やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
八幡に訪れた悲劇は彼と周りを
どのように変えていくのか?
そして、彼は何を見て、何を知るのか?
意識が覚醒する。俺は見慣れた病院のベッドにいるようだ。どうやらまたもや助かってしまったらしい。点滴も、脚のギプスも懐かしく感じてしまう。横で波形を刻む心電図も、口に付けられた呼吸器も懐かしい。いや、後半は初体験なんだけどね。
不思議と体に痛みは無く、どうやら麻酔が効いているようで、手足に付けられたギプスも、口に付けられた呼吸器も、全くといっていい程に付けている感覚が無いのだから。
試しに手を、グッパッとしてみた。うん、体はこれで良し。あれ?ギプス着けているのになんで動けるんだ?
恐る恐る目を動かしてみると、俺の体がダブって見えた。体はベッドに寝ているのに動く。上半身だけ起こしてみると、良く解った。
これ、幽体離脱ってやつか?
そのまま完全に起き上がって、寝ている俺を見下ろしてみた。なんともシュールな絵面だ。現在の状況を把握する為に、担当医師を探しに行くことにした。
ドアも壁も掴めなかったので、そのまますり抜けて移動した。スルーだけに。上手くないな、うん。
どうやら色んな管が繋がれた俺の体は、所謂、生命維持装置という物でなんとか生き永らえている状態らしい。医者同士の会話を聞いたので間違いないだろう。ちなみにカルテを読もうと思ったら、ドイツ語っぽくて読めなかったのは内緒だ。
自分の病室に戻る。そこで思考に耽ることにした。
せっかくの貴重な体験だから、何をしようかなー?銭湯でも覗きにいこうかなー?とか、お約束な展開を考えてワクワクしていたら、部屋の隅に飾られてある花と、御見舞いの品らしい物(フルーツ)と、寄せ書きみたいな色紙を見つけた。
生まれてこのかた、色紙に何かを書いた事も、書かれた事も無かったので感動を覚える。目頭が熱くなるのを我慢して色紙に書いてある言葉を読むことにした。結論から言うと、現実に引き戻された気分だった。
数名の生徒が書いたであろうそれは、内容こそありきたりな言葉だったが、ボッチの俺でも心を打たれる想いのこもった言葉だった。
『八幡よ!前世より続く我らが因縁、そう容易く断ち切れるものではないぞ!早く甦るがいい! 材木座義輝』
『ヒキタニくぅーん!入院とかマジぱねーっしょ!早く元気になって美人ナースさんとかいたら紹介オナシャス! 戸部翔』
コイツらの軽い言葉が、今はすごく懐かしいものに感じられて嬉しくなった。まぁなんだ、起きたら少しはアイツらと話してみるのも悪くないか。
『はろはろー。今の状態だと総受けしか出来ないから、早く元気になってねー。それと、あの時はありがとう。 海老名姫菜』
『アンタがいないと結衣が悲しむし!早く元気になれし。 三浦優美子』
海老名さんは相変わらずだな。頼むから総受けも攻めも勘弁してくれ。それと、感謝してくれてありがとう。感謝に感謝を返すってなんか変だけどな。
三浦まで書いてくれてるとは思わなかったな。さすがオカンだな。けど、ゴメンな。最後に由比ヶ浜を悲しませてしまった。
『早く元気になりなよ。けーちゃんもアンタと早く遊びたいってさ。 川崎沙希』
『早く元気になってね、八幡! 戸塚彩加』
川崎も意外と良い奴なんだよな。今度、けーちゃんと呼んでからかってやろう。
それとやっぱり戸塚は天使だった。だって天使じゃなきゃ寄せ書きしないだろ?戸塚可愛い。よってトツカワイイ。…心配かけて、すまん。
『比企谷、俺は勝ち逃げなんて許さない。早く元気になって戻って来てくれ。奉仕部の二人を不幸にさせる事は許さないぞ。 葉山隼人』
『あの二人を救った事を私は誉めてやりたい。比企谷、男だな。だが前も言ったが、自分を傷つけてもいいということはイコールではないのだよ。目が覚めたらあの二人に会ってやってほしい。 平塚静』
葉山、お前はトップカーストのイケメンリア充だろ?なぜ俺をそこまで意識するんだ?それに奉仕部の二人に関しては、お前に言われるまでもない。やはり俺はお前とは友達になれないな。
我が恩師、平塚先生。いつも俺みたいな問題児を気にかけてくれてありがとうございます。目が覚めたらあの二人に会いに行きます。伝えたい事があるから。
全ての寄せ書きを読んで、皆の言葉が素直に嬉しかった。生きていて良かったと思う。人生で初めての経験かもしれない。早く怪我を完治させて皆に御礼を言いたい。浮かれ気分だった俺は、普段ならすぐに気付くはずだった違和感を、全く感じ取れていなかった。この時までは。そう、俺は気づいてしまったのだ。
雪ノ下と由比ヶ浜の名前がどこにも無かった………何故だ?
今までの人生で、一番嫌な予感がした。
奉仕部の二人に何があったのか?
八幡が感じた嫌な予感はあたるのか?
次回も出来るだけ更新急ぎます。