やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
遅筆ですが、お付き合い下さい。
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皆から貰った寄せ書き。そこにあるべきはずと言うと、おこがしい気分になる。あってほしいと願う名前が無かった。ただ、その事実に驚いていた。
雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、奉仕部の二人の名前が無い事に。
その場で少し項垂れていた。
思いの外、ショックが大きかったらしい。自分事なのに、どこか他人事のように冷静に自分を見てしまう。やはり俺の中にある、理性の化物は今もなお健在なのだろう。
折角の幽体離脱体験だ。
二人の様子を見に行こう。
そうと決めれば行動あるのみだ。今の時間はまだ授業中のはずだ。二人はまだ学校にいるだろう。俺は病室に寝ている俺を一瞥する、「行ってくる」と自分の体に声をかけて病室を後にした。
ところで空って飛んでいけないのかな?
飛べるかもしれないが、そんな可能性を試すよりも先に、あいつらに会いたかった。何があったのかは解らない。しかし、きっとお人好しのアイツらのことだ。自分達の責任だとでも思っているに違いない。そんな事を思う俺は傲慢なのかも知れない。それでも、俺にとって二人はかけがえのない本物なのだ。
俺は走るよりもバスのほうが早いと思い、初めて無賃乗車をした。緊急時だ。仕方ない。自分に言い訳をしながら、学校近くのバス停で降りようとして気付いた。
これ、どうやったら停まってくれるの?
結局、3つも先のバス停で降りるハメになってしまった。時刻はわからないが、もう夕方である。大分時間を無駄にしてしまった。走りながらふと考える。怪我をしないのだから、バスから飛び降りればよかったと。
ようやく学校へ着く頃には、帰り道へと歩き始める学生たちがチラホラと見かけられた。帰宅部連中だろうか。何人かは見覚えがある顔だ。放課後になったばかりなのだろう。なら、部室へ行けば会えるはずだ。
俺は壁をすり抜けて最短距離を突き進む。途中で材木座とすれ違うが無視して走る。ようやく特別棟の部室の前に着いた。最後に来たのはいつだろうか?ひどく懐かしく感じてしまうのは何故だろう。ドアをすり抜けて中へと進む。
『うっす。』
習慣だろうか。つい、いつもの挨拶の台詞を吐いてしまった。誰にも聴こえるはずはないのにな。そんなのは、もうすでに病院で試していたのだ。部室の中央に位置する長机には雪ノ下と由比ヶ浜がいた。二人が先日見せたくれた笑顔は無く、その顔は曇り、その姿は憔悴しているように見えた。
オイオイ、いつまで落ち込んでるんだよ。俺はお前らを救えて嬉しかったんだぜ?まぁ仕方ないかもな。逆の立場なら俺でもこうなる自信はある。
二人のこんな姿を見るのは気分が良いものではないな。だが現状は何もすることが出来ないじゃないか。そうだ!あまりいい趣味とは言えんが、二人の観察でもしてみよう。普段はじっくりと見る機会もないしな。じっくり見てたら雪ノ下に通報されるまである。
よし。日頃から罵詈雑言を吐かれている仕返しに、弱味でも握っておこう。
何か喋らねぇかなーとか思ってたら、由比ヶ浜が話し始めた。
「ねぇ、ゆきのん。」
「……どうしたのかしら?由比ヶ浜さん。」
「あたし、さ。学校を辞めようかなーって。そんでさ、働こっかなぁーって、思ってるんだ。」
はい?て、はぁ!?
今、由比ヶ浜さん爆弾発言しませんでしたか?
「そう。それはもしかして、比企谷くんの為かしら?」
「うん…ヒッキーに出来ること何かなーって、考えたんだ。」
はぁ!? オイオイ、俺は養われる気は確かにあるが、施しを受ける気はないぞ。いきなり何言ってんの?俺の意思は?あ、元からあまり拒否権ありませんでしたよね、わかります。
「…小町さんも、あなたと同じことを言ってたわ。卒業したら働く、と。」
な、何だって?何故小町が働かにゃならんのだ!まだまだ親の脛をかじり盛りの中学生だぞ?比企谷家ってそんなに財政難だったのか?
「比企谷くんの今回のケースでは、保険の適用外とされているわ。だからこそ、彼の生命維持費に多額のお金がかかってしまうのは仕方のない事なのよ。けど、それでも…彼はあなたにそんな事を望まないはずよ。」
生命維持費?多額の金?
俺のせい……なのかよ………。
なんだよ……それ。
「それでもっ!もう1ヶ月たつんだよ?ヒッキーが寝たきりになって1ヶ月もなんだよ!?あたしは……もうヒッキーに会えないなんて……嫌だよぅ……」
「ごめんなさい、由比ヶ浜さん。けれど、辛いのは私も一緒よ。私も彼にもう会えないなんて嫌っ!必ず救ってみせるわ……みせるから……だから泣かないでちょうだい……」
「ゆきのんも……泣いてるよぉ」
気がつくと俺はその場から走り出していた。俺は逃げたのだ。二人から、二人の想いから。二人を救ったつもりが、二人に重い十字架を背負わせていた。二人の人生を狂わせた。
いや、二人だけじゃない。小町や両親にも経済的負担や迷惑をかけている。嫌だ、小町には幸せになってもらいたい。中卒で働くだと?なんでだよ、お前がそんな苦労をする必要なんてないだろ?そうだ!全部……俺のせいなんだ………
完全下校時刻を告げる鐘が鳴る。あぁ、もうそんな時間だったんだな。スマホもないんじゃ、時間なんて大体しかわかんないもんな。
俺は一人フラフラと病院への道を歩いて帰っていった。
ふと立ち止まり、三人にとっての苦い思い出の場所に来ていた事に気付いた。俺達が初めて出会った事故現場だ。そこで少し落ち着きを取り戻せたと思う。感傷的になるのはよそう。今は考えなくてはならない。
まずは現状の整理から始めよう。
事故から丸々1ヶ月経過している。その間の記憶も意識も無い。部室が懐かしく感じたのはそのせいだろう。
俺の体は生命維持の処置で繋いでいる。多額の費用がかかる。我が体ながら迷惑な話だ。
雪ノ下と由比ヶ浜は、身代わりになった俺への罪悪感や後悔といったものが重責となっている。と、思う。傲慢な考え方かもしれんが、その方がしっくりくる。
そして1ヶ月ぶりに目が覚めたら、幽体離脱していた。あの体じゃ動けないだろうし、情報を得るのに適した状態ではあるな。こんな体験は滅多に出来ないだろうし。
現状の解決としては、俺が目覚めて金のかかる処置をしなくて済むようにすればいい。小町と由比ヶ浜も説得しよう。雪ノ下に頼んで論破してもらえばいい。
そうと決まれば早速体に戻ろう。起きたら小町に頼んで、雪ノ下と由比ヶ浜を呼んでもらおう。
学校に戻れば、またあの紅茶の香りが漂う静かな空間に、俺の居場所へと帰ることができる。
病室へと戻ってきた俺は、ベッドに横たわる俺に「ただいま」と告げる。
寝ている自分の体に重なろうとする姿はシュールで、海老名さんなら大喜びしそうだな。ハチ×ハチは止めてね?誰得だよ。
重なってみたものの、何も起こらない。目を瞑ってみる。何も起こらない。念じてみる。何も起こらない。念仏を唱えてみる。よく解らない。
あれ?どーやったら戻れるの、これ?
その日を境に、俺がゴースト(幽霊)となった瞬間だった。
ボッチとよく八幡は言います。
しかし、認識される事もあります。
ゴーストになれば本当の意味でのボッチなのでは
ないでしょうか?
ステルスではなく、バニシングヒッキーといった
ところです。
ご都合主義と思われる展開もあるかもしれませんが、
参考にしている作品がありますので
1度見て下さい。(ステマ)
映画ゴースト~ニューヨークの幻~
密!リターンズ