30分は続いていた。

 希が逃げて、どこかに隠れ、日向がそれを見つけ、また希が逃げるという鬼ごっこを町内全域にわたって繰り返していた。

 

 普段は学校で大人しい振る舞いをみせていた希はその性格からは想像もできないほど脚が速く、スポーツが得意で体育の成績が5段階中の5である日向すら追い付けないのである。

 しかも、それで背中にはリュックサックを背負っているので尚更驚きである。

 

 (…………そうだ! あそこなら)

 

 逃げるあてを見つけた希は進路を急に転換して、再び走り出した。

 細い塀と塀の間の道を駆け抜けると急に視界が開けて、石畳の階段が希の前に現れた。

 その階段を少し登った先には朱色の柱が二本そびえ立ち、その丈夫は橋のように繋がっている。

 希が逃げ込まんとしている場所、それは神社だった。

 

 (アレは邪悪なもの……鳥居をくぐれば入ってはこれない。事情は神主さんに適当に説明すれば)

 

 希が鳥居を目指し石畳の階段に足を置いたその瞬間、背後から凄まじい悪寒が彼女の背中を貫いた。

 その嫌な予感を連れてきたのは他でもない、

 

 「へぇ~、こんなとこに神社───って、アッ! いた!!」

 

 (しまった!!)

 

 慌てて階段をかけ上がる希の後を日向も追いかける。

 大して段数もないので10秒かそこらあれば鳥居をくぐれるのだが、恐怖が希の時間感覚を狂わせる。

 

 (まだなの!?)

 

 鳥居はまだ、遠い。

 

 (お願い! 早く!!)

 

 希の視界に朱色の割合が多くなる。

 

 (後、すこ───)

 

 「───しッ!?」

 

 鳥居の下、残り数段というところで希の足が止まる。

 日向が希に追いつき、彼女の腕を掴んだのだった。

 瞬間、希はびくん! 身体を震わせ日向から一段距離を取る。

 前につき出された腕の震える手にはいつの間にか防犯ブザーが握られていた。

 

 「はぁ……はぁ……足、速すぎ」

 

 肩で息をする日向に希は叫ぶ。

 

 「来ないでって言ったでしょ!? なんで、付いてくるの!! こ、これ以上近づくと……な、鳴らすよ!」

 

 そう言って希は防犯ブザーの紐に手をかける。

 

 「わ、分かった! 東條さん、落ち着いて。近づかない、近づかない。でも、オレは東條さんが心配で───」

 「別に私は心配してほしいなんて言ってない!! いいから帰ってッ!!!」

 

 (あぁ……、私はまたこうやって)

 

 「突然逃げられたりしたら誰だって心配するよ。それになんか、東條さん具合悪そうだったし」

 「元々だって言ったでしょ! それに、逃げたんじゃない! 忘れ物を取りに帰ろうとしただけ」

 

 (誰かを拒絶する……本当は仲良くなりたい、友達になりたい! なのに、私にしか見えないもののせいで───)

 

 「忘れ物を取りに帰るだけで神社なんかに行くなんておかしいじゃん?」

 「それは、玖音くんが追いかけてくるからでしょ!? 変な言いがかりは止めてよ!!」

 「さっきからなにカリカリしてんの? オレ、なんかした?」

 

 (ううん! 違うの!! 玖音くんはなにもしてない!! 悪いのは……悪いのは…………悪い……のは)

 

 「とにかく帰って!!! なんにも分かんないくせに関わってこないで!! はっきり言って、そういうの───」

 

 (ダメ! その先を言っちゃダメ!!)

 

 希の心の嘆願もむなしく、頭の命令を無視して口がその先の言葉を───言ってはいけない言葉を発した。

 

 「目障りなのよぉ!!!」

 

 希の渾身の叫びは細い道を伝って木霊のように悲しく響いた。

 その叫びに日向は少し驚いた顔をした後、下を向いた。

 

 (言っちゃった…………もう、終わりだ。せっかく心配してくれたのに。玖音くん、ゴメンね……)

 

 

 「───ふざけるなよ……」

 

 

 うつ向いていた日向から発された声は希が今までに聞いたことがないほど低く、『怒り』という感情がひしひしと肌で感じられるものだった。

 

 「なんにも分かんないだと? あぁ! 分かんないよ!! そんなことされたら!!!」

 「ッ!!」

 

 日向の怒声に希の身体は驚きのあまり固まる。

 普段、からかわれてもにこやかに笑っている日向からは想像もできない、恐い顔だった。

 

 「なんで、東條さんはそんなに他人とふれ合うのを拒むの!? 誰だって! お互いが分かんなくても、怖くても、不安でも、それでも歩み寄っていくものなんじゃないの!? それを、なんで! 意味が分からない!!」

 「知ったようなこと言わないで!! 玖音くんに何が、私の何が分かるの!? クラスの人気者でみんなから慕われてる、教室の隅で変な子だって思われてる私とは正反対のあなたに!! 歩み寄って? それは、玖音くんがなんにも見えてないからでしょ!? 私だってそんなことができたらこんなとこで、こんなことしてないッ!!」

 

 「───!? ……プッ! クスクス」

 

 すると、日向が怒りの表情を顔から消えたかと思ったら、突然、クスクスと笑いだした。

 突然のことに希の動きが止まる。

 が、しかし、突如として笑い者にされた希は一気に怒りを日向にぶつける。

 

 「なにが可笑しいの!? 私が変な子だって思われてるのがそんなに楽しいの!? 最っ低だよ!!」

 「違うよ、そうじゃない」

 「??」

 

 希の顔に戸惑いが生じる。

 バカにされてないのだとしたらその笑いはなんであるのか、希には皆目検討もつかない。

 

 「───やっと、見つけた」

 「え?」

 

 希は呆けた顔で日向を見つめる。

 

 「東條さんとオレは同じだ。同じ世界を見てる」

 「それって───」

 

 すると、日向は自身の後方に向かって親指を指し、

 

 「東條さん、コレ、コイツ見えてるでしよ?」

 

 と、嬉しそうに微笑んだ。

  




 停止からかなりの時間が経ってしまいました。
 まずは身勝手な更新の停止をお詫び申し上げます。
 申し訳ありませんでした。

 さて、本編を書き終えた感想なのですが……疲れたね、うん。
 いや~、疲れた疲れた。
 なにが疲れたってシリアスシーンが大変でした。
 正直、このタグ設定にしたことを後悔するほどです。
 物語の展開的にはようやく本編突入の『ほ』の字ってところでしょうか、これから心を閉ざした希が玖音 日向と出会いどのようになっていくか楽しみです。
 正直、まだ「snow halation関係ねーじゃん!」とは思われても仕方ないのですが、一応言い訳をすると、この話の季節は冬です。
 一応、それが今のところの関係性ってやつです……。
 もちろんこれからグイグイ関係性はでてきますよ。
 さて、次回はいつになるかまだ分かりませんが、なるだけ早く書きます!!
 どうか、応援よろしくお願いします!
 
 それでは、ご拝読ありがとうございました!
 また、次回をお楽しみに!!

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