まだ陽も登らない早朝。
寝床の馬小屋でワシの危機察知能力がその来るべき脅威に敏感に反応してみせた。
・・・奴が、今日もくる!
「ううぅ・・・さむぅ・・・クラマたん・・クラマたんはどこぉ?・・・モフモフが・・・モフモフが必要なのよ~~・・・モフモフ~・・・どこ~・・・」
隣で毛布に丸まったアクアがモゾモゾと動いて眠たそうに呻きながらこちらに手を伸ばしてくる。
それを転がって間一髪、回避する。
すると、空を切ったアクアの手がシーツの上で力なくさまよう。その様はまるで行き場を無くした哀れな捨て猫を思わせた。
「クシュンッ・・・・・さ、さむいよぅ・・・さむ・・クシュンッ・・・うぅぅ・・・さ・む・・」
お、大げさなやつだな。そこまで寒くないだろう。
確かに秋の半ばで少し肌寒くはあるがナルトとカズマは普通にイビキをかきながら寝ている。
寒さに貧弱な人間の肉体を考慮しても凍えるほどではないはずだ。
ナルトを見てみろ、パンツとシャツ一丁で腹を出しながらも元気にイビキをかいて寝ているぞ。
毎日毎日、ワシに厚かましく抱きついて暖をとっているから寒さへの耐性がなくなるのだ。
いい加減、毎朝お前に起こされてヨダレを垂らされながら頬ずりされるのはもう御免なんだよ。
「クラマた~ん・・・おいで~・・私とヌクヌクしましょうよ~・・・クシュン・・」
クッ・・これみよがしにクシャミなんぞしよって・・・
ワシの同情を誘おうとしてもそうはいかん。
今日こそは暑苦しいこの女の腕に拘束されることなく自由に眠るのだ。
ワシには昨日の晩考えついたナイスな必勝法がある。これならば罪悪感に悩まされることなくアクアを遠ざけられる。
わしの方に、にじり寄りながら再び抱きつこうと接近するアクア。
ワシは後ろにジリジリと下がりながらタイミングを測る。
「もう・・・クラマた~~~ん!・・・おいでよ~!・・」
ガバッと獲物を捕獲するような俊敏さで迫るアクア。
今だ「変わり身の術!」
瞬時に、後ろに眠るカズマとの位置を入れ替える。
「ん?・・なんかいつものクラマたんとちがう・・やわくない・・・んん・・でも・・
・・これも少し硬いけどわるくないかも・・・なんか・・安心するわぁ・・ぐー・・」
カズマに抱きつきながら安らかな寝息を立てるアクア。
「あー・・・なんだ・・なんか・・あったけー・・」
被害者のカズマも女の温もりに満更でもなさそうだ。
うん、誰も不幸にならないナイスな状況だ。
寒さに弱い貧弱な人間同士がそうなるべきなのだ。
そうしてワシはナルトの毛布をかけ直し、その隣で安心して丸くなった。
ワシの幸福な安眠は数時間後にアクアの悲鳴と殴り飛ばされたカズマの叫びが馬小屋に響くまで続いたのだった。
「カズマさーん、ごめんってばー。いい加減許してよー」
「暴力ヒロインなんて今時流行んねぇんだよ!なんで朝っぱらから肝臓ブローをゼロ距離から五連発も叩き込まれにゃならないんだよ!
俺なんか悪いことした!?俺はどこぞの鈍感系主人公と違って女の理不尽な暴力には頑として訴える姿勢を崩さない男だからな!」
朝起きて男の胸にしがみついている状況がよほど驚いたのだろう。
珍しく女らしい悲鳴を上げてカズマにゴッドブローの凶悪な連打を浴びせたのだった。
恐らく粉砕されたであろう肋骨を我に返ったアクアが平謝りをしながらヒールで癒したが、それを笑って許すほどカズマは寛大では無かった。
「まさか女神の手であの世に送り返される事態になるとはなー。お前の後輩だっていう女神に会ったらなんて言ってやろうかなぁ。
上司の偉い神様とかはさぁ、殺人未遂女神のクレームとか受け付けて適切な処理とかしてくれるのかな?」
「うう・・やめて・・やめてよう・・エリスにこのことを話すのは止めて・・あの子は私のことを先輩としてとても慕ってくれてるんだから・・
もう嫌なの・・・後輩にからかわれて馬鹿にされるのは・・・・・あの、オカマみたいな人を舐め腐った後輩はもう沢山なのよ・・・」
うん?オカマ?・・・いやきっと違うよな。オカマなんてたくさんいるだろうし。まさかな。
「まぁ、男女があんな狭い小屋で暮らしている以上いつかこういう間違いが起こるとは思っていましたよ私は。
ふんっ・・いやらしい・・・・・昨晩はお楽しみでしたね!」
めぐみんが何故か拗ねたように頬杖をかいて言う。
「お楽しみじゃねーよ!話聞いてた!?ジャージはヨダレでべっとべとだし、朝から肋骨粉砕されて永眠しかけたって話だ!男心をくすぐる嬉しいサービスイベントなんて何も起きてねぇんだよ!」
パゲットを山賊のように雄々しく咬みちぎりながら怒りのおさまらないカズマは顔をしかめる。
「ナルトさんとアクアなら微笑ましい祖父と孫の図なのだが、カズマとアクアでは途端に生々しい危機感が浮かぶよな・・・・主にこの男の普段の行いのせいで。」
カズマをフォークで指しながら苦笑して言うダクネス。
「なんでだよっ!俺はお前たちにはまだそんな鬼畜な行為には及んでいないはずだろ!?」
「まだってことはいずれ凶行に走る恐れがあるんですね?あの恐ろしいスキルを持つカズマにかかれば私達など常に丸裸に等しいのです。そんな手段があるだけで女の子にとっては警戒に値するんですよ。アクア、今のうちに私の馬小屋に移住することをおすすめしますよ?おデブな女冒険者とルームシェアしていて少し汗臭いですが、こんな思春期で色々と持て余している男の隣よりはマシなはずです。」
「うーん、そうねぇ・・引越しは面倒くさいけど・・」
アクアがチラッとこちらを名残惜しそうに見る。
「ワシはもう金輪際、お前の抱き枕代わりになるつもりはないからな!」
ワシがそう断言すると、アクアは肩を落とす。
そして、カズマの方をチラリと見ると言いづらそうに重々しく口を開く。
「ねぇ・・カズマ?その・・私は別に全然疑っているわけではないんだけどね?・・あの・・・もしかして私の胸とかお尻を触ったりとかは・・・していないわよね?・・」
「は!?・・・なななななにを言ってんのか・・ささささっぱりわからんなぁ!何を根拠にそう思うの?証拠でもあるの?殺人未遂の次は冤罪ですか?いいだろう法廷で争おうじゃないか!裁判沙汰になったら絶対俺が勝つからな!」
動揺しすぎだろ!
疑わしそうな視線がカズマに集中する。皆の目が確信していた。コイツは黒だ。
アクアが何かを確信したのかジト目でカズマを見つめる。
「だって、目を覚ました私の目に最初に飛び込んできたのがカズマのいやらしい猿顔だったから・・・あと小声でスティー・・て何か言いかけているのも聞こえたわ・・・あれって私の名推理によると恐らく・・・」
口笛をわざとらしく鳴らしてそっぽを向くカズマ。その顔には汗がダラダラと流れていた。
「被告、サトウカズマに判決を言い渡します・・・・有罪!」
めぐみんがスプーンで机を叩きながら裁判官のように宣言する。
「これは・・弁護のしようもない・・有罪だな」
「ああ有罪だ・・」
「ということでカズマさんは私に言うことがあるんじゃないかしら?怪我の件もあるし裁判沙汰にするつもりはないから誠意ある謝罪の言葉を・・・・」
「え?なんのこと?顔のことを言われても元からこんないやらしく見える猿顔ですし?スティーというのもあれだよ・・・向こうの友人のスティーブのことを口走ってしまっただけさ。いやぁ、ホームシックになっているのかねぇ・・・最近、油断するとつい口にしてしまうんだよな~~元気にしてるかなスティーブ・・」
「誰よスティーブって!!引きこもりのあんたにそんな外人の友達なんているはずないでしょ!しらばっくれないで!ちゃんと謝れば慈悲深い女神であるこの私が寛大に許してあげるっていうのよ!何が不満なの!?」
「はいはい、どうもごめんなさいでしたー・・・これでいいか?うん?満足か?」
「誠意がない!驚く程ない!ちゃんと謝ってよぉ!」
額の汗をハンカチで拭いて澄まし顔のカズマはしがみつくアクアをガン無視して話題を変える。
「あ、そういえば師匠はさっきからギルド職員と何を話しているんだ?」
「ああー・・きっとベルディアの件でしょうね。」
「ベルディア?」
「そうか、カズマは知らないんだったな。魔王軍の幹部のベルディアだ。」
「えっ?」
呆けるカズマに構わず、ギルドのカウンター前で話し込むナルトと受付嬢のルナの二人に目を向ける。
「ですからっ!これ以上野放しにしないで、いい加減に決着を着けてください!お願いですから!」
「うーん・・・でもなぁ・・・」
二人の会話はだいぶ温度差があるようでヒートアップするルナとそれを困ったような顔でハッキリしない返答をするナルト。
「もう4回も撃退したんですよ?チャンスはそれだけあったんです。なぜトドメを刺さないんですか?」
「いやぁ・・・あいつはまだ、なにも悪いことはしていないし・・・」
「何かあってからでは遅いんです。それにベルディアが付近に存在するだけでこの街周辺の弱いモンスターがいなくなって初級冒険者のお仕事が激減しているんですよ。街の住民も不安がっていますし確かな害があるんです。」
「うーん・・悪い奴じゃないんだけどなぁ・・この前も急に押しかけたのに美味しいアップルパイとお茶をご馳走になったし・・・」
「えっ?お友達になっちゃったんですか!?」
「いや、向こうも若干怯えていたし、まだ友達と呼べる関係を築けてはいないってばよ。でもいずれは・・」
「止めてくださいっ!ナルトさんが動かない場合は上級冒険者への依頼をする予定なんです!お願いですから必要以上に仲良くなって敵に回るようなことにだけはならないようにしてください!」
受付嬢のルナが涙ながらに懇願する。
それをナルトは曖昧に笑って誤魔化した。
あのお土産のアップルパイはそういうことだったのか。
アンデットの手作りお菓子・・・まぁ美味しかったが。
「ええっと・・・どういうこと?」
呆けるカズマを不機嫌そうなアクアが一瞥して仕方なさそうに口を開く。
「修行三昧だったどっかの誰かさんはご存知ないかもしれないけれどね。この街はもう何度もあのベルディアとか言うデュラハンの襲撃を受けているの。その度にお爺ちゃんがフルボッコにして撃退していたのよ。」
「ええー・・マジでかー・・・流石は師匠・・」
「見ていて可哀想になるくらい一方的にボコボコにされていたな・・・騎士として一度はあんな苦境に立たされてみたいものだ・・・さすがに四度もあんな目に合うのは御免だが・・」
ダクネスはあの哀れな暗黒騎士がやられたことを思い出したのか、興奮と恐怖が混ざったなんとも複雑な表情を浮かべる。
「ていうか、なんで師匠は魔王軍の幹部を四度も取り逃がしたんだ?
それだけ一方的な戦いだったんなら、あの師匠が逃走を許すはずがないと思うんだが・・・」
「ああ、それは・・・・ベルディアがとんでもなく命乞いが上手だったのですよ。」
「・・・はい?・・・」
「まず最初に見事な土下座でこちらの毒気を抜き、高らかに気持ちよく響く誠心誠意ある謝罪の言葉でこちらの戦意を削ぎ落とし、巧みな話術による泣き落としでこちらの善良な心に訴えかけてくるのです。
その哀切漂う命乞いのコンボにナル爺はすっかり同情してしまって・・・前の戦いでは気を失ったベルディアを献身的に彼の自宅まで送ってあげる始末です。
正直、ナル爺はもう彼とは本気で戦えないでしょうね・・・まったく、心優しい老人の善意につけこむなんてとんでもない外道騎士です!」
「まぁ、なんだかんだで師匠は優しい人だからなぁ。情が移ったんなら今後は戦いづらそうだな」
根本的に甘い男だからなナルトは。本気で命乞いをされたら殺すことなど到底無理だろう。
「では仕方がありませんね。ナル爺が殺れないのならこの私がトドメを刺してあげましょう!
新たなる進化を果たした我が爆裂魔法の力によって灰にしてやりますよ!」
「ほうっ、ついに完成したのかあの“新型爆裂魔法”!」
マントをなびかせ、ポーズを決めてドヤ顔で宣言するめぐみん。それをカズマが称えるように拍手を送る。
まさか・・・あれがもう形になったというのか?わずか数週間足らずで?
「いえ、まだ厳密に言えば完成とは呼べません・・・改良点はまだまだありますから。でも今朝、起きた時に良いイメージが湧いてきたのです!今なら絶対あの忌々しい廃墟を吹き飛ばせるだけの最高の爆裂魔法が放てる気がします!」
「お?ハードル上げるねぇ。じゃあもし吹き飛ばせたら俺がお前の好きなクレイジー苺のスペシャルパフェを奢ってやるぜ!頑張れよ!」
「おおおおお!!どうしたんですかカズマ!?いつになく気前がいい!何かいい事でもあったんですか・・・あ、なるほど・・朝の件がよほど・・」
「違うわ!純粋に仲間の成長を祝おうとしただけだ!!・・後あれは無実だからな!これ以上この件を責めるのなら確かな物的証拠を見せてみろ」
「被害者である私の証言があるんですけど・・・・」
「はい、この話はおしまーい!俺もお前に殺されかけた件は水に流したんだからこれで痛み分けにしようぜ。別にいいだろう尻の十揉みや二十揉み・・・減るもんじゃあるまいし。」
「今サラッと自白したぞこの男・・・・!」
「ていうか・・え?・・どんだけ揉んだのよ私のお尻・・・」
「アクア。やっぱり今晩、引越しの計画を立てましょう。この男とひとつ屋根の下は危険極まりないです」
そんな会話が交わされている横で、二人の男たちがカズマを睨んでいるのをワシは知っている。
そいつらはワシらの寝泊りしている馬小屋のおとなりさんだ。
「ちくしょう・・!朝からあんな美少女とラブコメ展開を繰り広げやがって!許せねぇ!」
「落ち着けよダスト。あいつはあの“怪物ジジィ”の弟子だ。きっと正面から喧嘩を売っても痛い目にあうだけだ。」
「クソッ!綺麗どころと毎日イチャコラしやがって・・・!こっちはパーティの唯一の女に手を出そうとしてアソコを切り取られる寸前だったていうのに・・なんであいつだけ・・あんないい思いを・・」
「いや、それはお前の自業自得ってやつだろうよ・・・」
人間の嫉妬の感情というのは恐ろしい。
それは時に愛するものですら傷つけ、些細なことで誰かの足を引っ張って奈落へ蹴落としたりする。
こんな取るに足らない奴らでも一応は警戒をしておいたほうがいいだろう。
夕時の茜色に染まる空き地で二つの影が対峙していた。
一人はカズマで、もう一人は―――――
「影真似の術・・・」
「ぐっ・・・なんだこれ、体が・・・ピクリとも動かねぇ・・」
―――――木の葉の元火影相談役“奈良シカマル”
「かったりぃが・・・ついでにこれも喰らっとけ、“影首縛りの術”・・・」
「ぐ・・ぐぇぇ・・・」
カズマの足元から首元まで影が生き物のような滑らかな動きで登っていく。
そして、実体化した影はカズマの首を徐々に締めていく。
「ぐがぁ・・・・・」
必死にもがくが、この術を破る程の技量は今のカズマには無いのだ。
唾液を口から流しながら力なく倒れこむカズマ。
結局は、成す術なくそのまま絞め殺されるしかなかった。
「もう、終わりか。やつが相手だとしても早すぎるな。」
ワシはため息をついて不甲斐ない弟子に近づく。
流石に熟練忍者の相手は荷が重かったか・・・
「えっと、カズマはどうしたのですか?立ったまま白目を剥いてビクビクと痙攣していますが・・・・変な薬でもやっているんですか?今すぐアクアを呼んだほうが・・・」
「なんてことはない。これもただの修行の一環だから心配するな。・・・」
見るに耐えないカズマの醜態に不安そうに青ざめるめぐみん。
傍から見たら確かに危ない薬でもやっていそうで不安にもなるわな・・・
さっさとカズマにかけた幻術を解いてやるか。
「解!・・・」
「ハッ・・・あー、苦しかった・・・もうこの修行やだよ、ホント・・・」
目を覚ましたカズマが早速弱音を吐く。
「だが、なかなか使えそうな術だろう?影真似はその特性を考えれば影分身との相性がいい。」
「まー、便利そうな技ではあるけど・・・うわ、結構スキルポイントを消費するぞ、これ・・」
「一応、秘伝忍術と呼ばれるものだからな。しょうがない。」
冒険者の特性をまだ何か生かせないかと考えて、思いついたのがこの修行法。
幻術を駆使したスキル習得だ。
冒険者のスキル習得の条件はその術の目視と発動方法の理解。
ならば理論的にどんな術でもスキルポイントさえあれば習得可能なのだ。
幻術世界で創り出した、かつてのナルトの盟友たち。そいつらの術を再現させて戦わせることで術を目視させる。
それから、ナルトが口寄せした火影の書庫に仕舞ってある禁書・忍術秘伝大全集を読ませて術の発動方法を理解させるのだ。
たった、それだけでコイツはどんな忍術でも覚えることができる。
まぁ、スキルポイントの消費が激しいからきちんと今後の計画を立てて厳選しないといけないが・・・
「あー、そろそろ、レベル上げをしたいなぁ。」
空き地から出て茜色に染まる街並みを歩きながらカズマがボヤく。
「そうするにはベルディアを倒さないといけませんね。あれがいるせいで私たちに合った低難易度クエストが受けられません。」
杖を振り回して闘志を燃やすめぐみん。
「そうなんだよなぁー、いっそのこと師匠に恐れをなして遠くへ逃げて行ってくれないかなぁ」
「幹部に挑んでみようという気概はないのか、お前には。」
「まだ、厳しいんじゃないか?ボス戦は。コツコツレベルを上げられる状況でもないしな。」
「高難度クエストを受けても私たちじゃ歯が立たないことは経験済みですしね。前みたいにナル爺に頼りっきりの寄生虫のような真似はしたくありませんし。」
以前何度か上級者向けのクエストを修行がてら受けてみたことがあるのだが、四人とも出てくるモンスターにまるで敵わず、逃げ惑うしかなかった。カズマ達のレベル上げは無理だと判断したナルトが全て殲滅したのだった。クエストは一応クリアしたが、報酬を分け合う時の四人の気まずそうな表情といったら・・・・
「そうだ!師匠に高レベルモンスターを虫の息になるまで追い詰めてもらって最後のトドメを俺たちが刺すという方法は・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「うん、冗談だからそんな虫けらを見るような目で見ないでくれ、めぐみん。クラマさんもそんな牙を剥いて唸り声を上げないで・・・」
全くコイツは、修行を終えてもこういうところは変わらんなぁ・・・
精神修行からやり直したほうがいいんじゃないだろうか?あとでナルトに相談してみよう。
街の十字路に差し掛かったので、ワシは二人を置いて西門に続く道に向かって歩く。
「あれ?クラマはどこへ行くんです?私たちはこれから日課の爆裂魔法なんですが、一緒に行かないんですか?」
「ワシはこれから行くところがあるんだよ。お前の新型の性能は今度見せてもらう」
「そうですか。では楽しみにしていてください!以前言ってくれたパッとしない威力という言葉を訂正させてみせます!」
「おーおー、楽しみにしているよ。そんじゃ、もうすぐ暗くなるから道中気をつけろよ。隣のケダモノに全裸に剥かれないようにな。」
「やらんわっ!」
カズマの怒鳴り声を背にクツクツと笑いながらワシは軽い足取りで歩き出す。
「あいつ、最近夕方からいなくなることが多いけど、いったいどこに行ってるんだ?」
「さぁ?可愛い雌狐でも見つけたのかもしれませんね。獣ですし少し目を離した隙にパパになっているかもしれませんよ。」
西門から街を出て薄暗い森林を歩く。
霧が立ち込め、枯葉がざわつく不気味な雰囲気。
その中を慣れた足取りで奥へと進む。
すると、二本の大木が互いの方に倒れかけ、支え合ってトンネルのようになっている。
その前にはまるで玄関を思わせる薄くて丸い石台があった。
その上に乗り、合言葉を口にする。
これを口にするのは初めてではないが、いつも笑いだしそうになる。
女の名を合言葉にするなんていかにもアイツらしい女々しい考えだ。
「アンジェリカ」
すると石台が淡く輝き、ゆっくりと動き出す。
歩いたほうが早んじゃないかと思うくらいのもどかしい速度。
短いトンネルを抜けると、そこには美しい景色が広がっていた。
―――――――――――ということはなく、薄汚い大きなテントが立っているだけだ。
石台から降りて、テントの入口へ歩く。
テントの前では番人らしきゾンビ二人が槍を持って見張っているが、ワシを見ると愛想よく会釈して中へ通してくれる。
「ぷはぁ!・・お~う!!クラマかぁ!よく来たなぁ~!我が第二の城へようこそ!」
そこには、陽の沈んでいないうちから泥酔している魔王軍幹部ベルディアの姿があった。
自らの頭部を腕に抱え、その口に少しずつ酒を流し込んでいる。
厳かな甲冑を着たデュラハンでなかったら、それは赤ん坊にミルクを与える母親に見えたかもしれない。
「おみやげは~~~?ねぇ!お、み、や、げ、は~~~?」
「わかっているよ、うるせぇな。ほら、大吟醸“千年殺し”だ。」
ナルトが向こうから口寄せした秘蔵の酒を呼び寄せて、このアル中騎士に渡す。
「ひゃほ~~う!!恩にきるぞクラマよ!これでしばらく俺はこの世に絶望せずに耐えることができるぜ!あの頭のおかしいアークウィザードの爆撃にも、あの神出鬼没な妖怪ジジィの恐怖にも耐え抜くことができる!!・・・・・そう・・耐えるんだ・・耐えて、耐えて、耐え抜いて俺は・・・・うぉ~~ん!!」
突然、情緒不安定になって泣き出すベルディア。
「帰りたい・・・あの城へ・・・こんなテント生活はもう嫌だ・・・」
ベルディアは度重なる爆撃と突然現れるナルトの恐怖に怯え、涙ながらに城を出たのだ。
難民として行き場を無くして長い間さまよい、この森の奥で結界を張り、ようやく安息を得たのだった。
ワシの仲間が本当にすまん・・・・
「俺の城はまだ、大丈夫だよな?・・・壊れていないよな?」
「う、うん・・・・多分・・・」
あのやる気に満ちた爆裂娘を頭に思い描きながら、ワシは曖昧に笑うことしかできなかった・・・
ベルディア戦勃発まで書く予定でしたが長くなりそうなので今回はここまでです。
あと、この作品のベルディアはオリジナル設定というか、捏造設定があります。
場合によってはこの人も壊変するかもしれません。
・・・・あれと違ってホモではないですけどねww