東方携帯獣 ~ポケット・モンスター |幻。夢。|~ 作:キョウキ
小説二回も落ちて消えたあああああ!
ので三度目の正直です。
咲夜「・・・ッ」
自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。
それだけに、辺りは静まり返っていた。
目の前のこの存在・・・この神に恐れをなしたかのように。
水辺の波。風。それに揺れる草木すらも。
一切の音を立てていなかった。
私は、何とか立ち上がろうとしていたが、瞳にはうっすらと涙を浮かべていた。
心の内にくすぶる恐怖心と、その神が発する圧倒的「プレッシャー」をこの身に受けながら
何とか腰を浮かせ、膝に力を入れ、その力を大地へと流すように立ち上がる。
呼吸。瞬き。指の動きにすら緊張感がまとわりつく。
まるで体の内から食い破るかの如く湧き上がる『熱』。
その熱によって生じる冷汗。それを撫でるかのように掠める風の『冷気』。
膝は小刻みに笑い、全身の神経に力と意識が入り込んでくる。
今、私はいったいどのような表情をしていたかは分からない。
でも、決して無表情ではないという確信が、脳ではなく表情筋の動きから推測できた。
「・・・・・」
その神は、私のそんな様子を見ても、何かをしてきたり、何かを語り掛けることはなかった。
ただ、静かに見つめていた。
何を思って見ていたのかは分からない。
ただ、その眼に敵意はなく。しかし、そこには好意もなかった。
咲夜「・・・・」カタカタ...
全身が震える中、私もその神を見つめた。
そして視線が合う。震えがピークに達する。しかし目は逸らさない。
永遠とも思われるような、須臾とも感じ取れるような
途端。
ポチャン...。
咲夜「・・・・・?」
何かが水に投げ入れられるような音がした。
しかし、私は目の前の存在に気を取られ、その音がした方を向けないでいた。
だが、私は向けないでいたがこの神は反応を示した。
私の方から、水辺。湖の方へと顔を逸らした。
私も気になり、湖の方へとゆっくり顔を向ける。
その湖には、一切雲の存在しない夜空に浮かぶ、白い月が映っているだけだったが。
何かがおかしい。
その映った月の近くに、小さな波紋が出来ていた。
しかしその波紋は周りに広がらず、その大きさのまま静かに揺れていた。
咲夜「・・・・・」
私は、その波紋に目が惹かれた。恐らくこの神も同じだろう。
そう思っていた次の瞬間にはもう遅かったのかもしれない。
波紋は急に巨大となり、月影も飲み込むほどの巨大な渦となった。
その渦の回転は凄まじく、竜巻や、渦潮とは比較にならない『渦』。
その渦は、だんだんと水面の下へ下へと渦を巻き。
そこに奇妙な色の穴が開く。
その穴から急に、突風が吹き込んできた。
咲夜「うっ!?、なっ、あっ!?」
とっさに懐中時計を取り出し、時を止めようとするが。
咲夜(!、そうだった・・・‼)
今は何故か時が止められないことを思い出し、悲嘆にくれる。
「グギュグバァッ!」
その鳴き声に私は驚き、その方角へと首を向けると。
さっきの神も穴へと引きこもうとする風に纏われていたらしい。
そしてついには、体重の差からか先にその穴へと引きずり込まれた私は
落ちていく最中。完全に死を覚悟してお嬢様に感謝の言葉を心の中で捧げていた。
▽
咲夜「・・・う、ううん・・・」
・・・どうやら、私は生きているらしかった。
それは、起き上がるときの目の痛みと頭痛。背中の痛みで理解できた。
咲夜「・・・あれ、ここは・・・・・!?」
私は、夢でも見ているのかと思った。
もしくは、気が狂ったのかと思った。
今、目の前にある景色を、現実と信じたくなかった。
目前には、湖があり、そこに滝が流れ落ちて・・・いや。
滝が湖から『逆さまに流れ落ちていた』。
見れば、その湖の上に紅魔館らしき建物が・・・2つ?
二つの紅魔館が上下逆さまに、合体するかのように重なり合って建っていた。
私は、これは夢だと信じた。
しかし、今触れている地面の感触。鼓動。呼吸。恐ろしいと思う感覚。
それら全ては完全に現実のものであり、それはこの世界が夢ではないと証明する
確かな「証拠」であり「方程式」であった。
私は、もはや何も感じてはいなかった。
脳が可笑しくなったのか、それとも心が崩壊したのか。
恐怖感は薄れ、逆に体の内から湧き上がる興奮が体を満たした。
私は立ちあがり、周りを見てみた。
そしてすぐに、見なければよかったと後悔を感じた。
先が見えない、濃い群青色の空。
普通なら、このような空であるならば辺りは真っ暗で何も見えないことだろう。
しかし、辺りは強力な光で照らされたかのようによく見えた。
遠くの物も、小さく見えるが霞むことはなく。
目を凝らせば細部までよく見えた。
そこで見たものは、想像を・・・常識を崩すものであった。
逆さまに流れ落ちる川。真横に生える樹木。浮かぶ孤島。
無数に並ぶ木造家屋はそれぞれが重なり合い、紅魔館のように合体していた。
そして、気が付いた。
自分が立っているこの地面も、宙に浮いているということに。
私は、その下の様子を端から見てみた。
そこに広がっていたのは「虚空」。
そうとしか言えない、空と同じ色をした空間だった。
均一で、一切のムラがない紺色の空。
その景色に恐れおののいた私は、後ずさりをして、何かが背中に当たった。
それは、巨大な壁だった。
飛んで越えようと思っても、何故か飛べはしなかった。
私は、いつの間にか泣いていた。
そして、表情だけは笑っていた。
咲夜「えっ・・・どうしてこんな・・・なんで私、泣いて・・・」
その瞬間。
目の前を何か黒い影が高速で横切った。
その影によって生じた突風で、私の体が浮き飛ばされる。
そして私は。
無事に足を地面へとつけた。
咲夜「・・・え・・・」
その私が足をつけた地面・・・もとい足場は。
さっき私が壁と認識をしていた物だった。
さっきまでいた足場が、今度は壁となって私の前にそびえたっていた。
私はついに、その場にうずくまり、泣いた。
どうしようもない状況下。
救いはなく、ただ呆然とするしかない時間。
私は泣いた。
声は立てず、静かに。
そうして何分・・・何時間が経った頃だろう。
ドカアァン‼
突如として爆音が鼓膜を震わせた。
そのことに驚き、顔を上げるとさらに。
ドドオォン・・・。
今度は地鳴りが辺りに響き、私は本格的にその音源を探した。
そしてすぐに見つけた。その音源は、さっきの神であった。
しかし様子がおかしい。
何かと戦っているようだ。
「・・・ビシャーンッ‼」
その巨大な黒い何かはその神に巻き付いている。
そのまま近くの浮遊島に神を叩きつけ、口から青白い炎の球を発して攻撃をした。
ドカアァン‼
さっきの爆音の正体はこれらしい。
すると、神は起き上がり、翼も使わずに空へと浮き上がって逃走する。
黒い何かもそれを追いかける。
私は、それをただ見ていた。
何も感じず、その時を過ごしていた。
途端。
???「おや?お嬢さん?」
突然背後から声をかけられた。
この世界に来て以来、初めて聞く人の声。
私は、警戒もしないですぐに振り返った。
???「なぜこの世界に・・・いや、どうやって来たんだ?」
咲夜「・・・え、あ。いや・・・」
私は思わずたじろいで、まともに答えられなかった。
その様子から察してくれたのか、その人物は。
???「う~むむ・・・もしやギラティナがディアルガを引き込むときに巻き込まれたのか?」
咲夜「・・・・・」
私は、何も言えず、その人物。その男の姿を見ていた。
赤くボロボロになったTシャツをラフに着こなし、焦げ茶色の半ズボンを履いている。
髪はいわゆる茶髪で、髭ともみあげが一体化している。
優しく温和そうな人物だった。
???「さて・・・君がここにいる原因は多分それだろうが、ここじゃ危険だろう。
ここよりは安全な場所を知っている。ついてくるといい」
そう言って、ゆっくりとした足取りで歩き始めた。
咲夜「あっ・・・待っ(ゴオオオオオオ
その私の声は、突如鳴ってきた轟音にかき消された。
その轟音は、ここより遠いところで発生したらしく、振り返って確認する時間はあった。
先程の神が、黒い何かに向けて隕石を落としていた。
:りゅうせいぐん:
その内の一発。一発の流星がこちらに向かってくる音だった。
???「タテトプス!『ラスターカノン』!」
さっき声をかけてきた人物の声。
見ればいつの間にか奇怪な生物・・・ポケモンが傍らに控えていた。
そのポケモンは、鉄色の光線を放ち、流星に当てる。
すると、流星は少しづつ削られ、最後には「ボムッ」と塵になって消えた。
???「ふー、危なかったなー。怪我はしていないか?」
咲夜「あ・・・はい。あの、助けてくれてありがとうございます」
???「うん。怪我が無くて何よりだな。
あ、あと。一応名前だけは教えてくれ」
咲夜「あ、えーと。私は十六夜 咲夜 と言います」
???「ほお、綺麗な名前だなぁ。そんじゃ、私も」コホン
ムゲン「私の名は「ムゲン・グレイスランド」!ポケモンの博士だ!
さあ!ここは少しばかり危険だ。とりあえず、近くの安全な場所へと行こう!
ついてきなさい!」
咲夜「あっ・・・はい」
私は、この異世界の中で出会った「ムゲン博士」について行くことにした。
すぐ背後では、神と化け物が激闘を繰り広げている。
迷う余地も、選択の余裕も無かった。
▼
同時刻。守谷神社。
空は夜だが晴れていた。
一切の雲が無く、静かに空に鎮座する月は、白い光を地上へと注いでいた。
その神社に、その像はあった。
その像は約数日前。
天狗たちの戦闘により敗北し、洩矢の巫女に封じられていた巨神・・・ポケモンだった。
そのポケモンの前に、その三頭はいた。
一頭は岩のようにごつごつしており。
もう一頭は丸みを帯びた金属質で。
もう一頭は多角形の氷山だった。
その三頭が、像の前に立つ。
それだけで、巨像に力が戻ったかのようだった。
洩矢の鉄の輪によって縛られた指が、腕が動く。
周りの御柱が傾き、倒れる。
封印は破られた。
「ズッ・・・!ズッ・・・!」
巨神の唸りが、山を震わせた。
To be continued・・・