やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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いよいよ佳境となります。
今作品ももうすぐ終わりとなります。

望んでいた展開にならないかも。
ですが、最後までどうぞお付きあい下さいませ。





第23話 切り札とその破壊者

 

 

 

現在は千葉村。

時刻はもう夜だし大体19時くらいだろ。

 

 

さっきまで千葉市内にある、エンジェルラダーにいた。あそこで川崎が働いてたんだよな。ちなみにもう1つのエンジェルなんちゃらにも長居してたのは内緒だ。メイド姿のアイツらを思い出し、ポワポワしてたとは誰にも言えない。

 

 

ここで留美に会ったんだよな。あの時は本当に綱渡りというか、危ない賭けだったと思う。下手をすれば退学処分もあったかもしれない。それに取り巻く環境が変わったからといって、万事解決とはいかない。それはクリスマスイベントの時に再会した、留美の様子を見れば明らかだろう。少しは変わったのかもしれないけどな。あとはアイツ次第だろう。ゴーストになった今なら、材木座のじーちゃんみたいに見守る事も出来るが、俺にはタイムリミットがあるからな。

俺はフワリと飛ぶと近くの川へと移動した。あの時、女性陣が水遊びしていた場所だ。回想シーンを思い出していると、乳トン先生と万乳引力の法則が思い出された。日本から異世界に召喚された使い魔の気持ちが今なら解るぜ。あと雪ノ下には少しの同情を禁じ得ない気持ちになった。まだ諦める時間じゃない!

 

 

さて、そろそろ次の場所へ行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か失礼な事を考えられてる気がするわ。」

 

 

移動中の車内にて、不意に苛立ちを感じる。私達はクリスマスイベントを行った会場へと向かっている。所謂、地域のコミュニティセンターだ。ここで彼を捕らえられなければ、次はあの場所になるだろう。私は平塚先生に『お願い』をメールしておいた。あの人ならば、きっと上手く動いてくれるだろう。車内は沈黙が支配していたが、ふと材津くん?が、何か変化が起きたことを告げる。

 

 

「フム…やはり部長殿の読み通り、あやつは此方へ向かっているぞ。」

 

 

「ヒッキー…やっぱりなんだね。」

 

「えぇ、そうよ。由比ヶ浜さん。」

 

「御二人共、おにーちゃんの行動に何か規則性でもあるんですか?」

 

 

 

比企谷くんの行動パターンについての推測を伝えた。奉仕部での思い出の場所を巡っているのかもしれないと。私だけの記憶では不完全かもしれない。けれど、由比ヶ浜さんも小町さんもいる。この二人にもきっとあるのだろう。私が知らない比企谷くんとの思い出の場所があるはずだ。

 

 

「じゃあ次は花火大会の会場かも?夏休みだったし。」

 

「あ~、ありますね~。けど花火の会場に行くには、時間的に間に合わないですねー。」

 

「そうだね。順番に回ると文化祭も体育祭も選挙もあるし。車でも追い付かないかも。だからゆきのんはクリスマスの会場に向かってるんだよね?」

 

「そうよ、由比ヶ浜さん。彼の移動速度を考えたら、あそこで待ち伏せするほうが早いわ。それに追いかけるのはもう懲りたもの。」

 

「何を懲りたの?ゆきのん?」

 

 

 

「フフッ、何でもないわ。もう済んだ事だもの。」

 

 

 

 

以前の私は、姉の後ろ姿を常に追いかけていた。何でも出来る姉さんに憧れていた。その為にたくさん努力した。けれど、決して追いつく事は無かったので。そんな日々が続いていたし、これからも続くのかと思っていた。あれは文実で活動している最中のことだ。ふとした弾みか気まぐれか、私は姉のようになりたいと言った事がある。そんな私に対して彼は言ってくれた。お前はお前のままでいいと。雪ノ下雪乃を肯定してくれた、それでいいと。だから私は、あれ以来、姉の後ろ姿を追いかけるのは止めた。

 

 

 

…もうすぐ会場に着くだろうか?

今は渋滞が出来ているらしく、車はゆっくりとしか進まない。その間にも比企谷くんは移動していたようだ。このままではもしかしたら間に合わないかもしれない。私は都築に確認する。

 

 

 

「あと数分のところまでは進んでいますが、目的地までなら走って行かれたほうが早いかと思います。皆様はお急ぎなのでしょう?」

 

 

 

都築からの進言を受けて、私達は車から降りて会場に向かって走っていった。道中で材津くんが叫んだ。

 

「八幡はもう会場に着いておる!皆、急ぐのだ!」

 

体力の無い私を置いて先に行くように皆に告げた。肩で息をしながらも必死で会場に駆けつけた私は、会場で立ち尽くす皆を見つけた。嫌な予感を抑え、息を整えて声をかける。

 

 

「比企谷くんは?」

 

 

「あやつの後ろ姿は見えた。だが間に合わなかった!もうここにはおらんのだ…。」

 

 

 

 

やはり嫌な予感は当たったようだ。彼はすでに居なかった。タッチの差で行き違ってしまったのだ。そのダメージは大きい。このまま追うにしても、皆で追いかけるにも限界がある。今日は散々走ってきたのだ。途中から車での移動になったものの、体力はすぐには回復しない。悲鳴をあげる身体に鞭を打って、私は一人でも追いかけるつもりで車へと向かった。その後を皆が続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よう、俺。久しぶりだな。元気にしてたか?』

 

 

俺はベッドに眠る自分に向かって挨拶をする。スヤスヤと寝息をたてて寝ている。良い御身分だなと思う。寝てるのは俺だけど。相変わらず色々なチューブが取り付けられている身体を見て、本当にヤバい状態なんだなと思った。所々包帯が巻かれている。痛々しい姿だ。こんな姿を見せられたら、あの二人は罪悪感や、自責の念に押し潰されるのは容易に想像できた。俺も自分のせいで、雪ノ下や由比ヶ浜がこの状態になったらと思うと、握る拳が強くなっていた。

 

 

 

突如、破裂音や破壊音がして、ハッ!と現実に戻された。俺のベッドの周りにあった点滴が破裂し、花瓶は割れて、機械類はショートしたのかプスプスと煙を上げていた。

そういえば材木座が言ってたな。負の感情の想いを強くすると、周りに悪影響を及ぼす現象が起きるって。さっきの俺は、自分と二人の立ち位置を入れ替えて考えてた。その時はすごく複雑な感情に呑みこまれた。そして深い悲しみと絶望が襲ってきたのを覚えている。やはり負の感情は危険だなと思う。しかし…これは都合がいい。このまま退場させてもらおうか。切り札を発動させる事にした。

 

 

常駐の医師や看護士が、この異常事態に駆け付けて来るだろう。だがそうはさせない。

俺はこの前の由比ヶ浜宅でやった要領で、辺り一帯に金縛りが起きるように結界を張る。これもまた想いの一種だ。周りの病室にまで害を及ぼさないようにイメージする。

病室のドアの向こう側から声が聴こえる。どうやらドアに近寄った者は動けなくなるみたいだな。

 

 

 

 

今更だが、切り札とは自害に他ならない。俺の大切な者を縛り付けてるのは、他ならない俺自身だからだ。だが、いくら俺を殺すといっても抵抗はある。だから簡単な方法を採った。生命維持を出来なくすればいい。幸いにも痛みは感じないのだから、俺は恵まれてるのかもしれない。

しかし、一つだけ問題があった。

それは誰かに介入される事だ。ここは病院だから勿論、24時間体制で医師や看護士がいる。医療機器に異常が見られたらすぐさま誰かが駆け付けて来るだろう。だがその問題もクリアされる。先日の由比ヶ浜宅での一件で身に付けた金縛りだ。原理は百識の材木座老師(自称)から聞いている。一度、材木座で試してみた事があった。口をパクパクさせて面白かったが、さすがにやりすぎると息が出来なくなったりするらしい。あとですっごい怒られたのは記憶に新しい。まぁこの記憶も、もうすぐ無くなるんだがな。

 

 

 

 

『サヨナラだ。皆、今までありがとうな。雪ノ下、由比ヶ浜、小町、俺に縛られずに幸せになってくれ。』

 

 

 

 

心電図は既に故障しているのだろう。ピコンピコン、ピーっていう展開を望んでいたのだが、それも叶いそうにないな。俺が死んだのを見届けたら、あとは消えるだけだ。

 

 

 

その時、病室の外から聞き覚えのある声が、咆哮となって響き渡り、パリーンという音の後に、ドアを蹴破って入ってくる人がいた。

 

 

 

 

「ウオォォォォォッ!この程度の金縛りなぞッ!!比ィ企谷ァァァァッ!!!君を死なせん!死なせんぞぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

俺の最大の恩師、

平塚静その人だった。

 

 

 

 

 




次回、最終話。
予定です。


それでわ、また。


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