やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。   作:世間で言うジョージさん

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前回、最終話と言ったって?ありゃ嘘だ!
本当は書く内容が収まらなかっただけ。

すみません♪
まだもう少し続きます!





第24話 ゴーストの依頼

 

 

 

現在は病院だ。

時刻は20時前か。

 

私は教師だ。この仕事は好きだし、それなりの矜持も持っている。陽乃という例外もいるが、大抵の教え子は守ってきたし、救ってきた。その自信はある。だが、順風満帆と思われた教師生活の中で最大の惨事が起きた。教え子が交通事故に遭ったのだ。目の前の者ならいくらでも守ろう。幾らこの身を盾にしてでも守ろう。しかし、目の前で起きなかった事案にはどうする事も出来ない。私は神ではないんだ。言い訳なら幾らでも出来るだろう。しかし、私はそれでも助けたかった。

 

その生徒は、性格が捻くれていた。社会不適合者の烙印を、マイナンバーに登録しても問題ない程だ。過去の体験の中で彼の心は閉塞していき、今の形を作ったのだろうと、容易に想像できた。そんな不器用で優しい教え子の心を救ってやりたかった。だから彼の心を救うために、同じように救ってやりたい生徒を接触させる事で、互いに欠けたモノを埋める事が出来ると踏んだのだ。彼らは互いに不器用で間違えながらも、改善の兆しを見せていった。そんな矢先の事故だったのだ。

 

 

彼が入院してからというもの、残された二人は以前のような顔を見せなくなった。日々、暗く沈んでいくだけ。何とかしてやりたいと思うものの、無力な自分を恨めしく思っていた。

そんな折に、雪ノ下から『お願い』を受けたのだ。私は自分が頼られた嬉しさと、私に教え子を救う機会が訪れた嬉しさを感じた。教師、冥利に尽きるとはこのことだ。

 

 

雪ノ下からきたメールにはこう書かれていた。

『病院に行き、比企谷くんの側に居て下さい。そこで何か異変が起きるかもしません。それがどんなに異常な事態でも冷静に対処して下さい。お願いします。』

あの雪ノ下が何の確証も無しにこのような事を言うはずがないだろう。私は学校を出ると、すぐに愛車で病院へと向かった。

病院に着くと、比企谷の病室の前にあるベンチに腰をかけて待った。この時間帯は、親族以外は入室が出来ないからだ。何か異変が起きたら…という一文を思い出す。異変とは何だ?どんな異常な事態が起きるというのだろうか?そんな事を考えていた時に異変は起きた。病室の中から何かが割れる音や、機械がショートするような音が聴こえたのだ。すぐにナースステーションに看護士を呼びに行くと、看護士は医師を呼び出して、二人は病室へと向かった。私には出来る事がないなと思い、暫し立ち尽くしていた。「何か異変が」という言葉を思い出す。一抹の不安に駆られ、急いで後を付いていく事にした。

 

 

 

病室前に来た私の眼前で、異様な光景が映った。病室の前で、医師と看護士が立ち止まっていた。何をしている?ふざけてるのか?そう思い、近付くと医師と看護士が口をパクパクさせて何かを言いたそうにしている。これは異常事態だと気付き、二人に声をかける。

 

 

「おい!何をしている?早く部屋に入らないのか?」

 

 

二人はそれでも苦悶の表情を浮かべて、口をパクパクさせるだけだった。これでは埒があかない。私が入っても問題ないだろうと思い、部屋に近付いたところで異変が起きた。身体が動かない!何だ?何が起きている!?この二人はこの事を伝えようとしていたのだろう。しかし、そんな事よりも中の比企谷が心配でならなかった。比企谷はその命を維持する為の機材に囲まれていたはずだ。先程の音で、それが壊れているだろう事も、素人の私でも解るぐらいに大きな音だった。

もはや猶予もない事は明白だ。こうしている間にも、比企谷の命は終わりに向かっている。私はまた、救えないのか?今度は目の前で起きているのに?また私は救えないのか…?両頬に涙が伝う。手を伸ばせば届くところにあるのに……守れないのか?

 

 

 

 

嫌だ!私は教師だ!

教師が生徒を諦めるなんて出来ない!!

 

 

燃やせ、心を!

気合いを入れろ!全身全霊をこめろ!

魂で叫べ!!この金縛りを解く為に!

ぅ動けぇぇぇ!私の身体よぉぉぉ!!

 

 

 

「ウオォォォォォッ!この程度の金縛りなぞッ!!比ィ企谷ァァァァッ!!!君を死なせん!死なせんぞぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

パリーンと、音が聴こえた気がした。

身体は自由を取り戻した。そのままの勢いで私はドアを蹴破った。

 

 

 

部屋に入ると、横たわる比企谷の側にある機械が煙を上げていた。私はすぐに部屋の外に出ると、医師と看護士に気合いを入れてやった。二人は、ヒリつく頬を押さえながら病室へと入っていく。続いて入り、私に出来る事がないかと聞くと、比企谷との関係を聞かれたので教師と生徒であることを告げた。

すると、私と比企谷を交互に見て「手を握っててあげて下さい」と言われたので、比企谷の横の椅子に座り手を握った。看護士はテキパキと壊れた物を外し、医師は代わりの機材を取りに出ていった。その時の二人の眼は、微笑ましいものを見るようだった。

…もしかして、あの二人は私達の事を勘違いをしていないか?

ふと疑問に思ったが、弱々しい比企谷の手がひどく痛ましく感じられ、そんな疑問は頭から消え去っていた。私は手を握りしめ強く想った。死なないで、と。

 

 

 

 

 

 

 

「雪乃お嬢様、病院に着きました。お急ぎを!」

 

 

都築に急かされるまでもなく、私はありがとうと一言礼を言うと、車から降りて彼の病室へと駆けていった。由比ヶ浜さん、小町さん、材津くん?もあとに続いた。

病院内は騒然としていた。すでに夜間の時間帯なのに、慌ただしく数人のスタッフが駆け足で病院内を往き来している。胸騒ぎが抑えきれず、私達は彼の病室へと急いだ。

 

 

 

病室に着くと、異常事態があったのだと悟った。病室にドアはなく、蝶番がプラプラと揺れていた。慌てて中に入ると、焦げ臭い匂いがした。部屋の隅には壊れたであろう医療機器が煙を上げている。寄せ書きの置いてあった花瓶も割れているようだ。

部屋の中心に位置する場所に横たわる比企谷くんと、側で寄り添い、手を握る平塚先生の姿が目に入った。事情を聞くと、どうやら平塚先生は一番危ないところで助けてくれたらしい。この人は本当に格好いい先生だと思う。ただ、もう手は離してもいいんじゃないですか?

 

 

「平塚先生、お願いを聞いていただきありがとうございます。それで、不躾なんですが、比企谷くんの容態は?」

 

 

「今は医師が代わりの機材を取りに行っている。まだ予断を許さない状態らしい。ところで、君たちは何か知っているのかね?この異常事態についてだ。」

 

 

 

平塚先生は、この部屋の惨状と、先程自身の身に起きた、不可解な現象についての説明を求めた。そういえば急いでいたあまり、ちゃんと説明していなかった事に気付く。話を順序よく説明していった。

 

 

「なるほどな。理解したよ。それではアイツはこの近くにいるのだな?おい、比企谷!出てきたまえ!」

 

 

『チッ!…なんかすごくバツが悪いんだが。』

 

 

 

材津くんが言うには、比企谷くんは壊れた医療機器の後ろに隠れていたらしい。私達には見えないけれど。

 

 

 

 

「ホムン。八幡よ、よく聞くがいい。どうやら、この御三方から話があるらしいぞ?ならば、我がお主の声となる!それが我等の契約であったろう?」

 

 

『ケッ!カッコイイ役だな、オイ。けど……ありがとうな、材木座。』

 

 

 

それから私達は戻ってきた医師より、この場から出るように促されたものの、事情を察した医師が談話室で待てるように計らってくれた。夜の病院内でペチャクチャ喋るのも気が引けたのでありがたい。そのまま談話室へと場所を変えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずは謝りたいと思う。皆、すまなかった。』

 

 

俺はこの事態を招いたことと、俺を取り巻く環境の変化について謝りたかったが、それを雪ノ下は制した。

 

 

「いいえ、謝るのは私よ。貴方の言葉を聞くのが怖かった。貴方と向き合うのが怖かったのよ。貴方に救ってもらった責任を、大切にしている者を守れなかった。比企谷くんに会わせる顔がなかったの。臆病な私のただの我儘なのよ。本当にごめんなさい…」

 

 

 

そんなことを考えてたのか、相変わらず律儀で、真っ直ぐで、不器用な奴だな。

 

 

 

「違うよ!ゆきのんは悪くないよ。悪いのはあたしだよ。ヒッキーの気持ちとかさ、ちゃんと考えていなかったと思うの。あたしだって、同じ事されたらヤダもん。だから、ゴメンね、ヒッキー……」

 

 

まさかアホの子にここまで言わせてしまうとは……。由比ヶ浜は本当に優しい女の子だ。自身の非を認め、素直に俺の身を案じてくれる。本当に強くなった。彼女の見返りを求めない献身な姿は、時代が時代なら聖母と呼ばれていたに違いないだろう。

 

 

 

「おにーちゃん、こんなに小町のことを困らせたのは、小町的にポイント低いよ。けど、雪乃さんと結衣さんを悲しませたのはポイントマイナスだよ?仲直りするまで家に入れてあげないんだからね?」

 

 

小町にはいつも迷惑をかけるな。

こんなお兄ちゃんだけど、許してくれるのか?自分も寂しくて悲しくて言いたい事もあっただろうに、お兄ちゃん知ってるんだぞ?小町が俺の写メを見て泣いていたことを。小町には幸せになってほしいと切に願うよ。ただし、毒虫だけは許さんけどな。

 

 

 

『俺から言いたかった事は一つだ。俺の為に自分を犠牲にするような事はやめてくれ。俺が言えた義理じゃないがな。』

 

 

「えぇ、そのとおりよ。貴方の自己犠牲もようやく改善したかと思ったのに、また同じ事をするなんて本当に愚かだわ。」

 

 

『すまない。だが、俺の為に学校を辞めるとかは無しだ。俺はそんなことの為にお前らを助けたんじゃない。』

 

 

「うん。それはあたしも小町ちゃんも反省してるよ。そんなことしてもヒッキーは喜ばないもんね。」

 

 

「そーだよ、おにーちゃん。小町ちゃんと反省してるから。だから、だから………早く、帰ってきてよぉ……」

 

 

 

小町はそう言うと泣き出してしまった。俺だって帰れるものなら帰りたい。小町を泣かせるのは嫌だからな。しかし、未だにその方法が見つからないのも事実だ。

 

 

「ねぇ、比企谷くん。体に戻れる方法は本当にないのかしら?」

 

 

『どういう事だ?材木座にも聞いたが、個人差があっても、方法は解らないはずだが?』

 

 

「けれどそれは、材津くんのお祖父様に聞いた話なのでしょう?その道のプロの人に聞けばわかるんじゃないかしら?」

 

 

 

 

なるほど。確かに俺も一度は恐山に行こうと考えていた。書物や文献も調べた訳じゃない。少し視野が狭くなっていたのかもしれないな。

 

 

「私も姉さんに頼んでみるわ。頼れるものは全て頼ってでも、貴方を助けてみせる。それが私の覚悟よ。」

 

 

『いいのか?またお前たちに頼ってもかまわないのか?』

 

 

「当たり前じゃん。ヒッキーも少しはあたしらに頼ってよね!」

 

 

ふとあの時のことを思い出した。クリスマスイベントの時、生徒会と俺だけではどうにも出来ない状況になっていた。停滞する会議内容に、差し迫る期限、俺個人だけでは何も変えることが出来なかった。そして奉仕部に、二人に依頼をしに行った。結果として、それまでグチャグチャになっていた俺達の関係を、修復することができた。そしてその感情を吐き出した時に言ってしまった。『本物が欲しい』と。

俺はずっと探していた本物を見つける事が出来た。あの事故の間際に感じたものはきっと本物なのだろう。

 

 

 

『二人に依頼したい事がある。俺は自分の身体に戻りたい。その方法を一緒に探してほしい。頼めるか?』

 

 

「えぇ、もちろんよ。」

「うん!当たり前じゃん!」

 

 

 

『雪ノ下、由比ヶ浜、ありがとうな。これからも宜しく頼む。』

 

 

 

すっかり空気になっていた平塚先生は泣いていた。小町も泣きながらも温かい眼差しを向けていた。材木座は俺の通訳として話していただけだが、何故か泣いていた。いい奴すぎんだろ!もう少し優しくしてやろうかと思ったけど、泣き姿が気持ち悪かったから止めた。

 

 

 

 




どうしても書かなければいけない描写が
あったので、まだ少しだけ続きます。

そんな感じでまた次回。

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