やはり俺が意識不明の重体なのはまちがっている。 作:世間で言うジョージさん
完全に自己満足ですが…せっかくなので、どうぞ☆
翌朝、気分は爽快とはいかずに家を出た。
考えてみたら寝れるってのは幸せなことなのだと思った。リフレッシュしたり、頭をリセットしたりといった意味でだ。
学校までの道程を歩いていく。今日から飛んでいくのは無しにしたのだ。歩きながらいつも学校へは自転車で行っていたのを思い出した。
『そういえば俺の自転車ってどうなったんだ?』
あの日、事故ってからすぐに救急車に運ばれてたとしたら……
回収されたのか盗られたのか気になったので、一度ダッシュで家に戻った。しかし残念ながらマイ自転車は無かった。もしかしたら放置自転車として回収されているのかもしれない。
少しガックリと肩を落としたが、仕方ないと思い直してもう一度学校へと向かうことにした。
『今日はいい天気だな』
遅れても大丈夫なので空を見ながらのんびりと歩く。いつもは自転車で通りすぎるだけの景色も、のんびりと歩いているだけで景色が変わってくることに気付く。
風が気持ちいいとか、天候が暖かいとか、道端にある四角い箱みたいなのはトランスという名前だとか。通行人の会話を聞きながら歩いていくと学校へ着いてしまった。
うーむ、何もやることがない。徹夜で勉強をして遅れていた分を取り戻そうとしたのだが、取り戻せたのは国語三位の科目だけで残りはもう追い付けない感じになっていた。
あれ?これって後で補習受けたら免除とかあるよね?無かったら死ぬんだけど。今度は社会的に死ぬんだけど。ダブりとか一色と同級生になってしまうんだけど。
学力的に由比ヶ浜ぐらいまで落ちたと過程しよう。あれ?俺、独りじゃないじゃん!コンニチワガハマさん、ちぃーす!雪ノ下先輩!
いや、無理だろ。
少しでも取り戻すべく、教室に行き自分の席へと座る。座るといっても椅子を引いてないから机とドッキングするような感じになった。軽くホラーだわ。
由比ヶ浜にチラリと視線を向けると、授業内容についていけないのか凄い顔をしていた。そういえば雪ノ下はともかく、由比ヶ浜は塞ぎ込んでいた時期に、勉強に身が入らなかったのだろうと推測した。学校を辞めて働くとか言ってたし、間接的に由比ヶ浜の学力を落としたのは自分のせいだと考えると少し罪悪感が湧いてしまった。
仕方がない。元気になったら一緒に雪ノ下に勉強を教えてもらうか。
授業は過ぎていき、昼休みの時間になった。事前に昼休みには皆でご飯を食べようと約束していたみたいで(材木座除く)、奉仕部の部室へと集まった。俺のベストプレイスに行こうと提案したが寒いから嫌と言われてしまった。
久しぶりに三人で集まった気がする。
以前に材木座と来たときはノーカンとする。雪ノ下と由比ヶ浜でお弁当を食べている。時おり二人に交互に憑依して俺も御相伴させてもらっている。
俺だけ食べれないことを気にしているのだろう。
『うぉ!やっぱ雪ノ下の弁当は美味いな。このパンさんウインナーとかどうやって再現しているのか聞きたいぐらいだ』
「そうね、比企谷くんになら教えてもいいわね」
「……っ!ヒッキー!次はあたしのも食べるし!」
なんと今回の由比ヶ浜のお弁当は当たりハズレ機能付きらしい。ウィットに富んだお弁当を作るとは……こいつ腕を上げたな!
とか考えていたら脳内で由比ヶ浜からのクレームがきた。違うし!とか怒ってた。
『こっちの焦げてるけど美味しいのとかがそういう趣向かと思っていたんだが…まさか!』
「…ママに半分手伝ってもらったの」
『半分も作ったのか?もしかしてこの焦げた食べ物は全部…由比ヶ浜が?』
「そーだし!悪い?かなり頑張ったんだから!」
こいつは驚いた!ちなみに雪ノ下も驚いていた。少し前まではダークマターか備長炭しか作れなかったあの由比ヶ浜が…すごいな。
素直に美味しいと感じるし、そのための努力も想像に難くない。由比ヶ浜からは嬉しさと恥ずかしさを感じる。勿論、俺の気持ちも伝わっているのだが。
雪ノ下に憑いている時も気持ちは通じあっていた。彼女も素直に喜んでいた。俺も素直に美味しいと感じて感謝を伝えられた。
そう、これがヤバいんだ。
言わなくちゃ解らないこともあって、言っても解らないこともあるってのを知っている。だからこそ相手を知りたいと思うんだ。知らないことは酷く怖いことだから。それでも俺は『本物』が欲しいと思っていた。
なのにどうだ?この幸福感は!
憑依することで雪ノ下と由比ヶ浜の気持ちも、逆に俺の気持ちまで伝わる。解り合える。共感覚?違う。お互いのことが解り合えるんだ。それこそフィルターも全部取っ払って丸裸で伝わる。
だからこそ俺は今が好きだ。今のままがいい。今を変えたくない。現実に戻りたくない。もっと二人と一緒にいたいと思ってしまう。
だが…これはいけない。このままではいけないのだ。ボッチを拗らせた時間が長かったせいか手離せないものが本当に手離せなくなっていた。
食事を終えた二人と昼休みの時間が終わるまで会話を楽しんだ。前まではこうじゃなかったなと思う。俺も変わったのだと実感すると共に、小町的にポイントが高くなったのか聞きたくなってしまう。
二人は授業に戻り、俺は家に帰った。
家で出来ることは特にないが、部屋を綺麗に片付けておきたかった。部屋の掃除は誰にも任せたくないからな。世の中には人に見られたく無いものもあるものだ。そして大事なものは全部HDの中だ。いや、本当に大事なものはもう見つけたんだけどね?これは念には念を入れているだけだ。万が一…いや、億が一見られでもしたら新しい未練が出来てしまうからな!
新しいパスワードを設定し直して、安心と安全のセキュリティを構築したぜ。これであの化け物スペックたちが来たとしても大丈夫だろう。
万全の準備を整えて夕方まで大人しく過ごした。
夕方になると続々と比企谷家が賑やかになった。皆にリビングに集まってもらった。
集まった面子は、雪ノ下、由比ヶ浜、陽乃さん、平塚先生、材木座、あとは俺と小町だ。ちなみに両親には一連の出来事は全く説明していない。なので無事に解決すれば内緒ということになる。あまり心配をかけたくない気持ちがあるからだ。
『では、お集まりの皆さん。なぜお呼びしたのかこれより説明します』
少し口調が堅くなってしまった。真面目に話そうと思ったせいか緊張してしまった。気を取り直して周りに説明を続ける。
『わたくし、比企谷八幡はこれより未練を断ち切り、復活したいと思います』
周りの空気がざわっとした。これが噂に聞くざわざわなのか?
『聞きたいこともあるかと思いますが、まずは皆にお礼を言わせてほしい。その……まぁ、なんだ、ありがとう……』
周りの空気がシーンっとした。先程とは真逆の空気が痛い。いや、俺はクールな真面目キャラで通っていたはずだ。外観が材木座なのがいけなかったんだろう。そう結論づけていたら小町がフォローを入れてくれた。
「ほんとにおにーちゃんは捻デレなんだから!けど、小町的にポイントは高いよ~」
『こ、小町……お兄ちゃんは解ってくれて嬉しいぞ』
「比企谷くん…その、いいのかしら?貴方の未練とやらを皆に話してしまっても…」
雪ノ下が俺のことを気遣ってくれている。それだけでも俺は嬉しさで成仏してしまいそうだ。いや、ホントにはしないからね?
ヨシくん(材木座)から心配そうな気持ちが伝わってくる。
「比企谷!君のことは塚守である私が見届けようではないか。可愛い生徒の晴れ舞台だ。思いっきりやりたまえ」
『平塚先生…ありがとうございます』
平塚先生も後押しをしてくれている。本当は塚守の覚醒パワーとか期待してたんっすよね?わかります。
皆が何を言うのか待ち構えている。
あまり溜めても仕方ないなと思い、さらっと簡潔に話すことにした。
『俺の未練は……このままが、今のままゴーストでも皆の側に居たい!いや、違うな。二人の側に居たいんだ…雪ノ下と由比ヶ浜と居たいんだ。二人の心が、考えていることが解るのが嬉しいんだ。そしてそれを本物と思ってしまっていることこそが……俺の未練なんだ!』
「比企谷くん…あなた…」
「ヒッキー…」
「ホムン…」
三人の声が聴こえた。三人の。
なんで材木座が返事するんだよとか思っていたら、次の瞬間には違う場所にいた。
「……知らない天井だ」
まさかまた同じ台詞を言うことになるとは思わなかったな。体を少し動かすと痛みと共に意識がハッキリしてくる。あぁ戻ったんだなと実感する。そして少しの後悔と少しの未練。結局のところ未練を完全に断ち切るなんて人には出来ない。少なくとも俺には出来ない。それを受け入れて、克服して、心の中で少しずつ整理していくしかないんだ。
簡単にいくこともあれば、簡単にはいかないことだってある。今回のことで俺は少しは成長出来たのだと思う。成長できたと思うのは傲慢だろうか?それでも、たとえ間違っていたとしても、またやり直せばいい。
…あぁ、なんだか眠くなってきた。
俺がいないことに気付いたなら間違いなくあいつらは病院に来そうだな。
最後にナースコールだけ…で……も………