やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
日曜に更新していきますね。
忙殺されすぎた。社会が悪い。
現在は、恐山のとある洞穴前。
時刻はもう夕暮れ時だ。
俺はあの時、強い力に引っ張られた。あれ?これやばくね?正直ダメかと思ったけど、引き込まれた先には女性が座っていた。そしてそのまま合体!…言葉だけならエロいな。もしかして、これが口寄せというやつか?そう思ったのは、久し振りに感じる肌寒さと、座っている感触、大地に縛られる重力を感じさせられたからだろう。
肉体がある。深く息を吸ってみる。あぁ、生きてるって素晴らしい!
ある程度満喫した俺は、現状を把握する為に思考する。付近を見渡すと、目の前には祭壇らしきものがあり、その灯りでなんとか周りが見えている。少しの空腹感が襲う。体を調べてみると、成人女性であるらしい事は理解できた。ちなみにどうやって理解できたかは内緒だ。とりあえず外に出て、二人に合流しなければと思い、灯りを点したローソクを持って行動を開始する。
そして雪ノ下達と無事合流……とはいかず、俺を見つけた雪ノ下は俺に抱き着いてきた。え?え?なにこれ?メッチャいい匂いがする!てか、通報されないよね?いや、むしろリアルゆるゆりだろ。…許されるよね?とか考えていると、雪ノ下は俺から離れて「誰なの?」とか言い出した。そんなもんは俺の方こそ聞きたい。見るほうが早いと思い、出口へと促すと俺達は外へ向かうことにした。
そして現在に至る。
「…という訳だ。」
「フム…八幡よ。お主は、その者に召喚されたということになるな。」
「まぁな。召喚つーか、憑依合体のほうがしっくりくるけどな。それよりも雪ノ下を起こすぞ。少しのんびりし過ぎたかもしれん。」
「それには我も同意だ。日が沈むと、さすがにマズイのではないか?まだ我らの宿は見つかってない。真冬の山で野営とか洒落にならんぞ。」
ほぼ無計画な強行軍である。調べてみたものの、宿泊施設どころか建造物も無かったのだ。だからそれなりの装備が必要と言えば必要なのだ。しかし素人がそんな装備を持ったところで負担にしかならない。雪山ではないのでまだマシかもしれないが、それでも下手をすれば死ぬかもしれない。どうしたものかと各々考えていると、陽乃さんの一言で解決してしまう。
「先方とは話がついているからね♪」
それを先に言えよ!と、みんな思っていたことだろう。弱味を握られてるから俺は言わねぇけど。そんなこんなでイタコさんを探していたのだが、まさか口寄せられるとは思ってなかったからな。つーか、どうやったら離れられるんだ?
「なぁ材木座。どうやったら口寄せは解除されるんだ?」
「モハハハハ!………知らん!」
どうやら頼みの材木座先生もわからんらしい。とりあえず雪ノ下を起こしてやることにした。目を覚ますと、雪ノ下は俺を一瞥した後に、深い溜め息を吐いた。どうやら頭が痛いらしい。真実を受け止めきれずに、頭がパンクしたのだろう。確かに今の俺のほうが胸がデカ……おっと、その射殺すような視線は止めて下さい。一応これ借り物の体だからな?
「さ、さぁ雪ノ下も起きたことだし、どうしたら元に戻れるか試そうぜ!」
「そうね…色々と聞きたいことはあるのだけど。下衆谷くんを死ぬまで痛めつけるとかどうかしら?あとはそこの崖から飛び降りるとか?」
あのぅ雪ノ下さん?それ死ねって言ってません?あ、死んだらゴーストに戻れるのか!なんだよそれ名案じゃん。それある!それある~!て、ねぇよ!
「おい、八幡。部長殿が大変恐いぞ。我、チビりそうなんだが。」
「落ち着け材木座。とにかく現状の打破が先決だ。雪ノ下の機嫌をとれるのは、最早パンさんか猫ぐらいのもんだ。それよりも何か案はないのか?どうすればこの体から出られる?」
雪ノ下から発する凍気がビシバシ当たる気がする。そうか、冬将軍って毎年雪ノ下から発生してるんだな。また一つ賢くなったぜ!てなぐらい視線が痛かった。
「ほむん。そういえば昔見た文献に、幽体離脱のコツをレクチャーした物があったな。確か、『寝ながら、起きる』らしいぞ。」
「おぉ!でかした材木座!じゃあ早速試してみようぜ!」
無駄に焦ってしまった。だってゆきのん恐かったもん。それにしても寝ながら起きるか。イメージを堅め、集中してみる。寝転がって体を寝かせたまま、幽体の上半身だけムクリと起き上がるイメージだ。ゴースト経験とボッチ特有の妄想のおかげか、すんなりとイメージ出来た。あとは実践するだけだ。
『どうだ?やったか?』
「ガハハハ!さすがは八幡。もうコツを掴みおったか。」
「……無事に成功したようね。良かったわね、命拾い出来て。」
涼しげな笑顔でニコリとそう告げる。雪ノ下には胸の話はタブーだとあらためて思った。
「それではこの女人を早速起こすとしよう。部長殿!お願いします!」
「ハァ…まぁ貴方が起こすよりはいいかもしれないわね。」
『今更だけど、この人の顔初めて見たわ。なんか平塚先生に似てるよな。』
「あ、我もそう思った。」
「不本意ながら、私もね。」
世の中には似た人が三人はいるって言うけど、本当なんだな。髪形が違うから印象が変わるけど、見れば見るほどそっくりだった。こっちの平塚先生は、髪のしたの方を一つに束ねている。清楚な印象を受ける姿だ。平塚先生の新しい一面を垣間見た気がしてたら、パチクリと目を覚ました。辺りをキョロキョロしたあとに、こちらをジッと見てきたので声をかける事にした。
『もしかして、貴女が高名なイタコさんですか?』
「はい。御連絡をいただいた、千葉から来た雪ノ下さんですか?」
『はい。正確には俺は比企谷で、そこの女の子が雪ノ下、大きいのが材木座です。』
「御丁寧にありがとうございます。私の名前は、平山静と申します。とりあえず場所を変えませんか?もう日も暮れるので仮宿に案内させてもらいます。そこで話を聞かせてもらいますね。」
俺達は平山静さんと名乗る、平塚先生似のイタコさんに案内されて仮宿へと向かった。もうとっぷりと日が沈み、夜の静けさが辺りを不気味に演出してくれる。時折すれ違う人に挨拶を交わすが、相変わらず雪ノ下だけは気付かない。10分程歩いたところで、簡素な小屋に到着した。岩肌が突き出ている下に建てられていて、これは上空からは見つからないだろうなと思った。衛生写真でもわかんねーだろ、これ。
「皆さん、着きました。どうぞ中へお入り下さい。」
「お邪魔します。」
『お邪魔します。』
「ウム、失礼する。」
中は大して広くは無かったのだが、日本昔話に出てきそうな感じだ。今の子供は知らんだろーが、日本昔話は昔やっていたアニメだ。ボッチには古今東西のアニメは精通していて当然なのである。中に入り、四人でちゃぶ台を囲むように座る。そこで雪ノ下が今までの状況を説明した。平山さんは説明を一通り聞くと、何やら考え込んでいた。埒が明かないからか、雪ノ下が本題を切り出した。
「平山さん、単刀直入に聞きます。比企谷くんは元の体に戻れますか?」
「ごめんなさい。私ではお力になれません。ですが……」
返された言葉は、希望を打ち砕く絶望の言葉だった。だが、二の句に続く言葉を期待している。だってこんな展開はよくあるだろ?
「修行をつけてあげる事はできます。材木座さん、比企谷さん。お二人にはやってもらいたい事があります。」
平山さんは、平塚先生のようなカッコイイ笑顔を浮かべると、俺達にそう告げたのであった。
恐山編が妙に長引いてしまった!
次回で終わり予定。
そしてまだ少し続きます~。