やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
八幡が動きます。
そして各々の心情が吐露されます。
現在、材木座邸自室。
時刻は20時だ。
材木座との打ち合わせは30分程で終わった。軽く練習もしてみたが、多分、問題は無いだろう。敢えて問題を挙げるとすれば、材木座が緊張し過ぎて失敗しないかぐらいだ。前回の失敗を経験したことで、多少の慣れはあるだろうから然程気にしなくても大丈夫だろう。
さて、ここからが仕込みの時間だ。
この仕込みが今後を左右すると言っても過言じゃない。俺も眠れない時間を無為に過ごしていた訳じゃないからな。それじゃ、早速我が家へと帰りますか。
俺は材木座に出掛ける旨を伝えると、自宅へと飛んでいった。
愛しの我が妹、小町の待つ自宅に着いた。この時間帯なら、小町は部屋で勉強中のはず。好都合だ。
あれ?部屋にいない……だと?
まさかのお風呂イベントかと思い、一応風呂場を覗いてみたがいなかった。ちなみに妹は異性にカウントしないので、ドキドキも何もない。無論、リビングにもいない。どこに行ったのか思案しているうちに思い出した。俺は急ぎ、自分の部屋へと向かう。
そこに小町はいた。
また俺の写メを見ながらベッドで寝転んでいた。ふと、先日の小町の顔がフラッシュバックする。苦々しい想いを噛み締める。感傷に流されてはいけない。俺は机の上にあったノートを開く。白紙のページまで、パラパラと音をたてるように。その音に気付いた小町がこちらに気付く。よし、ここまでは計画どおりだ。小町は不思議な物でも見るような顔をして、恐る恐るこちらに近づいてきた。
「え、何?何なのコレ?」
周りには油性ペンしかなかったが、仕方なしにペンでノートに書くイメージを強くする。小町は宙に浮かぶペンを見て、ビクッと驚きの表情を見せていた。驚かせてゴメンな?あんまり長くはもたないから、しっかりと見てくれ。俺はノートにペンを走らせ、メッセージを伝える。まだけっこうキツいな、漢字の字数が制限される。集中が切れる…!
「明日、放課後、奉仕部?明日の放課後に、奉仕部に行けってことかな…?何があるの?…もしかして、おにーちゃんなの?」
すまない小町。何も応えてやることが出来ない。時間をかければ少しずつ伝えられるかもしれない。けれど、もうあんまり時間は残ってないんだ。こんな不思議体験信じるほうがどうかしてる。あいつらには、お前という理解者が必要になってくる。互いに個々の体験だけでは信じられないかもしれない。お前もあいつらも。だが、経験を共有出来たならどうだ?格段に信憑性は増すだろう。
そろそろ時間も無いから、お兄ちゃんもう行くよ。じゃあな、また明日。おやすみ、小町。
そう小町に告げると、俺は次の家に向かって飛んでいく。次の予定は由比ヶ浜の家だ。あの時の記憶がふと甦り、少し申し訳ない気持ちになった。
「ねぇー、カーくん。さっきのって、絶対におにーちゃんだよねー?」
我が比企谷家の愛描、カマクラこと、カーくんを撫でながら話しかける。カーくんはニャアとしか応えてくれない。スッゴい不思議な体験だったけど、おにーちゃんをすごく感じることができた。この前の朝もそうだ。小町はおにーちゃんの部屋で目覚めた。その時、おにーちゃんの声が聴こえた。あれは気のせいかな?とか思ったけど、今日の出来事で確信した。おにーちゃんは、小町が心配で会いに来てくれたんだと思った。捻デレのおにーちゃんは、きっと雪乃さんや結衣さんにも会いに行ってるに違いない。だって、小町のおにーちゃんは、世界で一番優しいおにーちゃんだもん。久しぶりにワクワクした気持ちになった。明日は奉仕部に行こう。おにーちゃんに会える気がするから。
俺は由比ヶ浜の部屋に来ている。
現在は独りぼっちだ。ボッチとも言う。先程、由比ヶ浜を探しに行った際、壁をすり抜けて移動したのが間違いだった。……入浴中だった。決してわざとではない、神に誓える!信じてないけど。しかしデカかったな…いやいや違う、彼女に対してこんな不誠実な事は出来るはずもなく、俺は早々に由比ヶ浜の部屋へと移動したのが、ついさっきの話だ。消えてなかったら顔を合わせづらい。見えてたら通報されるけど。この秘密は墓まで持ってくとしよう。
そうこうしているうちに、由比ヶ浜が戻ってきた。ドライヤーで髪を乾かし始める。風呂上がりは薄着なのは暑いからだろうか。その姿は妙に艶かしく、有り体に言えば…なんつーか、エロい。髪をドライヤーでクシクシ乾かす度に、夕張ならぬ由比ヶ浜メロンが揺れる。俺の中の天使と悪魔が語りかけてくる。このままでは集中出来ない。俺は一度部屋を出て、部屋の前で時間を少し潰した。中に入ると、由比ヶ浜は携帯を触りながらゴロゴロしていた。
「あ、ゆきのんからメールだ!どれどれ~?」
これは好機とばかりに、机に視線を移して何か書くものを探す。が、何もない。オイ!お前ホントに高校生か?一応うちは進学校だぞ!本当に将来が心配になる。アホヶ浜さんにはどうしてくれようか…。
代わりになる物を物色する。
……あるじゃねえか。頼むから邪魔してくれるなよ?
「え…?今日の御見舞いで何かあったの?ゆきのん……なんて返せばいいか、わかんないよ……」
俺は由比ヶ浜の携帯を操作する。ボタンを押すイメージを強く思い描く。
「あれ、あれれ?勝手に文字が出てくる。壊れたのかな?電源切れば直るかなー?」
すかさず、『消すな』と打つ。
「え!?マジで、何、何なの?あ、もしかしてあの時の幽霊さん??」
「あす、ほうしぶ、ことば、しんじろ?何のことだろ?あ、勝手に送信になった!やば、ゆきのん、あたしじゃないよ~!」
宛先が好都合だろ?だから、代わりに送っておいてやったぞ。紙もペンもなかったからな。勝手に携帯を使わせてもらったぞ。それじゃあ、俺は次の目的地に向かわせてもらうわ。また明日な、由比ヶ浜。
今日は放課後に嫌な事があった。中二が入ってきて、ヒッキーのことをネタにして喋り始めた。あたしはヒッキーをバカにされてるような気がした。それでも中二はヒッキーと仲が良いから、あたし達を元気づけようとしてくれてるのかな?って思った。だから、空気を読みながら話してみたけどダメたった。そのあと、ゆきのんが中二の頬を叩いていた。ヒッキーが居ないだけで、こんなにも皆バラバラになる。あたしはヒッキーが居ないこの空間が、とても悲しいものに思えて泣いてしまった。ヒッキーに会いたい。そう思っていたら、ゆきのんがお見舞いに行こうと言ってくれた。あたしと同じことを思ってたんだ。そう思うと嬉しくもあり、胸がチクリとも痛んだ。
ゆきのんとヒッキーのお見舞いに行った。あたしはヒッキーの寝顔を見ている。眼を瞑っていると、本当にイケメンだね。いつもヒッキーが言ってる、自分は眼さえ除けば、整った顔立ちをしていると自慢気に話すことを思い出した。あたしがヒッキーの顔を眺めている、ゆきのんが何かあったのか、難しい顔をしていた。やっぱり、ゆきのんもヒッキーの事を……
家に帰ってきたあたしは、ママのご飯を食べて、お風呂に入った。あたしはお風呂が好きだ。嫌な事があっても、お風呂に入ればスッキリして忘れちゃうから。けど、その日のお風呂は違った。髪を洗っている時だ。誰かの目線を感じた…気配を感じた…まるでホラー映画のワンシーンみたいに。小学生じゃないんだから怖がっちゃダメと、気のせいだと考えてたら、視線も気配も無くなってた。やっぱ、気のせいなんじゃん。
風呂上がりは髪を乾かすのが定番だけど、あれじつは結構暑かったりするんだよね。薄着でいるとまたも視線と気配を感じた。なんか自意識課長?ってやつなのかな?しばらくすると、また視線と気配は消えていたけど。
ベッドでゴロゴロしながらも、携帯のチェックを怠らない。ゆきのんからメールがきてるし!普段はあまりゆきのんからメールをくれる事はあんまりないから、少し嬉しかったんだけど、少し不安でもあった。
……やっぱりだ。あたしが返信に困っていると、勝手に携帯が動き出した。壊れたゃったのかな?もしかして噂に聞いたウィルスかも?携帯の電源を落とそうとしたら、『消すな』と打ち込まれた。あれ?これってもしかして…こないだの幽霊さん?
そう思っていると、メール本文に『あす、ほうしぶ、ことば、しんじろ』と書かれていた。意味を考えていると、メッセージ送信中の画面になった。あ!宛先がゆきのんのままだよ!あたしじゃないのに~!携帯を見ながらアワアワしてると、ゆきのんから返信がきた。
『どういう意味かしら?』
なんて返そう……。そのあと、明日ちゃんと説明するね、と先延ばしにするメールを送って寝てしまった。
人の内面や心理描写は難しいですね。
特に由比ヶ浜さんのは。アホっぽさと
幼さ、純粋さ、表現しきれなかった…。