俺にリンチにされてボロ雑巾のようになったイケメン野郎が闘志をむき出しにして魔剣を構える。
端正な顔はボコボコに晴れ上がり、鼻血まで流している。余裕のない顔は初対面時では考えられないほど殺伐としていた。
満身創痍で今にも倒れそうだ。だが・・・・先程より断然手強いと思った。
「チッ・・死にぞこないが・・・止めをさしてやるぜ!」
「ああ・・だが、その前に・・・」
ミツルギは魔剣を地面に刺すと突然俺に背を向ける。
そして影分身達が落とした仲間の衣服を拾うと、取っ組み合ってパンツを奪い合う仲間の近くにそっと置いた。仲間達は彼のパンツに夢中で気づいていない。
そんな醜態を晒す女どもに、ため息をついて魔剣の元に戻ってくる。
「さぁ、始めようか」
あら、やだイケメン・・・なんか女にモテるっていうのもわかるわー
でもなんだかムカつくからパーフェクト・スティールで剥いてやろうかしら。
「カズマ、ちょっと今回は正面から戦ってみろってばよ」
ええ!?師匠それはちょっと無茶ぶりじゃ・・・相手は上級職のソードマスターだし、レベルも俺より随分と高そうだ。
真っ向勝負なら本来、適うはずもない格上の相手なのだ。
「大丈夫だ、自分にもう少し自信を持てってばよ。こいつと戦えるだけの力は今のお前にはある。それに・・・強いといっても俺よりは遥かに弱いってばよ。」
ははは、それはそうだ。相手が師匠レベルだったらプライドとか捨ててもうとっくに土下座しているよ俺は。
師匠に比べたらこんなナルシストなホモ魔剣士なんてちっとも怖くない。
気が軽くなって不敵な笑みを浮かべる俺。
しかし、ミツルギは師匠の言葉が気に入らないのか憮然とした顔で師匠を見る。
「御老人・・・それは一体どういう意味・・・・・な、に!?」
「こういう意味だと言えば分かるかってばよ?兄ちゃん」
気づいたら師匠がミツルギの喉にクナイを突きつけて笑っていた。マーキングはしていないはずだから飛雷神ではなく恐らく単純な身体能力。
相変わらず底の見えない妖怪のような人だ。
「あんましウチのカズマを舐めるなよ?手加減無用。全力で向かって行けってばよ」
青ざめるミツルギにそう言い残す師匠。
あれー?これも修行の一環なのかな?なんだか俺に厳しい状況じゃない?
「ねぇカズマー。もう帰るんだからさっきみたいにチャッチャと終わらせなさいよー!」
脳天気に呼びかけてくるアクア。俺だって早く帰って肉臭い体を風呂で洗ってさっぱりさせたいよ。
「いえ・・今回はなんだか長引きそうですよ。相手がマジな顔です。魔剣持ちですし正面からならカズマの分が悪いかもしれません。」
「あの、反則スティールなら一瞬なのにな・・・」
めぐみんとダクネスは草わらに座り込んで完全に観戦ムードだ。
クリスとウィズとクラマはもう普通に談笑しながら芋を食っている。
俺を信頼してくれているのかもしれんが随分と緊張感のない空気・・・・
俺はこれから命懸けで格上相手にガチンコバトルを繰り広げないといけないというのに・・・・
ああもう、畜生!楽しいバーベキューがどうしてこうなった!
「影分身の術!オラァァァ!」
影分身を四体出現させてミツルギに突っ込ませる。
不意をつくことを狙ったんだが今度は冷静に対処された。
「ハァ~~~~ッ!!」
一体目は腹を引き裂かれ、二体目は頭から兜割りの要領で両断された。三体目と四体目はまとめて横凪に吹き飛ばされた。
剣を振るう速度も大したものだが手数重視の連撃で責めず、強烈な一撃で仕留める必殺タイプか。
まだまだ、分析が必要だ。俺は焦らずさらに影分身を6体追加する。
「カズマ!魔剣グラムは所持者の膂力を限界以上まで高める効果を持つわ!切れ味もかなりのもので鉄だろうとドラゴンの皮膚だろうとスパスパ切れるの!気をつけて!」
アクアがなかなか役に立つ情報をくれる。いい仕事するじゃないか肉食女神。
影分身だから切れ味は関係ないが、膂力は厄介だな。あの剣速はその産物か。アイツを攻略する上で目を向けるべきなのは攻撃力じゃない。どうせ俺の貧弱な防御力じゃ例え魔剣じゃなくても生身で受けたら一撃でやられる。
だから対処するべき問題は速度。あの剣を振るう速度に慣れる必要がある。
新たな影分身を三体ほどやられてその経験値をフィードバックさせて確信した。決して避けられない速度じゃない。師匠のガチホモボディービルダー地獄で鍛え上げた脚力が生きている。
それに、ミツルギの戦い方はどこか拙く思えた。
剣術スキルで魔剣を扱う技術はあるのだろうが、それを活かす戦闘法の基礎ができていないように感じる。
攻撃が単調で読みやすい。間合いの取り方も下手くそだ。集中力はあるが視野が狭い。さっきの戦いのことといい
恐らく精神面でも脆いのだろう。
師匠と毎日組手をしていたから解る戦闘者としての未熟さ。
“下地が出来ていない”という師匠の言葉を思い出す。
きっとミツルギはその魔剣の力でさして苦戦することなくレベルを上げて行ったんだろう。
だから今のミツルギキョウヤの強さとは強力な魔剣をレベルとスキルで振り回すだけのもの。
こいつの剣筋に血の滲むような鍛錬の跡が見えない。それだけで、俺はもう負ける気がしなくなった。
これで無様を晒したら師匠とアイツ等に顔向けができないんだよ!
集中してきたからか、奴の高速の剣閃が今では余裕たっぷりに目で追えることができた。
いつまでも観察を続けてもしょうがない。
そろそろ、攻めるか・・・・
俺は影分身を全て消して単騎で特攻を仕掛けた。
今の俺が影分身で囲めば恐らく秒殺だろう。
しかし、真正面から戦うのが師匠の課題。
俺も師匠のチャクラに頼らず自分一人でどこまでやれるか試してみたかった。
本体の俺に向かって容赦なく袈裟斬りに振るわれる必殺の魔剣。
震えが走るほどの凶悪な一撃。当たれば間違いなく即死だろう。
しかし、その剣の速度、振るう角度、剣技の型、ミツルギキョウヤの独特の癖、
―――――――――――――――全てが俺には見えていた。
足にチャクラを集中させる。木登り修行で鍛えたチャクラコントロールの一端。
チャクラによる単純な強化技法。それにより急加速した俺は迫り来る魔剣を難なく回避し、その勢いのままミツルギキョウヤの腹に肘鉄を叩き込んだ。
◇◆◇◆
僕は別にサトウカズマを舐めていたわけじゃない。
一度無様にやられてからは警戒を最大限に高めていたはずだ。
先ほどの自らの驕りも反省し、サトウカズマを強者と確かに認めていたはずだった。
それでも絡め手のない真っ向勝負なら自分が必ず勝つという自信はあった。
――――――――――――――そう思っていた。
「なぜっ・・・・当たらない!?」
僕の振るう必殺の魔剣が尽く空を切る。
先ほどの分身相手なら容易く切り伏せてきたのに・・・・
本人が前線に出てきた途端一向に命中しなくなった。
「ほいさっ!」
「ぐはっっ!!」
サトウカズマの拳が腹に突き刺さる。僕の剣を見切った上でのカウンターだ。
これをもう何度もやられている。
レベル差があるおかげでそこまでの深刻なダメージを受けていないが、それも時間の問題だ。
回復手段のない僕は成すすべなく一方的に体力を削り取られていっている。
「そこよ!ボディを攻めなさい!じわじわと後で効いてくるわ!」
「いえ!顎先を狙うべきです!脳を揺らしてダウンを奪うのです!」
「カズマー!くれぐれもアレは使うなってばよー!・・・殺しちゃうからなー!」
「なぜ金的を狙わない!?おかしい・・・カズマなら真っ先に狙ってもおかしくない急所なのに・・・まさか・・いたぶっているのか!?じわじわと嬲って最後に美味しいところを攻めるんだな?ふふふふ・・・いいぞ・・・見せてくれ・・・鬼畜道の高みを・・・!」
「うそー・・・あのチート魔剣相手に圧倒しているよ・・・なに、あの回避力・・・みんな平然と観戦しているけどあれって、異常だよ?・・・」
「あれは・・・いやそんな・・まさかな・・・」
「カズマさーん、頑張ってくださーい!」
スポーツ観戦をしているように野次を飛ばす彼女達にさすがの僕もイラついてくる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
魔剣グラムの能力を最大限に高め、さっきまでの剣閃を遥かに上回る一撃を叩き込む。
それを神懸かり的な反射神経で上体を反らし躱しきる。
なんて、馬鹿げた回避能力だ!
ふと、“一撃でも与えることができたら君を認めよう”という僕が彼に吐いた台詞が頭をよぎり、カァと顔が熱くなる。なんてことだ!これではまるで逆の状況じゃないか!
「危ねぇだろが!下手したら今の首チョンパだぞ!?」
「はぁはぁはぁはぁ・・・・あ、あたらない・・・」
「ちょっと、お前、熱くなりすぎだって!一旦冷静になろうぜ・・・お前は俺の貧弱な攻撃で危機感なんて感じないんだろうけど、俺はやばいのよ・・・・ギリギリだよ・・・」
何を、白々しい・・・あれほど華麗に避けきっていたくせに・・・!
「ああ、もう、師匠!もう十分でしょ?終わらせますからね!」
サトウカズマが師匠と呼ぶ老人に許可を取ると、焼き芋を美味しそうに食べていた老人がコクりと頷くのが見えた。
終わらせるだと・・・・ふざけやがって!まだだ!まだ僕は終わらない!ここで負けてたまるか!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
先ほどと同じ魔剣を最大限に発揮して振るうが、恐らく当たることはないだろう。
悔しいがそういう確信を抱いてしまっている。しかしそれで構わない。
肉体に大きな負担がかかるが魔剣の連撃を仕掛けてみようと思う。
成功するかわからないが一矢報いることができるはずだ。
だから、・・・・・捨てるつもりの一撃でサトウカズマが引き裂かれ、
・・・彼が僕の魔剣に鮮血を散らして倒れ伏した時・・・・
僕の思考は白く染まり、長い間、停止した。
・・・・・・・・・・・・・・え?
・・・・そんな・・・馬鹿な・・・・
「いやああああああああ!!カズマ!!かずまぁ~~~~!!!」
女神様の悲痛な叫びが現実味を帯びて僕の胸を刺した。
「かずま・・・・嘘ですよね・・・・返事をしてください・・・ねぇ・・・かず・・ま・・」
女の子が彼の元に駆け寄り、虚ろな瞳で声をかけるが、血だまりに沈む彼はもう息をしていない。
「き、貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!よくも!よくもカズマをぉぉぉ!!」
クルセイダーらしき彼の仲間の女性が僕の胸ぐらをつかみ何度も何度も殴りつけてくる。
やがて、その手は止まり、涙をボロボロと流して嗚咽を漏らしながら慟哭した。
誰もが彼の死を悲しみ、僕を家族の敵を見るような憎しみを込めた目で睨んでくる。
僕は・・・・そんなつもりじゃ・・・・
本当にそんなつもりじゃなかったんだ・・・・・ただ、僕は・・・・・
ただ、なんだ?・・・・
僕に一体どんな正当な理由があったと言うんだ。彼に危険な魔剣を向ける理由が・・・・
僕は負けたくなかっただけだ。
子供じみた意地で危険な魔剣を振るい、その結果なんの罪もない男を殺めた。
僕は・・・・僕は・・・ただの人殺しだ・・・・
勇者でもなんでもなく、ただの罪人・・・・・
サトウカズマ・・・サトウカズマ・・・サトウカズマ!!
僕は・・・ぼくは・・・一体君にどう償ったら・・・!
「はい、俺の勝ちね」
気がついたら魔剣グラムを奪われ、サトウカズマに突き付けられていた。
・・・・・あえ?
性格の悪そうな顔で不敵に笑う彼は、確かにサトウカズマだった。
どういうことなの?わけがわからないよ・・・・
君は僕が殺してしまって・・・死んだはずでは・・・?
「うん、カズマ、なかなか良い幻術だったってばよ。」
老人が言う。・・・幻術?
「なんか、あっけない幕切れだったわね。いきなりアヘ顔かましたホモ野郎に剣を突きつけただけだもん。」
「まぁ、最後の方はなんだか向こうが熱くなって剣を振り回して危なかったですからね。きっと、あれで良かったんですよ。」
「そうそう、これ以上長引いてもお互いに無駄に怪我を負うだけだからな。どんな幻を見ていたか知らないが、落としどころとしてはこれでいいだろう。」
先程まで泣き喚いて僕に憎しみをぶつけていた三人は今はとても平和そうだ。
良かった・・・・本当によかった!
「ザドヴガズマーーーーーーー!!!」
「うわっなんだ!なんなんだお前!」
「ぼんどうに・・ぼんどうによがっだよーーー」
僕は思わず号泣してサトウカズマに抱きついてしまう。ああ、なんて安らぐ抱き心地だ!
「ごべんなぁ、ほんどうにごべんなぁーーー!!はんぜいしているんだー、かんがえなじにま剣でごうげきしだりしで・・・ぼぐがわるがっだ・・・・ぼぐがあざはがだっだ・・・ゆるじでぐれーーー」
僕は後悔していた。死ぬほど悔いていた。一歩間違えれば、いや、サトウカズマが止めてくれなければあの幻の世界は実現したんだ。とんでもない過ちを僕は犯すところだったんだ・・・
「いや、もう、良いから・・・そんなに泣くなよ・・・」
サトウカズマがそっと抱き返してくれながら優しく言う。
なぜか胸が高まり、顔が紅潮する。なぜだ。
「なんて・・・じひぶがいおどこなんだ、ぎみはーーー!!」
サトウカズマの懐の深さに感動する。殺されかけたというのにこんなことを言って水に流す人間がいるなんて・・・・ぼくは本当に今まで彼になんと無礼な口を聞いてしまったんだろうか・・・
「ありがどう・・・こんがいのことは全てぼくが悪かった・・・・いずれ、このお礼はかならず・・・」
「おいおい、やめてくれよ本当に・・・そんなこと言われたらさ・・・さすがの俺でも
・・・・――――――――――――――――――――とどめを刺しづらくなるだろ?」
「え?」
目の前のサトウカズマがボンッと音を立てて消えた。背筋が凍る、嫌な予感がしてたまらない。
最後の一言は後ろのちょうど僕のお尻のあたりから聞こえたんだ
・・・あの彼特有のいやらしい鬼畜な声が・・・
「師匠直伝・・・・木の葉流秘伝体術奥義――――千年殺し!!!」
僕の肛門に衝撃が走った。未だかつてない苦痛がケツから脳髄に駆け上がった。
「ぐぎゃひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~!!!!!」
僕の生涯で今まであげたことのない叫びを上げてしまった。
激痛に歪んだ顔から涙と鼻水とヨダレと脂汗が一気に吹き出す。
凶悪極まりない一撃にたまらずお尻を抑えてのたうち回る。
体が自然と海老反りの体勢になり、ピクピクと痙攣し始めた。
ああああああああ!痛い!ちょー痛い!!
く・・・女神さま、こんな僕をどうか見ないでください・・・!
「え?・・・今なんで止めをさしたの?」
「もう完全に戦いは終わって和解ムード全開だったと思うのですが・・・」
「多分カズマは使ってみたかっただけだってばよ・・・自分と同じ苦しみを他人に味わわせてやりたかったんだ。
必要ないと言ったのにあれの練習を隠れて続けていたみたいだからな・・・・」
「ああ!カズマが鬼畜道を全力で駆け上がっている・・!一体どこまで上り詰めると言うんだ・・!」
「こうやって、受け継がれていくのか・・・あんな技が・・・」
「うっわー、お尻痛そ〜・・」
「でも、なぜでしょう・・・・なんだか・・・あの人、だんだんと安らかな顔に・・・」
お尻が痛い・・・凄く痛い・・・
なのに・・・・なんだ・・・この感情は?
悪くない気持ち・・・いや、むしろ・・・
馬鹿な!そんな、僕は違う!違うんだ!
・・・このぼくが、そんなアブノーマルであるはずが・・・
「うぇ、きったない・・・コイツのパンツ盗ったの忘れてた・・気色悪い感触が指に・・・川原で洗おう」
くっ・・・サトウカズマ!
僕に屈辱を味あわせたこの男のことで頭がいっぱいになる。
いつか、この借りは必ず返す!覚えておけ!
◇◆◇◆
――――――――――5日後
「やぁ、カズマ!奇遇だね!」
皆でお昼を食べている俺に気さくに声をかけて近づいてくるキョウヤ。
それを見て今まで楽しく会話をしていた仲間達がビクッと肩を震わせ、沈黙する。
「よう、最近よく会うな。」
「一緒していいかな?」
「おう、座れよ」
「ありがとう。あ、皆さんも、こんにちは」
俺の向かいに座るキョウヤがようやく他のメンバーに目を向けて挨拶する。
なんだか近頃は俺にばかり話しかけるんだよな・・・最初はアクアとも良く口を聞いていたのに・・・
「ど、どうも・・・」
そう言ったっきりアクアが気まずそうに黙り込む。
どうしたんだ一体・・・
「今日は午前中は何をしていたんだい?」
キョウヤが涼しげに微笑んで尋ねてくる。それは店員さんが思わず顔を赤らめるほどのイケメンフェイス。
「一撃グマの討伐。といっても師匠が瞬殺したから俺達はただ、ついて行っただけだがな。」
「相変わらずとんでもないお方だ・・・それで、昼からは何か予定があるのかい?無かったら僕と・・・」
「だ、ダメですっ!!!」
めぐみんが突然鬼気迫る声で叫んだ。
「か、カズマは今日私の爆裂魔法を採点するという重要な任務があるのです!悪いですがとても忙しくなるのでホモやろ・・・ミツルギと遊んでいる時間はないのです!」
「あれ?そんな約束したっけ?」
「ま、まったくカズマは・・・昨日ちゃんと約束したじゃないですかー。酔っ払っていたから覚えてないんですね!・・ねぇ、みんな!確かに約束しましたよね?」
「う、うん。私はちゃんと聞いていたわよ!」
「ははは・・約束を忘れるとは仕方のないやつだな!」
「ボケ爺の俺だってちゃんと覚えているってばよ」
「そうそう、大人しくそのロリっ子とデートしてこい。」
皆がそう言うんなら、そうなんだろう。覚えていないが。
「そういうことなら仕方ないね・・・また次の機会に・・・」
「おお、悪いな」
キョウヤがやけに寂しそうに笑うので妙に罪悪感が湧いてくる。
そんなに大事な用件だったんだろうか?
去っていくキョウヤを見送ったあと、急に腹が痛くなってトイレに駆け込んだ。
カズマが席を立ったあと用心深く声を潜めて会話を交わす四人と一匹。
「グッジョブ!めぐみん!ナイスな機転だったわ!」
「冷や汗をかきました・・・まさか昼間から犯行に及んでくるとは・・・」
「めぐみんのおかげでカズマの貞操が守られた。はぁ、まったく危なっかしい男だ・・・」
「なぁ、そんなに警戒するものか?ちょっと過保護な気がするってばよ・・・」
「甘いわ、お爺ちゃん!あいつは真性のホモであることはもう疑いようのない事実なのよ!しかも絶対カズマに気があるわ!あんなカンチョーを受けて平然として友達にまでなっちゃってるのがその証拠よ!」
「わたし見てしまいました・・・あいつがカズマのお尻を獲物を狙う獣のような目で凝視していたのを・・・!」
「ああ、私にも身に覚えのある目だ。色欲に染まりきった、飢えた野獣のような眼差し・・・あいつとカズマを二人っきりにするなんてとんでもない!ソードマスターの腕力にものを言わせて非力なカズマを手込めにしてしまうに違いない!」
「ワシもあいつはヤバイと思う。あいつからはカズマに向ける熱烈な好意の感情が痛いほど伝わってくる。お前だって感じているはずだろ?」
「うん、まぁ・・・正直気持ちが悪くて、感知するのは速攻でやめたけど・・・」
「とにかく!カズマにあのホモ野郎を近づけさせてはいけないの!カズマも鈍いから好意を寄せているホモに全く気づいていない!“このホモ野郎”とか普段あいつに言っているけどあくまで冗談で本気ではないわ!だから危険なの!」
「カズマは同年代の男友達が欲しいって言っていましたからね・・・・」
「ようやくできた友人がホモであることを知ればきっとショックを受けるだろう・・・・
できるだけ、カズマに悟られないように、かつ、迅速に縁を切らせるんだ。」
頷き合う四人と一匹は、ホモを撃退して仲間を守るために固く結束していた。
◇◆◇◆
自室のレンガ造りの硬い壁に自らの頭を強く打ち続けている奇妙な男がいた。
ミツルギキョウヤである。
「うぉぉぉぉぉ!!僕はホモじゃない!僕はホモじゃない!僕はホモじゃない!!」
額からは血が流れ、目からは涙がとめどなく流れ、鼻からはアオッパナが垂れている。
今のこの男は誰が見たとしてもイケメンとは決して呼べない醜態を晒していた。
「でも、好きなんだぁぁ!!!!」
その日ミツルギキョウヤは人知れず旅立った。
いたって普通に女の子が好きなノンケの友人に迷惑がかからないよう・・・
切なさを胸に秘めひっそりと、街を出た。
サトウカズマは大変なものをスティールしていきました。
・・・それはミツルギキョウヤの心です・・・・・
ちなみに、本当にどうでもいい話ですが、彼の仲間である女冒険者二人の住まいに「解散します」とだけ書かれた手紙が送られて来て、慌てて後を追うように街を出て行ったとか・・・・
今回の馬鹿げた話はなぜか難産でしたw
ホモの切ない心理描写を長々と書いて迷走してしまいました・・・
もちろん全てボツにしましたが・・・
今回私が学んだことはホモは書いていてそこまで楽しいものではないということです。
ああ、可愛い女の子が書きたい・・・・