やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
僕は行ったことないですが、
もうお土産のちんすこうは一生分は食べました。
だから買ってくるなら、
それ以外でお願いします。
それでは、どうぞ。
現在、場所は雪ノ下のマンション。
時刻は月曜の夕方だ。
あれから恐山を出て帰ってきた俺達は、今は雪ノ下のマンションに集まり、状況を説明している。
陽乃さんは「やっぱりね~」と言うと、ポンッと旅費をくれた。と言っても、材木座と雪ノ下の分だけだが。
平日という事もあり、学校も疎かに出来ない。金銭面も考慮すれば、今回も由比ヶ浜や小町は待機しか出来ないだろう。二人は歯痒い思いをしているのだろうか、沈痛な面持ちで俯いてしまった。
俺にはその気持ちだけで充分嬉しいのにな。意識不明の重体になってから今日まで様々な体験をしてきたから解る。そのなかで学んだ事は、想いが大事だという事だ。想いの強さ、想いを伝える事、ゴーストになってどれも必要不可欠である事を思い知った。いや、想い知ったか?
だから二人にはそっと伝えておく。
今回から陽乃さんが俺用に用意してくれたスマホがある。通常時は材木座のコートに忍ばせてある。ソッと引き抜くと、小町と由比ヶ浜にメールを送る。
『その気持ちだけで充分だ。ありがとな。』
そして素早く材木座のコートのポケットに仕舞う。まさに神速!誰にも気付かれてない神業だわ、俺。自画自賛して余韻に浸っていると、由比ヶ浜と小町の携帯が鳴り出した。
おいおい二人共?そこはマナーモードにしとく場面じゃね?勿論、陽乃さんに勘づかれたのは言うまでもない。この人に俺は何度ネタを提供するんだろうか?真剣にその事を考え出していた時に、陽乃さんがとんでもない事を提案してきた。
「沖縄に行く前に色々と出来る事を試してみよっか~。ヨシくんの口寄せと、比企谷くんの憑依の実用性を見てあげるよ♪」
顔が好奇心と悪意しか見えないのは俺だけですか?あとヨシくんって呼び方まだ続いてたんですね。材×陽とか需要あるのん?
「我も活躍がしたい。八幡よ…来い!」
ヨシくん(材木座)が、離れた場所にある剣を手繰り寄せるかのように手を向ける。おいおい、人に手を向けちゃダメだと教わらなかったのか?いや、あれは指を差すなだったか。とか考えてる間に視界が変わる。
「強制力高すぎるだろ。あと体が重い。」
不満を口にしていたら、妹に不満を口にされていた。
「うわぁ~。確かに目が腐ってるね、おにーちゃんの目だよ。」
「ほぇ~。本当にあるんだね、こーゆうのって。」
「ヨシくんの意識はあるのかな?おーい、ヨシく~ん!」
ここで一つ説明すると、熟練したイタコさんならば自分の意思が介在し、口寄せたゴーストが悪意を成そうとしようものなら排出する事も出来るらしい。あの時、平山さんの身体を触って確認した事は悪意には当てはまらない。何故なら排出されなかったからだ。決して弁解ではない。いや、マジでだからね?
「どうやら材木座の意識は無いみたいですね。次は俺が憑依やりますね。」
憑依は口寄せとは違い、強制的に相手の中に入るものだ。勿論、欠点もある。精神や意思が強い人には憑依しにくい。というよりも出来ないのである。逆に精神が弱ってたり、意思が弱い人なんかは憑依し易いらしい。
気が滅入ってる人や、マイナス感情が強いと取り憑かれ易いって話を聞いた事がある。テレビで霊能力者が言ってたけど、あながち嘘じゃなかったらしい。8割ぐらいは嘘っぱちなんだが、残りの2割はガチの放送だから質が悪いとは、平山さんの受け売りだ。
まぁ、この場で陽乃さん以外なら誰でもいけそうな気がするけどな。
『ほれ、材木座。起きろ。』
「ムゥ…どうやら我は気を失っておったようだな。」
「大丈夫?ヨシくん??もっと意識を保つ練習が必要だね。それじゃ比企谷くん。次は雪乃ちゃんに憑依してもらいましょうか?」
「え!?ゆきのんに憑依するの?だ、ダメ~!ヒッキーのエッチ!」
俺の意思も聞かずに、勝手に有罪に仕立て挙げられている。近い将来を暗示してそうで怖いと思った。特に電車での立ち位置には気をつけよう。
「じゃあ、ガ浜ちゃんね。はい、比企谷くんどうぞ~!」
『はぁ、了解です。』
由比ヶ浜にはすんなり入る事ができた。入ったと同時に、不意に体のバランスを崩してしまい、前のめりに倒れそうになる。おっとっと、この体は前面に重みがかかるな。何が重たいのかは内緒だ。
「これでいいですか?」
「うわ~。結衣さんの目がおにーちゃんみたいに…」
「フム、こうなると全員の腐った眼を拝みたくなるな、陽乃よ。」
「そうだね、ヨシくん♪じゃあ比企谷くん、次は雪乃ちゃんにいってみよ~!」
陽乃さんに異を唱えようとしたものの、先程から携帯をチラチラとチラつかせている。あぁはい、分かりましたよ。魔王は俺の弱味をいつでも披露する気満々だった。
仕方なく雪ノ下の方を向くと、何故か顔が赤くなっていた。え?意識されると逆に恥ずかしいんですけど。そんな俺を現実に戻したのは、タプンと揺れた前面の重みだった。
……やだ、大きい!
「ヒッキー?あたしの意識もあるんだけど……その、考えが伝わると言いますか、なんとゆーか…」
「え?あ、や、り、離脱する!」
端から見れば、由比ヶ浜が一人で演劇の練習でもしているかのように映る事だろう。俺はそのまま雪ノ下に憑依する事にした。もうどうとでもなれ!
パイルダーオンッ!
「わぁお。雪乃ちゃんがグレた…。」
「ゆきのん…ヤンキーみたいだよぉ。」
「雪乃さん…小町は悲しくなってきました…。」
「ブハハハ!ふひー!ひぃ!なんだその眼はぁー!プククク…!!」
雪ノ下から沸き上がる感情が手に取るように伝わってきた。特にヨシくん(材木座)を見る眼がヤバイ!
あ、これアカン。死ぬやつや。
「養豚場の豚が…何を囀ずってるのかしら?そういえば、そろそろ市場に出荷される時期ね。じゃあ今殺しても問題ないわね。ええ、そうね。」
「ひ、ブヒィィィィ!は、陽乃ぉぉ!助けてぇ!!」
「ヨシくん、それはさすがに救えない…かな?」
雪ノ下の氷の女王の凍てつく視線は、俺の腐眼との相乗効果によって、材木座に半端無いプレッシャーをかけていた。雪ノ下の前世はハマーン様じゃないかと思う程のプレッシャーだ。
「比企谷くん?私にも貴方の思考は漏れているのだけれど。そのハマーン様というのは何かしら?」
「待て待て待て、雪ノ下。これは称賛だ。歴史的に見ても傑物で知られる人物との比喩だ。決して他意は無い。」
「そう。ならいいのだけれど。それじゃあ家畜の処分から始めようかしら。」
ハマーン様がそう言うと、先程までうるさく騒いでいた材木座が静かになっていた。よく見ると陸に揚がった魚みたいに口をパクパクさせていた。あれ?これって金縛り状態になってね?
本当に苦しかったのか、手足をビッタンビッタン動かしていた。
「ちょ、雪乃ちゃん?いや、比企谷くん?やり過ぎだよ!ヨシくんが死んじゃうよ!?」
「え?わ、私はそこまでするつもりじゃ…「雪ノ下、離脱するぞ!」
俺が雪ノ下から離脱すると、材木座は息を吹き返した。正確には正常に呼吸が出来るようになっていた。材木座の傍で、心配そうに陽乃さんが話しかけていた。ここで判明したことが、憑依するとゴーストの能力を使用することが出来る。今回は感情が昂った雪ノ下が、加減を知らずに金縛りをしてしまった。それが原因で、材木座は瀕死間際までいってしまったみたいだ。
結論として、無闇に憑依しないという事になった。
その日は解散という流れになった。
ひどく罪悪感を感じていた雪ノ下のフォローの為に、俺は残る事にした。
現在はどこまで出来るか検証する為に、またまた雪ノ下の体にパイルダーオンッ!している。ちなみにこれが三人だったら、念身、合体、ゴー!アクエリオン!と、叫んでいたと思う。
「あの、比企谷くん?全て聴こえてるのだけれど。アクエリオンって何かしら?」
「あまり気にするな。それより、イメージ出来たか?大事なのはイメージと集中力だ。」
雪ノ下はパンさんをどうしても動かしたいらしく、今はその練習中といったところだ。ちなみに憑依中はそちらに意識を割く為かは解らないが、俺はゴーストの能力を使えない。
ちなみに雪ノ下の驚異的なまでのパンさん愛は、一発で成功に導くのであった。
「…フフフ、こんにちは。あら、笹をくれるの?ありがとう。ウフフ…それとね……」
かれこれ三時間はタップリとパンさんで遊んだ雪ノ下は、ようやく満足がいったのか、夕飯の支度に取り掛かる。
満更でも無かった俺は折角だし、ある事を提案する。
「なぁ雪ノ下。俺が夕食を作っても構わないか?簡単な物しか作れんが、それで良ければだが。」
「あら?どういう心境の変化なのかしら?」
「…お前には恐山やら何やらで世話になったからな。少しでも何かしてやりたいんだが…駄目か?」
「ええ、それじゃあお願いするわ。私、少し疲れたもの。けれど使うのはこの体なのだけれど。…あ、違うのよ?比企谷くん。これはそんな卑猥な意味じゃなくて、これは行使するという意味合いの言葉であって、決してそのような意味で発した訳じゃ「分かった。ありがとうな。」
雪ノ下…お前の思考もダダ漏れなんだけど。お互いにこれ以上はツッコまない方が良かったので、料理に取り掛かった。
久し振りの料理に力が入ったものの、雪ノ下の料理に比べるとどうしても見劣りしてしまう。やっぱ雪ノ下の料理は美味いなと、改めて感心していた。
「どうだ?」
「美味しいわ。とても。ありがとう、比企谷くん。」
「お、おう。」
ちなみに会話をしながら食事をしようとすると、一人の口で二人分話すので食べ終わるのに一時間も経過していた。おかげですっかり深夜帯の時間である。もうそろそろ離脱しなきゃな。雪ノ下も風呂入って寝ないと準備もあるだろうし。さすがにそこまで憑依してたら俺は変態の烙印を押される。
離脱する前に一度だけ俺も雪ノ下の眼が腐っているのか見てみたくなった。雪ノ下に鏡のある部屋へ案内してもらい、その御尊顔を拝する事にした。
なんていうか…俺に娘が出来たらこんな顔なのだろうか?あ、この場合は雪ノ下との子供か。けど昔から腐ってた訳じゃないからね?じゃあ娘が出来たら雪ノ下みたいに綺麗なはずだ。
Q.E.D証明終了!
「あ、あう…その…比企谷くん、全て聴こえてるのだけれど…」
「…じゃあな、雪ノ下!また明日!」
即座に離脱して俺は家に帰った。
その時に雪ノ下から聴こえた心の声は内緒だ。
憑依にはメリットとデメリットがあります。
心の声がお互いに聴こえるんですねー。
特に思案思索思考思慮する八幡と雪ノ下は
心の声がバシバシ伝わりあってます。
陽乃さんとヨシくん(材木座)の二人も
見逃せないですね~。
それでは。